よクウわかる
腹膜腔・後腹膜腔の画像診断
定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
- B5判 176ページ オールカラー,イラスト60点,写真420点
- 2022年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-2110-5
電子版
序文
私が放射線科医として働き始めた当時,大分大学放射線科では若手医師が読むべきとされる推薦図書がいくつかあり,そのうちの1つがMorton A. Meyers先生の『Dynamic Radiology of the Abdomen 5th edition』でした。研修医であった私にとっては内容が難しく,通読には苦労しましたが,腹膜腔や腹部間膜の画像解剖について大変示唆に富んだ内容が多く記されており,非常に感動したことを昨日のことのように思い出します。あれから20年程が経ってCT・MRIなど画像診断装置はさらに発展し,今日では色々な構造を細かく多方向から容易に観察することが可能になりました。加えて腹膜腔や腹膜外腔,腹部間膜の画像解剖に関してよくまとめられた総説も国内外より出版されています。それでも初学者にとってこの領域の画像解剖に習熟することは必ずしも容易ではないのでないかと思います。
腹膜腔および腹膜外腔は腹部間膜や筋膜によりいくつかのコンパートメントに区分されます。腹部領域のCT・MRI読影において,各コンパートメントや膜構造と病変の関係を評価することは,病変の由来や広がりを正確に診断するためには必要不可欠です。腹膜腔・腹膜外腔や間膜を認識し画像診断に活かすには,これらの構造を普段から意識してCT・MRI画像をみておくことがなによりも重要になりますが,腔や膜構造は目の前にある画像に写っているにもかかわらず,これらを意識すること自体が初学者にとっては難しいのではないでしょうか。
腹部領域で腔や膜構造を意識した読影を行うための準備として,まず腹部血管,特に腹腔動脈と上下腸間膜動脈,門脈系主要分枝の基本的な画像解剖を知っておくこと,各コンパートメントおよび膜構造と臓器の位置関係や連続性,それぞれの構造のランドマークとなりうる脈管を整理しておくことが重要です。そのうえで,実際のCT・MRI画像(脂肪が多くかつ多量の腹水貯留を生じている症例を選ぶのがよい)をモニター上でめくりながらこれらを自分自身で確認することで,腔や膜構造の基本的な画像解剖を理解することができると思います。
本書では腹膜・腹膜外腔をそれぞれ大きく3つに分け,各コンパートメント内の間膜構造にも触れながら,なるべく多くのシェーマと画像を提示しつつ,その画像解剖について概説しています。さらに各コンパートメントに発生しうる代表的な疾患についても触れています。提示症例は各コンパートメント間の位置関係や連続性がわかりやすいもの,またこれらの知識が診断に重要と思われるものを選んだつもりです。本書がこれからこの領域の画像診断を学ぼうとする若手医師の方々にとって少しでもお役に立てればこれ以上の喜びはありません。
最後に,私をご指導くださった,またカンファランスで貴重な症例を呈示してくださった大分大学放射線医学講座および同門,関連施設の先生がた,そして脱稿が遅れがちであったにもかかわらず,企画の段階から最終校正に至るまで,粘り強くご尽力をいただいた苅谷竜太郎様をはじめメジカルビュー社編集部スタッフの皆様に感謝いたします。
2022年2月
高司 亮
腹膜腔および腹膜外腔は腹部間膜や筋膜によりいくつかのコンパートメントに区分されます。腹部領域のCT・MRI読影において,各コンパートメントや膜構造と病変の関係を評価することは,病変の由来や広がりを正確に診断するためには必要不可欠です。腹膜腔・腹膜外腔や間膜を認識し画像診断に活かすには,これらの構造を普段から意識してCT・MRI画像をみておくことがなによりも重要になりますが,腔や膜構造は目の前にある画像に写っているにもかかわらず,これらを意識すること自体が初学者にとっては難しいのではないでしょうか。
