整形外科専門医への
minimal requirements

　日本整形外科学会では従来から，社会から信頼されうる豊富な知識と高い臨床能力を備えた整形外科専門医の育成に向けて，専門研修プログラムの構築に取り組んできた。そして2018（平成30）年からは日本専門医機構と協力して新専門医制度の本格運用を開始し，これまで順調にその運用を進めている。整形外科医を志す若き医師たちは，プログラムの中で専門医取得を目標に日々精進している。整形外科専門研修プログラムの締めくくりとして整形外科専門医試験があり，毎年，多くの医師が受験している。
　わが国の整形外科医が担当する疾患は，関節疾患，脊椎脊髄疾患，外傷，スポーツ障害，骨軟部腫瘍，骨粗鬆症をはじめ多岐にわたる。さらに，専門分野ごとに日々の進歩が著しい。整形外科専門医を取得するためには膨大な知識の習得と整理が必要となる。整形外科専門医試験を受験する多くの医師は，①過去問題，②『整形外科卒後研修Q＆A』，③整形外科学の教科書のいわゆる3本柱を用いて受験対策を行っている。
　『整形外科卒後研修Q＆A』は，日本整形外科学会Q＆A委員会によって編集されている整形外科専門医の取得のための必読書である。問題編は，これまでに専門医試験に出題された問題を中心に構成され，解説編では，その分野の専門医による解説文が掲載され，参考文献が付記されている。受験者はQ＆Aを読み，不明な点については整形外科学の教科書から過去問題に相当する箇所を探し，精読したうえで知識の整理を行う。教科書に記載がない箇所については，参考文献を取り寄せて知識を補填する。しかしながら，問題数の多さ，出題範囲の広さなどから，勤務しながらの試験勉強には大変な労力を要するというのが実情であろう。
　そのような折，メジカルビュー社から，専門医に要求される知識を簡便に習得することを目的とした知識の整理書の出版について打診された。専門医試験の受験の準備に苦労している後輩の先生方に，少しでも役に立てればという気持ちで取りまとめをお引き受けした。構成としては，各項目の最初に「合格へのチェック」として，過去問題に類似した問題を掲載した。さらに，関連知識を「知識の整理」としてまとめ，各項目のポイントを「専門医試験ではこんなことが問われる」として注記した。
　執筆にあたっては，筑波大学，千葉大学，北里大学，聖マリアンナ医科大学の先生方に，それぞれの専門分野の箇所を担当していただいた。忙しい日々の業務の中，短期間で執筆にあたっていただいた先生方に御礼申し上げる。
　本書は，整形外科専門医が習得しておくべき最低限の知識をまとめた参考書である。受験対策のローテーションに第4の柱として組み込んでいただき，大いに活用していただければ幸いである。

2024年9月
筑波大学名誉教授・客員教授
いちはら病院名誉院長
山崎正志