子どもの能力から考える
発達障害領域の作業療法アプローチ
改訂第2版
定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
- B5判 360ページ オールカラー,イラスト100点,写真610点
- 2018年9月29日刊行
- ISBN978-4-7583-1932-4
電子版
序文
編集の序
how-toから“Feel and Interpret How”へ
2012年12月に本書の初版が刊行されてから,早いもので約6年が経過した。
「臨床現場では一人ひとりの作業療法士が,よりよい実践を提供しようと頭を悩ませ,考え,実践を蓄積している。各人がもつ臨床の知を集めることはできないだろうか」。初版はこのような思いから制作がスタートした。しかも,「こういう方法がある」という実践を矮小化する短絡的なhow-to本ではなく,各臨床家がいかにして現場で呼吸し,個々のケースに臨み,問題解決の過程を経て実践したかということを主体にした,“Feeland Interpret How”にこだわって編集を行った。さらに今回の改訂では,児童発達支援や放課後等デイサービス,特別支援教育などについて加筆を行い,また可能なものは,初版に掲載されている事例のその後も追った。
これまでわれわれが馴染んできた発達障害領域の作業療法についての書籍の多くは,障害種別と疾患の基本的知識から始まるものが多く,それらから得られる知識はすでにスタンダードとなっている。しかし,本当にわれわれに必要なことは「どのようにそのセラピィを組み立てたか」であって,「どのようなことを知っていなければならないか」だけではない。
本書は辞書でいうところの「逆引き」に近い構成で,子どもが遂行する作業能力に対応させて章立てした。編者が各執筆者にお願いしたことは,それぞれの治療を作業療法士の視点からどのように考えて臨床を展開したのか,その考え方のプロセスを含めて臨床の実際を紹介することであった。さらに,治療場面の動画を撮影して連続写真を掲載することで臨床の臨場感を提示し,その解説をしてほしいとも依頼した。各氏には,このような無謀な試みを快く受諾していただいた。
このようなコンセプトで完成した原稿は,実践が深く掘り下げられ,治療プロセスの核となる問題解決過程が提示され,個々の臨床が日々動いているという躍動感であふれていた。現時点では,これらの臨床知を総合した総括的な理論としては提示できないが,本書が臨床現場に携わる多くの作業療法士の拠り所になってくれると確信している。
近年,発達障害領域の作業療法は対象が広がっており,一見,身体障害系と発達障害系に二分されているようにもみえる。また,勤務形態も非常勤があったり,勤務場所も福祉,教育,NPOなどにも広がっている。しかし,どのようなフィールドであったとしても目の前の子どもに対峙していくという仕事であることは未来永劫,変わりなく,変わってはいけないわけでその際に不可欠な評価と実践は,はずせない職責である。本書の第Ⅰ,Ⅱ部で臨床に即した評価や実践,家族との関係のもち方などを中心に構成し,第Ⅲ部で作業療法が多様化した現状を踏まえ,さまざまな立場,領域,方法で臨床実践を行っている様子を紹介した。テーマは多岐に渡り多様ではあるが,根源にある作業療法スピリッツの同一性を読み取ってもらえることを願う。
本書の執筆者は,全国各地で臨床実践しているセラピストである。その実践を見たり共有したり,互いに語り合ったことがある,実力・臨床力を兼ね備えた素晴らしい面々である。今回,限られた時間のなかで,本書のために多くの知見を与えていただいたことに,この場を借りて感謝申し上げたい。
また本書は,本書の制作にご理解ご協力いただいたお子さまと,そのご家族の存在で成り立っている。本書に登場していただいたそれぞれのお子さまを通じた貴重な実践から,多くの学びを深めていくことが,われわれの責務となる。さらに,本書には登場していないたくさんのお子さまとご家族が各地のわれわれ臨床の作業療法士の前に来てくださったことで,私たち作業療法士は多くのことを実践の中で知り学ぶことができた。そのみなさまのご協力とご厚意により,本書を作り上げることができたことにも,心より感謝申し上げたい。 最後に,前例がない奇抜な本書の編集に対して,誠実な対応と寛容な理解と有意なご提案をいただいたメジカルビュー社にも深く感謝を申し上げたい。
では,臨床の醍醐味を記録した世界のページを開いていただきたい。そして,私たち作業療法士が,明日の主役となる子どもたちに,達成感・自尊心という素敵なお土産を一つでも多く持ち帰っていただけるよう努めることで,発達障がい領域での仕事中毒が亢進することを期して,筆を置く。
2018年8月
小西紀一
小松則登
酒井康年
how-toから“Feel and Interpret How”へ
2012年12月に本書の初版が刊行されてから,早いもので約6年が経過した。
