Canal, Foramen, Fissure, Space & Membrane

読影の手立てとなる
局所解剖と画像診断

読影の手立てとなる局所解剖と画像診断

■編集 松永 尚文
江原 茂
後閑 武彦
松本 俊郎
浮洲 龍太郎

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • B5変型判  308ページ  2色/4色,写真860点,イラスト130点
  • 2018年3月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1602-6

読影の際のランドマークとなる,全身の管・孔・裂・腔・膜を徹底解説!

実質臓器に比べてこれまであまり注目されてこなかったCanal (管)・Foramen(孔)・Fissure(裂)・Space(腔)およびMembrane(膜)などの解剖上の構造物に焦点をあて,構造物がどこに位置するのか,どのような意味を持つ構造物なのか,その画像診断上の意義を徹底解説。各領域のエキスパートが構造物を押さえてどう読影しているのかよくわかるよう,充実したシェーマと画像により細かいポイントまで記載。読影と診断の技能をより高めるために必携の一冊。


序文

 画像診断の進歩により,3次元画像で細部まで見えるようになってきたが,Canal (管)・Foramen(孔)・Fissure(裂)・Space(腔)およびMembrane(膜)などの画像解剖については,実質臓器に比べこれまであまり注目されてこなかった。これらの構造物には,神経,血管,リンパ管,筋肉,腱,臓器などが,そして数多くの疾患が存在しており,疾患の進展の経路としてあるいはバリアとして重要な役割を果たしている。これらに存在する病変とその画像所見をあわせて知っておくことは,正確な局在診断,病変由来の同定,質的診断につながり,更には治療方針の決定にも役立つ。しかし,立体的かつ複雑に錯綜している管・孔・裂・腔・膜を断層画像で認識するのは必ずしも容易ではない。高画質のCT・MRIでも,知っていなければ見えないもの,しかし丹念に見ると見えているものも少なくない。例えば,認識できない2 枚の膜の間にある脂肪,動脈,静脈を目印にすると見えてくるもの,また病変があってはじめて認識できるものもある。これを立体的にイメージして,より精度の高い画像診断をして適切な治療選択や計画に反映させる必要がある。手術の際も,根治性を担保しつつ機能を温存するため,膜や層の画像解剖の理解は不可欠である。
 月刊「臨床画像」の後閑武彦編集委員により,画像解剖を押さえ,空間的広がりをみせる疾患を学ぶことで診断能を高めるためのテキストとして特集号が提案された。① Canal・Foramen・Fissure・Space・Membraneの解剖学的位置関係を画像上で理解できる,②その構造部位毎に,特異的・特徴的な疾患を学び,基本的な読影の手立てが分かる,③画像所見から何が重要かひと目で分かり,全身の読影がより的確に行えることを意図したものである。今後も幅広い用途が期待されるので,系統的で本格的な書籍化が企画されることとなった。
 本書では,単に画像解剖だけに留まらず,読影の鍵となる5つの「解剖上の構造物」を項目として取り上げている。CT・MRIを中心に,正常画像解剖やバリエーション,解剖学や発生学の知識が病態の理解に役立つ疾患などの画像,それらに存在する特異的疾患,特徴的病変や臨床上での意義を症例ベースで数多く掲載して,疾患を読み解くことを意識した構成になっている。疾患に関する記述は,読影に必要な知識(疾患の見極めに役立つ鑑別の着眼点,画像所見で知っておくべき形状や特徴的所見など)に絞った内容となっている。最初にoverview では,画像やシェーマを用いて,局所的な「画像上の構造物」を有機的に結びつける総論的位置づけがなされ,また各項目では読者の理解の助けとなる「TIPS」や「画像診断上の意義」も囲み記事として適宜補足されている。
 執筆をお願いしたのは,各領域で深い知識と豊富な臨床経験を有し最前線の日常診療に携わっておられるエキスパートの先生方ばかりである。進歩を遂げつつある画像診断に追随すべく,各モダリティに対応した新しい内容を盛り込み,詳しくかつ分かりやすくまとめていただいた各執筆者に厚くお礼申し上げる次第である。本書が画像診断の基本知識を整理する一助となれば幸いである。

