ひとりでマスター
心臓ペースメーカ植込み術
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定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
- B5判 120ページ オールカラー,DVD-Video付き(12本/計約30分),写真100点
- 2018年2月18日刊行
- ISBN978-4-7583-1446-6
序文
推薦の言葉
いやはや,何とも素晴らしい書籍が出たものである。著者の岡村英夫 先生が私の元同僚であるという忖度など,本書の評価には無用である。最前線の医療を担うものとして,現場で学んだノウハウを理論構築し,世に著すことは大いなる目標である。しかし,日頃の激務の合間を縫って執筆活動を継続することは容易ではない。並々ならぬ覚悟と決意をもって臨まない限り,その理想は夢で終わってしまう。しかし,岡村先生は国立循環器病研究センターで勤務に励む時期,すなわち,最も多忙を極める40代でそれをやってのけた。驚くべき才能と情熱である。
文章を一読して感じるのは多彩な語彙から選択された平易な表現と,デバイス管理に対する著者の溢れんばかりの愛情と歓びである。読んでいて,なんとなく心が温かくなる,そんな専門書を私は他に知らない。そして,本書の真骨頂は科学的データに裏付けられたスタンダードな手技と,豊富な経験を通じて著者が独学したアートとの見事な融合である。
本書は術前から術後の管理に至るまで時系列に沿って記述された前半と,窮地に陥らないためのトラブルシューティングの後半から構成されており,取り上げられたテーマは幅広く隙がない。これからデバイス植込みを学ぶ若き医療従事者にとっては冒頭から通読するもよし,経験を積んだ読者にとっては困ったときに紐解くのもよし。筆者の智徳秀英が散りばめられた,渾身の一冊である。
お互い出会った日から20数年,美青年「岡ちゃん」と呼んでいた後輩が到達した新境地を垣間見る機会を得て,私は今,深い感慨にふけっている。筆者のこれからも続く熱い思いと困難に立ち向かう不屈の精神を信じながら。
平成30年2月
近畿大学医学部附属病院心臓血管センター教授
栗田隆志
--------------------------------------------
序文
ペースメーカ治療は徐脈の治療に必要不可欠な治療法としてすでに確立し,日本全国いたるところで行われている。わが国におけるペースメーカの新規,交換術をあわせた手術件数は年間5 〜6万件で推移しており,実施施設数は約1,800施設にのぼる。ペースメーカ植込み術はペースメーカをはじめとする不整脈植込みデバイスの基礎となるものであり,正しい技術の習得はきわめて重要である。CRTの左室リードの留置を除けば,ポケットの作成,右房・右室リードの留置,閉創,交換などの基本手技は同じである。ペースメーカの年間実施手術数は多い施設では数百件にのぼり,指導医のもとで植込み術を手とり足とり指導してもらうことができるであろうが,年間10件未満という病院も少なくない。こうした施設では,植込み術に精通した指導医に恵まれるとは限らない。はじめて自分でペースメーカを植込むというのに,手術を一任されて,業者さんのアドバイスで何とか植込みを行った,という経験をお持ちの先生もおられるのではないだろうか。ペースメーカ植込みは難しくはないが,稀にリード脱落や心穿孔,デバイス感染といった合併症が発生する。初期の手術経験のなかでこうした合併症を経験してしまうと,手術が怖くなり,本来楽しいはずの手術手技を嫌いになってしまいかねない。
本書はこのような指導医に恵まれなかったペースメーカ植込み初心者の先生方が,「数回植込み術を見学していれば自信をもってひとりで植込みができる」ことを目標に,筆者がこれまで若手の先生方を指導してきた経験をもとに,できるだけ具体的に,手術が頭に思い描けるように記述したつもりである。
