消化器外科 周術期合併症の
minimal requirements
重症度の階層化とその対策
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定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
- B5判 520ページ オールカラー,イラスト50点,写真50点
- 2015年12月21日刊行
- ISBN978-4-7583-1520-3
電子版
序文
監修者ご挨拶
「一般社団法人National Clinical Database(NCD)」が設立して4年の歳月が過ぎた。NCD設立の目的は,我が国の外科医療の現状把握や専門医制度に連動する制度として機能することである。驚くことに,このわずか4年という短期間に我が国の一般外科医が行っている手術の95%以上を占める年間120数万件の手術症例が登録されるに至っている。そして,すでに多くの領域において,合併症や手術関連死亡率に関する報告がなされてきた。今後,これらの膨大なデータを用いて,患者のリスク評価や施設の評価などが可能になると思われる。外科医にとって,これらは,かけがえのないデータであり,多くのことを学ぶことができることと確信している。
本来,外科医は,治療学の専門家として,患者に安全で適切な手術を提供する使命がある。しかしながら,「外科手術は人的外傷を負わせて治療する」という側面をもつため,生命を脅かすような合併症の発生を経験することもある。全身麻酔法の確立と発展,抗菌薬の開発と使用法の確立,IVRなどの関連手技の発達により,手術の安全性が向上している。しかし,NCDからの報告を見ると,手術関連死亡率や合併症の発生率は,決して満足のいくものではない。外科手術の安全性を今後どのようにして担保するかは,議論の多いところであるが,外科医の教育の重要性が,さらに強調されることは疑う余地はない。
これまで,消化器外科専門医に必要な知識の整理書である「消化器外科専門医のためのminimal requirements」やその実践書である「消化器外科minimal requirements実践応用編」が,大分大学医学部地域医療学センター(外科分野)の白石憲男教授の編集のもと,出版され好評を得ている。周術期合併症の対策書である本書「消化器外科周術期合併症のminimal requirements」は,教育に対する情熱と安全な手術の実践を後輩たちに教育している編者ならではのものと考えている。近年,日本消化器外科学会専門医試験においても,合併症に関する問題が散見される。本書が,これから専門医を志す外科医の教科書としてのみならず,指導書として,また勉強会のテキストとしても役立つものであると確信している。本書「消化器外科周術期合併症のminimal requirements」は,これまでのminimal requirementsシリーズ同様,すべての消化器外科医に,ぜひ一読いただきたい書物である。
最後に,このような書物を出版していただいたメジカルビュー社編集部の吉田富生氏と宮澤進氏に心から感謝いたします。
平成27年11月
大分大学長 北野正剛
------------------------------------------------------------
序
消化器外科は,やりがいのある仕事である。急性疾患や悪性腫瘍の病巣を自らの手で除去し,患者さんの社会復帰を手助けすることができる。笑顔で退院する患者さんをみては,外科医になってよかったと思う。多くの患者さんは,「楽に治療を受けたい」とか,「1日でも早く社会復帰したい」と考えているに違いない。しかしながら,このような患者さんの気持ちに,外科医としていつも応じることができたかと質問されると,少し自信がない。術後合併症を発症して,院内を駆け回った日々を思い出すからである。
