Crosslink basic リハビリテーションテキスト
人間発達学
定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
- B5判 288ページ オールカラー,イラスト300点,写真50点
- 2021年11月1日刊行
- ISBN978-4-7583-2062-7
電子版
序文
編集の序
医療系の専門職や学生が「人間発達学」を学ぶ意義とは何だろうか。それは,「人間発達学」を学ぶことにより,人間は生涯発達する存在であり,患者や利用者とかかわって仕事をする以上,その対象者がどのようにして現在の状態に至った(発達した)のか,またこれからどのようになっていくのか(発達していくのか)を知ることが,対象者をより深く理解することにつながる点にあるのではないだろうか。また見方を変えれば,目の前の対象者は突然現在の状態になったのではなく,個々人が長い来歴をもってそこに存在していることに着目すべきであることを教えてくれる点にあるのではないだろうか。これは対象が子どもであろうが成人であろうが関係なく,等しく考慮され,尊重されるべきである。
本書は,これまで運動発達に重点が置かれることの多かった人間発達学のテキストとは異なり,発達という現象を多面的にとらえて記述しようと試みた「新しい」人間発達学のテキストである。近年の小児領域のリハビリテーションでは,脳性麻痺や先天性の疾患による運動障害,知的障害だけでなく,発達障害,小児がん,新生児集中治療室での早産児への介入など,子どもの多様な疾病や障害に対応することが求められている。本書で章立てられている社会性の発達や情動・愛着の発達,嚥下の発達,言語能力の発達,さらに家族関係の発達の内容は,出生から成人期に至るまで詳細に記述されており,最近の多様なニーズに対応するために必要な発達の知識を提供し,有益な情報を与えるものと確信している。
加えて,もう1つの本書の特徴として,発達科学の知見を基に科学的にコンセンサスの得られている内容を整理して説明されている点が挙げられる。科学は日々進歩しており,発達に関連のある発達科学の知見の広がりには目を見張るものがある。そして科学的にコンセンサスが得られた内容が基盤となって,さらに新しい知見が積み上げられていくことで,発達のメカニズムが徐々に明らかになってきている。その過程ではこれまでのテキストに記述されていた内容が必ずしも正しいわけではなく,修正されるべき内容も含まれる。これらの新しい科学的知見は小児領域の臨床現場でも活用されるべきであり,これからの時代を担う医療系の専門職や学生には,この一端に触れて,子どもの発達の正しい理解へとつながることを編著者として切望するところである。
最後に,本書の内容を学ぶことにより,子どもの発達理解だけでなく,ヒトとしての成り立ちの理解が得られ,ヒトと接する際の他者理解,ひいては自己の理解につながっていくならば,編者として望外の喜びである。
2021年9月
浅野大喜
医療系の専門職や学生が「人間発達学」を学ぶ意義とは何だろうか。それは,「人間発達学」を学ぶことにより,人間は生涯発達する存在であり,患者や利用者とかかわって仕事をする以上,その対象者がどのようにして現在の状態に至った(発達した)のか,またこれからどのようになっていくのか(発達していくのか)を知ることが,対象者をより深く理解することにつながる点にあるのではないだろうか。また見方を変えれば,目の前の対象者は突然現在の状態になったのではなく,個々人が長い来歴をもってそこに存在していることに着目すべきであることを教えてくれる点にあるのではないだろうか。これは対象が子どもであろうが成人であろうが関係なく,等しく考慮され,尊重されるべきである。
本書は,これまで運動発達に重点が置かれることの多かった人間発達学のテキストとは異なり,発達という現象を多面的にとらえて記述しようと試みた「新しい」人間発達学のテキストである。近年の小児領域のリハビリテーションでは,脳性麻痺や先天性の疾患による運動障害,知的障害だけでなく,発達障害,小児がん,新生児集中治療室での早産児への介入など,子どもの多様な疾病や障害に対応することが求められている。本書で章立てられている社会性の発達や情動・愛着の発達,嚥下の発達,言語能力の発達,さらに家族関係の発達の内容は,出生から成人期に至るまで詳細に記述されており,最近の多様なニーズに対応するために必要な発達の知識を提供し,有益な情報を与えるものと確信している。