2018年3月
松永尚文
江原 茂
後閑武彦
松本俊郎
浮洲龍太郎
全文表示する
閉じる

目次

第1章 頭頸部 Head & Neck  編集:浮洲龍太郎
 Overview—頭蓋底の解剖 Anatomy of the skull base (浮洲龍太郎)
 Foramen cecum 盲孔 (檜山貴志)
 Foramen of cribriform plate 篩板孔 (檜山貴志)
 Optic canal 視神経管 (齋藤尚子)
 Superior orbital fissure 上眼窩裂 (齋藤尚子)
 Inferior orbital fissure 下眼窩裂 (齋藤尚子)
 Pterygopalatine fossa 翼口蓋窩 (齋藤尚子)
 Foramen rotundum 正円孔 (齋藤尚子)
 Foramen ovale 卵円孔 (齋藤尚子)
 Carotid canal 頸動脈管 (齋藤尚子)
 Foramen lacerum 破裂孔 (齋藤尚子)
 Facial canal  顔面神経管 (檜山貴志)
 Internal auditory canal 内耳道 (檜山貴志)
 Inferior tympanic canaliculus 下鼓室小管 (檜山貴志)
 Foramen magnum 大後頭孔 (檜山貴志)
 Jugular foramen 頸静脈孔 (檜山貴志)
 Hypoglossal canal 舌下神経管 (檜山貴志)
 Pterygoid canal 翼突管 (浮洲龍太郎)
 Foramen spinosum 棘孔 (浮洲龍太郎)
 Foramen Vesalius Vesalius孔 (浮洲龍太郎)
 Condylar canal 顆管 (浮洲龍太郎)
 Overview—頭頸部の解剖 Anatomy of the fascia & space (浮洲龍太郎)
 Pharyngobasilar fascia 咽頭頭底筋膜 (加藤博基,松尾政之)
 Parapharyngeal space 傍咽頭間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Tensor-vascular-styloid fascia(TVSF) (加藤博基,松尾政之)
 Parotid space 耳下腺間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Infratemporal fossa 側頭下窩 (加藤博基,松尾政之)
 Masticator space 咀嚼筋間隙 (飯田悦史,古川又一)
 Buccal space 頬間隙 (飯田悦史,古川又一)
 Sublingual space 舌下間隙 (飯田悦史,古川又一)
 Submandibular space 顎下間隙 (飯田悦史,古川又一)
 Carotid sheath 頸動脈間隙 (飯田悦史,古川又一)
 Retropharyngeal space 咽頭後間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Danger space 危険間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Perivertebral space 椎周囲間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Pharyngeal mucosal space 咽頭粘膜間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Visceral space  臓器間隙 (加藤博基,松尾政之)
 Peritonsillar space 扁桃周囲間隙 (浮洲龍太郎)
 Posterior cervical space 後頸間隙 (浮洲龍太郎)
 Preepiglottic space,paraglottic space 前喉頭蓋間隙,傍声帯間隙 (浮洲龍太郎)
 
第2章 胸部 Chest & Heart, Great Vessel  編集:松永尚文
 Overview—胸部の解剖 Anatomy of the chest (髙橋雅士)
 Anterior junction line 前接合線 (町田 幹)
 Posterior junction line 後接合線 (町田 幹)
 Azygoesophageal recess 奇静脈食道陥凹 (國弘佳枝)
 Left border of descending thoracic aorta 胸部下行大動脈線(左縁) (國弘佳枝)
 Left paraspinal line 左傍脊椎線 (中園貴彦)
 Right paratracheal stripe 右傍気管線 (中園貴彦)
 Preaortic recess 前大動脈陥凹 (古谷清美,宇野善徳)
 Aortopulmonary window 大動脈肺動脈窓 (古谷清美)
 Retrosternal space 胸骨後腔 (久原麻子,藤本公則)
 Retrocardiac space 心臓後腔 (久原麻子,藤本公則)
 Kerley's lines カーリー線 (松永尚文)
 Major fissure 大葉間裂(superomedial major fissure, superolateral major fissure, vertical fissure line (阿比留 一,芦澤和人)
 Minor fissure 小葉間裂 (阿比留 一,芦澤和人)
 Accessory fissure  副葉間裂:上副葉間裂,下副葉間裂,左小葉間裂,奇静脈裂 (阿比留 一,芦澤和人)
 Pulmonary ligament 肺靭帯(肺間膜) (阿比留 一,芦澤和人)
 Overview—心膜の解剖 Anatomy of the pericardium (宇都宮大輔)
 Transverse pericardial recess 心膜横洞 (太田靖利)
 Oblique pericardial recess 心膜斜洞 (太田靖利)
 Superior pericardial recess・left lateral pulmonic recess 上心膜腔・左外側陥凹 (立神史稔)
 