「臨床現場では一人ひとりの作業療法士が,よりよい実践を提供しようと頭を悩ませ,考え,実践を蓄積している。各人がもつ臨床の知を集めることはできないだろうか」。初版はこのような思いから制作がスタートした。しかも,「こういう方法がある」という実践を矮小化する短絡的なhow-to本ではなく,各臨床家がいかにして現場で呼吸し,個々のケースに臨み,問題解決の過程を経て実践したかということを主体にした,“Feeland Interpret How”にこだわって編集を行った。さらに今回の改訂では,児童発達支援や放課後等デイサービス,特別支援教育などについて加筆を行い,また可能なものは,初版に掲載されている事例のその後も追った。
これまでわれわれが馴染んできた発達障害領域の作業療法についての書籍の多くは,障害種別と疾患の基本的知識から始まるものが多く,それらから得られる知識はすでにスタンダードとなっている。しかし,本当にわれわれに必要なことは「どのようにそのセラピィを組み立てたか」であって,「どのようなことを知っていなければならないか」だけではない。
本書は辞書でいうところの「逆引き」に近い構成で,子どもが遂行する作業能力に対応させて章立てした。編者が各執筆者にお願いしたことは,それぞれの治療を作業療法士の視点からどのように考えて臨床を展開したのか,その考え方のプロセスを含めて臨床の実際を紹介することであった。さらに,治療場面の動画を撮影して連続写真を掲載することで臨床の臨場感を提示し,その解説をしてほしいとも依頼した。各氏には,このような無謀な試みを快く受諾していただいた。
このようなコンセプトで完成した原稿は,実践が深く掘り下げられ,治療プロセスの核となる問題解決過程が提示され,個々の臨床が日々動いているという躍動感であふれていた。現時点では,これらの臨床知を総合した総括的な理論としては提示できないが,本書が臨床現場に携わる多くの作業療法士の拠り所になってくれると確信している。
近年,発達障害領域の作業療法は対象が広がっており,一見,身体障害系と発達障害系に二分されているようにもみえる。また,勤務形態も非常勤があったり,勤務場所も福祉,教育,NPOなどにも広がっている。しかし,どのようなフィールドであったとしても目の前の子どもに対峙していくという仕事であることは未来永劫,変わりなく,変わってはいけないわけでその際に不可欠な評価と実践は,はずせない職責である。本書の第Ⅰ,Ⅱ部で臨床に即した評価や実践,家族との関係のもち方などを中心に構成し,第Ⅲ部で作業療法が多様化した現状を踏まえ,さまざまな立場,領域,方法で臨床実践を行っている様子を紹介した。テーマは多岐に渡り多様ではあるが,根源にある作業療法スピリッツの同一性を読み取ってもらえることを願う。
本書の執筆者は,全国各地で臨床実践しているセラピストである。その実践を見たり共有したり,互いに語り合ったことがある,実力・臨床力を兼ね備えた素晴らしい面々である。今回,限られた時間のなかで,本書のために多くの知見を与えていただいたことに,この場を借りて感謝申し上げたい。
また本書は,本書の制作にご理解ご協力いただいたお子さまと,そのご家族の存在で成り立っている。本書に登場していただいたそれぞれのお子さまを通じた貴重な実践から,多くの学びを深めていくことが,われわれの責務となる。さらに,本書には登場していないたくさんのお子さまとご家族が各地のわれわれ臨床の作業療法士の前に来てくださったことで,私たち作業療法士は多くのことを実践の中で知り学ぶことができた。そのみなさまのご協力とご厚意により,本書を作り上げることができたことにも,心より感謝申し上げたい。 最後に,前例がない奇抜な本書の編集に対して,誠実な対応と寛容な理解と有意なご提案をいただいたメジカルビュー社にも深く感謝を申し上げたい。
では,臨床の醍醐味を記録した世界のページを開いていただきたい。そして,私たち作業療法士が,明日の主役となる子どもたちに,達成感・自尊心という素敵なお土産を一つでも多く持ち帰っていただけるよう努めることで,発達障がい領域での仕事中毒が亢進することを期して,筆を置く。
2018年8月
小西紀一
小松則登
酒井康年
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目次
第 I 部 小児作業療法の概要
1章 発達障害領域の作業療法を考える 小西紀一
1 発達障害領域で働く作業療法士として大切にしたいこと
2 作業療法士としての素養
3 発達障害領域の作業療法の独自性
4 作業療法士になるために学んでおくべきこと
5 発達障害領域の作業療法の歴史
6 今後の発達障害領域の作業療法の予測と作業療法士に期待すること
7 多職種との関係・連携
8 Therapy should be FUNに込めた思い
9 angel smile
2章 発達障害の評価と日々の臨床の流れ
1 発達障害の評価 HON@ASI.