医師になりたての頃,癌治療について,ある先輩から,「拡大リンパ節郭清が予後因子になるという論文はないといっても過言ではない。しかし,そのために生じる術後合併症は予後不良因子になるという論文は多い。癌治療に対して外科医にできることは,合併症のないR0の手術をすることだ」と教わった。当時,「拡大手術」こそが,癌治療の原則と考えていた私たちには,衝撃的な言葉であった。以来,どうすれば,合併症を回避できるか,合併症が生じた時には,どのように対処すればよいのか,ということを考えるようになった。NCDのデータや専門医のあり方などからも,社会が外科医に求めている1つとして,「安全に手術を行える外科チームの育成」にあるように思われる。超高齢化社会を迎えている現代において,多くの既往症を有した高齢患者の手術件数が増加している。このことは,合併症の発生が増加する危険を意味しているかも知れない。周術期において,科学的に患者を評価し,具体的にケアできる外科チームの育成が,今こそ必要だと感じている。
そこで,「周術期の患者さんを科学的に評価する方法を学ぼう!」,「具体的なケアができるようになろう!」という掛け声のもと,日本消化器外科学会専門医取得前後の若き外科医たちと勉強会を開始した。そういう意味で,本書「消化器外科周術期合併症のminimal requirements」は,これまで,出版していただいた知識の整理書「消化器外科専門医のためのminimal requirements」や知識の利用書「消化器外科minimal requirements実践応用編」の姉妹書と考えている。驚くことに,近年の日本消化器外科学会専門医試験の公表問題にも,周術期合併症に関する問題が散見している。そのため,本書の各項目は,症例問題形式でまとめることにした。専門医試験をめざしている者のみならず,後期研修医や指導医の方々にも,大いに利用していただきたいと念願している。本書を通じて,「私たち,失敗しないから」という外科チームの育成に少しでも貢献できれば幸いである。
最後に,情熱を失わず,ともに勉強してきた著者6名に感謝いたします。また,編集に関するアドバイスや自験例の集積など,ご協力いただいた先生方,および事務業務を担当してくれた秘書の衞藤千鶴さんに心から感謝します。最後に,本書を出版していただいたメジカルビュー社編集部の吉田富生氏と宮澤進氏に心から感謝申し上げます。
平成27年11月
編者 白石憲男
上田貴威
「一般社団法人National Clinical Database(NCD)」が設立して4年の歳月が過ぎた。NCD設立の目的は,我が国の外科医療の現状把握や専門医制度に連動する制度として機能することである。驚くことに,このわずか4年という短期間に我が国の一般外科医が行っている手術の95%以上を占める年間120数万件の手術症例が登録されるに至っている。そして,すでに多くの領域において,合併症や手術関連死亡率に関する報告がなされてきた。今後,これらの膨大なデータを用いて,患者のリスク評価や施設の評価などが可能になると思われる。外科医にとって,これらは,かけがえのないデータであり,多くのことを学ぶことができることと確信している。
本来,外科医は,治療学の専門家として,患者に安全で適切な手術を提供する使命がある。しかしながら,「外科手術は人的外傷を負わせて治療する」という側面をもつため,生命を脅かすような合併症の発生を経験することもある。全身麻酔法の確立と発展,抗菌薬の開発と使用法の確立,IVRなどの関連手技の発達により,手術の安全性が向上している。しかし,NCDからの報告を見ると,手術関連死亡率や合併症の発生率は,決して満足のいくものではない。外科手術の安全性を今後どのようにして担保するかは,議論の多いところであるが,外科医の教育の重要性が,さらに強調されることは疑う余地はない。
これまで,消化器外科専門医に必要な知識の整理書である「消化器外科専門医のためのminimal requirements」やその実践書である「消化器外科minimal requirements実践応用編」が,大分大学医学部地域医療学センター(外科分野)の白石憲男教授の編集のもと,出版され好評を得ている。周術期合併症の対策書である本書「消化器外科周術期合併症のminimal requirements」は,教育に対する情熱と安全な手術の実践を後輩たちに教育している編者ならではのものと考えている。近年,日本消化器外科学会専門医試験においても,合併症に関する問題が散見される。本書が,これから専門医を志す外科医の教科書としてのみならず,指導書として,また勉強会のテキストとしても役立つものであると確信している。本書「消化器外科周術期合併症のminimal requirements」は,これまでのminimal requirementsシリーズ同様,すべての消化器外科医に,ぜひ一読いただきたい書物である。
