認知症をもつ人への
作業療法アプローチ
視点・プロセス・理論
改訂第2版
定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
- B5判 344ページ 2色,イラスト40点,写真50点
- 2019年8月3日刊行
- ISBN978-4-7583-1944-7
電子版
序文
改訂第2版 監修の序
2017年4月,京都において第32回国際アルツハイマー病協会国際会議が開催され,世界各国から約4,000名と多くの人々が参加した。会議で印象に残った点は,さまざまな形で認知症をもつ人本人が参加し,積極的に発言しようとしていたこと,多くのプログラムで,認知症をもつ人を支える活動や地域作りが国を越えて広がっていることであった。また,2018年12月には首相官邸において第1回の認知症施策推進関係閣僚会議が開催され,認知症の予防,認知症を発症しても住み慣れた地域で安心して暮らすための「認知症バリアフリー」などに迅速に取り組む方針が示された。これはまさに認知症をもつ人が「援助を受ける存在」から「主体として生きる存在」へと変化したことを示している。今や認知症は家族,医療者,介護者だけの問題ではなく,国民全体で考えていかなくてはならない課題である。今こそ作業療法が中心概念として価値をおいてきた「作業」を,認知症をもつ人本人が生活する地域に生かすべきである。
2014年に初版「認知症をもつ人への作業療法アプローチ-視点・プロセス・理論-」が世に出てから5年が経過した。この5年間に冒頭の国際会議の日本での開催を始め,認知症を取り巻く環境が大きく変わった。2014年は,2013年にアメリカ精神医学会によって出版されたDSM-5が日本語版として出版された年である。DSM-5では,「神経認知症候群(neurocognitive disorder)」という新たな用語が導入され,神経学的な課題がいかに行動制限や生活障害に影響を与えているかが詳細に研究されるようになった。本改訂版では,それらに対応するよう,新たに非アルツハイマー型認知症の分類や神経心理学的評価等を追加した。
近年,多方面で認知症をもつ人一人ひとりに応じたケアが注目され,「テーラーメイド」と言われるようになった。神経認知症候群やテーラーメイドのように新しい用語や視点が入ってきたことは,医療や介護の現場に影響をもたらしたが,認知症をもつ人本人が変わったわけではない。むしろ,より一人ひとりの状態に合わせたアプローチを,神経学,神経心理学,精神医学,老年医学といった幅広い知識をもち,作業療法と合わせて用いる意義が高まったと言い換えることができるだろう。
改訂第2版は,初版に引き続き力強くかつ丁寧に企画・編集に携わった小川真寛氏,西田征治氏,内田達二氏の想いが詰まっている。小川氏が是非追加したいと語った多職種連携,作業療法評価,家族支援,エビデンス,作業療法理論,神経心理学的評価の項目は,この5年間に実感として得た経験知から得たものだとわかる。また,新たに加筆された内容とともに,「視点・プロセス・理論」が一層充実した内容となった。
最後に,改訂版を出版する必要性と意義を感じ,熱意をもって,丁寧かつ迅速に編集作業に関わっていただいたメジカルビュー社編集部 榊原優子氏に深謝申し上げる。本書による作業療法アプローチが認知症をもつ人の健康と幸福につながることを心より願っている。
2019年6 月
宮口英樹
----------------------------------
改訂第2版 編集の序
本書の第1版の企画から6年,刊行から5年が経過した。第1版の制作の時期には私は臨床現場で作業療法部門の管理者をしていた。その頃から若い作業療法士による認知症をもつクライエントに関しての相談が多かったが,管理者を離れ部下がいなくなった今でも認知症をもつクライエントへの悩みを相談されることが少なくない。多くの作業療法士が臨床でクライエントのことを考え,悩みを抱えながら臨床実践を行っているのだと感じ続けている。改めて振り返ると,相談の多くはクライエントに作業療法士として何をしてよいかがわからない,そして自分の実践している作業療法に自信がもてないという内容が多いような気がする。
これらの悩みすべてが本書で解決できるとは思っていないが,解決のヒントや道しるべになるように,本書では作業療法の視点とプロセスをまとめ,その解決策や打開策の一助になるように理論を編集している。認知症をもつ人への作業療法の臨床実践の枠組みや理論を学ぶことで,本書が臨床家やこれから臨床へ飛び出していく若い作業療法士や作業療法を志す学生の助けになれば幸いである。本書を活用していただき,知識を構築し,臨床実践に自信をつけてもらいたいと切に願う。