加えて,もう1つの本書の特徴として,発達科学の知見を基に科学的にコンセンサスの得られている内容を整理して説明されている点が挙げられる。科学は日々進歩しており,発達に関連のある発達科学の知見の広がりには目を見張るものがある。そして科学的にコンセンサスが得られた内容が基盤となって,さらに新しい知見が積み上げられていくことで,発達のメカニズムが徐々に明らかになってきている。その過程ではこれまでのテキストに記述されていた内容が必ずしも正しいわけではなく,修正されるべき内容も含まれる。これらの新しい科学的知見は小児領域の臨床現場でも活用されるべきであり,これからの時代を担う医療系の専門職や学生には,この一端に触れて,子どもの発達の正しい理解へとつながることを編著者として切望するところである。
最後に,本書の内容を学ぶことにより,子どもの発達理解だけでなく,ヒトとしての成り立ちの理解が得られ,ヒトと接する際の他者理解,ひいては自己の理解につながっていくならば,編者として望外の喜びである。
2021年9月
浅野大喜
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目次
第 1 章 総論
1 人間発達学の基礎 [浅野大喜]
(1) 発達概論
(2) 身体の発達
(3) 心理・精神機能の発達
第 2 章 各論
1 胎児期の発達 [儀間裕貴]
(1) 胎生期
(2) 中枢神経系の発達
(3 )臓器の発達
(4) 感覚の発達
(5) 運動・行動の発達
(6) 身体表象機能の発達
(7) 睡眠の発達
(8) 胎児の評価
(9 )早産・低出生体重児の発達特性
2 運動の発達 [浅野大喜]
(1) 運動発達とは
(2) 粗大運動の発達過程
(3) 微細運動および上肢機能の発達
(4) 運動発達の理論
(5 )運動能力の加齢による低下
3 認知能力の発達 [島谷康司]
(1) 感覚・知覚・認知とは
(2) 感覚・知覚の発達
(3) 多感覚の統合の発達
(4) 自己身体認知と自己概念の発達
(5 )PiagetとVygotskyの発達理論
(6) 物の認知の発達
4 社会性の発達 [信迫悟志]
(1) 社会性の発達
(2) 新生児期の社会性
(3) 乳児期(生後2カ月以降)の社会性
(4) 乳幼児期(生後9カ月以降)の社会性
(5) 社会性の発達に重要な模倣の発達
(6) 1歳半~3歳児の社会性
(7) 4~5歳児の社会性
(8) 自他同一と自他区別,社会性の神経基盤
(9) 4歳半以前の心の理論
(10) 学童期の社会性
(11)青年期以降の社会性
(12)自閉症スペクトラム障害
5 情動・愛着の発達 [伊藤昌子]
(1) 情動の知覚・発達
(2) 愛着の発達
6 言語の発達 [萩原広道]
(1) 言語発達をとらえる視点
(2) 言語の発達過程
(3 )言語発達を支える環境要因
7 摂食嚥下の発達 [中村達也]
(1) 摂食嚥下機能の基礎知識
(2) 胎児期の摂食嚥下機能の発達
(3) 新生児期から乳児期の哺乳機能の発達
(4) 離乳期の摂食嚥下機能の発達
(5) 食事の好き嫌いと偏食
(6) 摂食嚥下機能の加齢変化
8 遊び・生活能力の発達 [小島賢司]
(1) 遊びの発達
(2) 身体の発達に伴う遊び・模倣遊び・ルール遊びの発達(Piagetの遊びの分類)
(3) 社会性の発達に伴う遊びの変化
(4) 日常生活活動と手指の発達
9 道徳性の発達 [森岡 周]
(1) 古典的発達理論
(2) 善悪の区別
(3) 向社会的行動
(4) 道徳的感情・ジレンマ
(5) 自己制御
(6) 規則の理解
(7) 公平性の意識
(8) 排除と偏見
10 家族関係の発達 [樋室伸顕]
(1) 家族とは
(2 )家族の構造
(3) リハビリテーションにおける家族
11 発達の評価 [楠本泰士]
(1) 定型発達における運動・認知の評価
(2) 低出生体重児・早産児における評価と注意点
(3 )発達の遅れがある子どもの評価
(4) 老年期の評価
12 発達の統合的理解 [浅野大喜]
(1) 発達の各領域間の相互作用
(2) 発達の障害の理解
(3) 子どもの健全な発達に向けて