1 はじめに
2 主訴と問題点の考え方
3 面接方法
4 行動の分析
5 主訴と問題点の整理
6 フローチャート図の作り方
7 本節のまとめ
2 運動障害系の日々の臨床の流れ 黒澤淳二
1 はじめに
2 基礎情報
3 場面1 始まりのあいさつ
4 場面2 予約票を手渡す
5 場面3 トランスファー:支持面との関係調整と姿勢筋緊張,かまえの評価と作業療法
6 場面4 支持面との関係性回復作業療法
7 場面5 上肢−手の準備体操
8 場面6 スイッチ遊び「ラジコンクレーン車」
9 場面7 作業療法の終了
10 その後のSくんと両親
3章 小児作業療法における家族との関係性を考える 酒井康年
1 保護者・家族について考える
2 面接・フィードバックにおいて大切なこと
3 再び,家族について
第 II 部 小児作業療法の実際
1章 移動すること,動き出すこと
1 自分で動き,環境に働きかけることを支援する 松本政悦
1 はじめに
2 症例紹介
3 作業療法の実践
4 家庭での姿勢保持具の試用
5 作業療法実践のまとめ
6 その後のA さんの様子
2 印象を変えるために 森 祐子
1 はじめに
2 ビデオでの評価
3 振り返り
4 おわりに
3 だっこから学ぶ,だっこで育てる 松本茂樹
1 はじめに
2 事例紹介
3 椅子に座らないA くん
4 座る機能を育てる(定型発達から学ぶ)
5 器具への適応能力を育てる(だっこから学ぶ)
6 成長に伴う生活様式の見直し(作業療法の継続の必要性)
7 姿勢保持のアイデア
8 まとめ
4 中枢性視覚障害をもった子どもの「移動すること」 古野優子
1 はじめに
2 症例紹介
3 作業療法の目的
4 作業療法プログラム
5 入院中の変化
6 まとめ
5 入所児に対する車椅子を用いた外出移動支援 安本大樹
1 症例紹介
2 作業療法評価
3 作業療法計画
4 支援の妥当性および考察
6 超重症児の「動き出すこと」「移動すること」そして,「移行すること」 黒澤淳二,吉田真衣
1 はじめに
2 超重症児とは
3 彼らは何を「している」のか?
4 自己身体の空間定位(orientation of self in space)の構築
5 「動き出すこと」のための指向性:「そこ」への定位
6 「移動すること」−「ここ」から「そこ」へと移ること−
7 「移行すること」−大きな時流:生活の場を移すということ−
8 事例
2章 食べること 小松則登
1 作業療法士が扱う食べることの障害の考え方
2 現在・過去・未来において食べることを考える
3 リハビリテーション再考
4 ケースを通して食べることの障害を考える
5 摂食嚥下障害と作業療法
3章 やり取りすること 嶋谷和之
1 やり取りするとは
2 やり取りすることを考える
3 事例を通して
4章 仲間と過ごすこと 石原詩子
1 「仲間」について考える
2 仲間と過ごすとは?
3 実践:仲間と過ごすこと(集団療育)
4 まとめ
5章 動きすぎてしまうこと 灘 裕介
1 はじめに
2 事例を通して
3 実際の作業療法
4 おわりに
6章 なかなか見つけられないこと 灘 裕介
1 はじめに
2 事例を通して
3 おわりに
7章 覚えること:手を使うこと(物の操作)を覚える 岡田洋一
1 はじめに
2 症例の概要
3 作業療法の実践
4 まとめ
8章 うまく扱うこと 嶋谷和之
1 「うまく扱う」ということ
2 事例を通して
3 おわりに
第 III 部 小児作業療法の展開
1章 地域での活動
1 町の職員として 石原詩子
1 作業療法士が「町」で働くということ
2 京丹波町での作業療法
3 まとめ
2 フリーランスから事業家作業療法士として 灘 裕介
1 はじめに
2 あーと・ねっとの業務形態
3 事業としての広がり
4 フリーランスから,事業家として働くとは
5 今後の課題,フリーランスから事業家としての難しさ
6 おわりに
3 地域作業療法の展開 酒井康年
1 はじめに
2 治療構造としての理解
3 治療構造のヒント
4 主訴のもち主と主訴の絡み合い構造について
5 作業遂行モデルに立脚して考える
6 作業療法士であることの価値
7 地域支援でのさらなる展開
8 事例
4 特別支援教育のなかでの展開 本間嗣崇
1 特別支援学校とは?
