新 執刀医のためのサージカルテクニック
上肢
定価 15,400円(税込) (本体14,000円+税)
- B5変型判 296ページ オールカラー,イラスト370点,写真146点
- 2019年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1860-0
電子版
序文
2004年に刊行された『執刀医のためのサージカルテクニック』シリーズは,10年以上にわたって若手整形外科医が手術に臨む際の“バイブル”として多くの先生にご活用いただきました(小生もその1人です)。しかし,発刊から10年以上が経過し,治療コンセプト自体が変わった疾患,低侵襲手術が注目されるようになった疾患,コンセプトは不変でも画期的な新規インプラントが開発された疾患など,各疾患の治療についてこの十数年でさまざまな変化が起こっているのはご承知の通りです。したがって,前版のような手術手技書においても,近年のgold standardに則した改訂が必要になったのは想像に難しくありません。
小生が編集を担当した『新 執刀医のためのサージカルテクニック 上肢』では,①若手整形外科医が経験すべきcommon diseaseの基本的な手術手技,に加えて,②特に上肢で注目されている新しい手術手技や低侵襲手術手技,③手術の際のポイントやピットフォール,について治療経験の豊富な先生に執筆をお願いするとともに,各執筆者が手術の際に注意している点や陥りやすいトラブルの対処方法についても言及していただきました。特に低侵襲手術は従来法と比較してトラブルが多くなる傾向があり,注意が必要です。アドバイスとして記載された各執筆者のメッセージが読者の胸に響き,安全・安心に手術を遂行でき,手術成績向上,ひいては患者様の利益につながれば担当者一同望外の喜びであります。
最後に,本書の刊行にあたって若輩者の小生に編集の大役を任命して下さった日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野 德橋泰明主任教授,『執刀医の心得』をご執筆下さった小生の師でもある日本大学病院院長 長岡正宏教授をはじめ執筆を快く引き受けて下さった先生方,そして多大なご尽力をいただいたメジカルビュー社関係者の皆様,特に辛抱強くお付き合いいただいた同社編集部 阿部篤仁氏にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
2019年3月
板橋区医師会病院整形外科部長
日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野講師
長尾聡哉
小生が編集を担当した『新 執刀医のためのサージカルテクニック 上肢』では,①若手整形外科医が経験すべきcommon diseaseの基本的な手術手技,に加えて,②特に上肢で注目されている新しい手術手技や低侵襲手術手技,③手術の際のポイントやピットフォール,について治療経験の豊富な先生に執筆をお願いするとともに,各執筆者が手術の際に注意している点や陥りやすいトラブルの対処方法についても言及していただきました。特に低侵襲手術は従来法と比較してトラブルが多くなる傾向があり,注意が必要です。アドバイスとして記載された各執筆者のメッセージが読者の胸に響き,安全・安心に手術を遂行でき,手術成績向上,ひいては患者様の利益につながれば担当者一同望外の喜びであります。
最後に,本書の刊行にあたって若輩者の小生に編集の大役を任命して下さった日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野 德橋泰明主任教授,『執刀医の心得』をご執筆下さった小生の師でもある日本大学病院院長 長岡正宏教授をはじめ執筆を快く引き受けて下さった先生方,そして多大なご尽力をいただいたメジカルビュー社関係者の皆様,特に辛抱強くお付き合いいただいた同社編集部 阿部篤仁氏にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
