主観的感覚と生きづらさに寄り添う
精神科作業療法士が伝えたい臨床思考ケースブック
定価 3,960円(税込) (本体3,600円+税)
- B5判 272ページ 2色,イラスト50点,写真20点
- 2021年8月2日刊行
- ISBN978-4-7583-2060-3
電子版
序文
本書を手に取っていただき,ありがとうございます。
本書は筆者が臨床で大切にしている感覚をまとめました。本書のメインはケースであり,ケースとの関わりから精神科臨床を学んでいくというものです。一方で,主観的感覚や生きづらさというものは精神科疾患の有無にかかわらず,多くの人に存在するものだと思っています。家族や友人,同僚や顧客など,私たちの周りにおられる方々を,そのようなつらさを抱えて,必死にバランスを取りながら生きている存在と考えてみましょう。周りの方だけでなく,ご自身のことについても振り返ってみていただきたいと思っています。ご自身がどのようなことに生きづらさを感じているのか,それを知ることにより,もっと自身を(周囲の人を)愛すべき存在だと気づくことになると思います。ここまで生きてきた自分を慈しみ,思いやること(self-compassion),その経験が対象者に寄り添う感覚に大きな力を与えることになると思っています。
筆者は,私たちが健康で幸福であるためには,希望を感じ,自分に価値を感じ,周りから認められ必要とされることが,活力の源泉であると考えています。生きづらさのある中では,それらの健康と幸福に必要な感覚が得られにくくなります。どのようなことによってそれが生じているのか,どのような作業があればそれが得られやすくなるのか,どのような作業によって健康で幸福だと感じられるのか。それらを理解するためには,まずは対象者を理解し寄り添うということが必要になります。本書がその一助となることを願います。
世界中がCOVID-19による影響を受けて,数年前までは想像の世界でしかなかったパンデミックが現実のものとなっています。ポストコロナではこの経験が多くのひとのトラウマとなって,影響を及ぼすことになるかもしれません。このPTSDが新たな生きづらさとなっていくのかもしれません。それでも,互いに尊重し,想いあい,寄り添うことで,その影響を最小限にしていくことができればと願っています。
今年も暑い夏の予感がする令和三年吉日
岩根達郎
本書は筆者が臨床で大切にしている感覚をまとめました。本書のメインはケースであり,ケースとの関わりから精神科臨床を学んでいくというものです。一方で,主観的感覚や生きづらさというものは精神科疾患の有無にかかわらず,多くの人に存在するものだと思っています。家族や友人,同僚や顧客など,私たちの周りにおられる方々を,そのようなつらさを抱えて,必死にバランスを取りながら生きている存在と考えてみましょう。周りの方だけでなく,ご自身のことについても振り返ってみていただきたいと思っています。ご自身がどのようなことに生きづらさを感じているのか,それを知ることにより,もっと自身を(周囲の人を)愛すべき存在だと気づくことになると思います。ここまで生きてきた自分を慈しみ,思いやること(self-compassion),その経験が対象者に寄り添う感覚に大きな力を与えることになると思っています。
筆者は,私たちが健康で幸福であるためには,希望を感じ,自分に価値を感じ,周りから認められ必要とされることが,活力の源泉であると考えています。生きづらさのある中では,それらの健康と幸福に必要な感覚が得られにくくなります。どのようなことによってそれが生じているのか,どのような作業があればそれが得られやすくなるのか,どのような作業によって健康で幸福だと感じられるのか。それらを理解するためには,まずは対象者を理解し寄り添うということが必要になります。本書がその一助となることを願います。
世界中がCOVID-19による影響を受けて,数年前までは想像の世界でしかなかったパンデミックが現実のものとなっています。ポストコロナではこの経験が多くのひとのトラウマとなって,影響を及ぼすことになるかもしれません。このPTSDが新たな生きづらさとなっていくのかもしれません。それでも,互いに尊重し,想いあい,寄り添うことで,その影響を最小限にしていくことができればと願っています。
今年も暑い夏の予感がする令和三年吉日
岩根達郎
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書評
国立精神・神経医療研究センター 総長 中込和幸先生 推薦
本書は,精神科リハビリテーションの最前線で働く作業療法士が,何より重要な当事者の主観的な幸福感を達成するための自尊感情,価値,満足感,動機付けといった鍵概念にどのように働きかけるべきか,を明示した良書である
