読む順序から対応までわかる

レジデントのためのやさしい心電図

レジデントのためのやさしい心電図

■編集 岡田 英志
成瀬 元気

定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
  • B5判  180ページ  オールカラー,イラスト98点,写真104点
  • 2024年7月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-2208-9

異常を見落とさない判読法 ・構造イメージが固まり,判読後の対応方法までわかる,楽しく正しく学べる“最初の1冊”!

レジデントから寄せられた疑問について,指導医との会話形式によりお手本となる判読法とその根拠や考え方から対応までをわかりやすく解説。
目線と読む順番からの読み解き,20症例による判読トレーニング,知っておきたい抗不整脈薬まで,実臨床に役立つコラムも交えて丁寧にサポート。
完全な初学者にも親しみやすい例えを基にした病態イメージや図解から楽しく正しく学べる“最初の1冊”!


序文

はじめに 〜心電図ってカッコいい!?

 子供のころ,テレビや漫画で見た宇宙船や飛行機のコックピットにはよくわからないオシロスコープのような計器がたくさん描かれていました。そして,それを確認した乗組員が「敵機発見!」とかなんとか言っているのを見て,子供心に「なんかわからんけどカッコええなあ」と思っていたわけです。
 医学生になり,その記憶がよみがえりました。当時20代だったにしては幼稚ですが,「なんか知らんけどカッコええなあ」というのが心電図をみたときの第一印象です。少し学ぶと,心電図で「敵機」は発見できませんが,「病気」は発見できるということがわかりました。謎めいた波形も,分解していくとそれぞれに意味があり,「どこ」の波形がおかしいと「ここ」の部分がおかしいという対応もわかるということに面白さを感じたことを思い出します。
 非常に怠惰な学生であった筆者でしたが,「これが理解できたらカッコええなあ」ということで,学部4年生のときに初めて自分の意志で買った医学書が心電図の本でした。勉強は嫌いだったので「とにかく簡単な本がいい」と思って大学生協で買った本。書名は忘れてしまったのですが,薄かったことだけは覚えています。
 ここ数年,薬剤部長より依頼を受け,病院実習に来る薬学生に心電図を教える機会をいただいています。受講した学生さんが「どこに異常があるからここに異常が出るというのがわかってよかった」と教えてくれます。そのあたりを踏まえ,よりわかりやすく,簡単にと思い教材をbrush upしていたところ,メジカルビュー社の井上様の目に留まり,その教材を元に今回出版させていただく機会をいただきました。初学者だけでなく,「できるだけ簡単で薄い本がいい」という筆者自身が心電図の本を買ったときの経験や希望を加味して本書をまとめています。成書に比べると稚拙な表現が多く,専門家の先生方にとっては物足りない内容かと思いますが,そのあたりはご笑覧いただければ幸甚です。
 さあ,心電図で「病気」を見つけましょう!

2024年5月
岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学分野
岡田英志

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心電図に立ち向かうための“最初の相棒”として

 この本を手に取られた方は,おそらく職場で心電図を扱うようになり,読めるようにならないといけないなと思っている研修医の先生が多いのではないでしょうか。また,これから心電図を勉強しようという看護師さんや学生さんもいらっしゃるかもしれません。
 筆者も学生のときに心電図の勉強に非常に苦労しました。今でもどうすれば心電図というものに抵抗を感じずに向き合えるのかを問答しながら診療する日々です。そうした経験を少しでも反映できればと思い,この本の執筆・編集にあたらせていただきました。
 筆者が研修医や学生に心電図を教える際は,「心電図読影はスポーツと一緒。生きた心電図といかに多く向き合うかが大切です」とよく言います。生きた心電図とは,いうなれば記録された心電図波形だけではなく,患者背景やシチュエーションなどの周辺記憶と紐づき,かつ非典型的なパターンに溢れたリアルな心電図ということです。何事も手っ取り早い近道はありません。特に,生きた心電図を読み続けるというのはかなり根気がいることです。ぜひ本書を心電図に立ち向かうための“最初の相棒”にして,少しでも楽しく学習してもらえたらと願っています。
 そして,心電図を楽しく学ぶコツの1つは,「心電図を心電図だけで終わらせない」ことだと思います。心臓の中でどういった現象が起きているのかを想像しながら心電図と向き合うことが大切です。また,初期対応や治療方針まで包括して勉強するのもよい方法だと思います。そのようなことを踏まえ,第Ⅰ,Ⅱ章ではできる限り図を用いて心臓の中で起きている現象についても織り交ぜながら作成しています。また,第Ⅲ章の症例を基にした判読トレーニングでは初期対応のポイントについて,第Ⅳ章では心電図で起きている変化が薬剤にどう影響されるのかについて触れています。
 心電図は奥が深いです。研修医の先生にはこの本を「入門の1冊」としていただき,さらなるステップとして専門書などを用いて知識を深めていっていただければと思っています。なお,本書は「わかりやすさ」を重視して編集しているため,専門医の先生方にとってはいろいろな指摘をもたれるものと想定されますが,あたたかく見守っていただければ幸いです。