2019年3月
板橋区医師会病院整形外科部長
日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野講師
長尾聡哉
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目次
■執刀医の心得 長岡正宏
■鎖骨骨折に対する観血的整復固定術(ORIF) 島村安則
A. 骨幹部骨折(従来法)
皮切・展開
整復・仮固定
インプラント設置~スクリュー挿入
洗浄・創閉鎖
B. 骨幹部骨折(MIPO法)
皮切・展開
プレートベンディング
プレート挿入・仮固定
スクリュー挿入
C. 遠位端骨折
■上腕骨近位端骨折に対するプレート固定術 池上博泰
皮切と浅層の展開~深層の展開
骨膜の切離~ステイスーチャーの締結
整復操作と整復位の確認
プレート固定~創閉鎖
■上腕骨近位端骨折に対する髄内釘固定術 最上敦彦
アプローチ・皮切~ネイル挿入孔作製
ネイルとターゲットデバイスの連結・挿入~ネイルの位置調整
近位横止めスクリュー固定~追加スクリュー固定
エンドキャップ挿入~創閉鎖
■上腕骨遠位端骨折に対するアナトミカルロッキングプレート固定術 今谷潤也
皮切の作製~アプローチ
尺骨神経の剥離同定,保護
骨折部の整復~固定
肘頭骨切り部分の内固定~創閉鎖
■肘頭骨折に対する観血的整復固定術(ORIF) 高畑智嗣
皮切~骨折部の洗浄
整復・仮固定~K-wire刺入
K-wire近位端の処理
軟鋼線の処理~創閉鎖
■前腕骨骨幹部骨折に対するプレート固定術 泉山 公
整復:短縮解除・回旋解除
骨折部の仮固定,プレート圧着
プレート固定
前腕回内・回外制限の確認~閉創
■橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術 長尾聡哉
徒手整復~皮切
浅層の展開~深層の展開
徒手整復:背側転位型の場合~内固定
閉創
■舟状骨骨折に対する観血的整復固定術(ORIF) 川崎恵吉,稲垣克記
A. 掌側小皮切HCS固定
透視下マーキング~皮切
ガイドピンの刺入
スクリュー長の計測~ドリリング
スクリューの挿入~創閉鎖
B. 背側小皮切HCS固定
マーキング~皮切
ガイドピンの刺入
スクリュー長の計測
スクリューの挿入~創閉鎖
C. 直視下観血的整復固定術(HCS)
皮切~整復
ガイドピンの刺入
ドリリング,スクリュー長の計測
スクリューの挿入~創閉鎖
■手指骨折に対する経皮的鋼線固定術・プレート固定術 大井宏之
徒手整復
皮切
整復・固定~外固定
後療法~抜釘
■小児肘関節周辺骨折の手術:上腕骨顆上骨折の治療 -徒手整復と経皮的鋼線固定について- 平良勝章
徒手整復
経皮的鋼線固定:外側
経皮的鋼線固定:内側
術中X線撮影
■ビーチチェアポジションで行う肩関節鏡視下デブリドマン(滑膜切除・関節包切離術・その他) 洞口 敬
後方ポータルの決め方と関節鏡の挿入~後方ポータルからのシェーバーの挿入
肩甲上腕関節内部のデブリドマン~肩甲上腕関節の関節包の切離
肩峰下滑液包への関節鏡挿入~ワーキングポータルの作製
肩峰下滑液包のデブリドマン~閉創
■肘関節鏡視下手術の実際 富田一誠
肘関節鏡視下手術の共通手技~関節鏡手術の4 steps
前方鏡視
後方鏡視
後外側鏡視~創閉鎖
■肘部管症候群の手術:尺骨神経単純除圧術と皮下前方移動術 長尾聡哉
A. 尺骨神経単純除圧術
尺骨神経の同定
Osborne靱帯の切離
尺骨神経脱臼の有無の確認
洗浄・閉創
B. 尺骨神経皮下前方移動術
尺骨神経の同定
Osborne靱帯の切離~近位の展開
尺骨神経の挙上・前方移動~尺骨神経の制動
洗浄・閉創
■手根管症候群に対する手根管開放術およびCamitz法による母指対立再建 内山茂晴,鴨居史樹
A. open carpal tunnel release(OCTR)
