リハ実践テクニック
ハンドセラピィ
改訂第2版
定価 6,820円(税込) (本体6,200円+税)
- B5変型判 480ページ オールカラー,イラスト270点,写真1760点
- 2022年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-2072-6
電子版
序文
改訂第2版 編集の序
手外科領域のリハビリテーション(ハンドセラピィ)は,他領域のリハビリテーションと比較しても臨床経験知が特に重要視され,治療活動において,消極的な取り組みにとどまってしまっている臨床のセラピストも少なくはない。本書は改訂にあたり,これまで通り基礎的な外傷や疾病であっても,特に「経験知」や「暗黙知」として明記されることがなかった知識についても,セラピィの臨床実践内容とともに基本原則を忠実に解説している。さらに今回,手の炎症性疾患についての項目を新設した。臨床的には取り扱いが多いのにもかかわらず,観血的な処置を伴う外傷などとは一線を画し,注目されていなかった病態にもスポットライトを当てた。これは,手の障害として日々の臨床において取り扱い量が非常に多いからである。手術操作を要する外傷とは違い,手の炎症性疾患はやや軽量的に取り扱われてしまっている現状があることが否めず,特に若いセラピストでは繰り返す炎症反応を止めることができず,増悪に転じさせてしまうケースも多く耳にする。ここではその発症のメカニズムとともにセラピィについて丁寧に解説しており,臨床実践されている皆様の日常診療への活用と,さらなる充実につなげていくことができる内容となっている。
さらにスプリント療法において,良好な成績を得るための基本的な考え方(コツ)と機能的なスプリントに仕上げていくための基礎技術の解説についての項目も新設した。ここでは,スプリント初級者を即戦力の作製者へと育成していくための(上級者においてはよりよく作製していくためのセルフチェックのための),作製教示法として解説している。useful hand獲得には,機能的なスプリントを用いた手の使用訓練が重要であり,ここでは実用的なスプリントの作製ポイントについて示している。
本書のコンセプトは,臨床ハンドセラピィにおいての「経験知」や「暗黙知」といった不明瞭である内容を豊富な画像や図表により,直感的に臨床活用/応用してもらえる内容にして示すことである。今回,内容をさらに充実させ,有用性の高い書籍に仕上げることができた。多くの臨床セラピストの実践パートナーとして,本書をぜひご活用いただければと考えている。
2022年1月
京都橘大学 健康科学部
齋藤 慶一郎
手外科領域のリハビリテーション(ハンドセラピィ)は,他領域のリハビリテーションと比較しても臨床経験知が特に重要視され,治療活動において,消極的な取り組みにとどまってしまっている臨床のセラピストも少なくはない。本書は改訂にあたり,これまで通り基礎的な外傷や疾病であっても,特に「経験知」や「暗黙知」として明記されることがなかった知識についても,セラピィの臨床実践内容とともに基本原則を忠実に解説している。さらに今回,手の炎症性疾患についての項目を新設した。臨床的には取り扱いが多いのにもかかわらず,観血的な処置を伴う外傷などとは一線を画し,注目されていなかった病態にもスポットライトを当てた。これは,手の障害として日々の臨床において取り扱い量が非常に多いからである。手術操作を要する外傷とは違い,手の炎症性疾患はやや軽量的に取り扱われてしまっている現状があることが否めず,特に若いセラピストでは繰り返す炎症反応を止めることができず,増悪に転じさせてしまうケースも多く耳にする。ここではその発症のメカニズムとともにセラピィについて丁寧に解説しており,臨床実践されている皆様の日常診療への活用と,さらなる充実につなげていくことができる内容となっている。
さらにスプリント療法において,良好な成績を得るための基本的な考え方(コツ)と機能的なスプリントに仕上げていくための基礎技術の解説についての項目も新設した。ここでは,スプリント初級者を即戦力の作製者へと育成していくための(上級者においてはよりよく作製していくためのセルフチェックのための),作製教示法として解説している。useful hand獲得には,機能的なスプリントを用いた手の使用訓練が重要であり,ここでは実用的なスプリントの作製ポイントについて示している。