第3章 腹部・骨盤部 Abdominal and Pelvic region
 編集:松本俊郎
 Overview―腹膜腔の解剖 Anatomy of the intra-peritoneal space (松本俊郎)
 Subphrenic space 横隔膜下腔 (松本俊郎)
 Right subhepatic space 右肝下腔 (松本俊郎)
 Paracolic gutter 傍結腸溝 (松本俊郎)
 Lesser sac 網嚢 (松本俊郎)
 Round ligament 肝円索 (高司 亮)
 Hepatoduodenal ligament 肝十二指腸間膜 (高司 亮)
 Gastrohepatic ligament 肝胃間膜 (高司 亮)
 Gastrocolic ligament 胃結腸間膜 (高司 亮)
 Gastrosplenic ligament 胃脾間膜 (高司 亮)
 Ligament of Treitz Treitz靭帯 (高司 亮)
 Transverse mesocolon 横行結腸間膜 (清永麻紀)
 Sigmoid mesocolon S状結腸間膜 (清永麻紀)
 Small bowel mesentery 小腸間膜 (清永麻紀)
 編集:後閑武彦
 Overview―後腹膜腔の解剖 Anatomy of the retroperitoneal space (扇谷芳光)
 Anterior pararenal space 前腎傍腔 (扇谷芳光)
 Perirenal space 腎周囲腔 (宗近次朗)
 Posterior pararenal space 後腎傍腔 (宗近次朗)
 Overview―骨盤部腹膜外腔の解剖 Anatomy of the intra-and extra-pelvic spaces (一色彩子)
 Prevesical space(retropubic space, Retzius space) 膀胱前腔 (一色彩子)
 Perivesical space 膀胱周囲腔 (一色彩子)
 Perirectal space 直腸周囲腔 (一色彩子)
 Presacral space 仙骨前腔 (一色彩子)
 Inguinal canal 鼡径管 (田中絵里子)
 Femoral canal 大腿管 (田中絵里子)
 Obturator foramen 閉鎖孔 (佐藤秀一)
 Greater sciatic foramen 大坐骨孔 (後閑武彦)
 
第4章 骨・関節・軟部 Bones, joints & soft tissue  編集:江原 茂
 Overview―肩の解剖 Anatomy of the shoulder joint (常陸 真)
 Acromio-humeral interval 肩峰骨頭間距離 (常陸 真)
 Rotator interval 腱板疎部 (常陸 真)
 Quadrilateral space 四辺形間隙,外側四角腔 (常陸 真)
 Suprascapular notch, spinoglenoid notch 肩甲上切痕,棘下切痕 (常陸 真)
 Glenohumeral ligament (関節上腕靱帯 上・中・下を含む)肩関節腔 (常陸 真)
 Overview―肘の解剖 Anatomy of the elbow joint (鈴木美知子,江原 茂)
 Cubital tunnel 肘部管 (鈴木美知子,江原 茂)
 Radial tunnel 橈骨神経管 (鈴木美知子,江原 茂)
 Capitellar fat pad,trochlear fat pad 上腕骨小頭脂肪体,上腕骨滑車部脂肪体 (鈴木美知子,江原 茂)
 Synovial fold(elbow) 滑膜ヒダ(肘) (鈴木美知子,江原 茂)
 Overview―手関節の解剖 Anatomy of the wrist joint (堀内沙矢,野崎太希,吉岡 大)
 Carpal tunnel 手根管 (堀内沙矢,野崎太希,吉岡 大)
 Guyon canal Guyon管 (堀内沙矢,野崎太希,吉岡 大)
 Extensor compartments of the wrist 指伸筋のコンパートメント (堀内沙矢,野崎太希,吉岡 大)
 Overview―股関節の解剖 Anatomy of the hip joint (菅原俊祐)
 Lessor sciatic notch 小坐骨切痕 (菅原俊祐)
 Obturator sulcus 閉鎖溝 (菅原俊祐)
 Piriform fossa 梨状窩 (菅原俊祐)
 Ischiofemoral interval 坐骨大腿間距離 (菅原俊祐)
 Overview―膝の解剖 Anatomy of the knee (中山 学,江原 茂)
 Hoffa fat pad  Hoffa脂肪体,膝蓋下脂肪体 (中山 学,江原 茂)
 Synovial plica(knee) 滑膜ヒダ(膝) (中山 学,江原 茂)
 Compartment of medial collateral ligament 内側側副靭帯で分けられるコンパートメント (中山 学,江原 茂)
 Meniscofemoral ligament,meniscotibial ligament  半月大腿靱帯,半月脛骨靱帯 (中山 学,江原 茂)
 Pes anserinus 鵞足 (中山 学,江原 茂)
 Iliotibial band 腸脛靱帯 (中山 学,江原 茂)
 Overview―足関節の解剖 Anatomy of the ankle joint (橘川 薫)
 Tarsal tunnel 足根管 (木村裕介,橘川 薫)
 Anterior tarsal sinus 前足根管 (橘川 薫)
 Sinus tarsi 足根洞 (橘川 薫)
 Kager fat pad Kager脂肪体 (木村裕介,橘川 薫)
全文表示する
閉じる

関連する
オススメ書籍

会員登録されている方

メールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。

注)共有パソコンの方はチェックを外してください。

会員登録されていない方

会員登録されると次回からお客様情報をご入力いただく必要がありません。
また,購入履歴の確認ができる便利な機能がご利用いただけます。

個人情報の取り扱いについてはこちら