今回の改訂では,内容の一部に評価の説明を増やし,日本作業療法士協会編集の「作業療法ガイドライン―認知症」を中心にそのエビデンスについて紹介することに取り組んだ。そして,時代の流れとともに重要視されてきている地域支援も新たに加えた。認知症をもつ人が増加の一途を辿り,養成校の養成過程には「地域」というキーワードが加わるなど,地域でも作業療法の知識や技術を活かした支援が期待されている。
この改訂までの5年という歳月は短い期間であるが,新オレンジプランや地域包括ケアシステム,認知症初期集中支援チーム,地域ケア会議など,認知症にかかわる政策面で多くの社会的支援のあり方に改革がもたらされてきた期間である。変化し続ける時代の一方で,本書では一貫して,作業療法の専門性である「作業に焦点を当てた実践」の実現を目的に作成している。2018年の「作業療法の定義」の改訂により,「作業に焦点を当てた実践」は定義にも盛り込まれるようになり,この5年で確実にその実践は拡がりを見せ,臨床に確実に変化をもたらしている。また先の5年で,引き続き認知症を取り巻く環境や作業療法の知識や技術にも変化がもたらされることが予想される。今後改訂の機会を与えられるようであれば,変化し続ける時代に即した形で本書も成長をさせていきたいと考えている。 是非,第2版も御一読いただき,忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いである。
2019年6 月
編集を代表して
小川真寛
2017年4月,京都において第32回国際アルツハイマー病協会国際会議が開催され,世界各国から約4,000名と多くの人々が参加した。会議で印象に残った点は,さまざまな形で認知症をもつ人本人が参加し,積極的に発言しようとしていたこと,多くのプログラムで,認知症をもつ人を支える活動や地域作りが国を越えて広がっていることであった。また,2018年12月には首相官邸において第1回の認知症施策推進関係閣僚会議が開催され,認知症の予防,認知症を発症しても住み慣れた地域で安心して暮らすための「認知症バリアフリー」などに迅速に取り組む方針が示された。これはまさに認知症をもつ人が「援助を受ける存在」から「主体として生きる存在」へと変化したことを示している。今や認知症は家族,医療者,介護者だけの問題ではなく,国民全体で考えていかなくてはならない課題である。今こそ作業療法が中心概念として価値をおいてきた「作業」を,認知症をもつ人本人が生活する地域に生かすべきである。
2014年に初版「認知症をもつ人への作業療法アプローチ-視点・プロセス・理論-」が世に出てから5年が経過した。この5年間に冒頭の国際会議の日本での開催を始め,認知症を取り巻く環境が大きく変わった。2014年は,2013年にアメリカ精神医学会によって出版されたDSM-5が日本語版として出版された年である。DSM-5では,「神経認知症候群(neurocognitive disorder)」という新たな用語が導入され,神経学的な課題がいかに行動制限や生活障害に影響を与えているかが詳細に研究されるようになった。本改訂版では,それらに対応するよう,新たに非アルツハイマー型認知症の分類や神経心理学的評価等を追加した。
近年,多方面で認知症をもつ人一人ひとりに応じたケアが注目され,「テーラーメイド」と言われるようになった。神経認知症候群やテーラーメイドのように新しい用語や視点が入ってきたことは,医療や介護の現場に影響をもたらしたが,認知症をもつ人本人が変わったわけではない。むしろ,より一人ひとりの状態に合わせたアプローチを,神経学,神経心理学,精神医学,老年医学といった幅広い知識をもち,作業療法と合わせて用いる意義が高まったと言い換えることができるだろう。
改訂第2版は,初版に引き続き力強くかつ丁寧に企画・編集に携わった小川真寛氏,西田征治氏,内田達二氏の想いが詰まっている。小川氏が是非追加したいと語った多職種連携,作業療法評価,家族支援,エビデンス,作業療法理論,神経心理学的評価の項目は,この5年間に実感として得た経験知から得たものだとわかる。また,新たに加筆された内容とともに,「視点・プロセス・理論」が一層充実した内容となった。
最後に,改訂版を出版する必要性と意義を感じ,熱意をもって,丁寧かつ迅速に編集作業に関わっていただいたメジカルビュー社編集部 榊原優子氏に深謝申し上げる。本書による作業療法アプローチが認知症をもつ人の健康と幸福につながることを心より願っている。
2019年6 月
宮口英樹
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改訂第2版 編集の序