本書のコンセプトは,臨床ハンドセラピィにおいての「経験知」や「暗黙知」といった不明瞭である内容を豊富な画像や図表により,直感的に臨床活用/応用してもらえる内容にして示すことである。今回,内容をさらに充実させ,有用性の高い書籍に仕上げることができた。多くの臨床セラピストの実践パートナーとして,本書をぜひご活用いただければと考えている。
2022年1月
京都橘大学 健康科学部
齋藤 慶一郎
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目次
Ⅰ.概論
ハンドセラピィと作業療法 [齋藤慶一郎]
ハンドセラピィと作業療法
機能訓練とuseful hand
対象組織に応じたアプローチ方法選択の必要性
ハンドセラピィにおける運動強度の調整
関節拘縮に関与する組織別分類(拘縮の鑑別)
ハンドスプリンティング
ハンドセラピィとホームプログラム
ハンドセラピィにおける動機付け
ハンドセラピィとホームプログラム [齋藤慶一郎]
ハンドセラピィにおけるホームプログラムの重要性
ホームプログラム指導における運動の「質」と「量」の充足
疼痛の存在する手や肘への運動療法
スプリント療法の指導上のポイントと具体的方法
物理療法の処方方針と具体的方法
Ⅱ.骨折
骨折総論 [齋藤慶一郎]
上肢の骨折
上肢の骨折とハンドセラピィ
上肢骨折の修復方法
骨癒合過程
骨修復後のハンドセラピィ
拘縮の病態とスプリント療法
複合性局所疼痛症候群(CRPS)
整形外科的治療およびハンドセラピィの方針の決定因子
前腕骨骨折・手根骨骨折 [大森みかよ]
前腕骨骨折・手根骨骨折の分類と治療方法
骨折の整復位に対する考察
ハンドセラピィ
肘骨折(肘頭骨折) [西出義明]
炎症と痛み
肘関節の解剖
肘頭骨折
肘頭骨折の留意事項
肘関節のセラピィの実際
おわりに
人工肘関節置換術 [蓬莱谷耕士,渡邉千聡]
肘関節の構造と役割
TEAの適応
人工肘関節の機種
手術方法
TEAの合併症
TEAの術前評価
TEAの術後セラピィ
外傷に対する人工肘関節置換術
手指骨骨折 [阿部 薫,齋藤慶一郎]
はじめに
手指骨骨折・中手骨骨折の分類と治療指針
手指骨骨折における治療方針の決定
骨癒合とハンドセラピィ
関節の運動
合併症の予防
Ⅲ.腱損傷
手指腱損傷修復後のハンドセラピィ [奥村修也]
手指の腱
手指の腱損傷修復後の問題点
腱の治癒過程
腱の修復方法
腱損傷修復後のハンドセラピィ
屈筋腱
屈筋腱損傷修復後のハンドセラピィ
伸筋腱
伸筋腱損傷修復後のハンドセラピィ
固定法の場合
修復腱の癒着や拘縮が遺残している場合
Ⅳ.末梢神経損傷
手の末梢神経損傷─スプリント療法を中心に─ [齋藤慶一郎]
末梢神経損傷とスプリント
手の末梢神経とその損傷
神経損傷度と神経修復方法
各神経損傷と手の形態変化
手の知覚障害とハンドセラピィ
末梢神経損傷症例に対するハンドセラピィ
末梢神経損傷に対するスプリント療法
正中神経損傷に対するスプリント療法
尺骨神経損傷に対するスプリント療法
橈骨神経損傷に対するスプリント療法
運動機能再建術とハンドセラピィ
運動機能再建術後のハンドセラピィ
Ⅴ.RA手
保存療法 [原田康江]
関節リウマチ(RA)とは
臨床症状
リウマチ手の分類
関節リウマチの治療計画
保存治療
装具の使用
ADL障害へのアプローチ
おわりに
手指人工関節 [原田康江]
はじめに
手術のタイミング
関節破壊の程度
手指人工関節の歴史
手指人工関節の種類
尺側偏位に対するMP人工関節置換術
術後のハンドセラピィ
術後の治療成績
セラピィの留意点
PIP人工関節置換術
Ⅵ.手の炎症性疾患
手の炎症性疾患の基礎 [西出義明]
炎症
蓄積外傷疾患
炎症へのセラピィの考え方
臨床での応用
おわりに
de Quervain 病 [西出義明]
de Quervain 病の病態
鑑別テスト
セラピィの実際
症例提示
まとめ
おわりに
三角線維軟骨合体(TFCC)損傷 [西出義明]
TFCCの解剖
TFCC損傷の病態
セラピィを行うための評価
セラピィの実際
症例提示
装具の効果
上腕骨外側上顆炎(テニス肘) [西出義明]
はじめに
上腕骨外側上顆炎の考え方と病態
上腕骨外側組織の解剖病態
セラピィの実際
症例紹介
Ⅶ.CRPS 手
疼痛に対する作業療法アプローチ [蓬莱谷耕士,仲野春樹]
複合性局所性疼痛症候群(CRPS)の概要
CRPSの疫学
CRPSの症状
CRPSの診断基準
CRPSの評価
