運動療法のための

機能解剖学的触診技術 動画プラス 
上肢
[Web動画付]

改訂第2版

機能解剖学的触診技術 動画プラス 上肢[Web動画付]

■監修 青木 隆明

■著者 林 典雄

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  384ページ  オールカラー,Web動画付き,イラスト450点,写真660点
  • 2022年12月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-2093-1

運動器リハビリテーションの必携定番書に,動画100分超を追加! スマホをかざして手技がわかる・できる!

頼れるロングセラーが動画を加えてさらにパワーアップ!
書籍の内容はそのままに,アプリ版『動画でマスター! 機能解剖学的触診技術』収載の動画105本/100分を追加。紙面のQRコードから関連する動画をストリーミング配信で視聴可能。
複数カメラで撮影したエキスパートの手技によって写真だけではイメージが難しい立体的な動きがよくわかり,ちょっとした移動時間にも観られるので知識・技術の学習に役立つ内容となっている。


序文

改訂第2版 動画プラス監修の言葉

 医学の進歩は目覚ましいものがありますが,人間の解剖はリハビリテーションにとっては変わらない基本です。
 日々臨床の場で,リハビリテーションを進めるにあたり,運動機能を考える際に大切なツールとして,解剖があり,そのための触診技術が大切です。触診においても十分な解剖の知識の基に成り立つものです。触診といっても,そこにあるはずだと思って触ることが必要です。正常な組織の走行を感じ,滑走させ,機能をできるだけ早く回復させるためにも,知識と技術が必要です。様々な疾患にアプローチする基本的な入り口として,まず触診して,状態を観察し,そこからどう動かすかを考えてみてください。
 この本は触診に必要な解剖の知識,超音波画像による視覚での確認も含め,日常の診療や教育の場で,これから診療に将来あたる学生達にとっても大切な情報をもたらしてくれることと思います。また動画から,よりわかりやすく皆様に伝わると思います。何度も読み返し,動画も参考に実際に触診を繰り返すことで,より感覚も研ぎ澄まされ,運動機能を感じることができると思います。
 日頃の臨床で,触診を通じて新たな発見もあります。
 今後ますます高齢者社会を迎え,健康寿命を延ばしていくためにも,リハビリテーションの基本としての解剖と触診技術を習得し,臨床や研究にも役立てていただけると幸いです。
 本書を刊行するにあたり,執筆に関わられた関係者の皆様に深く感謝いたします。

2022年10月
岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻感覚運動医学講座リハビリテーション科
青木隆明

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改訂第2版 動画プラス 序文

 本書『運動療法のための機能解剖学的触診技術』は,2005年12月に産声を上げました。機能解剖学を基礎とした触診技術の解説と多くの写真を配した構成は,それまでにない斬新な書籍として多くの理学療法士・作業療法士養成校の教科書として定着してきました。
 2011年12月には,ほぼ全面改訂の形で第2版が出版されました。写真はオールカラーとなり,所々にエコー画像が配されることで,奥行きのある解剖学的知識の整理に役立つ内容へと進化しました。その後,2016年3月には動画アプリが発売され,知識の整理には書籍を,実際の具体的な方法論は動画で確認するスタイルが定着し現在に至っています。
 日本のスマートフォン普及率の推移をひも解くと,第2版が出版された2011年で21%,動画アプリが発売された2016年で59%だったのが,2022年では実に,国民の94%が所有するに至っています。つまりこのようなデジタル環境の変化は,学習スタイルそのものも変化させてきています。この社会背景を踏まえ,書籍と動画アプリを合体させる企画が立ち上がりました。書籍内にQRコードを配することで触診技術の裏付けとなる知識と,実際の技術をリアルタイムに動画で確認できるスタイルは,今まで以上に読者の理解を助けることでしょう。そして,本書を用いて「今」まさに学んでいる学生諸氏! 「読んで」「見て」そして「反復練習」を続けてください。その努力が将来の自分の「格」を決める基礎になるはずです。