本書の第1版の企画から6年,刊行から5年が経過した。第1版の制作の時期には私は臨床現場で作業療法部門の管理者をしていた。その頃から若い作業療法士による認知症をもつクライエントに関しての相談が多かったが,管理者を離れ部下がいなくなった今でも認知症をもつクライエントへの悩みを相談されることが少なくない。多くの作業療法士が臨床でクライエントのことを考え,悩みを抱えながら臨床実践を行っているのだと感じ続けている。改めて振り返ると,相談の多くはクライエントに作業療法士として何をしてよいかがわからない,そして自分の実践している作業療法に自信がもてないという内容が多いような気がする。
これらの悩みすべてが本書で解決できるとは思っていないが,解決のヒントや道しるべになるように,本書では作業療法の視点とプロセスをまとめ,その解決策や打開策の一助になるように理論を編集している。認知症をもつ人への作業療法の臨床実践の枠組みや理論を学ぶことで,本書が臨床家やこれから臨床へ飛び出していく若い作業療法士や作業療法を志す学生の助けになれば幸いである。本書を活用していただき,知識を構築し,臨床実践に自信をつけてもらいたいと切に願う。
今回の改訂では,内容の一部に評価の説明を増やし,日本作業療法士協会編集の「作業療法ガイドライン―認知症」を中心にそのエビデンスについて紹介することに取り組んだ。そして,時代の流れとともに重要視されてきている地域支援も新たに加えた。認知症をもつ人が増加の一途を辿り,養成校の養成過程には「地域」というキーワードが加わるなど,地域でも作業療法の知識や技術を活かした支援が期待されている。
この改訂までの5年という歳月は短い期間であるが,新オレンジプランや地域包括ケアシステム,認知症初期集中支援チーム,地域ケア会議など,認知症にかかわる政策面で多くの社会的支援のあり方に改革がもたらされてきた期間である。変化し続ける時代の一方で,本書では一貫して,作業療法の専門性である「作業に焦点を当てた実践」の実現を目的に作成している。2018年の「作業療法の定義」の改訂により,「作業に焦点を当てた実践」は定義にも盛り込まれるようになり,この5年で確実にその実践は拡がりを見せ,臨床に確実に変化をもたらしている。また先の5年で,引き続き認知症を取り巻く環境や作業療法の知識や技術にも変化がもたらされることが予想される。今後改訂の機会を与えられるようであれば,変化し続ける時代に即した形で本書も成長をさせていきたいと考えている。 是非,第2版も御一読いただき,忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いである。
2019年6 月
編集を代表して
小川真寛
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目次
第1部 認知症をもつ人への作業療法の視点
1章 認知症をもつ人への作業療法のポイント
はじめに
作業療法の実践のポイント
まとめ
2章 認知症と作業療法の基盤
認知症の疫学
認知症の病態と症状
主な原因疾患の症状と経過
認知症の治療
認知症の人に対する作業療法の基盤
3章 認知症をもつ人への作業療法の視点
認知症をもつ人への作業療法の考え方
認知症をもつ人への作業療法のエビデンスとガイドライン
認知症をもつ人への作業療法の挑戦
4章 作業療法と多職種連携
多職種連携の必要性
連携に必要な能力
連携の実際
事例紹介
第2 部 認知症をもつ人への作業療法のプロセス
1章 作業療法のプロセス
作業療法のプロセスの重要性と役割
認知症をもつ人を対象としたとき,なぜ作業療法のプロセスを行うことが難しくなるのか
認知症をもつ人に対する作業療法のプロセス
まとめ
2章 評価
1.ニーズの評価
ニーズ・背景の評価
2.作業遂行の評価
作業遂行の概要
作業遂行の分析方法
認知症をもつ人の作業遂行の特徴
3. 認知症をもつ人への作業療法で使用されている評価
《評価の目的》
認知症をもつ人への作業療法における評価・検査の役割
評価の選択
《日常生活活動(ADL)》
Functional Independence Measure(FIM)
Assessment of Motor and Process Skills(AMPS)
N 式老年者用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)
Instrumental Activities of Daily Living Scale(IADL 尺度)
老研式活動能力指標
障害高齢者の日常生活自立度判定基準
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