最後に,このような書物を出版していただいたメジカルビュー社編集部の吉田富生氏と宮澤進氏に心から感謝いたします。
平成27年11月
大分大学長 北野正剛
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序
消化器外科は,やりがいのある仕事である。急性疾患や悪性腫瘍の病巣を自らの手で除去し,患者さんの社会復帰を手助けすることができる。笑顔で退院する患者さんをみては,外科医になってよかったと思う。多くの患者さんは,「楽に治療を受けたい」とか,「1日でも早く社会復帰したい」と考えているに違いない。しかしながら,このような患者さんの気持ちに,外科医としていつも応じることができたかと質問されると,少し自信がない。術後合併症を発症して,院内を駆け回った日々を思い出すからである。
医師になりたての頃,癌治療について,ある先輩から,「拡大リンパ節郭清が予後因子になるという論文はないといっても過言ではない。しかし,そのために生じる術後合併症は予後不良因子になるという論文は多い。癌治療に対して外科医にできることは,合併症のないR0の手術をすることだ」と教わった。当時,「拡大手術」こそが,癌治療の原則と考えていた私たちには,衝撃的な言葉であった。以来,どうすれば,合併症を回避できるか,合併症が生じた時には,どのように対処すればよいのか,ということを考えるようになった。NCDのデータや専門医のあり方などからも,社会が外科医に求めている1つとして,「安全に手術を行える外科チームの育成」にあるように思われる。超高齢化社会を迎えている現代において,多くの既往症を有した高齢患者の手術件数が増加している。このことは,合併症の発生が増加する危険を意味しているかも知れない。周術期において,科学的に患者を評価し,具体的にケアできる外科チームの育成が,今こそ必要だと感じている。
そこで,「周術期の患者さんを科学的に評価する方法を学ぼう!」,「具体的なケアができるようになろう!」という掛け声のもと,日本消化器外科学会専門医取得前後の若き外科医たちと勉強会を開始した。そういう意味で,本書「消化器外科周術期合併症のminimal requirements」は,これまで,出版していただいた知識の整理書「消化器外科専門医のためのminimal requirements」や知識の利用書「消化器外科minimal requirements実践応用編」の姉妹書と考えている。驚くことに,近年の日本消化器外科学会専門医試験の公表問題にも,周術期合併症に関する問題が散見している。そのため,本書の各項目は,症例問題形式でまとめることにした。専門医試験をめざしている者のみならず,後期研修医や指導医の方々にも,大いに利用していただきたいと念願している。本書を通じて,「私たち,失敗しないから」という外科チームの育成に少しでも貢献できれば幸いである。
最後に,情熱を失わず,ともに勉強してきた著者6名に感謝いたします。また,編集に関するアドバイスや自験例の集積など,ご協力いただいた先生方,および事務業務を担当してくれた秘書の衞藤千鶴さんに心から感謝します。最後に,本書を出版していただいたメジカルビュー社編集部の吉田富生氏と宮澤進氏に心から感謝申し上げます。
平成27年11月
編者 白石憲男
上田貴威
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目次
Ⅰ 消化器外科患者の併存疾患の 術前評価(階層化)と対策
A.[解説]術前管理・ケアのポイント
併存疾患の術前評価(階層化)と術前ケア
概説 / 既往疾患に対する術前管理のポイント
B.全身麻酔下の消化器外科手術を安全に行うための耐術評価の 階層化と対策
1.循環器機能
ポンプ機能不全(心不全)を生じやすい患者
術前テーマ1 (1)心筋症(拡張型)を有する患者の手術
