作業療法学 ゴールド・マスター・テキスト

精神障害作業療法学(第3版)

第3版

精神障害作業療法学(第3版)

■編集 山口 芳文
野本 義則

定価 4,840円(税込) (本体4,400円+税)
  • B5判  388ページ  オールカラー,イラスト200点
  • 2021年2月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-2046-7

能動学習や新しい実習形式への対応,国家試験対策を充実させたフルカラー紙面の第3版!

作業療法学専門分野の講義用テキスト・シリーズが5年ぶりの改訂。第3版では,これからの学生に役立つ内容を意識し,能動学習の手助けとなる課題の提示,新しい実習形式である「作業療法参加型臨床実習」への対策となるような解説を追加し,また国家試験対策を充実させ,さらに巻末付録として症例集の追加などを行った。
本巻では,現在の精神科医療を取り巻く状況を述べた後,精神障害領域を理解する土台となる基礎理論について記載。そのうえで,評価手法,疾患別作業療法を症例紹介も交えながら解説するとともに,その重要性が高まっている地域作業療法についても解説。また,精神障害者の行動特徴を示したイラストを多数盛り込み,精神障害領域をこれから学ぶ読者にも手に取りやすい紙面構成となっている。


序文

第3版 監修の序

 今回,『作業療法学ゴールド・マスター・テキスト』シリーズは2010年の発刊から2回目の改訂を迎え,第3版出版の運びとなりました。
本テキストシリーズは「作業療法学概論」・「作業学]・「作業療法評価学」・「身体障害作業療法学」・「高次脳機能障害作業療法学」・「精神障害作業療法学」・「発達障害作業療法学」・「老年期作業療法学」・「地域作業療法学」・「日常生活活動学(ADL)」・「福祉用具学」の11巻に新しく「義肢装具学」を加え,全12巻となります。
 改訂作業が始まった2020年は作業療法教育の変革の年でもありました。臨床実習の形態においては,従来の,学生が臨床実習指導者の下で対象者の評価から治療まで行うものから,学生が実習指導者の行う対象者の評価から治療までを傍らで見学し,模倣してみる,一部対象者で実施するという流れで,その場で実習指導者が学生にフィードバックするクリニカル・クラークシップの作業療法参加型臨床実習への転換,地域実習の追加という大きな変更がありました。
 そこで執筆者の先生方には,教科書の内容が作業療法参加型臨床実習にどのように関連しているのか示していただき,一部ですが,動画も提供していただきました。
 また,2020年はコロナ禍により多くの学校が教育方法の変革を求められた年でもありました。対面授業を遠隔授業に切り替え,実習や実技科目が大きな影響を受けました。学外での臨床実習は模擬患者を用いた学内実習に切り替えたところも多かったかと思います。このような状況の中でアクティブ・ラーニングの重要性が再認識されたように思います。従来の,教室に学生を集めて講義し試験やレポートを課すスタイルから,学生が自宅でネット配信された講義動画を視聴し,その都度,課題レポートを提出し,教員が評価とコメントをつけて返却することが毎回繰り返されました。こう書くと何がアクティブ・ラーニングなのかと思われるかもしれませんが,学生が講義動画から課題を理解するために自分のペースに合わせて動画を繰り返し観て,理解したうえで調べ,課題を分析するということを学生自身が行う授業形態です。これを進めるために,教員は個々の学生と双方向の情報をやり取りする機会を増やした結果,個々の学生への指導量は増えましたが,学生の主体的な学びが伸びたように思われます。
 eラーニングに関しては,文部科学省が2024年には小中高でデジタル教科書の配布を始めます。今回の遠隔授業の経験から,動画媒体がアクティブ・ラーニングにも役立つと考えます。作業療法学ゴールド・マスター・テキストシリーズも,時代の要請に応えられるよう変化させていきたいと考えています。
 本シリーズをよりよいものにするためにも諸氏の忌憚ないご意見を聞かせていただければ幸いです。