2024年5月
岐阜大学医学部附属病院高次救命治療センター
成瀬元気
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目次

本書に登場する略語一覧
本書の主な構成

第Ⅰ章 構造で理解する心電図の基礎と読み方
1 心電図のお約束とその理由
 心電図は電気信号
2 波形のお約束とその理由
 心電図波形の名称~それぞれの波の意味

第Ⅱ章 読む順序でみていく心電図・不整脈
1 正常心電図と読む順序
 リズム,心拍数,P,QRS,軸,ST-T,U
2 系統的判読手順
 リズムと心拍数がおかしい
 P波がある
 PQ間隔がおかしい
 P波がない
 P波の形がおかしい
 QRS波がおかしい
 ST-T部分がおかしい
 QT部分がおかしい
 U波がある

第Ⅲ章 判読トレーニング
1 まずは腕試し
 症例 1 主訴:ふらつき
 症例 2 主訴:動悸
2 実践トレーニング
 症例 3 主訴:胸痛
 症例 4 主訴:胸痛
 症例 5 無症状,健診で異常の指摘
 症例 6 主訴:動悸
 症例 7 主訴:動悸
 症例 8 主訴:動悸
 症例 9 無症状,健診で異常の指摘
 症例10 主訴:胸痛
 症例11 主訴:無症状
 症例12 主訴:胸痛
 症例13 主訴:胸痛
 症例14 一過性意識消失
 症例15 主訴:ふらつき
 症例16 向精神薬を多量服薬して嘔吐
 症例17 健診で異常の指摘
 症例18 失神で救急外来受診
 症例19 主訴:ふらつき
 症例20 主訴:動悸,ふらつき

第Ⅳ章 抗不整脈薬の使い方
1 非専門医も知っておきたい不整脈治療
 抗不整脈薬は刺激伝導系のどこを抑える?
 頻脈性心房細動の初期治療
 発作性上室頻拍の治療〜ATPの使い方
 心室性不整脈の初期治療
 β遮断薬の使い方
 心不全に使いにくい抗不整脈薬

Column
 なぜ12個の誘導が必要なの?
 モニター心電図の特徴とメリット
 wide QRSとnarrow QRS
 帰るまでが遠足です
 四肢誘導の電極位置は正しい?
 房室伝導は夫婦関係によく似ている?
 夫婦が円満でいられる秘訣は?
 脈拍と寿命
 重さと形と心電図
 肺高血圧症に伴う右心不全を疑う心電図所見とは?
 放っておいてもよいwide QRSとは?
 高電位,低電位を診断する前に
 アーチファクトにご用心
 電気的除細動と同期電気ショック
 後壁梗塞の心電図変化は?
 aVʀ誘導のST上昇をみたら
 心筋の肥大が望ましくない理由は?
 アデホスのよもやま話
 ペースメーカの適応
 不整脈を抑制することの意義
 洞調律の心拍数を抑える心不全治療薬 “イバブラジン”
 心電図波形の非特異的変化を心臓の構造で考える

あとがき
索引
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