術前テーマ2 (2)弁膜症(大動脈弁,僧帽弁)を有する患者の手術
術前テーマ3 不整脈を既往に有する患者の手術
術前テーマ4 心筋梗塞の既往のある患者の手術
2.呼吸器機能
術前テーマ5 慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者の手術
術前テーマ6 気管支喘息を有する患者の手術
術前テーマ7 間質性肺炎を有する患者の手術
C.術後に臓器障害を生じる可能性のある併存疾患の評価の階層化と対策
3.肝機能
術前テーマ8 肝機能障害を有する患者の開腹手術
術前テーマ9 残肝機能が問題となる患者の肝臓切除術
術前テーマ10 黄疸を示した胆管切除予定の患者
4.腎機能
術前テーマ11 保存期腎不全患者の手術
術前テーマ12 透析患者の手術
5.凝固異常
術前テーマ13 静脈血栓塞栓症の既往のある患者の手術
術前テーマ14 抗凝固療法を受けている患者の手術
6.代謝・内分泌異常
術前テーマ15 甲状腺疾患を有する患者の手術
術前テーマ16 糖尿病にて治療中の患者の手術
術前テーマ17 ステロイド服用中の患者の手術
術前テーマ18 高度肥満患者の手術
D.局所病変がすでに全身状態に影響している患者の術前評価の 階層化と対策
術前テーマ19 食物の通過障害にて術前に低栄養状態を示している患者の手術
術前テーマ20 消化管出血にて高度貧血を示している患者の手術
術前テーマ21 大腸穿孔による汎発性腹膜炎の患者
術前テーマ22 腸閉塞症を認める患者の手術
Ⅱ 消化器外科手術の術後合併症の早期診断と治療方針
A.[解説]術後管理・ケアのポイント
消化器外科手術の術後合併症の早期診断と治療方針
B.臓器間に共通で頻度の高い合併症の重症度の階層化と対策
概説/消化器外科手術に共通して生じる頻度の高い術後合併症
術後テーマ1 手術終了 5 時間後の頻脈と低血圧
術後テーマ2 手術後 7 日目の呼吸不全
術後テーマ3 手術後 3 日目の頻脈と呼吸苦
術後テーマ4 手術後 4 日目の急激な胸痛と意識消失
術後テーマ5 手術後 4 日目の意識消失,心肺停止
術後テーマ6 手術後 5 日目の微熱と創部発赤
術後テーマ7 手術後 14 日目の腹痛と嘔吐
術後テーマ8 手術後 4 日目の夜間の不穏行動
C.臓器別手術合併症の重症度の階層化と対策
1.食道の手術後の合併症
概説/食道の手術後の合併症
術後テーマ9 食道切除術後,5 日目の発熱と頸部発赤
術後テーマ10 食道癌術後に胸腔ドレーンからの大量の排液
術後テーマ11 食道切除術後の嗄声と術後 7 日目の発熱
術後テーマ12 食道癌術後の発熱・低酸素血症
2.胃の手術後の合併症
概説/胃の手術後の合併症
術後テーマ13 腹腔鏡下胃全摘術後 5 日目の発熱と腹痛
術後テーマ14 胃切除後 12 日目の食物のつかえ感と嘔気
術後テーマ15 残胃全摘術の術後 7 日目の発熱と腹痛
術後テーマ16 胃切除術後 7 日目の腹水(白色調)貯留
術後テーマ17 胃切除術後 5 日目の発熱
3.大腸の手術後の合併症
概説/大腸の手術後の合併症
術後テーマ18 S状結腸切除後 5 日目の発熱と下腹部痛
術後テーマ19 結腸切除術後の 7 日目の嘔吐
術後テーマ20 大腸癌手術後のドレーンからの大量の排液
術後テーマ21 直腸癌術後の排尿障害
4.肝臓の手術後の合併症
概説/肝臓の手術後の合併症
術後テーマ22 肝切除後にドレーンからの大量の出血
術後テーマ23 肝切除術後 6 日目の発熱,腹痛
術後テーマ24 肝切除後 4 日目の異常行動・興奮状態
5.胆道・膵臓の手術後の合併症
概説 / 胆道・膵臓の手術後の合併症
術後テーマ25 肝門部胆管癌の術後 4 日目の発熱と腹痛
術後テーマ26 胆嚢摘出後,ドレーンから黄色の排液
術後テーマ27 膵頭十二指腸切除術後 7 日目の発熱
術後テーマ28 膵切除術後,3 日目の発熱と上腹部痛
術後テーマ29 膵頭十二指腸切除術後 3 週間目,突然のショック
--------------------------------------------------
■疾患目次
・術前併存症
心機能
1 心筋症(拡張型)
2 弁膜症
3 不整脈