本書は,精神科リハビリテーションの最前線で働く作業療法士が,何より重要な当事者の主観的な幸福感を達成するための自尊感情,価値,満足感,動機付けといった鍵概念にどのように働きかけるべきか,を明示した良書である
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目次
1章 はじめに [岩根達郎]
生きづらさに寄り添う精神科リハビリテーション
2章 主観的感覚 [岩根達郎]
01 主観的感覚
02 自尊感情(self-esteem)
03 価値(value)
04 満足感(satisfaction)
05 動機付け(motivation)
3章 生きづらさ [岩根達郎]
01 生きづらさスペクトラム
02 逆境的小児期体験(ACE)
03 アディクション
04 生活行為と主観的感覚,生きづらさ
4章 事例集
01 統合失調症ケース
引きこもり,不安と焦り,医療保護入院から,デイケアでの自信・動機付け獲得,体験就労まで [岩根達郎]
02 依存症ケース
薬物使用,治療中断から,退院,人生の希望まで [大阪一樹]
03 統合失調症ケース
医療観察法病棟,暴言・暴力行為,長期入院から,関係構築,ストレス対処,成功体験,地域生活まで [岡庭隆門]
04 統合失調症ケース
被害関係妄想,退職から,デイケア,援助希求,認知行動療法,就労まで [河埜康二郎]
05 統合失調症ケース
長期入院から,調理・外出訓練,家族との関係構築,訪問看護,地域定着まで [岩井邦寿]
06 統合失調症ケース
行動化,怒りのコントロールから,男女交際,復学の挑戦,就労体験まで [宇都宮僚介]
07 重複障害ケース
行動化,感覚ニーズ,強い不安から,日課の定着,危機の回避,地域生活まで [奥田真由美]
08 統合失調症ケース
いじめ,統合失調症,他害行為,医療観察法入院から,自宅退院まで [本村幸永]
09 統合失調症ケース
就労継続支援の退所から,デイケアでの立て直し,再就労まで [森元隆文]
10 神経症性障害ケース
心因性嘔吐,休職から,通勤訓練,職場復帰まで [南 庄一郎]
11 双極性障害ケース
うつ・躁状態,発達障害傾向から,短期入院における再発予防,外来でのリハビリテーションまで [村田雄一]
生きづらさに寄り添う精神科リハビリテーション
2章 主観的感覚 [岩根達郎]
01 主観的感覚
02 自尊感情(self-esteem)
03 価値(value)
04 満足感(satisfaction)
05 動機付け(motivation)
3章 生きづらさ [岩根達郎]
01 生きづらさスペクトラム
02 逆境的小児期体験(ACE)
03 アディクション
04 生活行為と主観的感覚,生きづらさ
4章 事例集
01 統合失調症ケース
引きこもり,不安と焦り,医療保護入院から,デイケアでの自信・動機付け獲得,体験就労まで [岩根達郎]
02 依存症ケース
薬物使用,治療中断から,退院,人生の希望まで [大阪一樹]
03 統合失調症ケース
医療観察法病棟,暴言・暴力行為,長期入院から,関係構築,ストレス対処,成功体験,地域生活まで [岡庭隆門]
04 統合失調症ケース
被害関係妄想,退職から,デイケア,援助希求,認知行動療法,就労まで [河埜康二郎]
05 統合失調症ケース
長期入院から,調理・外出訓練,家族との関係構築,訪問看護,地域定着まで [岩井邦寿]
06 統合失調症ケース
行動化,怒りのコントロールから,男女交際,復学の挑戦,就労体験まで [宇都宮僚介]
07 重複障害ケース
行動化,感覚ニーズ,強い不安から,日課の定着,危機の回避,地域生活まで [奥田真由美]
08 統合失調症ケース
いじめ,統合失調症,他害行為,医療観察法入院から,自宅退院まで [本村幸永]
09 統合失調症ケース
就労継続支援の退所から,デイケアでの立て直し,再就労まで [森元隆文]
10 神経症性障害ケース
心因性嘔吐,休職から,通勤訓練,職場復帰まで [南 庄一郎]
11 双極性障害ケース
うつ・躁状態,発達障害傾向から,短期入院における再発予防,外来でのリハビリテーションまで [村田雄一]
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対象者の主観的感覚と「生きづらさ」に寄り添うための実践的ガイド
精神科リハビリテーションを担当する作業療法士をはじめとした看護師,公認心理士など医療職,精神保健福祉士など福祉職向けに,対象者の主観的感覚と「生きづらさ」に焦点を当てて現場での臨床思考を解説する書籍。
11のケースを対象者との臨床現場をイメージできる対話文とともに示しながら詳細に解説し,さらに臨床思考のポイントなどから日常遭遇する様々な事例にも応用できるように構成されている。