CRPSに対するリハビリテーション
Ⅷ.肩関節周囲組織損傷
総論 [齋藤慶一郎]
肩関節周囲組織損傷
肩関節周囲組織と肩関節運動
人工肩関節全置換術 [熊田 仁]
人工肩関節全置換術の概要
人工肩関節全置換術の種類と適応
運動療法
腱板損傷 [齋藤慶一郎]
腱板
腱板損傷
腱板断裂の臨床症状
腱板の修復方法
腱板損傷に対するセラピィ
Ⅸ.ハンドスプリント
スプリント療法(総論) [齋藤慶一郎]
手のスプリント療法の基本的な考え方
装具療法の流れ
材料の選定
スプリントのメリットとデメリット
装具療法の適応と障害手の管理
考慮すべきポイント
複数のスプリントの投入
スプリント療法の開始のタイミング
患者教育
ハンドスプリント(ベーシック) [奥村修也]
スプリント作製に必要な基礎知識
スプリント作製手技① [奥村修也]
ラディアルバーコックアップスプリント(radial bar cock-up splint)
スプリント作製手技② [奥村修也]
背側コックアップスプリント(dorsal cock-up splint)
付録:よく使用されるスプリントと採型デザイン
ハンドスプリント(アドバンス) [奥村修也]
全周囲型短対立スプリント
低位橈骨神経麻痺用スプリント
RICスプリント
手指伸展補助(牽引)用アウトリガースプリント
手指屈曲補助付きアウトリガースプリント
屈筋腱損傷修復後の背側伸展制限スプリント
セーフティピンスプリント
フレクション・ストラップ
マレットフィンガー用スプリント
ハンドスプリント作製のための教⽰法 [齋藤慶一郎]
美しく効果的なハンドスプリントを作製するためのセルフチェックと作製させるための教示
作製するスプリントの基本的な考え方
適応と適用の理解
スプリントデザインの具現化
初級者が陥りやすい失敗とその対策
スプリント材の性質
モールディング
トリミング
スムージング
ストラッピング(位置とストラップの⾛行)
ハンドセラピィと作業療法 [齋藤慶一郎]
ハンドセラピィと作業療法
機能訓練とuseful hand
対象組織に応じたアプローチ方法選択の必要性
ハンドセラピィにおける運動強度の調整
関節拘縮に関与する組織別分類(拘縮の鑑別)
ハンドスプリンティング
ハンドセラピィとホームプログラム
ハンドセラピィにおける動機付け
ハンドセラピィとホームプログラム [齋藤慶一郎]
ハンドセラピィにおけるホームプログラムの重要性
ホームプログラム指導における運動の「質」と「量」の充足
疼痛の存在する手や肘への運動療法
スプリント療法の指導上のポイントと具体的方法
物理療法の処方方針と具体的方法
Ⅱ.骨折
骨折総論 [齋藤慶一郎]
上肢の骨折
上肢の骨折とハンドセラピィ
上肢骨折の修復方法
骨癒合過程
骨修復後のハンドセラピィ
拘縮の病態とスプリント療法
複合性局所疼痛症候群(CRPS)
整形外科的治療およびハンドセラピィの方針の決定因子
前腕骨骨折・手根骨骨折 [大森みかよ]
前腕骨骨折・手根骨骨折の分類と治療方法
骨折の整復位に対する考察
ハンドセラピィ
肘骨折(肘頭骨折) [西出義明]
炎症と痛み
肘関節の解剖
肘頭骨折
肘頭骨折の留意事項
肘関節のセラピィの実際
おわりに
人工肘関節置換術 [蓬莱谷耕士,渡邉千聡]
肘関節の構造と役割
TEAの適応
人工肘関節の機種
手術方法
TEAの合併症
TEAの術前評価
TEAの術後セラピィ
外傷に対する人工肘関節置換術
手指骨骨折 [阿部 薫,齋藤慶一郎]
はじめに
手指骨骨折・中手骨骨折の分類と治療指針
手指骨骨折における治療方針の決定
骨癒合とハンドセラピィ
関節の運動
合併症の予防
Ⅲ.腱損傷
手指腱損傷修復後のハンドセラピィ [奥村修也]
手指の腱
手指の腱損傷修復後の問題点
腱の治癒過程
腱の修復方法
腱損傷修復後のハンドセラピィ
屈筋腱
屈筋腱損傷修復後のハンドセラピィ
伸筋腱
伸筋腱損傷修復後のハンドセラピィ
固定法の場合
修復腱の癒着や拘縮が遺残している場合
Ⅳ.末梢神経損傷
手の末梢神経損傷─スプリント療法を中心に─ [齋藤慶一郎]
末梢神経損傷とスプリント
手の末梢神経とその損傷
神経損傷度と神経修復方法
各神経損傷と手の形態変化
手の知覚障害とハンドセラピィ
末梢神経損傷症例に対するハンドセラピィ
末梢神経損傷に対するスプリント療法
正中神経損傷に対するスプリント療法
尺骨神経損傷に対するスプリント療法
橈骨神経損傷に対するスプリント療法