ペースメーカは進化を続けており,リードレスペースメーカの時代が到来しようとしている。とはいえ,現状のリードレスペースメーカはVVI(R)モードに限られ,交換を想定していないことから,適応は高齢者の一部疾患のみに限定される。従来のリード有ペースメーカはまだまだすたることはないであろうし,すでにリード有ペースメーカを植込まれた膨大な数の患者さんの交換,デバイス管理は延々と続いてゆく。リード有ペースメーカはこれからも不整脈デバイス治療の中心であることに変わりはない。
本書では実際に自分が植込みを行っている様子を思い描けるように写真を多用した。また写真の元である動画を収録したDVDが付録されているので併せて活用されたい。 本書がペースメーカ植込みにこれから携わる医師,メディカルスタッフ,そしてペースメーカ植込みを指導する立場の医師の一助となれば幸いである。
最後に,私がペースメーカの手術を楽しく行うことができるのは,周りのスタッフに恵まれているからに他ならない。お世話になってきたみなさまに,この場を借りて深くお礼申し上げます。
平成30年2月吉日
国立病院機構和歌山病院循環器科医長
岡村英夫
いやはや,何とも素晴らしい書籍が出たものである。著者の岡村英夫 先生が私の元同僚であるという忖度など,本書の評価には無用である。最前線の医療を担うものとして,現場で学んだノウハウを理論構築し,世に著すことは大いなる目標である。しかし,日頃の激務の合間を縫って執筆活動を継続することは容易ではない。並々ならぬ覚悟と決意をもって臨まない限り,その理想は夢で終わってしまう。しかし,岡村先生は国立循環器病研究センターで勤務に励む時期,すなわち,最も多忙を極める40代でそれをやってのけた。驚くべき才能と情熱である。
文章を一読して感じるのは多彩な語彙から選択された平易な表現と,デバイス管理に対する著者の溢れんばかりの愛情と歓びである。読んでいて,なんとなく心が温かくなる,そんな専門書を私は他に知らない。そして,本書の真骨頂は科学的データに裏付けられたスタンダードな手技と,豊富な経験を通じて著者が独学したアートとの見事な融合である。
本書は術前から術後の管理に至るまで時系列に沿って記述された前半と,窮地に陥らないためのトラブルシューティングの後半から構成されており,取り上げられたテーマは幅広く隙がない。これからデバイス植込みを学ぶ若き医療従事者にとっては冒頭から通読するもよし,経験を積んだ読者にとっては困ったときに紐解くのもよし。筆者の智徳秀英が散りばめられた,渾身の一冊である。
お互い出会った日から20数年,美青年「岡ちゃん」と呼んでいた後輩が到達した新境地を垣間見る機会を得て,私は今,深い感慨にふけっている。筆者のこれからも続く熱い思いと困難に立ち向かう不屈の精神を信じながら。
平成30年2月
近畿大学医学部附属病院心臓血管センター教授
栗田隆志
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序文
ペースメーカ治療は徐脈の治療に必要不可欠な治療法としてすでに確立し,日本全国いたるところで行われている。わが国におけるペースメーカの新規,交換術をあわせた手術件数は年間5 〜6万件で推移しており,実施施設数は約1,800施設にのぼる。ペースメーカ植込み術はペースメーカをはじめとする不整脈植込みデバイスの基礎となるものであり,正しい技術の習得はきわめて重要である。CRTの左室リードの留置を除けば,ポケットの作成,右房・右室リードの留置,閉創,交換などの基本手技は同じである。ペースメーカの年間実施手術数は多い施設では数百件にのぼり,指導医のもとで植込み術を手とり足とり指導してもらうことができるであろうが,年間10件未満という病院も少なくない。こうした施設では,植込み術に精通した指導医に恵まれるとは限らない。はじめて自分でペースメーカを植込むというのに,手術を一任されて,業者さんのアドバイスで何とか植込みを行った,という経験をお持ちの先生もおられるのではないだろうか。ペースメーカ植込みは難しくはないが,稀にリード脱落や心穿孔,デバイス感染といった合併症が発生する。初期の手術経験のなかでこうした合併症を経験してしまうと,手術が怖くなり,本来楽しいはずの手術手技を嫌いになってしまいかねない。