Evaluation of Social Interaction(ESI)
Assessment of Communication and Interaction Skills(ACIS)
《認知機能評価》
認知症をもつ人への作業療法における認知機能評価
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
Mini-Mental State Examination(MMSE)
Montreal Cognitive Assessment日本語版(MoCA-J)
認知機能のスクリーニング評価実施時の注意点
《情緒》
老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale(GDS),短縮版GDS(GDS15)
Neuropsychiatric Inventory(NPI)
《行動》
Functional Assessment Staging(FAST)
Clinical Dementia Rating(CDR)
GBS スケール
N 式老年者用精神状態尺度(NM スケール)
認知症ケアマッピング(DCM)
パラチェック老人行動評定尺度
問題行動評価票(TBS)
Behavioral Pathologic Rating Scale for Alzheimer's Disease(Behave-AD)
《介護負担》
Zarit 介護負担尺度(J-ZBI)
Sense of Competence Questionnaire(SCQ)
《その他》
Dementia Assessment Sheet for the Community-Based Integrated Care System 21(DASC®-21)
3章 介入
はじめに
介入計画
介入実践
介入の振り返り
4章 成果の検討
作業療法で焦点を当てる成果
成果のタイプ
成果の示し方
成果を検討するときの注意点
第3 部 認知症をもつ人への作業療法理論
1章 作業療法実践における理論の使い方
はじめに
理論とは何か?
理論の有用性
理論の開発と発展
作業療法の理論と分類
作業療法のプロセスモデル
理論の実践での活用
2章 人間作業モデル(MOHO)
MOHO の概要
理論的背景
MOHO の構造
MOHO で用いられる評価法
MOHO で用いられるリーズニングと
認知症をもつ人に対する適応
3章 CMOP-E とCPPF
はじめに
CMOP-E
CPPF
事例紹介
最後に
4章 OTIPM とAMPS
認知症をもつ人への作業療法
作業療法介入プロセスモデル( OTIPM)
運動とプロセス技能の評価( AMPS)
認知症をもつ人へのAMPS/OTIPM 導入の実際
5章 パーソン・センタード・ケア/VIPS の視点を活かす
はじめに
パーソン・センタード・ケアとは
ある認知症をもつ人の物語を通して
VIPS フレームワークで実践を振り返る
まとめ
6章 プール活動レベル(PAL)
プール活動レベルの概要
理論的背景
4 段階の活動レベル
PAL Instrument の実施手順
PAL チェックリストの妥当性・信頼性
臨床での応用
7章 回想法
回想法の概要
理論的背景
グループ回想法の実践方法
臨床での応用
8章 神経心理学的評価・支援
認知症と神経心理学
神経心理学的テストを用いる際の留意点
認知症に対する認知機能評価
神経心理学的視点に基づいた支援
9章 機器・装置を用いた支援
機器・装置を用いた支援と認知症をもつ人に対するケア
作業療法評価のなかにおける機器・装置を用いた支援の位置付け
生活を支援するIT を用いた支援および機器・装置
情報の入手方法
臨床での応用
まとめ・今後に向けて
10章 タクティールマッサージ
タクティールマッサージとは
理論的背景
認知症をもつ人への効果
タクティールマッサージの手技
臨床での実際
11章 基本となるかかわり:ノンバーバル
コミュニケーションを中心に
はじめに
援助者の感情の重要性
援助者の心構え
ノンバーバルコミュニケーション
まとめ
12章 リスクコミュニケーション
1.リスクコミュニケーションの理論
はじめに
リスクマネジメントとリスクコミュニケーション
リスク認知
医療リスクと生活リスク
リスクコミュニケーションの定義
リスクコミュニケーションの方略
作業療法におけるリスクコミュニケーション展開の可能性
2. リスクコミュニケーションを他職種との連携に活用した例
はじめに
クライエント紹介
まとめ
第4 部 作業に焦点を当てた介入事例紹介
1章 認知症をもつ高齢者の家事活動の獲得:作業を基盤においた作業療法介入
はじめに
事例紹介
考察
2章 趣味だったガーデニングの感覚経験を通して落ち着きを取り戻した事例
