見えればわかる!

経会陰超音波で行う
分娩進行の評価
[Web動画付]

経会陰超音波で行う分娩進行の評価[Web動画付]

■編著 中山 敏男

■監修 平池 修
入山 高行

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  112ページ  オールカラー,イラスト67点,写真89点
  • 2024年10月25日刊行
  • ISBN978-4-7583-2350-5

分娩時の内診技術革命! 児頭下降度がこんなに簡単・正確に評価できる!

産科における内診とは,児頭が今どのあたりに下降しているか,ということを評価することである。現在の無痛分娩の普及により,麻酔の影響によって児頭の回旋異常や,分娩後期にいきめないことから器械分娩が増加しており,正確な器械操作のためには,以前よりも児頭下降度を正確に評価する必要がでてきている。
これまでの産科内診は検者の主観によるところが大きかったが,近年,経会陰超音波を用いて,客観的指標をもとにした児頭下降度の判定が行われるようになった。本書は,誰にでも簡便に児頭下降度が評価できるという技術であり,今後はCTGなどのように分娩スキルのスタンダードとなるべき技術である。


序文



 近年の著明な出生率低下に伴い,高年妊娠や合併症を有する妊娠が増えており,無痛分娩の需要も増えている。そのため,これまで以上に分娩進行を正確に評価することが求められている。
 これまで産科医・助産師は,分娩の進行を内診による頸管と児頭の所見をとることで診断していた。頸管の所見は頸管の開大や展退,硬度や位置により診断する。
 一方で児頭の所見は,先進部がどの程度下降しているか,産瘤や骨重の程度,骨盤腔内における児頭最大周囲径の位置,矢状縫合の向きや大泉門と小泉門の位置から児頭の回旋の様子を診断している。
 このような内診による診断は分娩進行の評価や,鉗子や吸引といった器械分娩による急速遂娩が可能かを判断するために欠かせない技術であることは今も変わらない。
 しかし,これらの内診による診断には,主観によるところが大きいことから検者間の診断誤差があり,再現性に乏しい。また,習得までの時間がかかり,内診時の妊婦の不快感など,さまざまな問題がある。
 産瘤が大きい場合は矢状縫合が触れにくいことや,stationによる先進部の評価と実際の最大周囲径の位置に乖離があること,前方前頭位などの回旋異常の症例では同じstationでも最大通過面の位置が大きく異なることがあるなど,内診による分娩進行の評価は容易ではない。そのため,児頭と恥骨の関係から分娩進行の評価を行う経会陰超音波が,今後の分娩管理に欠かせないものになってくることは想像に難くない。
 本書は分娩管理に携わる医療スタッフすべてにできる経会陰超音波の入門書として,可能な限りわかりやすく構成し,新しいスキルアップの一助になることを一番の目的として作成した。
 経会陰超音波が産科内診技術のスタンダードとなり,多くの分娩で利用されることになれば幸いである。

2024年9月
山王病院副院長/ 女性医療センター産科・婦人科部長
中山敏男

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監修のことば

 近年,無痛分娩の増加に伴い,遷延した分娩第2期をいかに安全に乗り切るかが,大きな課題となっています。無痛分娩では,回旋異常の頻度が増え,分娩停止による器械分娩の機会も何倍にも増加することが知られています。安全な器械分娩を行うためには,分娩進行(児頭の下降度や回旋状態)の正確な評価が必要不可欠です。その評価手段として,本書で解説する「経会陰超音波」が非常に有用なのです。たとえ分娩が遷延し大きな産瘤が形成されていても,経会陰超音波であれば,矢状縫合の向きを間違いなく把握できるだけでなく,児頭の下降度および進行方向も正確に評価することが可能です。そして何より,超音波装置の複雑な知識や技術は不要で,誰でも簡便に評価できる点が優れています。
 内診による評価は施行者によりばらつきがありますが,超音波では,誰が施行してもほぼ同じ評価が得られます。経会陰超音波のパラメーターで児頭の位置や向きを表現すれば,内診に比べて客観性のあるデータとして,勤務者間で共有することが可能です。画像を保存しておけば,器械分娩や帝王切開となった症例について,その実施理由となった分娩進行の状態を振り返ることができます。「これ,本当にステーション+3で吸引をしたの? もっと高かったんじゃないの? 回旋異常もあったんじゃないの? だから何回も滑脱したんでしょう?」と上級医から疑念を抱かれることもなくなります。器械分娩の前に経会陰超音波を行うことが日常化すれば,超音波装置なしで器械分娩を行うことに不安を覚えるようになるでしょう。これは,車のバックモニターがないと駐車に不安を感じるのと似ています。
 東京大学では,約10年前から経会陰超音波を導入し,現在ではほぼすべての経腟分娩において超音波を使用しながら分娩進行をモニタリングしています。さらに,器械分娩を行う症例では,施行時の内診所見とともに,経会陰超音波のパラメーターの記載および超音波画像の保存を義務付けています。本書の執筆者である中山敏男先生は,東京大学における経会陰超音波の導入に中心的な役割を果たし,超音波を用いた分娩管理に関する数多くの講演を行い,ご活躍されています。中山先生は,初めて超音波プローブを手に取り,分娩管理に活用しようとする医師や助産師を含めたすべての職種の方々に向けて,そのエッセンスをわかりやすく解説しています。本書を通じて,一人でも多くの方に経会陰超音波の有用性と素晴らしさが伝わり,その普及が安全な分娩管理につながることを心より願っています。

2024年9月
東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座准教授
入山高行
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目次

Ⅰ 経会陰超音波とは?
正確な内診はとても難しい
これまでは内診のみで分娩進行を評価していた
経会陰超音波
児頭下降による変化
プローブの当て方と見えるもの

Ⅱ 経会陰超音波の基礎知識
さまざまな超音波機器とプローブ
プローブの準備
プローブの当て方
画面の設定
経会陰超音波の基本断面
矢状断面でのプローブの動かし方
横断面でのプローブの動かし方
経腹・恥骨上での観察
経会陰超音波での定量評価で用いるパラメーター

Ⅲ 回旋異常の診断と対応
正常回旋と回旋異常
第2回旋の異常
第2回旋の評価
超音波による第2回旋の異常の評価
第2回旋の異常を疑う場合
Advance 第1回旋の異常
回旋異常への対応
不正軸進入
不正軸進入も超音波で診断できる

Ⅳ Advance 器械分娩を安全に行う-リアルタイムでの経会陰超音波アシストによる器械分娩-
無痛分娩施行中の分娩停止
器械分娩について
内診と鉗子適位の評価
器械分娩による牽引が可能な所見
安全に器械分娩ができる目安の画像とパラメーター
リアルタイムでの経会陰超音波アシスト分娩・器械分娩
牽引方向の修正ができた症例
吸引分娩において牽引方向が異なる2つの症例
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