本書はこのような指導医に恵まれなかったペースメーカ植込み初心者の先生方が,「数回植込み術を見学していれば自信をもってひとりで植込みができる」ことを目標に,筆者がこれまで若手の先生方を指導してきた経験をもとに,できるだけ具体的に,手術が頭に思い描けるように記述したつもりである。
ペースメーカは進化を続けており,リードレスペースメーカの時代が到来しようとしている。とはいえ,現状のリードレスペースメーカはVVI(R)モードに限られ,交換を想定していないことから,適応は高齢者の一部疾患のみに限定される。従来のリード有ペースメーカはまだまだすたることはないであろうし,すでにリード有ペースメーカを植込まれた膨大な数の患者さんの交換,デバイス管理は延々と続いてゆく。リード有ペースメーカはこれからも不整脈デバイス治療の中心であることに変わりはない。
本書では実際に自分が植込みを行っている様子を思い描けるように写真を多用した。また写真の元である動画を収録したDVDが付録されているので併せて活用されたい。 本書がペースメーカ植込みにこれから携わる医師,メディカルスタッフ,そしてペースメーカ植込みを指導する立場の医師の一助となれば幸いである。
最後に,私がペースメーカの手術を楽しく行うことができるのは,周りのスタッフに恵まれているからに他ならない。お世話になってきたみなさまに,この場を借りて深くお礼申し上げます。
平成30年2月吉日
国立病院機構和歌山病院循環器科医長
岡村英夫
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目次
第1章 DDDペースメーカの新規植込み
Ⅰ 手術の準備と手術器具
ペースメーカの適応決定
ペースメーカの機種決定
一時ペースメーカの適応
術前準備
手術場所
術野の準備
手術器具
Ⅱ 皮下ポケットの作成
皮膚切開線の位置決め
皮下ポケットの深さ
皮下ポケット作成
Ⅲ 鎖骨下静脈の穿刺
私が穿刺をおすすめする理由
胸郭外穿刺法
合併症対策
鎖骨下静脈走行のバリエーション
皮下ポケットは先に作る
静脈穿刺の流れ
Ⅳ 心室リードの留置
リードの種類
リード選択における注意点
リードの硬さ
心室リード留置イメージ
計測時の注意点
心室リード植込みの流れ(実手技)
Ⅴ 心房リードの留置
心房リード留置イメージ
心房リード植込みの流れ(実手技)
計測時の注意点
Ⅵ リードのたわみ
「適度なたわみ」とは
Ⅶ リードの固定と本体の収納
おすすめのリード固定法
皮下ポケットへの本体収納
Ⅷ 閉創
閉創のコツ
連続縫合の実際
Ⅸ 術後のケア
第2章 ペースメーカ交換
Ⅰ 交換術の注意点
Ⅱ リードチェックのコツ
Ⅲ 交換の実際
Ⅳ リードを追加するときの注意点
静脈造影の重要性
第3章 こんなときどうする? トラブルシューティング
Ⅰ 心室にタイン型リードを使用するときは,どうしたらよいですか?
Ⅱ 心房にスクリューインリードを使用するときは,どうしたらよいですか?
心房にスクリューインリードを留置する方法
右房へのスクリューインリードの留置(イメージ)
リードを使い分ける
Ⅲ 不要なリードの処理の仕方を教えてください
将来を見据える
リード抜去の手順
タイン型リード切断時の注意点
Ⅳ ワルファリン内服中の患者は,どのように対応すればよいですか?
状況に応じて判断する
ワルファリン継続? ヘパリンブリッジ?
抗血小板薬の場合
Ⅴ 血腫ができたときは,どのように対応すればよいですか?
ガーゼ圧迫が有効
いつ再手術を決断するか
Ⅵ PLSVCが判明したときは,どのように対応すればよいですか?
PLSVCの走行
Ⅶ 右側からの植込みが必要な場合の方法を教えてください
右側植込みのコツ
Ⅷ 右室リードが固定できないときは,どうすればよいですか?
Ⅸ 創部が発赤したときは,どうすればよいですか?
ポケット感染か? 表層感染か?
Ⅹ 悩ましい交換例の注意点を教えてください
皮膚切開線の決定
症例提示
Ⅺ 本体からリードが抜けないときは,どうしたらよいですか?
