- 新刊
- 産婦人科・周産期医学
児頭下降度の評価と吸引・鉗子遂娩術
[Web動画付]
改訂第2版
![児頭下降度の評価と吸引・鉗子遂娩術[Web動画付]](../database/cover_image/book/X/ISBN978-4-7583-2354-3.jpg)
定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- B5判 196ページ オールカラー,イラスト100点
- 2025年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-2354-3
電子版
序文
2015年4月に『児頭下降度の評価と鉗子遂娩術』と題する初版本を出版した。その当時,産科医療補償制度の脳性麻痺原因分析委員会で,吸引分娩による脳性麻痺症例が多く,急速遂娩術の要約を遵守し,安全に施行することが急務と考え,児頭下降度を厳格に評価して施行する鉗子遂娩術を紹介することにした。研修した東京大学医学部産科婦人科学講座で,多くの指導者から一貫した鉗子遂娩術の教育を受け,実践してきた。吸引分娩は今まで鉗子を置いていない病院で数例しか行ったことはないが,なかなか牽引できずイライラした思い出しかない。
英国にはROBuST(RCOG Operative Birth Simulation Training)という産科技術研修プログラムがあり,吸引分娩や帝王切開術だけでなくネーゲリ鉗子などのnon-rotational forcepsやキーラン鉗子のような回旋鉗子を用いた手技も産婦人科専門医取得には習得すべき必須の技術となっている。このため,鉗子分娩は吸引分娩より多く行われており,英国やアイルランドだけでなく英連邦国においても鉗子遂娩術は継承されている。鉗子の特性を知り,鉗子適位を遵守すれば安全に施行でき,かつ即座に確実に児を娩出できるし,無用な帝王切開術の減少にもつながると考えている。
日本でも麻酔科医による脊髄幹麻酔を用いた” まったく痛みのない“ 無痛分娩が普及するに伴い,特有の合併症もみられるようになっている。微弱陣痛,分娩遷延・停止,回旋異常などであり,その管理法を熟知する必要がある。回旋異常のなかでも厄介な低在横定位は骨盤底筋群の弛緩により,児頭が横位のまま低在まで下降することにより起こると考えられる。特に前頭頂骨不正軸侵入を伴うものでは吸引分娩でも児頭回旋が困難で,児娩出に難渋し軟産道裂傷の頻度も高くなる。一方,キーラン鉗子を用いると児頭回旋も児娩出も容易である。
改訂にあたり,無痛分娩の問題点,管理法や児頭用手回旋法も新たに追加した。90%以上の妊婦が無痛分娩を希望する順天堂医院では,低在横定位や斜位に対応すべくキーラン鉗子手技も英国のように産科研修のなかに取り入れている。
日本では,器械分娩技術の教育は個々の研修病院で行ってきたため,吸引分娩に偏ってしまった。英国のROBuSTのような標準化した技術研修トレーニングシステムを学会主導で確立し,実施することが今後の課題である。それにより産科技術の継承と同時に産婦人科医療のレベルアップにつながると思われる。
今回,初版本を改訂し,吸引分娩や無痛分娩時の問題も取り上げアップデートした。本書が器械分娩の技術トレーニング教本として,また日々の臨床研修,実践に役立つことを願っている。参考にしていただき,ご批判を仰ぎたい。
2025年3月吉日
竹田 省
英国にはROBuST(RCOG Operative Birth Simulation Training)という産科技術研修プログラムがあり,吸引分娩や帝王切開術だけでなくネーゲリ鉗子などのnon-rotational forcepsやキーラン鉗子のような回旋鉗子を用いた手技も産婦人科専門医取得には習得すべき必須の技術となっている。このため,鉗子分娩は吸引分娩より多く行われており,英国やアイルランドだけでなく英連邦国においても鉗子遂娩術は継承されている。鉗子の特性を知り,鉗子適位を遵守すれば安全に施行でき,かつ即座に確実に児を娩出できるし,無用な帝王切開術の減少にもつながると考えている。