2020年12月

文京学院大学
長﨑重信

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第3版 編集の序

 本書は『作業療法学ゴールド・マスター・テキスト』シリーズの,精神科領域における作業療法についての教科書です。山口芳文先生編集の下,「精神障害作業療法を学ぶ学生諸君にとって,順序立てて系統的に学ぶのに最適な教科書」として,2010年に初版が刊行されました。多くの学生や臨床現場の作業療法士に手に取っていただいたため,続いて2015年に改訂第2版が刊行されました。改訂第2版も,山口先生による「系統的な学習のための教科書」という編集方針を基本に,学習内容をイメージしやすくなるよう,図表やイラストを用い,さらに「Case Study」により疾患を具体的にとらえられる,臨場感溢れる教科書となりました。
 今回の第3版でも,改訂第2版で好評いただいた図表やイラストをふんだんに用いました。また「Case Study」も,そのケースへの対応などを問う,「Question」を加筆しながら踏襲しました。さらに,難易度が年々高くなってきているという「作業療法士国家試験」,作業療法士学校養成施設指定規則改正に伴う「作業療法参加型臨床実習」,文部科学省が強調する学力の3要素の一つである「主体性をもって学ぶ態度」への対応を心がけることにより,臨床の作業療法士や学生を取り巻く状況に対応できる教科書となっています。具体的には,「試験対策Point」という囲み記事で,国家試験の頻出事項などを網羅し,「作業療法参加型臨床実習に向けて」という囲み記事に,各単元の学習内容を作業療法参加型臨床実習で活かすポイント,また,見学・模倣・実施のポイントを記載しました。さらに,精神医学や基礎作業学などと照らし合わせた自己学習を促す課題,主体的な学習やクラスメイトとの相互の確認を促すような課題を「アクティブラーニング」という囲み記事として掲載しました。
 もちろん「精神障害作業療法を系統的に学習できる教科書」であることに変わりはなく,精神医療の歴史と現状,精神障害作業療法の基礎概念や理論,精神障害作業療法における評価学や治療学,精神科領域の地域作業療法,といったことも理解できる構成となっており,具体的な臨床像も巻末の事例集により理解できます。
 本書は,精神障害作業療法を研究する先生方,精神障害作業療法の臨床現場で活躍する先生方にご執筆をいただき,充実した内容の教科書となりました。ご執筆いただいた先生方に心より御礼申し上げます。
 第3版の編集に当たって,元々私は山口先生の下で編集協力者として補佐をさせていただいておりました。しかし,2020年10月に山口先生が逝去され,その遺命に従い,編集の任を引き継がせていただきました。本書の編集では,山口先生が常々おっしゃられていた「学生や臨床家などの読み手にとってわかりやすいもの」となるように,最大限の配慮を行いました。精神障害作業療法を学ぶ学生にとっては実践的で系統的な学習をするのに最適な教科書であり,臨床で活躍する作業療法士にとっては,臨床での疑問の解決や再学習,実習指導の一助として活用できるものと考えております。

2020年12月

野本義則
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目次

0 Introduction   山口芳文,野本義則
 1 精神障害作業療法学とは
  ① 精神障害における作業療法
  ② ケースを通して学ぶ精神科医療

1 基礎概念
 1 精神科医療状況概論   山口芳文,野本義則
  ① 精神科医療を取り巻く状況
  ② わが国の精神科作業療法の変遷
 2 精神科領域での基礎理論   山口芳文,野本義則,水野高昌,奥原孝幸,鈴木久義
  ① 自己理解
  ② 精神分析学
  ③ 来談者中心療法
  ④ 発達理論
  ⑤ 集団理論
  ⑥ 行動理論・学習理論,行動療法
  ⑦ 認知行動療法(CBT )
  ⑧ 情報処理理論
 3 精神科臨床の基礎   山口芳文,野本義則,奥原孝幸,鈴木久義,埜﨑都代子
  ① 生活臨床
  ② ストレス理論
  ③ 生活技能訓練法(SST)
  ④ 自律訓練法と弛緩訓練法
  ⑤ 薬物療法
  ⑥ 予後と再発
  ⑦ 病識
  ⑧ 家族研究
  ⑨ 治癒係数
  ⑩就労
 4 精神科作業療法の基礎   山口芳文,野本義則,新泉一美,木村奈緒子
  ① 感覚統合理論
  ② 作業行動理論と人間作業モデル
  ③ 障害論
  Case Study Answer

2 評価学
 1 評価の流れと評価手段   山口芳文,野本義則
  ① 精神障害作業療法の評価の全体像
  ② 記録の書き方
  ③ 情報収集
  ④ 観察
  ⑤ 面接法
  ⑥ 検査法
  チェックテスト
 2 各種検査法   山口芳文,野本義則,水野高昌,埜﨑都代子,鈴木久義
  ① 興味チェックリスト
  ② house-tree-person(HTP)テスト
  ③ 集団評価
  ④ 日常生活行動評価
  ⑤ 職業関連評価
  ⑥ 社会機能評価
  ⑦ カナダ作業遂行測定(COPM)
  ⑧ Rehab
 3 評価のまとめ   山口芳文,野本義則,大澤 彩
  ① 評価から治療目標設定まで
  ② 事例研究の様式
  ③ 治療目標
  ④ 障害論(ICFの例)
  ⑤ CCS
  ⑥ 評価実習のポイント
  Case Study Answer

