OT臨地実習ルートマップ
改訂第2版
定価 4,180円(税込) (本体3,800円+税)
- A5判 312ページ 2色(一部カラー),イラスト50点,写真120点
- 2019年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1941-6
電子版
序文
改訂第2版 序文
早いもので,本初版の刊行から7年が経過した。この7年の間に我が国の少子高齢化はさらに進み,人生100年時代も現実味を帯びてきた。それはすなわち,病気や障害を抱えながら生活する人々の増加に他ならず,保健医療専門職(ヘルス・プロフェッション)である作業療法士は,彼らの健康的な生活支援とヘルスニーズに応えるべく,作業療法教育と臨地・臨床実習の質をより一層高めていく必要に迫られているといえよう。
このような社会の変化に呼応する形で,厚生労働省では約20年ぶりに『理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則』(以下,指定規則)が大幅に改訂されることとなった。指定規則は,1966年の制定以来数回改正され,直近の改正(1999年)ではいわゆるカリキュラムの大綱化(教育内容の弾力化と単位制の導入)が図られた。しかし,その後我が国では介護保険制度(2000年)や地域包括支援システムの導入等々,医療や介護の仕組みは大きく変わり,地域リハビリテーションの時代へと国を挙げてのパラダイムシフトが諮られた。
今回の改訂第2版の企画は,まさにこれからの概ね10年を視野に入れたものであり,作業療法士を目指す若者に新たで確実な作業療法の方向性を示すことを目指している。そしてまた後輩の指導にあたる作業療法士諸子にも一読して頂き,今,彼らが受けている作業療法専門教育の内容を理解した上で,それを臨地・臨床教育にも反映させて頂きたいと願っている。
今回の改訂に際しては,実習でより活用しやすいようにコンパクト化を目指し,目次の見直しとほぼ全ての項において頁を減らした。一方,第Ⅰ章・臨地実習基礎知識編では院内感染やインシデント,IT時代を踏まえた準備を新たに入れ,第Ⅱ章・臨地実習実技編では作業に焦点を当てた実践を新規に加えたこと,そして学生が実習先で担当することの多い疾患を選び直したことが大きな改正点である。また,実習中の自己診断法の意味で「ストレスチェックリスト」を加えた。さらに,巻末には「付録 作業療法評価資料ガイド」として,作業療法に特化した10種類の評価法を加えた。
作業療法独自の視点とは,「作業」に焦点をあてた評価,治療および支援に他ならない。臨地実習後のセミナーにおいて,作業を軸にして実践できていた学生の発表は明確で手応えが感じられる。本書では,日本作業療法士協会で推進している「生活行為向上マネジメント(MTDLP)」の使い方をはじめ,クリニカルリーズニングを学生が身につけることができるよう,指導者にはクリニカルクラークシップの指導方法が理解できるような編集を心掛けた。臨地実習の成否は,今後の作業療法の発展にかかわっている。
厚生労働省によるカリキュラム改正に基づく新たな作業療法教育は2020年度入学生から適用されることになるが,本書を手にした学生はもとより,作業療法士の方々から,何か“新しい”ことを感じて頂ける1冊になればと願っている。
2019年2月
菊池恵美子
齋藤佑樹
早いもので,本初版の刊行から7年が経過した。この7年の間に我が国の少子高齢化はさらに進み,人生100年時代も現実味を帯びてきた。それはすなわち,病気や障害を抱えながら生活する人々の増加に他ならず,保健医療専門職(ヘルス・プロフェッション)である作業療法士は,彼らの健康的な生活支援とヘルスニーズに応えるべく,作業療法教育と臨地・臨床実習の質をより一層高めていく必要に迫られているといえよう。