2 特別支援学校の教員として
3 特別支援教育における作業療法士の関与
4 おわりに
2章 小児にかかわる作業療法士として
1 小児にかかわる作業療法士の臨床力向上のために 小松則登
1 はじめに
2 発達障害領域の作業療法を考える —なぜ私は小児の作業療法士になったのか—
3 発達障害とリハビリテーション
4 occupational therapy と作業療法
5 発達支援と生活支援,遅滞モデルと欠損モデル
6 子ども領域の作業療法士として
7 手入れ論と手当て論
8 まとめと,発達障害領域の作業療法士がやるべき仕事 —マトリョーシカ人形理論—
2 研究者・教員として 有川真弓
1 はじめに
2 臨床から距離を置いた立場から眺めた作業療法実践
3 研究活動にかかわることへの思い・意気込み
4 作業療法士の育成にかかわる部分で感じていること,考えていること
5 おわりに
3 発達支援センターの責任者として 福田恵美子
1 はじめに
2 法律改正に伴った現場の動き
3 非営利組織(NPO)と法人の立ち上げの動機
4 医療機関での作業療法のメリット
5 地域支援での作業療法のメリット
6 新たな施設を作ったことのメリット
7 責任者が日常的に行う仕事
8 まとめ
1章 発達障害領域の作業療法を考える 小西紀一
1 発達障害領域で働く作業療法士として大切にしたいこと
2 作業療法士としての素養
3 発達障害領域の作業療法の独自性
4 作業療法士になるために学んでおくべきこと
5 発達障害領域の作業療法の歴史
6 今後の発達障害領域の作業療法の予測と作業療法士に期待すること
7 多職種との関係・連携
8 Therapy should be FUNに込めた思い
9 angel smile
2章 発達障害の評価と日々の臨床の流れ
1 発達障害の評価 HON@ASI.
1 はじめに
2 主訴と問題点の考え方
3 面接方法
4 行動の分析
5 主訴と問題点の整理
6 フローチャート図の作り方
7 本節のまとめ
2 運動障害系の日々の臨床の流れ 黒澤淳二
1 はじめに
2 基礎情報
3 場面1 始まりのあいさつ
4 場面2 予約票を手渡す
5 場面3 トランスファー:支持面との関係調整と姿勢筋緊張,かまえの評価と作業療法
6 場面4 支持面との関係性回復作業療法
7 場面5 上肢−手の準備体操
8 場面6 スイッチ遊び「ラジコンクレーン車」
9 場面7 作業療法の終了
10 その後のSくんと両親
3章 小児作業療法における家族との関係性を考える 酒井康年
1 保護者・家族について考える
2 面接・フィードバックにおいて大切なこと
3 再び,家族について
第 II 部 小児作業療法の実際
1章 移動すること,動き出すこと
1 自分で動き,環境に働きかけることを支援する 松本政悦
1 はじめに
2 症例紹介
3 作業療法の実践
4 家庭での姿勢保持具の試用
5 作業療法実践のまとめ
6 その後のA さんの様子
2 印象を変えるために 森 祐子
1 はじめに
2 ビデオでの評価
3 振り返り
4 おわりに
3 だっこから学ぶ,だっこで育てる 松本茂樹
1 はじめに
2 事例紹介
3 椅子に座らないA くん
4 座る機能を育てる(定型発達から学ぶ)
5 器具への適応能力を育てる(だっこから学ぶ)
6 成長に伴う生活様式の見直し(作業療法の継続の必要性)
7 姿勢保持のアイデア
8 まとめ
4 中枢性視覚障害をもった子どもの「移動すること」 古野優子
1 はじめに
2 症例紹介
3 作業療法の目的
4 作業療法プログラム
5 入院中の変化
6 まとめ
5 入所児に対する車椅子を用いた外出移動支援 安本大樹
1 症例紹介
2 作業療法評価
3 作業療法計画
4 支援の妥当性および考察
6 超重症児の「動き出すこと」「移動すること」そして,「移行すること」 黒澤淳二,吉田真衣
1 はじめに
2 超重症児とは
3 彼らは何を「している」のか?