腹部領域で腔や膜構造を意識した読影を行うための準備として,まず腹部血管,特に腹腔動脈と上下腸間膜動脈,門脈系主要分枝の基本的な画像解剖を知っておくこと,各コンパートメントおよび膜構造と臓器の位置関係や連続性,それぞれの構造のランドマークとなりうる脈管を整理しておくことが重要です。そのうえで,実際のCT・MRI画像(脂肪が多くかつ多量の腹水貯留を生じている症例を選ぶのがよい)をモニター上でめくりながらこれらを自分自身で確認することで,腔や膜構造の基本的な画像解剖を理解することができると思います。
本書では腹膜・腹膜外腔をそれぞれ大きく3つに分け,各コンパートメント内の間膜構造にも触れながら,なるべく多くのシェーマと画像を提示しつつ,その画像解剖について概説しています。さらに各コンパートメントに発生しうる代表的な疾患についても触れています。提示症例は各コンパートメント間の位置関係や連続性がわかりやすいもの,またこれらの知識が診断に重要と思われるものを選んだつもりです。本書がこれからこの領域の画像診断を学ぼうとする若手医師の方々にとって少しでもお役に立てればこれ以上の喜びはありません。
最後に,私をご指導くださった,またカンファランスで貴重な症例を呈示してくださった大分大学放射線医学講座および同門,関連施設の先生がた,そして脱稿が遅れがちであったにもかかわらず,企画の段階から最終校正に至るまで,粘り強くご尽力をいただいた苅谷竜太郎様をはじめメジカルビュー社編集部スタッフの皆様に感謝いたします。
2022年2月
高司 亮
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目次
Ⅰ 腔を知る!
腹膜腔・腹膜外腔の画像解剖
腹膜腔
後腹膜腔
Interfascial planeの概念
骨盤部腹膜外腔
Ⅱ 腔を読む!
【上結腸間膜腔を読む】
横隔膜下腔
横隔膜下腔に発生する疾患
腹膜由来腫瘍,右側肝円索など
横隔膜下腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の腹膜播種や転移,消化管穿孔など
右肝下腔
右肝下腔に発生する疾患
リンパ腫,悪性中皮腫など
右肝下腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の腹膜播種や転移,腹腔内血腫の進展など
網嚢
網嚢に発生する疾患
GIST,膵リンパ上皮嚢胞,Winslow孔ヘルニアなど
網嚢に波及する疾患
腹腔内遊離ガス,腹腔内感染の波及など
【下結腸間膜腔を読む】
左右下結腸間膜腔
左右下結腸間膜腔に発生する疾患
リンパ管腫,Castleman病,左右傍十二指腸ヘルニア,盲腸窩ヘルニアなど
左右下結腸間膜腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の直接浸潤,小腸穿孔など
【骨盤内腹膜腔を読む】
骨盤内腹膜腔
骨盤内腹膜腔に発生する疾患
良性多嚢胞性中皮腫,漿液性腺癌,子宮広間膜ヘルニア,付属器捻転など
骨盤内腹膜腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の直接浸潤,複雑性虫垂炎など
【後腹膜腔を読む】
前腎傍腔
前腎傍腔に発生する疾患
神経内分泌腫瘍,GIST,左右傍十二指腸ヘルニア,急性膵炎など
前腎傍腔に波及する疾患
膵癌,十二指腸癌,大腸穿孔など
腎周囲腔
腎周囲腔に発生する疾患
リンパ腫,奇形腫,腎盂腎炎など
腎周囲腔に波及する疾患
転移性腫瘍,血腫,尿溢流など
後腎傍腔
後腎傍腔に発生する疾患
リンパ腫,未分化多形肉腫,後腹膜線維症など
後腎傍腔に波及する疾患
血腫,消化管外ガス,膿瘍など
【骨盤腹膜外腔を読む】
膀胱前腔
膀胱前腔に発生する疾患
脂肪腫,血管腫,孤立性線維性腫瘍など
膀胱前腔に波及する疾患
転移性腫瘍,血腫,膀胱上窩ヘルニアなど
膀胱周囲腔
膀胱周囲腔に発生する疾患
膀胱炎・膀胱周囲炎,尿膜管遺残,尿瘤,血腫など
膀胱周囲腔に波及する疾患
転移性腫瘍,血腫進展など
直腸周囲腔
直腸周囲腔に発生する疾患
直腸癌,神経原性腫瘍,直腸炎など
直腸周囲腔に波及する疾患
リンパ節転移,S状結腸憩室炎・膿瘍など
仙骨前腔
仙骨前腔に発生する疾患
神経原性腫瘍,脊索腫,尾腸嚢胞など
仙骨前腔に波及する疾患
血腫進展,急性膵炎など
腹膜腔・腹膜外腔の画像解剖
腹膜腔
後腹膜腔
Interfascial planeの概念
骨盤部腹膜外腔
Ⅱ 腔を読む!