皮切の決定~局所麻酔
正中神経を同定~TCL全長を露出
TCL尺側を切離~反回枝同定,占拠病変確認
ターニケット解除~創閉鎖
B. endoscopic carpal tunnel release(ECTR)
entry portal作製~exit portal作製
curved dissector挿入~cannula assembly挿入
関節鏡視下TCL切離
TCL完全切離の確認
C. Camitz法による母指対立再建
皮切~手掌腱膜挙上,OCTR
PL腱を前腕創へ引き抜く
短母指外転筋腱同定~母指以外の創閉鎖
母指最大掌側外転位で腱縫合
■ばね指に対する腱鞘切開術 亀山 真
皮切~術野の展開
腱鞘切開
追加手技
治療効果の確認~術後処置
■指屈筋腱断裂に対する吉津1法と早期自動運動療法 森谷浩治
皮切~展開および両断端の処置
屈筋腱縫合
腱鞘の追加切離~合併する神経・血管損傷に対する処置
止血および創閉鎖~術後外固定
■切創に伴う手指伸筋腱断裂に対する腱縫合術 南野光彦
皮切~創部の展開
腱損傷部の同定
腱縫合~創閉鎖
後療法
■前腕・手部神経損傷に対する神経縫合と神経移植 佐野和史
神経損傷部位の展開
神経断端の新鮮化
神経縫合もしくは神経移植
閉創と外固定
■上肢軟部腫瘍の手術 大幸英至
A. 生検の基礎
B. 摘出:代表症例①…脂肪腫
麻酔
皮切
摘出
摘出後
C. 摘出:代表症例②…神経鞘腫
麻酔
皮切
摘出
後処置
■鎖骨骨折に対する観血的整復固定術(ORIF) 島村安則
A. 骨幹部骨折(従来法)
皮切・展開
整復・仮固定
インプラント設置~スクリュー挿入
洗浄・創閉鎖
B. 骨幹部骨折(MIPO法)
皮切・展開
プレートベンディング
プレート挿入・仮固定
スクリュー挿入
C. 遠位端骨折
■上腕骨近位端骨折に対するプレート固定術 池上博泰
皮切と浅層の展開~深層の展開
骨膜の切離~ステイスーチャーの締結
整復操作と整復位の確認
プレート固定~創閉鎖
■上腕骨近位端骨折に対する髄内釘固定術 最上敦彦
アプローチ・皮切~ネイル挿入孔作製
ネイルとターゲットデバイスの連結・挿入~ネイルの位置調整
近位横止めスクリュー固定~追加スクリュー固定
エンドキャップ挿入~創閉鎖
■上腕骨遠位端骨折に対するアナトミカルロッキングプレート固定術 今谷潤也
皮切の作製~アプローチ
尺骨神経の剥離同定,保護
骨折部の整復~固定
肘頭骨切り部分の内固定~創閉鎖
■肘頭骨折に対する観血的整復固定術(ORIF) 高畑智嗣
皮切~骨折部の洗浄
整復・仮固定~K-wire刺入
K-wire近位端の処理
軟鋼線の処理~創閉鎖
■前腕骨骨幹部骨折に対するプレート固定術 泉山 公
整復:短縮解除・回旋解除
骨折部の仮固定,プレート圧着
プレート固定
前腕回内・回外制限の確認~閉創
■橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術 長尾聡哉
徒手整復~皮切
浅層の展開~深層の展開
徒手整復:背側転位型の場合~内固定
閉創
■舟状骨骨折に対する観血的整復固定術(ORIF) 川崎恵吉,稲垣克記
A. 掌側小皮切HCS固定
透視下マーキング~皮切
ガイドピンの刺入
スクリュー長の計測~ドリリング
スクリューの挿入~創閉鎖
B. 背側小皮切HCS固定
マーキング~皮切
ガイドピンの刺入
スクリュー長の計測
スクリューの挿入~創閉鎖
C. 直視下観血的整復固定術(HCS)
皮切~整復
ガイドピンの刺入
ドリリング,スクリュー長の計測
スクリューの挿入~創閉鎖
■手指骨折に対する経皮的鋼線固定術・プレート固定術 大井宏之
徒手整復
皮切
整復・固定~外固定
後療法~抜釘
■小児肘関節周辺骨折の手術:上腕骨顆上骨折の治療 -徒手整復と経皮的鋼線固定について- 平良勝章
徒手整復
経皮的鋼線固定:外側
経皮的鋼線固定:内側
術中X線撮影
■ビーチチェアポジションで行う肩関節鏡視下デブリドマン(滑膜切除・関節包切離術・その他) 洞口 敬