 ここで「圧痛」について考えてみたいと思います。「圧痛」という所見は,ある組織に指を介して圧を加え,加わった先の組織に痛みが生じる現象です。この意味するところは,「圧を加えることで痛い病態がそこにある」と考えてもいいですし,一方で,「大した圧でもないのに痛みが生じる受容器の状態になっている」とも言えます。神経が分布しない場所は痛くありませんから,圧痛所見の存在は,そこに分布している受容器が「敏感」になっている状態と解釈することもできます。
 では,どのようなことが起こると受容器が敏感になるのでしょうか。一つは組織損傷に伴う発痛物質(ブラジキニン,ヒスタミン,sub-P,プロスタグランジン等)が受容器に感作することで敏感さが増加します。つまり局所的な炎症環境がある組織には圧痛所見が明確となります。その一方で,炎症環境は既に沈静化しているにもかかわらず圧痛所見を認める症例も多く存在しています。そのような場合には,対象組織に分布する受容器の低酸素状態が敏感さを高めることが指摘されています。組織の低酸素化はさまざまな要因で生じますが,われわれ理学療法士は,理学療法士による徒手操作を通して,また,適切な運動指導を通して対象組織の低酸素化が改善できると,疼痛の軽減とともに適切な身体機能の改善へと導くことができます。
 このように圧痛所見を確認する行為には,圧を加えた組織は何か(解剖学),圧を加えた組織はどのような役割を持っているのか(機能解剖学)を理解し,そして適切に運動させる(理学療法技術)の三位一体の能力が必要となります。その能力を構築する基礎が触診技術になります。現役の理学療法士も,今の技術に満足することなく,「もっと正確に!」「もっとうまく!」を目指し,自身の技術を洗練していかれることを切に希望します。その技術の進歩はすべて「患者の笑顔」につながっています。

2022年10月
運動器機能解剖学研究所
理学療法士 林 典雄
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目次

I 触診の基本
 1.基本的立位肢位と解剖学的立位肢位
 2.運動の面・軸・方向
 ・運動の面
 ・運動の軸
 ・運動の方向
 3.姿勢の表し方
 4.触診を行う際の指のあて方

II 骨
 1.肩甲骨
 ・肩甲棘,肩峰,棘三角
 ・内側縁,上角,下角
 ・外側縁,関節下結節,烏口突起
 2.鎖骨
 ・鎖骨体,肩鎖関節,胸鎖関節
 3.上腕骨
 ・大結節,小結節,結節間溝
 ・外側上顆,内側上顆
 ・上腕骨小頭
 ・肘頭窩,上腕骨滑車
 ・尺骨神経溝
 4.橈骨
 ・橈骨頭,腕橈関節,近位橈尺関節
 ・橈骨茎状突起
 ・リスター結節
 5.尺骨
 ・肘頭,腕尺関節
 ・尺骨頭,遠位橈尺関節
 ・尺骨茎状突起
 6.手根骨と指骨
 ・豆状骨
 ・三角骨
 ・舟状骨
 ・月状骨
 ・大菱形骨
 ・小菱形骨
 ・有頭骨
 ・有鉤骨
 ・中手骨頭・体・底,中手指節間関節

III 靱帯
 1.肩関節複合体に関連する靱帯
 ・烏口肩峰靱帯
 ・烏口鎖骨靱帯(菱形靱帯,円錐靱帯)
 ・烏口上腕靱帯
 ・肩鎖靱帯
 ・前胸鎖靱帯,肋鎖靱帯
 ・肩関節包靱帯
 2.肘関節複合体に関連する靱帯
 ・内側側副靱帯
 ・外側尺骨側副靱帯
 ・外側側副靱帯
 ・橈骨輪状靱帯
 3.中手指節関節に関連する靱帯
 ・MP関節の側副靱帯

IV 筋
 1.肩甲上腕関節に関わる筋
 ・三角筋
 ・大胸筋
 ・棘上筋
 ・棘下筋
 ・小円筋
 ・大円筋
 ・肩甲下筋
 ・広背筋
 ・烏口腕筋
 2.肩甲胸郭関節に関わる筋
 ・僧帽筋
 ・菱形筋
 ・肩甲挙筋
 ・小胸筋
 ・前鋸筋
 3.肘関節に関わる筋
 ・上腕二頭筋
 ・上腕筋
 ・腕橈骨筋
 ・上腕三頭筋
 ・肘筋
 ・円回内筋
 ・方形回内筋
 ・回外筋
 4.手関節および手指に関わる筋
 ・長掌筋
 ・橈側手根屈筋
 ・尺側手根屈筋
 ・長橈側手根伸筋,短橈側手根伸筋
 ・尺側手根伸筋
 ・総指伸筋
 ・示指伸筋
 ・小指伸筋
 ・長母指伸筋
 ・短母指伸筋
 ・長母指外転筋
 ・浅指屈筋
 ・深指屈筋
 ・長母指屈筋
 ・短母指屈筋
 ・短母指外転筋
 ・母指内転筋
 ・母指対立筋
 ・小指外転筋
 ・短小指屈筋
 ・小指対立筋
 ・虫様筋,背側骨間筋,掌側骨間筋

上肢筋の支配神経・髄節レベル一覧
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