【上結腸間膜腔を読む】
横隔膜下腔
横隔膜下腔に発生する疾患
腹膜由来腫瘍,右側肝円索など
横隔膜下腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の腹膜播種や転移,消化管穿孔など
右肝下腔
右肝下腔に発生する疾患
リンパ腫,悪性中皮腫など
右肝下腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の腹膜播種や転移,腹腔内血腫の進展など
網嚢
網嚢に発生する疾患
GIST,膵リンパ上皮嚢胞,Winslow孔ヘルニアなど
網嚢に波及する疾患
腹腔内遊離ガス,腹腔内感染の波及など
【下結腸間膜腔を読む】
左右下結腸間膜腔
左右下結腸間膜腔に発生する疾患
リンパ管腫,Castleman病,左右傍十二指腸ヘルニア,盲腸窩ヘルニアなど
左右下結腸間膜腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の直接浸潤,小腸穿孔など
【骨盤内腹膜腔を読む】
骨盤内腹膜腔
骨盤内腹膜腔に発生する疾患
良性多嚢胞性中皮腫,漿液性腺癌,子宮広間膜ヘルニア,付属器捻転など
骨盤内腹膜腔に波及する疾患
肝硬変,腫瘍の直接浸潤,複雑性虫垂炎など
【後腹膜腔を読む】
前腎傍腔
前腎傍腔に発生する疾患
神経内分泌腫瘍,GIST,左右傍十二指腸ヘルニア,急性膵炎など
前腎傍腔に波及する疾患
膵癌,十二指腸癌,大腸穿孔など
腎周囲腔
腎周囲腔に発生する疾患
リンパ腫,奇形腫,腎盂腎炎など
腎周囲腔に波及する疾患
転移性腫瘍,血腫,尿溢流など
後腎傍腔
後腎傍腔に発生する疾患
リンパ腫,未分化多形肉腫,後腹膜線維症など
後腎傍腔に波及する疾患
血腫,消化管外ガス,膿瘍など
【骨盤腹膜外腔を読む】
膀胱前腔
膀胱前腔に発生する疾患
脂肪腫,血管腫,孤立性線維性腫瘍など
膀胱前腔に波及する疾患
転移性腫瘍,血腫,膀胱上窩ヘルニアなど
膀胱周囲腔
膀胱周囲腔に発生する疾患
膀胱炎・膀胱周囲炎,尿膜管遺残,尿瘤,血腫など
膀胱周囲腔に波及する疾患
転移性腫瘍,血腫進展など
直腸周囲腔
直腸周囲腔に発生する疾患
直腸癌,神経原性腫瘍,直腸炎など
直腸周囲腔に波及する疾患
リンパ節転移,S状結腸憩室炎・膿瘍など
仙骨前腔
仙骨前腔に発生する疾患
神経原性腫瘍,脊索腫,尾腸嚢胞など
仙骨前腔に波及する疾患
血腫進展,急性膵炎など
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腔・膜から疾患を探れ! 解剖と連続性を理解すれば,迅速かつ見落としのない鑑別が可能になる
腹部を腔・膜で理解! 解剖と連続性を理解すれば,疾患がどこに転移しうるのか/どこから波及してきたのかを判断でき,迅速かつ見落としのない鑑別が可能になる。
区分ごとに構造物や原発する疾患,転移・波及する疾患を1つずつ解説。さらに周囲の腔との位置関係でどう連続しているのかを学ぶ。また解剖は多数のシェーマでわかりやすく提示され,どの高さでスライスしたのかがわかる画像が添えられて,イラストと写真を結びつけて理解できる紙面構成となっている。
これから腹部を学びたい初学者にも,もう一度勉強しなおしたい医師にも有用な一冊。