日本でも麻酔科医による脊髄幹麻酔を用いた” まったく痛みのない“ 無痛分娩が普及するに伴い,特有の合併症もみられるようになっている。微弱陣痛,分娩遷延・停止,回旋異常などであり,その管理法を熟知する必要がある。回旋異常のなかでも厄介な低在横定位は骨盤底筋群の弛緩により,児頭が横位のまま低在まで下降することにより起こると考えられる。特に前頭頂骨不正軸侵入を伴うものでは吸引分娩でも児頭回旋が困難で,児娩出に難渋し軟産道裂傷の頻度も高くなる。一方,キーラン鉗子を用いると児頭回旋も児娩出も容易である。
改訂にあたり,無痛分娩の問題点,管理法や児頭用手回旋法も新たに追加した。90%以上の妊婦が無痛分娩を希望する順天堂医院では,低在横定位や斜位に対応すべくキーラン鉗子手技も英国のように産科研修のなかに取り入れている。
日本では,器械分娩技術の教育は個々の研修病院で行ってきたため,吸引分娩に偏ってしまった。英国のROBuSTのような標準化した技術研修トレーニングシステムを学会主導で確立し,実施することが今後の課題である。それにより産科技術の継承と同時に産婦人科医療のレベルアップにつながると思われる。
今回,初版本を改訂し,吸引分娩や無痛分娩時の問題も取り上げアップデートした。本書が器械分娩の技術トレーニング教本として,また日々の臨床研修,実践に役立つことを願っている。参考にしていただき,ご批判を仰ぎたい。
2025年3月吉日
竹田 省
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目次
1章 産科鉗子の歴史 藤井知行
産科鉗子の発明
わが国独自の急速遂娩器具(和製産科鉗子)
わが国への西洋産科鉗子の紹介
わが国への産科鉗子の伝来
2章 産科鉗子の種類と構造 東大式ネーゲリ鉗子,東大式キーラン鉗子 藤井知行
鉗子の種類
鉗子の構造
東大式ネーゲリ鉗子
東大式キーラン鉗子
3章 児頭下降度の評価と内診法 竹田 省
吸引・鉗子分娩の適位
児頭最大周囲径
胎児位置と先進部の表記法(東大式表記法)
Station(DeLee)
骨盤誘導軸に基づいたtrapezoidalstation(t-station)
日本産科婦人科学会の骨盤区分と総合的児頭下降度の評価法
ACOG との鉗子表記法の差異
内診
経会陰超音波を用いた分娩進行評価 永松 健
経会陰超音波の意義
分娩停止の判断と分娩様式の決定
急速遂娩実施可能性の判断
4章 急速遂娩術 関 博之
急速遂娩術(吸引・鉗子遂娩術と帝王切開術)とは
鉗子分娩と吸引分娩の差異
急速遂娩の問題点─産科医療補償制度の視点から─
吸引・鉗子分娩の不成功例の帝王切開への移行
5章 陰部神経麻酔 竹田 省
器械分娩の麻酔
陰部神経麻酔
肛門括約筋損傷
6章 鉗子分娩の特性・特徴 関 博之
鉗子の力学
鉗子分娩の適応と要約
鉗子分娩の準備
中在鉗子の確実性
分娩の見通し
7章 ネーゲリ鉗子の手技(正常回旋,縦径児頭) 前方後頭位 関 博之,牧野真太郎
鉗子の構造と名称
鉗子手術を行う前に内診の重要性─
鉗子手技の実際
8章 ネーゲリ鉗子の手技(特殊な状況) 高中在鉗子・前方前頭位・斜径・後続児頭鉗子 竹田 純,竹田 省
高中在鉗子(station+2の鉗子)
前方前頭位と後方後頭位の鉗子
斜径
後続児頭鉗子
9章 キーラン回旋鉗子手技 竹田 純
骨盤装着と児頭装着
キーラン鉗子の特徴
鉗子挿入に先立って
実際の手順
10章 児頭用手回旋 竹田 純
正常の児頭の回旋
回旋異常とは
回旋異常に気付くきっかけ
用手回旋の適応
児頭用手回旋の実際
11章 無痛分娩と器械分娩 竹田 純,竹田 省
無痛分娩のニーズとその診療体制
無痛分娩の特徴と合併症
無痛分娩の管理
無痛分娩での鉗子分娩の要点
12章 吸引分娩 鈴木俊治
吸引娩出術の歴史
吸引娩出術の適応と高さ(要約)
子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)
吸引分娩と鉗子分娩の比較に関する報告
吸引娩出術の手技
吸引娩出術不成功時の対応
13章 器械分娩の合併症・問題点 竹田 省
合併症
軟産道裂傷
分娩時出血増加
