姿勢から介入する摂食嚥下
脳卒中患者のリハビリテーション
定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
- B5判 224ページ オールカラー,イラスト104点,写真253点
- 2017年8月25日刊行
- ISBN978-4-7583-1904-1
序文
編集の序
National institute of neurological disorders and stroke;NINDS-Ⅲ分類において,脳卒中は脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血,その他に分類され,他の疾患に比べて嚥下障害の発生率が高い疾患である。急性期に限らず嚥下障害による誤嚥性肺炎の発症で,全身状態を悪化させる特徴がある。急性期での嚥下障害は30〜60%程度出現し,そのなかで呼吸器感染症を発生させる割合は22%といわれており,発症によりリハビリテーションの進行が遅れやすくなることから誤嚥の予防は管理上非常に重要である。
『脳卒中治療ガイドライン2015』では,「十分なリスク管理のもとにできるだけ発症早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)。その内容には,早期座位・立位,装具を用いた歩行訓練,摂食・嚥下訓練,セルフケア訓練などが含まれる」と示されている。
ガイドラインのなかでは,包括的なリハビリテーションが推奨されているが,現状は言語聴覚士だけの単独介入になっている印象がある。理学療法士と作業療法士はともにリハビリテーションの専門職であるが,摂食嚥下障害に関しては苦手意識が強く,積極艇な参加はなされていない。基本動作や歩行,日常生活動作などの障害に関しては運動機能や高次脳機能などを専門的に評価し妥当な介入がなされているが,摂食嚥下という活動に関しては言語聴覚士任せになってしまっている。
治療として多く目にする介入は,口腔ケアや嚥下筋に対する筋力増強,対症療法などが中心である。この治療には,片麻痺特有にみられる姿勢調節障害を背景にした全身の機能は反映されておらず,咽頭・喉頭から口腔までの限局的な介入がほとんどである。咽頭や喉頭は最上部に位置する運動器官として捉えるべきであり,抗重力位のなかでは骨盤帯や体幹の位置に左右されるということは認識がなされていない。嚥下は運動の一部であり,嚥下機能は運動機能であることから,より良い運動機能の発揮をめざすことで嚥下障害も改善されるものである。
本書は,脳卒中患者に出現する嚥下障害について姿勢調節異常という観点から解説し,摂食行為における評価と介入の具体例について紹介する。言語聴覚士としての介入方法はもちろんのことであるが,理学療法士や作業療法士が関与する必要のある姿勢と摂食嚥下の視点について多く紹介する。この領域における知見はまだまだ不足しており,今後もますますの経験が凝集され,いっそう発展していくことが期待される。臨床での可能性を多く含んでおり,本書の内容がリハビリテーションサービスの向上に繋がることを期待している。
2017年7月
東京医療学院大学 内田 学
National institute of neurological disorders and stroke;NINDS-Ⅲ分類において,脳卒中は脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血,その他に分類され,他の疾患に比べて嚥下障害の発生率が高い疾患である。急性期に限らず嚥下障害による誤嚥性肺炎の発症で,全身状態を悪化させる特徴がある。急性期での嚥下障害は30〜60%程度出現し,そのなかで呼吸器感染症を発生させる割合は22%といわれており,発症によりリハビリテーションの進行が遅れやすくなることから誤嚥の予防は管理上非常に重要である。