運動機能再建術とハンドセラピィ
運動機能再建術後のハンドセラピィ
Ⅴ.RA手
保存療法 [原田康江]
関節リウマチ(RA)とは
臨床症状
リウマチ手の分類
関節リウマチの治療計画
保存治療
装具の使用
ADL障害へのアプローチ
おわりに
手指人工関節 [原田康江]
はじめに
手術のタイミング
関節破壊の程度
手指人工関節の歴史
手指人工関節の種類
尺側偏位に対するMP人工関節置換術
術後のハンドセラピィ
術後の治療成績
セラピィの留意点
PIP人工関節置換術
Ⅵ.手の炎症性疾患
手の炎症性疾患の基礎 [西出義明]
炎症
蓄積外傷疾患
炎症へのセラピィの考え方
臨床での応用
おわりに
de Quervain 病 [西出義明]
de Quervain 病の病態
鑑別テスト
セラピィの実際
症例提示
まとめ
おわりに
三角線維軟骨合体(TFCC)損傷 [西出義明]
TFCCの解剖
TFCC損傷の病態
セラピィを行うための評価
セラピィの実際
症例提示
装具の効果
上腕骨外側上顆炎(テニス肘) [西出義明]
はじめに
上腕骨外側上顆炎の考え方と病態
上腕骨外側組織の解剖病態
セラピィの実際
症例紹介
Ⅶ.CRPS 手
疼痛に対する作業療法アプローチ [蓬莱谷耕士,仲野春樹]
複合性局所性疼痛症候群(CRPS)の概要
CRPSの疫学
CRPSの症状
CRPSの診断基準
CRPSの評価
CRPSに対するリハビリテーション
Ⅷ.肩関節周囲組織損傷
総論 [齋藤慶一郎]
肩関節周囲組織損傷
肩関節周囲組織と肩関節運動
人工肩関節全置換術 [熊田 仁]
人工肩関節全置換術の概要
人工肩関節全置換術の種類と適応
運動療法
腱板損傷 [齋藤慶一郎]
腱板
腱板損傷
腱板断裂の臨床症状
腱板の修復方法
腱板損傷に対するセラピィ
Ⅸ.ハンドスプリント
スプリント療法(総論) [齋藤慶一郎]
手のスプリント療法の基本的な考え方
装具療法の流れ
材料の選定
スプリントのメリットとデメリット
装具療法の適応と障害手の管理
考慮すべきポイント
複数のスプリントの投入
スプリント療法の開始のタイミング
患者教育
ハンドスプリント(ベーシック) [奥村修也]
スプリント作製に必要な基礎知識
スプリント作製手技① [奥村修也]
ラディアルバーコックアップスプリント(radial bar cock-up splint)
スプリント作製手技② [奥村修也]
背側コックアップスプリント(dorsal cock-up splint)
付録:よく使用されるスプリントと採型デザイン
ハンドスプリント(アドバンス) [奥村修也]
全周囲型短対立スプリント
低位橈骨神経麻痺用スプリント
RICスプリント
手指伸展補助(牽引)用アウトリガースプリント
手指屈曲補助付きアウトリガースプリント
屈筋腱損傷修復後の背側伸展制限スプリント
セーフティピンスプリント
フレクション・ストラップ
マレットフィンガー用スプリント
ハンドスプリント作製のための教⽰法 [齋藤慶一郎]
美しく効果的なハンドスプリントを作製するためのセルフチェックと作製させるための教示
作製するスプリントの基本的な考え方
適応と適用の理解
スプリントデザインの具現化
初級者が陥りやすい失敗とその対策
スプリント材の性質
モールディング
トリミング
スムージング
ストラッピング(位置とストラップの⾛行)
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ハンドセラピィに求められる技術と理論をオールカラーで集約
「傷ついた手」をuseful handへ方向付けていくために,作業療法士が果たす役割はきわめて大きい。本書は骨折や末梢神経損傷など,作業療法士が携わることの多い疾患を中心に,「使える手・生活する手」へ導いていくために実施している機能訓練などの治療技術や日々活用している作業活動を,豊富なカラーイラスト・写真で解説。
改訂にあたっては,近年の臨床現場で作業療法士が力を発揮するようになったTFCC損傷,de Quervain病,テニス肘などの手の炎症性疾患に対する臨床実践における保存療法を追加し,またスプリント療法に対する考え方とハンドスプリント作製初心者への作製の教え方の項目を新設してスプリント療法を成功させる「鍵」「初心者の陥りやすい失敗ポイント」を解説。
技術だけでなく,解剖学や病態などの理論も併せて述べ,ハンドセラピィに携わるすべてのセラピストに役立つ充実の改訂第2版!