子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)
児の合併症
14章 困難例と対処法:鉗子分娩 竹田 省
不成功例(failed forceps)
挿入困難例
キーラン鉗子の挿入困難
牽引困難・滑脱例
15章 困難例と対処法:吸引分娩 鈴木俊治
不成功例:撤退するタイミング
16章 技術指導・教育法 竹田 省,板倉敦夫,鈴木俊治
海外での鉗子使用率と技術の伝承
鉗子技術の指導のポイント
鉗子分娩技術のトレーニング
吸引分娩技術のトレーニング
産科鉗子の発明
わが国独自の急速遂娩器具(和製産科鉗子)
わが国への西洋産科鉗子の紹介
わが国への産科鉗子の伝来
2章 産科鉗子の種類と構造 東大式ネーゲリ鉗子,東大式キーラン鉗子 藤井知行
鉗子の種類
鉗子の構造
東大式ネーゲリ鉗子
東大式キーラン鉗子
3章 児頭下降度の評価と内診法 竹田 省
吸引・鉗子分娩の適位
児頭最大周囲径
胎児位置と先進部の表記法(東大式表記法)
Station(DeLee)
骨盤誘導軸に基づいたtrapezoidalstation(t-station)
日本産科婦人科学会の骨盤区分と総合的児頭下降度の評価法
ACOG との鉗子表記法の差異
内診
経会陰超音波を用いた分娩進行評価 永松 健
経会陰超音波の意義
分娩停止の判断と分娩様式の決定
急速遂娩実施可能性の判断
4章 急速遂娩術 関 博之
急速遂娩術(吸引・鉗子遂娩術と帝王切開術)とは
鉗子分娩と吸引分娩の差異
急速遂娩の問題点─産科医療補償制度の視点から─
吸引・鉗子分娩の不成功例の帝王切開への移行
5章 陰部神経麻酔 竹田 省
器械分娩の麻酔
陰部神経麻酔
肛門括約筋損傷
6章 鉗子分娩の特性・特徴 関 博之
鉗子の力学
鉗子分娩の適応と要約
鉗子分娩の準備
中在鉗子の確実性
分娩の見通し
7章 ネーゲリ鉗子の手技(正常回旋,縦径児頭) 前方後頭位 関 博之,牧野真太郎
鉗子の構造と名称
鉗子手術を行う前に内診の重要性─
鉗子手技の実際
8章 ネーゲリ鉗子の手技(特殊な状況) 高中在鉗子・前方前頭位・斜径・後続児頭鉗子 竹田 純,竹田 省
高中在鉗子(station+2の鉗子)
前方前頭位と後方後頭位の鉗子
斜径
後続児頭鉗子
9章 キーラン回旋鉗子手技 竹田 純
骨盤装着と児頭装着
キーラン鉗子の特徴
鉗子挿入に先立って
実際の手順
10章 児頭用手回旋 竹田 純
正常の児頭の回旋
回旋異常とは
回旋異常に気付くきっかけ
用手回旋の適応
児頭用手回旋の実際
11章 無痛分娩と器械分娩 竹田 純,竹田 省
無痛分娩のニーズとその診療体制
無痛分娩の特徴と合併症
無痛分娩の管理
無痛分娩での鉗子分娩の要点
12章 吸引分娩 鈴木俊治
吸引娩出術の歴史
吸引娩出術の適応と高さ(要約)
子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)
吸引分娩と鉗子分娩の比較に関する報告
吸引娩出術の手技
吸引娩出術不成功時の対応
13章 器械分娩の合併症・問題点 竹田 省
合併症
軟産道裂傷
分娩時出血増加
子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)
児の合併症
14章 困難例と対処法:鉗子分娩 竹田 省
不成功例(failed forceps)
挿入困難例
キーラン鉗子の挿入困難
牽引困難・滑脱例
15章 困難例と対処法:吸引分娩 鈴木俊治
不成功例:撤退するタイミング
16章 技術指導・教育法 竹田 省,板倉敦夫,鈴木俊治
海外での鉗子使用率と技術の伝承
鉗子技術の指導のポイント
鉗子分娩技術のトレーニング
吸引分娩技術のトレーニング
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好評を博した『児頭下降度の評価と鉗子遂娩術』の待望の改訂版。無痛分娩で用いられるキーラン鉗子の解説も充実!
好評を博した『児頭下降度の評価と鉗子遂娩術』の待望の改訂版。ネーゲリ鉗子の基本はもちろん,無痛分娩に対応したキーラン鉗子,鉗子よりも多く用いられている吸引分娩も収載。最近のトレンドである経会陰超音波なども収載。