『脳卒中治療ガイドライン2015』では,「十分なリスク管理のもとにできるだけ発症早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)。その内容には,早期座位・立位,装具を用いた歩行訓練,摂食・嚥下訓練,セルフケア訓練などが含まれる」と示されている。
ガイドラインのなかでは,包括的なリハビリテーションが推奨されているが,現状は言語聴覚士だけの単独介入になっている印象がある。理学療法士と作業療法士はともにリハビリテーションの専門職であるが,摂食嚥下障害に関しては苦手意識が強く,積極艇な参加はなされていない。基本動作や歩行,日常生活動作などの障害に関しては運動機能や高次脳機能などを専門的に評価し妥当な介入がなされているが,摂食嚥下という活動に関しては言語聴覚士任せになってしまっている。
治療として多く目にする介入は,口腔ケアや嚥下筋に対する筋力増強,対症療法などが中心である。この治療には,片麻痺特有にみられる姿勢調節障害を背景にした全身の機能は反映されておらず,咽頭・喉頭から口腔までの限局的な介入がほとんどである。咽頭や喉頭は最上部に位置する運動器官として捉えるべきであり,抗重力位のなかでは骨盤帯や体幹の位置に左右されるということは認識がなされていない。嚥下は運動の一部であり,嚥下機能は運動機能であることから,より良い運動機能の発揮をめざすことで嚥下障害も改善されるものである。
本書は,脳卒中患者に出現する嚥下障害について姿勢調節異常という観点から解説し,摂食行為における評価と介入の具体例について紹介する。言語聴覚士としての介入方法はもちろんのことであるが,理学療法士や作業療法士が関与する必要のある姿勢と摂食嚥下の視点について多く紹介する。この領域における知見はまだまだ不足しており,今後もますますの経験が凝集され,いっそう発展していくことが期待される。臨床での可能性を多く含んでおり,本書の内容がリハビリテーションサービスの向上に繋がることを期待している。
2017年7月
東京医療学院大学 内田 学
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目次
1章 脳卒中患者における誤嚥の現状 山口育子
脳卒中
脳卒中患者の摂食・嚥下障害のとらえ方
脳卒中の病態による特徴
時期区分による摂食・嚥下障害の現状
急性期/回復期/慢性期(生活期)
摂食・嚥下障害の経過と予後予測
まとめ
2章 脳卒中患者における低栄養の現状 高橋浩平
はじめに
低栄養とは
1. 社会生活環境に関連した低栄養:飢餓/2. 急性疾患および損傷に関連した低栄養:侵襲/3. 慢性疾患に関連した低栄養:悪液質
脳卒中における低栄養の現状
急性期脳卒中患者における低栄養の割合/回復期脳卒中患者における低栄養の割合/維持期脳卒中患者における低栄養の割合
脳卒中における低栄養のリスク因子
脳卒中と肥満
栄養評価方法
栄養スクリーニング
脳卒中における栄養介入効果
おわりに
3章 脳卒中患者に生じる摂食嚥下障害 最上谷拓磨
正常嚥下のメカニズム−摂食嚥下機能の概論
①先行期(認知期)/②準備期(咀嚼期)/③口腔期(嚥下第1 期)/④咽頭期(嚥下第2 期)/⑤食道期(嚥下第3 期)
摂食嚥下の運動様式と神経生理学
①先行期/②準備期/③口腔期/④咽頭期/⑤食道期
脳卒中患者が摂食嚥下障害を起こすメカニズム
摂食行動の動機付けの障害/先行期(認知期)の障害/準備期(咀嚼期)の障害/口腔期の障害/咽頭期の障害/食道期の障害
4章 脳卒中患者の嚥下障害の評価 山口育子
問診とフィジカルアセスメント
問診/フィジカルアセスメント
スクリーニング検査
改訂水飲み試験(MWST)/反復唾液嚥下試験(RSST)/食物テスト(FT)/頸部聴診法
機器を用いた検査
嚥下造影検査(VF)/嚥下内視鏡検査(VE)/超音波画像診断
総合的な嚥下能力評価
まとめ
5章 STの視点からみた嚥下練習
1. 一般的に実施される脳卒中患者の嚥下練習 藤田賢一
間接訓練
口腔器官のアプローチ/咽頭や喉頭,食道入口部のアプローチ
直接訓練
環境の設定/食形態の設定/代償手段
咳嗽の練習