4 心筋梗塞既往
呼吸機能
5 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
6 気管支喘息
7 間質性肺炎
肝機能
8 肝機能障害(一般手術)
9 肝機能障害(肝切除)
10 閉塞性黄疸
腎機能
11 保存期腎不全
12 透析患者
凝固機能
13 静脈血栓塞栓症の既往
14 抗凝固療法中
代謝・内分泌機能
15 甲状腺機能亢進症
16 糖尿病
17 ステロイド服用中
18 高度肥満
その他
19 低栄養状態
20 高度貧血
21 汎発性腹膜炎
22 腸閉塞症
・術後合併症
臓器間共通
1 腹腔内出血
2 肺水腫
3 うっ血性心不全
4 不整脈
5 肺動脈塞栓症
6 SSI(Surgical site infection)
7 腸閉塞症
8 せん妄
食道
9 縫合不全
10 乳び胸
11 反回神経麻痺
12 肺炎
胃
13 縫合不全
14 吻合部狭窄
15 膵液漏(瘻)
16 リンパ漏
17 急性胆嚢炎
大腸
18 縫合不全
19 腸閉塞症
20 尿管損傷
21 性機能障害・排尿障害
肝臓
22 腹腔内出血
23 胆汁漏(離断型)
24 肝不全
胆道・膵臓
25 胆汁漏(交通型)
26 胆道損傷
27 胆管炎
28 膵液瘻
29 術後後期腹腔内出血
A.[解説]術前管理・ケアのポイント
併存疾患の術前評価(階層化)と術前ケア
概説 / 既往疾患に対する術前管理のポイント
B.全身麻酔下の消化器外科手術を安全に行うための耐術評価の 階層化と対策
1.循環器機能
ポンプ機能不全(心不全)を生じやすい患者
術前テーマ1 (1)心筋症(拡張型)を有する患者の手術
術前テーマ2 (2)弁膜症(大動脈弁,僧帽弁)を有する患者の手術
術前テーマ3 不整脈を既往に有する患者の手術
術前テーマ4 心筋梗塞の既往のある患者の手術
2.呼吸器機能
術前テーマ5 慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者の手術
術前テーマ6 気管支喘息を有する患者の手術
術前テーマ7 間質性肺炎を有する患者の手術
C.術後に臓器障害を生じる可能性のある併存疾患の評価の階層化と対策
3.肝機能
術前テーマ8 肝機能障害を有する患者の開腹手術
術前テーマ9 残肝機能が問題となる患者の肝臓切除術
術前テーマ10 黄疸を示した胆管切除予定の患者
4.腎機能
術前テーマ11 保存期腎不全患者の手術
術前テーマ12 透析患者の手術
5.凝固異常
術前テーマ13 静脈血栓塞栓症の既往のある患者の手術
術前テーマ14 抗凝固療法を受けている患者の手術
6.代謝・内分泌異常
術前テーマ15 甲状腺疾患を有する患者の手術
術前テーマ16 糖尿病にて治療中の患者の手術
術前テーマ17 ステロイド服用中の患者の手術
術前テーマ18 高度肥満患者の手術
D.局所病変がすでに全身状態に影響している患者の術前評価の 階層化と対策
術前テーマ19 食物の通過障害にて術前に低栄養状態を示している患者の手術
術前テーマ20 消化管出血にて高度貧血を示している患者の手術
術前テーマ21 大腸穿孔による汎発性腹膜炎の患者
術前テーマ22 腸閉塞症を認める患者の手術
Ⅱ 消化器外科手術の術後合併症の早期診断と治療方針
A.[解説]術後管理・ケアのポイント
消化器外科手術の術後合併症の早期診断と治療方針
B.臓器間に共通で頻度の高い合併症の重症度の階層化と対策
概説/消化器外科手術に共通して生じる頻度の高い術後合併症
術後テーマ1 手術終了 5 時間後の頻脈と低血圧
術後テーマ2 手術後 7 日目の呼吸不全
術後テーマ3 手術後 3 日目の頻脈と呼吸苦
術後テーマ4 手術後 4 日目の急激な胸痛と意識消失
術後テーマ5 手術後 4 日目の意識消失,心肺停止
術後テーマ6 手術後 5 日目の微熱と創部発赤
術後テーマ7 手術後 14 日目の腹痛と嘔吐
術後テーマ8 手術後 4 日目の夜間の不穏行動
C.臓器別手術合併症の重症度の階層化と対策
1.食道の手術後の合併症
概説/食道の手術後の合併症
術後テーマ9 食道切除術後,5 日目の発熱と頸部発赤
術後テーマ10 食道癌術後に胸腔ドレーンからの大量の排液