はじめに
事例紹介
初期評価
介入
成果
考察
3章 ちぎり絵の再開を通して自分らしさを再獲得した事例
本事例のポイント
事例紹介
初期評価
介入
成果
考察
4章 作業に焦点を当てた訪問作業療法介入によって閉じこもりが改善した認知症をもつ女性の事例
はじめに
事例紹介
介入の方針
経過
考察
おわりに
5章 作業プロフィールの活用により意味ある作業の特定とチームケアが可能となった軽度認知症をもつ女性
はじめに
事例紹介
評価
介入と経過
成果
考察
おわりに
6章 クライエントの自宅での役割に焦点を当てた退院支援─認知症治療病棟における家族との協働─
はじめに
事例紹介
評価
介入と経過
成果
考察
おわりに
1章 認知症をもつ人への作業療法のポイント
はじめに
作業療法の実践のポイント
まとめ
2章 認知症と作業療法の基盤
認知症の疫学
認知症の病態と症状
主な原因疾患の症状と経過
認知症の治療
認知症の人に対する作業療法の基盤
3章 認知症をもつ人への作業療法の視点
認知症をもつ人への作業療法の考え方
認知症をもつ人への作業療法のエビデンスとガイドライン
認知症をもつ人への作業療法の挑戦
4章 作業療法と多職種連携
多職種連携の必要性
連携に必要な能力
連携の実際
事例紹介
第2 部 認知症をもつ人への作業療法のプロセス
1章 作業療法のプロセス
作業療法のプロセスの重要性と役割
認知症をもつ人を対象としたとき,なぜ作業療法のプロセスを行うことが難しくなるのか
認知症をもつ人に対する作業療法のプロセス
まとめ
2章 評価
1.ニーズの評価
ニーズ・背景の評価
2.作業遂行の評価
作業遂行の概要
作業遂行の分析方法
認知症をもつ人の作業遂行の特徴
3. 認知症をもつ人への作業療法で使用されている評価
《評価の目的》
認知症をもつ人への作業療法における評価・検査の役割
評価の選択
《日常生活活動(ADL)》
Functional Independence Measure(FIM)
Assessment of Motor and Process Skills(AMPS)
N 式老年者用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)
Instrumental Activities of Daily Living Scale(IADL 尺度)
老研式活動能力指標
障害高齢者の日常生活自立度判定基準
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
Evaluation of Social Interaction(ESI)
Assessment of Communication and Interaction Skills(ACIS)
《認知機能評価》
認知症をもつ人への作業療法における認知機能評価
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
Mini-Mental State Examination(MMSE)
Montreal Cognitive Assessment日本語版(MoCA-J)
認知機能のスクリーニング評価実施時の注意点
《情緒》
老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale(GDS),短縮版GDS(GDS15)
Neuropsychiatric Inventory(NPI)
《行動》
Functional Assessment Staging(FAST)
Clinical Dementia Rating(CDR)
GBS スケール
N 式老年者用精神状態尺度(NM スケール)
認知症ケアマッピング(DCM)
パラチェック老人行動評定尺度
問題行動評価票(TBS)
Behavioral Pathologic Rating Scale for Alzheimer's Disease(Behave-AD)
《介護負担》
Zarit 介護負担尺度(J-ZBI)
Sense of Competence Questionnaire(SCQ)
《その他》
Dementia Assessment Sheet for the Community-Based Integrated Care System 21(DASC®-21)
3章 介入
はじめに
介入計画
介入実践
介入の振り返り
4章 成果の検討
作業療法で焦点を当てる成果
成果のタイプ
成果の示し方
成果を検討するときの注意点
第3 部 認知症をもつ人への作業療法理論
1章 作業療法実践における理論の使い方
はじめに
理論とは何か?