後方ポータルの決め方と関節鏡の挿入~後方ポータルからのシェーバーの挿入
肩甲上腕関節内部のデブリドマン~肩甲上腕関節の関節包の切離
肩峰下滑液包への関節鏡挿入~ワーキングポータルの作製
肩峰下滑液包のデブリドマン~閉創
■肘関節鏡視下手術の実際 富田一誠
肘関節鏡視下手術の共通手技~関節鏡手術の4 steps
前方鏡視
後方鏡視
後外側鏡視~創閉鎖
■肘部管症候群の手術:尺骨神経単純除圧術と皮下前方移動術 長尾聡哉
A. 尺骨神経単純除圧術
尺骨神経の同定
Osborne靱帯の切離
尺骨神経脱臼の有無の確認
洗浄・閉創
B. 尺骨神経皮下前方移動術
尺骨神経の同定
Osborne靱帯の切離~近位の展開
尺骨神経の挙上・前方移動~尺骨神経の制動
洗浄・閉創
■手根管症候群に対する手根管開放術およびCamitz法による母指対立再建 内山茂晴,鴨居史樹
A. open carpal tunnel release(OCTR)
皮切の決定~局所麻酔
正中神経を同定~TCL全長を露出
TCL尺側を切離~反回枝同定,占拠病変確認
ターニケット解除~創閉鎖
B. endoscopic carpal tunnel release(ECTR)
entry portal作製~exit portal作製
curved dissector挿入~cannula assembly挿入
関節鏡視下TCL切離
TCL完全切離の確認
C. Camitz法による母指対立再建
皮切~手掌腱膜挙上,OCTR
PL腱を前腕創へ引き抜く
短母指外転筋腱同定~母指以外の創閉鎖
母指最大掌側外転位で腱縫合
■ばね指に対する腱鞘切開術 亀山 真
皮切~術野の展開
腱鞘切開
追加手技
治療効果の確認~術後処置
■指屈筋腱断裂に対する吉津1法と早期自動運動療法 森谷浩治
皮切~展開および両断端の処置
屈筋腱縫合
腱鞘の追加切離~合併する神経・血管損傷に対する処置
止血および創閉鎖~術後外固定
■切創に伴う手指伸筋腱断裂に対する腱縫合術 南野光彦
皮切~創部の展開
腱損傷部の同定
腱縫合~創閉鎖
後療法
■前腕・手部神経損傷に対する神経縫合と神経移植 佐野和史
神経損傷部位の展開
神経断端の新鮮化
神経縫合もしくは神経移植
閉創と外固定
■上肢軟部腫瘍の手術 大幸英至
A. 生検の基礎
B. 摘出:代表症例①…脂肪腫
麻酔
皮切
摘出
摘出後
C. 摘出:代表症例②…神経鞘腫
麻酔
皮切
摘出
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そろそろ助手を卒業ですか? 実は執刀医は手術のこんなところに注意しているんです!
執刀医の視点に立った記述で,手術のペース配分が理解しやすいように, 各手術手技の流れを「起承転結」の4段階に分けて, 豊富な図・イラストと具体的かつ簡潔な解説で構成。また, 是非とも継承したいテクニックや思わぬアクシデントを招きそうな注意点, 覚えておくべき解剖学的に重要な点など, 場面ごとに, 最前線で活躍する医師が実際に経験して得た知識を「アドバイス」や「ピットフォール」として随所に掲載。さらに助手を卒業していざ執刀医となった医師のニーズに応える情報も提供。
本書『上肢』では,上肢手術の基本的な手技について,手術の流れとペース配分が理解しやすいように,手術を「起承転結」の4段階に分けて解説している。特に執刀医になりたての整形外科医が経験することが多い疾患について,観血的整復固定術(ORIF),鏡視下手術,骨折の固定術,縫合術など,豊富なイラストでわかりやすく紹介。また,場面ごとに,是非とも継承したいテクニックや思わぬアクシデントを招きそうな注意点,覚えておくべき解剖学的ポイントなど,最前線で活躍する医師が実際に経験して得た知識を「アドバイス」として随所に掲載。
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