術後テーマ11 食道切除術後の嗄声と術後 7 日目の発熱
術後テーマ12 食道癌術後の発熱・低酸素血症
2.胃の手術後の合併症
概説/胃の手術後の合併症
術後テーマ13 腹腔鏡下胃全摘術後 5 日目の発熱と腹痛
術後テーマ14 胃切除後 12 日目の食物のつかえ感と嘔気
術後テーマ15 残胃全摘術の術後 7 日目の発熱と腹痛
術後テーマ16 胃切除術後 7 日目の腹水(白色調)貯留
術後テーマ17 胃切除術後 5 日目の発熱
3.大腸の手術後の合併症
概説/大腸の手術後の合併症
術後テーマ18 S状結腸切除後 5 日目の発熱と下腹部痛
術後テーマ19 結腸切除術後の 7 日目の嘔吐
術後テーマ20 大腸癌手術後のドレーンからの大量の排液
術後テーマ21 直腸癌術後の排尿障害
4.肝臓の手術後の合併症
概説/肝臓の手術後の合併症
術後テーマ22 肝切除後にドレーンからの大量の出血
術後テーマ23 肝切除術後 6 日目の発熱,腹痛
術後テーマ24 肝切除後 4 日目の異常行動・興奮状態
5.胆道・膵臓の手術後の合併症
概説 / 胆道・膵臓の手術後の合併症
術後テーマ25 肝門部胆管癌の術後 4 日目の発熱と腹痛
術後テーマ26 胆嚢摘出後,ドレーンから黄色の排液
術後テーマ27 膵頭十二指腸切除術後 7 日目の発熱
術後テーマ28 膵切除術後,3 日目の発熱と上腹部痛
術後テーマ29 膵頭十二指腸切除術後 3 週間目,突然のショック
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■疾患目次
・術前併存症
心機能
1 心筋症(拡張型)
2 弁膜症
3 不整脈
4 心筋梗塞既往
呼吸機能
5 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
6 気管支喘息
7 間質性肺炎
肝機能
8 肝機能障害(一般手術)
9 肝機能障害(肝切除)
10 閉塞性黄疸
腎機能
11 保存期腎不全
12 透析患者
凝固機能
13 静脈血栓塞栓症の既往
14 抗凝固療法中
代謝・内分泌機能
15 甲状腺機能亢進症
16 糖尿病
17 ステロイド服用中
18 高度肥満
その他
19 低栄養状態
20 高度貧血
21 汎発性腹膜炎
22 腸閉塞症
・術後合併症
臓器間共通
1 腹腔内出血
2 肺水腫
3 うっ血性心不全
4 不整脈
5 肺動脈塞栓症
6 SSI(Surgical site infection)
7 腸閉塞症
8 せん妄
食道
9 縫合不全
10 乳び胸
11 反回神経麻痺
12 肺炎
胃
13 縫合不全
14 吻合部狭窄
15 膵液漏(瘻)
16 リンパ漏
17 急性胆嚢炎
大腸
18 縫合不全
19 腸閉塞症
20 尿管損傷
21 性機能障害・排尿障害
肝臓
22 腹腔内出血
23 胆汁漏(離断型)
24 肝不全
胆道・膵臓
25 胆汁漏(交通型)
26 胆道損傷
27 胆管炎
28 膵液瘻
29 術後後期腹腔内出血
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困った! 手術前や手術後の患者さんにトラブルが! 正しく対応するにはこれを読んでから!
手術では患者の体にメスを入れ,臓器や病変の摘出などを行うために,外科的侵襲が生じる。その結果,必ず何らかの「生体反応」が起こり,併存疾患の増悪や合併症の発生を招く。それゆえ,術前・術後の患者の様子を注意深く見守り,正しく評価し対応する必要がある。
本書では,症例を提示し,術前併存疾患や術後合併症についてどう対応すべきかをより具体的に解説。すなわち,術前併存症や術後合併症の重症度の層別化を行い,経時的に変化するそれらに対して,どのように的確な対応をすべきかを紹介している。
1章では,近年,手術を受けるのは高齢患者が多いことから,「併存疾患(心臓疾患,糖尿病,腎障害など)」を抱えている患者に対する術後合併症の予防対策を,2章では部位別に発生した術後合併症の重症度の評価とその的確な対応を取り上げている。
ここ数年,消化器外科専門医試験にも合併症の症例問題が増えつつある。消化器外科専門医の過去問題と類似した症例には,その問題番号も付記している。