2. STが感じる嚥下障害の難しさ 相原元気
摂食嚥下評価とその重要性
言語聴覚士の摂食嚥下領域での役割
実際の評価・訓練場面
症例1/症例2
摂食嚥下障害への介入の難しさ
医療保険,介護保険の改定から見えてくるもの
6章 姿勢と嚥下の関係 酒井康成,山鹿隆義
嚥下動作と姿勢による嚥下筋活動の変化
各嚥下期における姿勢の影響
認知期/準備期・口腔期/咽頭期・食道期
脳卒中患者の姿勢と嚥下,姿勢管理による治療
姿勢管理が嚥下動態および誤嚥に与える影響
リクライニング座位/頭頸部回旋/頸部屈曲位/各姿勢の組み合わせ効果
7章 脳卒中患者の姿勢調節障害 内田 学
姿勢調節(postural control)
反射の統合レベルの違いによる姿勢反射の分類/姿勢バランス
脳卒中による姿勢調節異常
脳卒中患者における姿勢調節異常と摂食嚥下機能
姿勢調節異常と顎関節運動/姿勢調節異常と舌運動障害/姿勢と逆流性食道炎
まとめ
8章 脳卒中患者に対する姿勢調節と嚥下練習の意義 内田 学
摂食と姿勢
正常な摂食行為(上肢操作)/脳卒中にみられる姿勢異常と摂食動作/姿勢の異常と嚥下筋活動/姿勢の異常と誤嚥
嚥下を意識した姿勢調節の方法
症例紹介
まとめ
9章 姿勢を意識した嚥下練習の実際
1. バランス障害:体幹機能と嚥下障害の関連 水野智仁
体幹機能と嚥下障害の関連
病期別で姿勢を意識した嚥下練習
急性期/回復期,長期療養期
体幹機能の改善を目的とした運動療法
座位保持に介助を要する場合/動的な座位保持に移行
おわりに
2. 低緊張患者:弛緩性麻痺が及ぼす嚥下障害 井上姫花
弛緩性麻痺とは
弛緩性麻痺の影響
弛緩性麻痺が身体に及ぼす影響/弛緩性麻痺が座位姿勢に及ぼす影響/弛緩性麻痺が食事動作に及ぼす影響/弛緩性麻痺が頭頸部機能に及ぼす影響
リハビリテーションの実際
発症後数日間,どんな訓練をするか/症例紹介
まとめ
3. 痙性麻痺患者 水野智仁
頭頸部機能と嚥下障害の関連
病期別で姿勢を意識した嚥下練習
急性期/回復期,長期療養期
頭頸部機能の改善を目的とした運動療法
頭頸部の過緊張による関節可動域制限に対するアプローチ/頭頸部の姿勢保持に対するアプローチ/嚥下関連筋の筋力強化に対するアプローチ
おわりに
10章 脳卒中患者に対するシーティング 最上谷拓磨
シーティングの目的
脳卒中患者の摂食嚥下障害に寄与する姿勢,環境
シーティングの方法
摂食嚥下に有利な基本姿勢/シーティングを必要とする原因と対応
11章 食事環境が引き起こす嚥下の問題点 菊池昌代,香川健太郎
脳卒中患者の食事環境
脳卒中患者の座位バランス障害
摂食動作における上肢の巧緻性と座位バランス
道具の把持/食物の把持(つかむ・挟む)/食物の運搬
脳卒中患者の摂食動作の問題点
食事環境の設定
テーブルの高さ/食器の位置/操作物の選定/福祉用具の活用
まとめ
12章 食事動作が引き起こす嚥下の問題点 相原元気
はじめに
嚥下機能と姿勢の関係
食事動作と嚥下機能の問題点
経口摂取場面をどのように捉えるべきか
症例を通しての嚥下と姿勢,食事動作の関係
症例1/症例2
13章 食事場面における作業療法の実際 菊池昌代,香川健太郎
はじめに
症例報告:脳梗塞後遺症−低緊張
食事動作の問題点
食事動作の改善のポイント
前方リーチ動作/健側方向へのリーチ動作/麻痺側方向へのリーチ動作/健側の下肢挙上能力
食事動作における評価のまとめ
治療介入の具体例
姿勢調節としての座位バランスを確立/骨盤帯や体幹の安定性を保証させたなかで,健側上肢を食事動作に参加させる運動性を確立/立位作業課題による姿勢調節機能の再構築/食事場面での手と口の協応関係を構築/治療効果
食事場面の変化
まとめ
14章 脳卒中患者における呼吸機能と嚥下の関係性 酒井康成
呼吸中枢と嚥下中枢
脳卒中患者における呼吸機能の特徴
脳卒中患者の姿勢の違いによる呼吸機能の変化
呼吸機能と嚥下機能の関係
呼吸機能と嚥下の関係性/呼吸運動と嚥下の協調性
人工呼吸器関連肺炎との関係
予防肢位/人工呼吸器離脱後の嚥下障害