3 治療学
 1 治療構造   山口芳文,野本義則
  ① 治療過程と治療構造
  ② 治療的態度,かかわり方
  ③ 作業活動
  ④ 集団
  ⑤ 時間,頻度,場所
 2 治療・援助の場   野本義則,埜﨑都代子
  ① 精神科作業療法
  ② 外来作業療法
  ③ 精神科デイ・ケア,ナイト・ケア,ショート・ケア
  ④ 精神療養病棟
  ⑤ 認知症治療病棟
  ⑥ 精神保健福祉センター
  ⑦ 作業所
  ⑧ グループホーム
 3 疾患別作業療法  山口芳文,野本義則,奥原孝幸,鈴木久義,埜﨑都代子,水野高昌,新泉一美,生方 剛
 3-1 症状に即した対応(不安,無為・自閉,退行,妄想,うつ,躁)
  ① 不安の状態
  ② 無為・自閉の状態
  ③ 退行の状態
  ④ 妄想の状態
  ⑤ うつの状態
  ⑥ 躁の状態
 3-2 症状性を含む器質性精神障害
  ① 病理と成因
  ② 行動の特徴(経過,症状,作業療法評価)
  ③ 治療目標と作業療法
 3-3 精神作用物質使用による精神および行動の障害
  ① 精神作用物質
  ② 精神作用物質による障害
  ③ アルコール依存症
  ④ 薬物依存症
 3-4 統合失調症
  ① 病理と成因
  ② 破瓜型
  ③ 緊張型・妄想型
 3-5 気分(感情)障害
  ① 病理と成因
  ② 症状と行動の特徴
  ③ 治療目標
  ④ 治療構造(うつ病)
  ⑤ 治療構造(躁病)
  ⑥ 薬物治療
 3-6 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害
  ① 不安障害
  ② 不安障害の作業療法
  ③ ストレス関連障害の作業療法
  ④ 解離性障害(不安が精神症状として出現するもの)
  ⑤ 身体表現性障害(転換性障害を含む,不安が身体症状として出現するもの
 3-7 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
  ① 摂食障害
  ② 病理と成因
  ③ 症状と行動の特徴
  ④ 治療目標
  ⑤ 治療構造
 3-8 パーソナリティ障害群
  ① パーソナリティ障害群の分類
  ② 境界性パーソナリティ障害
  ③ 作業療法導入の目的
  ④ 治療構造
  ⑤ 禁忌
 3-9 知的障害
  ① 知的障害の原因
  ② 知的障害の分類
  ③ 知的障害の特徴
  ④ 知的障害の作業療法
  ⑤ 作業療法士の役割
 3-10 特異的発達障害,広汎性発達障害
  ① 特異的発達障害(SDD:specific developmental disorder)
  ② 広汎性発達障害(pervasive developmental disorders)
  ③ 治療教育と作業療法
 3-11 注意欠如・多動性障害,学習障害
  ① ADHD
  ② LD
  ③ 治療教育と作業療法
  ④ 合併症・2次的障害への対処
 3-12 てんかん
  ① てんかん発作の分類
  ② 治療
  ③ てんかんの作業療法
 3-13 認知症
  ① 病態(4大認知症)
  ② 認知症の作業療法の目的
  ③ 認知症の評価
  Case Study Answer

4 地域作業療法学
 1 地域生活支援   古賀 誠,鈴木久義,埜﨑都代子
  ① 精神科訪問看護
  ② 包括型地域生活支援プログラム(ACT )
  ③ ケアマネジメント
 2 就労支援   埜﨑都代子
  ① 福祉的就労と制度
  ② 就労への移行支援
 3 関連法規,制度   古賀 誠,鈴木久義,山口多希代
  ① 障害者総合支援法
  ② 心神喪失者等医療観察法
  ③ 精神保健福祉法
  ④ 社会福祉制度
  ⑤ 介護保険制度
  ⑥ 社会資源
  Case Study Answer

事例集
 事例1 器質性精神障害  山口芳文,野本義則
 事例2 アルコール依存症  奥原孝幸
 事例3 統合失調症  鈴木久義
 事例4 うつ病  埜﨑都代子
 事例5 強迫性障害  奥原孝幸
 事例6 神経性無食欲症  﨑都代子
 事例7 パーソナリティ障害群  水野高昌
 事例8 知的障害  新泉一美
 事例9 広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)  埜﨑都代子
 事例10 注意欠如・多動性障害  埜﨑都代子
 事例11 てんかん(てんかん性精神障害,精神遅滞)  奥原孝幸
 事例12 認知症   生方 剛
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