4 自己身体の空間定位(orientation of self in space)の構築
5 「動き出すこと」のための指向性:「そこ」への定位
6 「移動すること」−「ここ」から「そこ」へと移ること−
7 「移行すること」−大きな時流:生活の場を移すということ−
8 事例
2章 食べること 小松則登
1 作業療法士が扱う食べることの障害の考え方
2 現在・過去・未来において食べることを考える
3 リハビリテーション再考
4 ケースを通して食べることの障害を考える
5 摂食嚥下障害と作業療法
3章 やり取りすること 嶋谷和之
1 やり取りするとは
2 やり取りすることを考える
3 事例を通して
4章 仲間と過ごすこと 石原詩子
1 「仲間」について考える
2 仲間と過ごすとは?
3 実践:仲間と過ごすこと(集団療育)
4 まとめ
5章 動きすぎてしまうこと 灘 裕介
1 はじめに
2 事例を通して
3 実際の作業療法
4 おわりに
6章 なかなか見つけられないこと 灘 裕介
1 はじめに
2 事例を通して
3 おわりに
7章 覚えること:手を使うこと(物の操作)を覚える 岡田洋一
1 はじめに
2 症例の概要
3 作業療法の実践
4 まとめ
8章 うまく扱うこと 嶋谷和之
1 「うまく扱う」ということ
2 事例を通して
3 おわりに
第 III 部 小児作業療法の展開
1章 地域での活動
1 町の職員として 石原詩子
1 作業療法士が「町」で働くということ
2 京丹波町での作業療法
3 まとめ
2 フリーランスから事業家作業療法士として 灘 裕介
1 はじめに
2 あーと・ねっとの業務形態
3 事業としての広がり
4 フリーランスから,事業家として働くとは
5 今後の課題,フリーランスから事業家としての難しさ
6 おわりに
3 地域作業療法の展開 酒井康年
1 はじめに
2 治療構造としての理解
3 治療構造のヒント
4 主訴のもち主と主訴の絡み合い構造について
5 作業遂行モデルに立脚して考える
6 作業療法士であることの価値
7 地域支援でのさらなる展開
8 事例
4 特別支援教育のなかでの展開 本間嗣崇
1 特別支援学校とは?
2 特別支援学校の教員として
3 特別支援教育における作業療法士の関与
4 おわりに
2章 小児にかかわる作業療法士として
1 小児にかかわる作業療法士の臨床力向上のために 小松則登
1 はじめに
2 発達障害領域の作業療法を考える —なぜ私は小児の作業療法士になったのか—
3 発達障害とリハビリテーション
4 occupational therapy と作業療法
5 発達支援と生活支援,遅滞モデルと欠損モデル
6 子ども領域の作業療法士として
7 手入れ論と手当て論
8 まとめと,発達障害領域の作業療法士がやるべき仕事 —マトリョーシカ人形理論—
2 研究者・教員として 有川真弓
1 はじめに
2 臨床から距離を置いた立場から眺めた作業療法実践
3 研究活動にかかわることへの思い・意気込み
4 作業療法士の育成にかかわる部分で感じていること,考えていること
5 おわりに
3 発達支援センターの責任者として 福田恵美子
1 はじめに
2 法律改正に伴った現場の動き
3 非営利組織(NPO)と法人の立ち上げの動機
4 医療機関での作業療法のメリット
5 地域支援での作業療法のメリット
6 新たな施設を作ったことのメリット
7 責任者が日常的に行う仕事
8 まとめ
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子どもを「どう見て」「どう考え」「どうOTを実践するか」,本書を読めば臨床力が身につく!!
本書は,2012年12月に刊行された『発達障害領域の作業療法アプローチ』の改訂第2版である。
子どもの発達にかかわる作業療法は「この疾患だから,このアプローチ」といった単純なものではなく,子どもによって状況が全く異なるため,症例に応じて適切なアプローチを考えて治療を行うこととなる。そのためには,子どもをどのように見て,どう評価するかが重要となるが,それにはある程度の経験が必要で,若手の作業療法士には少々難しい。
本書はそのような若手作業療法士のために,子どもの発達に長年携わっているベテラン作業療法士を執筆陣に迎え,臨床で子どもをどう見て,どう考え,どのように作業療法を実践しているのかを,症例を通して解説した書籍である。
実際の作業療法場面を動画で撮影し,そこから切り出した連続写真をオールカラーで掲載しており,これまでにはない子どもの動きを表した書籍となっている。さらに今回の改訂では,児童発達支援や放課後等デイサービス,特別支援教育の大きな動向の変化について加筆し,そして初版で掲載した事例は,可能なものについてその後の経過も追った。
「この症例ではこうしましょう」といったハウツー本ではなく,「子どもの見方,考え方」を示した本書は,確実に臨床力が身につく書籍である。