1 人間発達学の基礎 [浅野大喜]
(1) 発達概論
(2) 身体の発達
(3) 心理・精神機能の発達
第 2 章 各論
1 胎児期の発達 [儀間裕貴]
(1) 胎生期
(2) 中枢神経系の発達
(3 )臓器の発達
(4) 感覚の発達
(5) 運動・行動の発達
(6) 身体表象機能の発達
(7) 睡眠の発達
(8) 胎児の評価
(9 )早産・低出生体重児の発達特性
2 運動の発達 [浅野大喜]
(1) 運動発達とは
(2) 粗大運動の発達過程
(3) 微細運動および上肢機能の発達
(4) 運動発達の理論
(5 )運動能力の加齢による低下
3 認知能力の発達 [島谷康司]
(1) 感覚・知覚・認知とは
(2) 感覚・知覚の発達
(3) 多感覚の統合の発達
(4) 自己身体認知と自己概念の発達
(5 )PiagetとVygotskyの発達理論
(6) 物の認知の発達
4 社会性の発達 [信迫悟志]
(1) 社会性の発達
(2) 新生児期の社会性
(3) 乳児期(生後2カ月以降)の社会性
(4) 乳幼児期(生後9カ月以降)の社会性
(5) 社会性の発達に重要な模倣の発達
(6) 1歳半~3歳児の社会性
(7) 4~5歳児の社会性
(8) 自他同一と自他区別,社会性の神経基盤
(9) 4歳半以前の心の理論
(10) 学童期の社会性
(11)青年期以降の社会性
(12)自閉症スペクトラム障害
5 情動・愛着の発達 [伊藤昌子]
(1) 情動の知覚・発達
(2) 愛着の発達
6 言語の発達 [萩原広道]
(1) 言語発達をとらえる視点
(2) 言語の発達過程
(3 )言語発達を支える環境要因
7 摂食嚥下の発達 [中村達也]
(1) 摂食嚥下機能の基礎知識
(2) 胎児期の摂食嚥下機能の発達
(3) 新生児期から乳児期の哺乳機能の発達
(4) 離乳期の摂食嚥下機能の発達
(5) 食事の好き嫌いと偏食
(6) 摂食嚥下機能の加齢変化
8 遊び・生活能力の発達 [小島賢司]
(1) 遊びの発達
(2) 身体の発達に伴う遊び・模倣遊び・ルール遊びの発達(Piagetの遊びの分類)
(3) 社会性の発達に伴う遊びの変化
(4) 日常生活活動と手指の発達
9 道徳性の発達 [森岡 周]
(1) 古典的発達理論
(2) 善悪の区別
(3) 向社会的行動
(4) 道徳的感情・ジレンマ
(5) 自己制御
(6) 規則の理解
(7) 公平性の意識
(8) 排除と偏見
10 家族関係の発達 [樋室伸顕]
(1) 家族とは
(2 )家族の構造
(3) リハビリテーションにおける家族
11 発達の評価 [楠本泰士]
(1) 定型発達における運動・認知の評価
(2) 低出生体重児・早産児における評価と注意点
(3 )発達の遅れがある子どもの評価
(4) 老年期の評価
12 発達の統合的理解 [浅野大喜]
(1) 発達の各領域間の相互作用
(2) 発達の障害の理解
(3) 子どもの健全な発達に向けて
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養成校の専門基礎科目に対応! 基本的な知識から最新の研究知見に基づいたハイレベルな内容まで学べるテキスト
理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)の養成校の専門基礎科目に対応したテキストシリーズ。
学習内容と国家試験を結びつける[学習の要点],実習や臨床現場にリンクする[臨床に役立つアドバイス]など,「なぜそれを勉強するのか」「将来にどのようにつながるのか」をイメージしやすい知識を補足し,用語解説なども適宜追加。項目末の[まとめ]では,学習の理解度を確認するために簡単な問題を掲載。噛み砕いた表現と多数の図表で,評価・治療方法について視覚的にも理解しやすい紙面に加え,各見出しごとの[POINT]で,どこに重点を置いて学習すべきかが一目でわかる構成となっている。
本巻では,胎児期から成人・老年まで,人間の生涯における心身の正常発達(変化)について幅広い観点から解説し,運動や遊び,ADLの発達といったPT・OT向けの内容に加えて,言語,嚥下の発達などST向けの内容も網羅。
リハビリテーションを学ぶ学生がさまざまな知識と臨床とのつながりをイメージしやすく,また最新の研究知見に基づいた記載も充実しておりハイレベルな内容まで学べるテキスト。