摂食・嚥下障害患者における呼吸機能評価と呼吸理学療法
15章 チームで介入する,脳卒中患者に対する摂食嚥下リハビリテーション 香川健太郎
はじめに
チームアプローチの意義
摂食・嚥下は局所機能と全身機能で成立/誤嚥性肺炎のリスクが高い/検査の必要性/栄養管理
各時期における摂食・嚥下リハビリテーション
急性期での摂食・嚥下アプローチ/回復期での摂食・嚥下アプローチ/維持期での摂食・嚥下アプローチ
最後に
脳卒中
脳卒中患者の摂食・嚥下障害のとらえ方
脳卒中の病態による特徴
時期区分による摂食・嚥下障害の現状
急性期/回復期/慢性期(生活期)
摂食・嚥下障害の経過と予後予測
まとめ
2章 脳卒中患者における低栄養の現状 高橋浩平
はじめに
低栄養とは
1. 社会生活環境に関連した低栄養:飢餓/2. 急性疾患および損傷に関連した低栄養:侵襲/3. 慢性疾患に関連した低栄養:悪液質
脳卒中における低栄養の現状
急性期脳卒中患者における低栄養の割合/回復期脳卒中患者における低栄養の割合/維持期脳卒中患者における低栄養の割合
脳卒中における低栄養のリスク因子
脳卒中と肥満
栄養評価方法
栄養スクリーニング
脳卒中における栄養介入効果
おわりに
3章 脳卒中患者に生じる摂食嚥下障害 最上谷拓磨
正常嚥下のメカニズム−摂食嚥下機能の概論
①先行期(認知期)/②準備期(咀嚼期)/③口腔期(嚥下第1 期)/④咽頭期(嚥下第2 期)/⑤食道期(嚥下第3 期)
摂食嚥下の運動様式と神経生理学
①先行期/②準備期/③口腔期/④咽頭期/⑤食道期
脳卒中患者が摂食嚥下障害を起こすメカニズム
摂食行動の動機付けの障害/先行期(認知期)の障害/準備期(咀嚼期)の障害/口腔期の障害/咽頭期の障害/食道期の障害
4章 脳卒中患者の嚥下障害の評価 山口育子
問診とフィジカルアセスメント
問診/フィジカルアセスメント
スクリーニング検査
改訂水飲み試験(MWST)/反復唾液嚥下試験(RSST)/食物テスト(FT)/頸部聴診法
機器を用いた検査
嚥下造影検査(VF)/嚥下内視鏡検査(VE)/超音波画像診断
総合的な嚥下能力評価
まとめ
5章 STの視点からみた嚥下練習
1. 一般的に実施される脳卒中患者の嚥下練習 藤田賢一
間接訓練
口腔器官のアプローチ/咽頭や喉頭,食道入口部のアプローチ
直接訓練
環境の設定/食形態の設定/代償手段
咳嗽の練習
2. STが感じる嚥下障害の難しさ 相原元気
摂食嚥下評価とその重要性
言語聴覚士の摂食嚥下領域での役割
実際の評価・訓練場面
症例1/症例2
摂食嚥下障害への介入の難しさ
医療保険,介護保険の改定から見えてくるもの
6章 姿勢と嚥下の関係 酒井康成,山鹿隆義
嚥下動作と姿勢による嚥下筋活動の変化
各嚥下期における姿勢の影響
認知期/準備期・口腔期/咽頭期・食道期
脳卒中患者の姿勢と嚥下,姿勢管理による治療
姿勢管理が嚥下動態および誤嚥に与える影響
リクライニング座位/頭頸部回旋/頸部屈曲位/各姿勢の組み合わせ効果
7章 脳卒中患者の姿勢調節障害 内田 学
姿勢調節(postural control)
反射の統合レベルの違いによる姿勢反射の分類/姿勢バランス
脳卒中による姿勢調節異常
脳卒中患者における姿勢調節異常と摂食嚥下機能
姿勢調節異常と顎関節運動/姿勢調節異常と舌運動障害/姿勢と逆流性食道炎
まとめ
8章 脳卒中患者に対する姿勢調節と嚥下練習の意義 内田 学
摂食と姿勢
正常な摂食行為(上肢操作)/脳卒中にみられる姿勢異常と摂食動作/姿勢の異常と嚥下筋活動/姿勢の異常と誤嚥
嚥下を意識した姿勢調節の方法
症例紹介
まとめ
9章 姿勢を意識した嚥下練習の実際
1. バランス障害:体幹機能と嚥下障害の関連 水野智仁
体幹機能と嚥下障害の関連
病期別で姿勢を意識した嚥下練習
急性期/回復期,長期療養期
体幹機能の改善を目的とした運動療法
座位保持に介助を要する場合/動的な座位保持に移行
おわりに
2. 低緊張患者:弛緩性麻痺が及ぼす嚥下障害 井上姫花
弛緩性麻痺とは
弛緩性麻痺の影響