リードが抜けないときの正攻法
どうしても抜けないとき
第4章 ペースメーカの基礎知識
Ⅰ ペーシングモード
ICHDコード
DDDとDDIの違い
DDDペースメーカの動作−タイミングサイクルを理解する−
Ⅱ 電磁波障害
電磁波障害の実例
Ⅲ 死後のペースメーカの取り扱い
Ⅰ 手術の準備と手術器具
ペースメーカの適応決定
ペースメーカの機種決定
一時ペースメーカの適応
術前準備
手術場所
術野の準備
手術器具
Ⅱ 皮下ポケットの作成
皮膚切開線の位置決め
皮下ポケットの深さ
皮下ポケット作成
Ⅲ 鎖骨下静脈の穿刺
私が穿刺をおすすめする理由
胸郭外穿刺法
合併症対策
鎖骨下静脈走行のバリエーション
皮下ポケットは先に作る
静脈穿刺の流れ
Ⅳ 心室リードの留置
リードの種類
リード選択における注意点
リードの硬さ
心室リード留置イメージ
計測時の注意点
心室リード植込みの流れ(実手技)
Ⅴ 心房リードの留置
心房リード留置イメージ
心房リード植込みの流れ(実手技)
計測時の注意点
Ⅵ リードのたわみ
「適度なたわみ」とは
Ⅶ リードの固定と本体の収納
おすすめのリード固定法
皮下ポケットへの本体収納
Ⅷ 閉創
閉創のコツ
連続縫合の実際
Ⅸ 術後のケア
第2章 ペースメーカ交換
Ⅰ 交換術の注意点
Ⅱ リードチェックのコツ
Ⅲ 交換の実際
Ⅳ リードを追加するときの注意点
静脈造影の重要性
第3章 こんなときどうする? トラブルシューティング
Ⅰ 心室にタイン型リードを使用するときは,どうしたらよいですか?
Ⅱ 心房にスクリューインリードを使用するときは,どうしたらよいですか?
心房にスクリューインリードを留置する方法
右房へのスクリューインリードの留置(イメージ)
リードを使い分ける
Ⅲ 不要なリードの処理の仕方を教えてください
将来を見据える
リード抜去の手順
タイン型リード切断時の注意点
Ⅳ ワルファリン内服中の患者は,どのように対応すればよいですか?
状況に応じて判断する
ワルファリン継続? ヘパリンブリッジ?
抗血小板薬の場合
Ⅴ 血腫ができたときは,どのように対応すればよいですか?
ガーゼ圧迫が有効
いつ再手術を決断するか
Ⅵ PLSVCが判明したときは,どのように対応すればよいですか?
PLSVCの走行
Ⅶ 右側からの植込みが必要な場合の方法を教えてください
右側植込みのコツ
Ⅷ 右室リードが固定できないときは,どうすればよいですか?
Ⅸ 創部が発赤したときは,どうすればよいですか?
ポケット感染か? 表層感染か?
Ⅹ 悩ましい交換例の注意点を教えてください
皮膚切開線の決定
症例提示
Ⅺ 本体からリードが抜けないときは,どうしたらよいですか?
リードが抜けないときの正攻法
どうしても抜けないとき
第4章 ペースメーカの基礎知識
Ⅰ ペーシングモード
ICHDコード
DDDとDDIの違い
DDDペースメーカの動作−タイミングサイクルを理解する−
Ⅱ 電磁波障害
電磁波障害の実例
Ⅲ 死後のペースメーカの取り扱い
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徐脈性不整脈治療に用いられるペースメーカの植込み数は年々増加の一途を辿っている。徐脈とは,心拍数が全身に十分な血液を供給できなくなることを指し,ペースメーカの植込みを行う治療が一般的で洞不全症候群や房室ブロックが代表的である。このペースメーカ植込み術は,施設基準が緩く,循環器内科を標榜しているほとんどの病院で行われている。
植込みは不整脈専門医のみが行っているわけではなく,普段は冠疾患専門医として治療を行うかたわら,ペースメーカは年に数件行うという医師も少なくない。循環器医として歩み始めたばかりの医師にとってペースメーカの植込み手技を正しく教わる環境にあるかは非常に重要であるが,もし十分な指導医がいない環境でペースメーカ植込みを行うとしても,手技の流れ,注意点,コツを知っていれば自信をもって手術に臨むことができる。また,指導医にとって少ない経験で新人医師に指導するのもストレスである。そんな時にもポイントを押さえて指導できる解説本があれば役立つはずである。
本書を読めば,独学で植込み術ができるようになるための知識を習得することができる。透視画像+ガイドワイヤー穿刺画像の比較で手技がわかるDVD付き。