このような社会の変化に呼応する形で,厚生労働省では約20年ぶりに『理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則』(以下,指定規則)が大幅に改訂されることとなった。指定規則は,1966年の制定以来数回改正され,直近の改正(1999年)ではいわゆるカリキュラムの大綱化(教育内容の弾力化と単位制の導入)が図られた。しかし,その後我が国では介護保険制度(2000年)や地域包括支援システムの導入等々,医療や介護の仕組みは大きく変わり,地域リハビリテーションの時代へと国を挙げてのパラダイムシフトが諮られた。
今回の改訂第2版の企画は,まさにこれからの概ね10年を視野に入れたものであり,作業療法士を目指す若者に新たで確実な作業療法の方向性を示すことを目指している。そしてまた後輩の指導にあたる作業療法士諸子にも一読して頂き,今,彼らが受けている作業療法専門教育の内容を理解した上で,それを臨地・臨床教育にも反映させて頂きたいと願っている。
今回の改訂に際しては,実習でより活用しやすいようにコンパクト化を目指し,目次の見直しとほぼ全ての項において頁を減らした。一方,第Ⅰ章・臨地実習基礎知識編では院内感染やインシデント,IT時代を踏まえた準備を新たに入れ,第Ⅱ章・臨地実習実技編では作業に焦点を当てた実践を新規に加えたこと,そして学生が実習先で担当することの多い疾患を選び直したことが大きな改正点である。また,実習中の自己診断法の意味で「ストレスチェックリスト」を加えた。さらに,巻末には「付録 作業療法評価資料ガイド」として,作業療法に特化した10種類の評価法を加えた。
作業療法独自の視点とは,「作業」に焦点をあてた評価,治療および支援に他ならない。臨地実習後のセミナーにおいて,作業を軸にして実践できていた学生の発表は明確で手応えが感じられる。本書では,日本作業療法士協会で推進している「生活行為向上マネジメント(MTDLP)」の使い方をはじめ,クリニカルリーズニングを学生が身につけることができるよう,指導者にはクリニカルクラークシップの指導方法が理解できるような編集を心掛けた。臨地実習の成否は,今後の作業療法の発展にかかわっている。
厚生労働省によるカリキュラム改正に基づく新たな作業療法教育は2020年度入学生から適用されることになるが,本書を手にした学生はもとより,作業療法士の方々から,何か“新しい”ことを感じて頂ける1冊になればと願っている。
2019年2月
菊池恵美子
齋藤佑樹
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目次
Ⅰ章 臨地実習基礎知識編
臨地実習の基本的な流れ 菊池恵美子
臨地実習で必要なマナー・常識 根本悟子
臨地実習前に押さえておきたい基礎知識
安全管理 會田玉美
医療者-患者関係におけるインフォームド・コンセントのあり方─shared decision making について 藤本修平
守秘義務・個人情報保護・情報管理 河野光伸
実践に即した記録・報告 渡邊邦夫
倫理とハラスメント 渡邊邦夫
コミュニケーションスキル 紅野 勉
潮流
多職種連携 下岡隆之
クリニカルクラークシップ(CCS) 吉川法生
クリニカルリーズニング(CR) 藤本一博
生活行為向上マネジメント(MTDLP) 小林隆司
リハビリテーションと栄養 塚田 徹,椎野良隆
トピックス
ストレスチェックをしてみよう 奈良元壽
Ⅱ章 臨地実習実技編
作業に焦点を当てた実践
作業療法面接の必要性と理解 齋藤佑樹
成果のまとめ方(再評価) 友利幸之介
動作・作業分析と事例 玉垣 努
医学情報の理解
画像が読める作業療法士 ①脳 宮本礼子
画像が読める作業療法士 ②骨折,呼吸器疾患,嚥下 仲村一郎
クリニカルクラークシップの臨床場面での運用の工夫 松田哲也
身体障害領域
脳血管疾患(急性期から回復期) 椎野良隆,塚田 徹
頸髄損傷(急性期から在宅支援まで) 玉垣 努
パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症 田中勇次郎,河津 聡
末梢神経損傷 阿部 薫