理論の有用性
理論の開発と発展
作業療法の理論と分類
作業療法のプロセスモデル
理論の実践での活用
2章 人間作業モデル(MOHO)
MOHO の概要
理論的背景
MOHO の構造
MOHO で用いられる評価法
MOHO で用いられるリーズニングと
認知症をもつ人に対する適応
3章 CMOP-E とCPPF
はじめに
CMOP-E
CPPF
事例紹介
最後に
4章 OTIPM とAMPS
認知症をもつ人への作業療法
作業療法介入プロセスモデル( OTIPM)
運動とプロセス技能の評価( AMPS)
認知症をもつ人へのAMPS/OTIPM 導入の実際
5章 パーソン・センタード・ケア/VIPS の視点を活かす
はじめに
パーソン・センタード・ケアとは
ある認知症をもつ人の物語を通して
VIPS フレームワークで実践を振り返る
まとめ
6章 プール活動レベル(PAL)
プール活動レベルの概要
理論的背景
4 段階の活動レベル
PAL Instrument の実施手順
PAL チェックリストの妥当性・信頼性
臨床での応用
7章 回想法
回想法の概要
理論的背景
グループ回想法の実践方法
臨床での応用
8章 神経心理学的評価・支援
認知症と神経心理学
神経心理学的テストを用いる際の留意点
認知症に対する認知機能評価
神経心理学的視点に基づいた支援
9章 機器・装置を用いた支援
機器・装置を用いた支援と認知症をもつ人に対するケア
作業療法評価のなかにおける機器・装置を用いた支援の位置付け
生活を支援するIT を用いた支援および機器・装置
情報の入手方法
臨床での応用
まとめ・今後に向けて
10章 タクティールマッサージ
タクティールマッサージとは
理論的背景
認知症をもつ人への効果
タクティールマッサージの手技
臨床での実際
11章 基本となるかかわり:ノンバーバル
コミュニケーションを中心に
はじめに
援助者の感情の重要性
援助者の心構え
ノンバーバルコミュニケーション
まとめ
12章 リスクコミュニケーション
1.リスクコミュニケーションの理論
はじめに
リスクマネジメントとリスクコミュニケーション
リスク認知
医療リスクと生活リスク
リスクコミュニケーションの定義
リスクコミュニケーションの方略
作業療法におけるリスクコミュニケーション展開の可能性
2. リスクコミュニケーションを他職種との連携に活用した例
はじめに
クライエント紹介
まとめ
第4 部 作業に焦点を当てた介入事例紹介
1章 認知症をもつ高齢者の家事活動の獲得:作業を基盤においた作業療法介入
はじめに
事例紹介
考察
2章 趣味だったガーデニングの感覚経験を通して落ち着きを取り戻した事例
はじめに
事例紹介
初期評価
介入
成果
考察
3章 ちぎり絵の再開を通して自分らしさを再獲得した事例
本事例のポイント
事例紹介
初期評価
介入
成果
考察
4章 作業に焦点を当てた訪問作業療法介入によって閉じこもりが改善した認知症をもつ女性の事例
はじめに
事例紹介
介入の方針
経過
考察
おわりに
5章 作業プロフィールの活用により意味ある作業の特定とチームケアが可能となった軽度認知症をもつ女性
はじめに
事例紹介
評価
介入と経過
成果
考察
おわりに
6章 クライエントの自宅での役割に焦点を当てた退院支援─認知症治療病棟における家族との協働─
はじめに
事例紹介
評価
介入と経過
成果
考察
おわりに
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評価から実際の介入およびその効果の検討まで,作業療法理論に基づく一貫性のあるプロセスでわかりやすく解説!
認知症をもつ人に対する作業療法はさまざまな面で困難なことが多く,臨床現場で働く作業療法士のなかには,どのようにアプローチしたらよいか困惑している人も多いと思われる。また,高齢化やリハビリテーションの個別化が進む昨今では,単純に作業を行うだけのアプローチではうまく対応できないことが多い。
本書は,認知症をもつ人に対する作業療法について,評価から実際の介入およびその効果の検討まで,一貫性のあるプロセスで解説した実践書である。
改訂にあたっては,①認知症高齢者等に対する国の政策(「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」等)に合わせて「地域支援」の内容を追加し多職種連携についての解説を盛り込み,②認知症特有の作業療法で使用する評価を掲載,③キーポイントとなる用語について,適宜用語解説の囲み記事を掲載など,全体の約40%を改稿した。実践方法から理論までを押さえた本書は,講義でも臨床でも使いやすい。