弛緩性麻痺が身体に及ぼす影響/弛緩性麻痺が座位姿勢に及ぼす影響/弛緩性麻痺が食事動作に及ぼす影響/弛緩性麻痺が頭頸部機能に及ぼす影響
リハビリテーションの実際
発症後数日間,どんな訓練をするか/症例紹介
まとめ
3. 痙性麻痺患者 水野智仁
頭頸部機能と嚥下障害の関連
病期別で姿勢を意識した嚥下練習
急性期/回復期,長期療養期
頭頸部機能の改善を目的とした運動療法
頭頸部の過緊張による関節可動域制限に対するアプローチ/頭頸部の姿勢保持に対するアプローチ/嚥下関連筋の筋力強化に対するアプローチ
おわりに
10章 脳卒中患者に対するシーティング 最上谷拓磨
シーティングの目的
脳卒中患者の摂食嚥下障害に寄与する姿勢,環境
シーティングの方法
摂食嚥下に有利な基本姿勢/シーティングを必要とする原因と対応
11章 食事環境が引き起こす嚥下の問題点 菊池昌代,香川健太郎
脳卒中患者の食事環境
脳卒中患者の座位バランス障害
摂食動作における上肢の巧緻性と座位バランス
道具の把持/食物の把持(つかむ・挟む)/食物の運搬
脳卒中患者の摂食動作の問題点
食事環境の設定
テーブルの高さ/食器の位置/操作物の選定/福祉用具の活用
まとめ
12章 食事動作が引き起こす嚥下の問題点 相原元気
はじめに
嚥下機能と姿勢の関係
食事動作と嚥下機能の問題点
経口摂取場面をどのように捉えるべきか
症例を通しての嚥下と姿勢,食事動作の関係
症例1/症例2
13章 食事場面における作業療法の実際 菊池昌代,香川健太郎
はじめに
症例報告:脳梗塞後遺症−低緊張
食事動作の問題点
食事動作の改善のポイント
前方リーチ動作/健側方向へのリーチ動作/麻痺側方向へのリーチ動作/健側の下肢挙上能力
食事動作における評価のまとめ
治療介入の具体例
姿勢調節としての座位バランスを確立/骨盤帯や体幹の安定性を保証させたなかで,健側上肢を食事動作に参加させる運動性を確立/立位作業課題による姿勢調節機能の再構築/食事場面での手と口の協応関係を構築/治療効果
食事場面の変化
まとめ
14章 脳卒中患者における呼吸機能と嚥下の関係性 酒井康成
呼吸中枢と嚥下中枢
脳卒中患者における呼吸機能の特徴
脳卒中患者の姿勢の違いによる呼吸機能の変化
呼吸機能と嚥下機能の関係
呼吸機能と嚥下の関係性/呼吸運動と嚥下の協調性
人工呼吸器関連肺炎との関係
予防肢位/人工呼吸器離脱後の嚥下障害
摂食・嚥下障害患者における呼吸機能評価と呼吸理学療法
15章 チームで介入する,脳卒中患者に対する摂食嚥下リハビリテーション 香川健太郎
はじめに
チームアプローチの意義
摂食・嚥下は局所機能と全身機能で成立/誤嚥性肺炎のリスクが高い/検査の必要性/栄養管理
各時期における摂食・嚥下リハビリテーション
急性期での摂食・嚥下アプローチ/回復期での摂食・嚥下アプローチ/維持期での摂食・嚥下アプローチ
最後に
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摂食嚥下障害に対し,いま具体的に何が出来るのか? 姿勢調節異常の観点から,評価と介入を解説
脳卒中患者の嚥下障害に対するリハビリテーションについて,『脳卒中治療ガイドライン2015』ではグレードA「十分なリスク管理のもとにできるだけ発症早期から積極的なリハビリテーションを行う事が強く勧められる」としている。しかし,多く目にする介入は咽頭・喉頭から口腔までの限局的な介入がほとんどで,口腔ケアや嚥下筋に対する筋力増強,対症療法などが中心だと考えられる。
本書は,脳卒中患者に出現する嚥下障害について姿勢調節異常という観点から解説し,摂食行為における評価と介入の具体例について紹介する。言語聴覚士としての介入方法は勿論のこと,理学療法士や作業療法士が関与する必要のある「姿勢と摂食嚥下」の視点について多く紹介している。
咽頭や喉頭は身体の最上部に位置する運動器官であり,抗重力位の中では骨盤帯や体幹の位置に影響される。嚥下機能を運動機能の一部と捉え,より良い運動機能の発揮を目指すことで,嚥下障害の改善をめざすものである。