関節リウマチ(急性期から在宅まで) 大森みかよ
呼吸器疾患(呼吸不全) 高島千敬
心疾患 鈴木真弓
悪性腫瘍(乳がん) 田尻寿子
高次脳機能障害領域
脳血管障害と高次脳機能障害 中本久之
精神障害領域
統合失調症 松下将弥
うつ病・双極性障害 早坂友成
摂食障害 野際陽子,平澤 勉
発達障害領域
脳性麻痺(発症から学齢前・後) 伊藤祐子
自閉スペクトラム症,注意欠如多動症,学習障害 笹田 哲
知的障害者の就労支援 峰野和仁
老年期障害領域
認知症を伴う大腿骨頸部/ 転子部骨折 花房謙一
ロコモ・サルコペニア・フレイル 篠原和也
認知症 佐藤良枝
地域作業療法領域
訪問リハビリテーションとOT(身障) 澤田辰徳
訪問看護リハビリテーションとOT(精神) 勝嶋雅之
付録 作業療法評価資料ガイド─ 伊藤 剛,宇佐美好洋,西尾香織,八重樫貴之
臨地実習の基本的な流れ 菊池恵美子
臨地実習で必要なマナー・常識 根本悟子
臨地実習前に押さえておきたい基礎知識
安全管理 會田玉美
医療者-患者関係におけるインフォームド・コンセントのあり方─shared decision making について 藤本修平
守秘義務・個人情報保護・情報管理 河野光伸
実践に即した記録・報告 渡邊邦夫
倫理とハラスメント 渡邊邦夫
コミュニケーションスキル 紅野 勉
潮流
多職種連携 下岡隆之
クリニカルクラークシップ(CCS) 吉川法生
クリニカルリーズニング(CR) 藤本一博
生活行為向上マネジメント(MTDLP) 小林隆司
リハビリテーションと栄養 塚田 徹,椎野良隆
トピックス
ストレスチェックをしてみよう 奈良元壽
Ⅱ章 臨地実習実技編
作業に焦点を当てた実践
作業療法面接の必要性と理解 齋藤佑樹
成果のまとめ方(再評価) 友利幸之介
動作・作業分析と事例 玉垣 努
医学情報の理解
画像が読める作業療法士 ①脳 宮本礼子
画像が読める作業療法士 ②骨折,呼吸器疾患,嚥下 仲村一郎
クリニカルクラークシップの臨床場面での運用の工夫 松田哲也
身体障害領域
脳血管疾患(急性期から回復期) 椎野良隆,塚田 徹
頸髄損傷(急性期から在宅支援まで) 玉垣 努
パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症 田中勇次郎,河津 聡
末梢神経損傷 阿部 薫
関節リウマチ(急性期から在宅まで) 大森みかよ
呼吸器疾患(呼吸不全) 高島千敬
心疾患 鈴木真弓
悪性腫瘍(乳がん) 田尻寿子
高次脳機能障害領域
脳血管障害と高次脳機能障害 中本久之
精神障害領域
統合失調症 松下将弥
うつ病・双極性障害 早坂友成
摂食障害 野際陽子,平澤 勉
発達障害領域
脳性麻痺(発症から学齢前・後) 伊藤祐子
自閉スペクトラム症,注意欠如多動症,学習障害 笹田 哲
知的障害者の就労支援 峰野和仁
老年期障害領域
認知症を伴う大腿骨頸部/ 転子部骨折 花房謙一
ロコモ・サルコペニア・フレイル 篠原和也
認知症 佐藤良枝
地域作業療法領域
訪問リハビリテーションとOT(身障) 澤田辰徳
訪問看護リハビリテーションとOT(精神) 勝嶋雅之
付録 作業療法評価資料ガイド─ 伊藤 剛,宇佐美好洋,西尾香織,八重樫貴之
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臨地実習に臨む作業療法士養成校学生必携の一冊!
作業療法士養成校の学生に向けた臨地実習の解説書の改訂版。
学生が実習に臨むにあたり,知っておくべき実習中のマナー・接遇から,患者の治療まで,障害領域ごとに解説している。今回の改訂では,20年ぶりに改定となる「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」を踏まえ,実習前に押さえておきたい基礎知識としてクリニカルクラークシップ,臨床推論,他職種連携やMTDLPなど近年の潮流にも対応。また治療の章では作業に焦点を当てた実践を加え,学生が実習先で担当することの多い疾患を選び直している。