整形外科 日常診療のエッセンス

上肢

上肢

■編集 池上 博泰

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • B5変型判  388ページ  2色(一部カラー),イラスト100点,写真200点
  • 2019年7月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-1865-5

上肢を1つのユニットとして診る力も身に付く,日常診療のエッセンスが詰まった1冊!

限られた外来時間。この時間を有効に使い,診療を行いたいものである。明らかな外傷がない場合,問診や臨床所見などから診察を進めるが,主症状を訴える場所と原因疾患が一致しないこともあり,注意が必要である。
本書は,まずⅠ章の「診察の進め方」で,肩・肘・手それぞれの診察法だけでなく,上肢全体としての診かたも解説している。
Ⅱ章は「疾患別治療法」として,各部位ごとに診断と治療に分けて解説している。特に上肢全体の痛みとして,心筋梗塞や動脈瘤解離,頚椎系の疾患などとの鑑別診断も紹介している。診断では,「これで確定診断」「見逃し注意」など,注意すべき点がよくわかるようになっている。治療は,3つのStepで構成され,Step 1「治療戦略」は,フローチャートを使いビジュアルに治療の流れが確認でき,Step 2「保存療法」とStep 3「手術療法」でそれぞれの治療法を解説している。特にStep 2とStep 3の間には「保存療法→手術療法のターニングポイント」を配し,どのタイミングで保存療法から手術療法に切り替えるのかを明確に示している。
本書を読めば,明日からの日常診療がより正確に,より効率的なものに必ずなる,整形外科必携の1冊である。


序文

 繊細な感覚を有し,俊敏で正確な動きを行う「手」は,私たちの生活に不可欠なものである。科学が飛躍的に進歩し,人工知能が臨床診断の一助を担うようになった現在においても,手と同様の機能をもつ巧妙な機械を作り出すことは困難である。この緻密な構造,機能をもつ手を最大限有効に働かせるためには,肘関節・肩関節の働きが不可欠である。これらを扱う上肢の外科学は,第二次世界大戦以降に急速に発展・進歩した学問であり,基礎的および臨床的研究が大いに行われ,わが国からも世界的な業績が数多く出されている。
 この上肢の外科学は整形外科学の一分野ではあるが,対象の特殊性や専門性の高さから一般整形外科医のなかには上肢疾患に苦手意識をもつ医師も多い。また十分な知識をもたないままに安易な治療を行った結果,残念な結果を招いてしまうケースも散見される。上肢疾患のなかには治療に際して非常に高度な専門的知識・技術を必要とする症例もあり,上肢全体を一つの運動ユニットとしてとらえ,上肢疾患についての十分な知識をもって治療を行う必要がある。
 本書では多岐にわたる上肢疾患のなかから,日常診療で遭遇する機会が多く,整形外科専門医として必ず知識を身につけておくべき疾患をとりあげた。執筆は現在,臨床の最前線で活躍している指導医の方々にお願いし,病態,診断,治療などについて重要事項を中心にまとめていただいた。特に保存療法から手術療法を行う際のターニングポイントについても,実際に多くの手術を行っている執筆者の経験から解説していただいた。
 本書は整形外科専門医のみならず上肢の外科学に関心のある研修医や形成外科医,また上肢の外科学に関する知識を深めたい医学部生,看護師,作業療法士,理学療法士などメディカルスタッフにも役立つものと考えている。本書が上肢疾患の理解を深めることの一助になり,日常診療での診断・治療に大いに役立つことを心から念願する。

2019年6 月
東邦大学医学部整形外科学教授
池上博泰
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目次

Ⅰ 診察の進め方
問診と診察  大泉尚美
  上肢の診察の進め方/問診/視診/触診/運動診/神経学的診察/特殊テスト/診療における患者との接し方と治療の進め方
【肩関節の診察】
 肩の解剖とバイオメカニクス  二村昭元,鈴木志郎,秋田恵一
  肩甲帯の基本設計と神経支配/形態からみた腱板の機能/関節上腕靱帯と関節包
 診察の実際  鈴木志郎,二村昭元
  視診/可動域測定/筋力測定/腱板に関する検査/不安定性の検査/肩関節の機能障害の評価
【肘関節の診察】
 肘関節の解剖とバイオメカニクス  今谷潤也
  骨構造/靱帯/筋肉/神経,血管/肘関節のバイオメカ二クス
 診察の実際  今谷潤也
  病歴および問診/視診および触診/肘関節可動域/各種ストレステスト,誘発テスト/単純X 線撮影/関節造影/Hanging arm test/コンピュータ断層撮影(CT)などの特殊な画像診断法
【手関節・手の診察】
 手関節・手の解剖とバイオメカニクス  西脇正夫
  骨・関節/筋/腱
 診察の実際  西脇正夫
  問診/視診/触診
 検査① X 線撮影,CT,超音波  後藤英之
  画像検査のポイント/単純X線撮影/CT 検査/超音波検査
 検査② MRI  佐志隆士
  上肢MRIを正しく撮像依頼する/上肢MRIの読影法

Ⅱ 疾患別治療法
【上肢(全体)】
 関節リウマチ  岩本卓士
  関節リウマチ
 肉ばなれ,筋挫傷,腱損傷  内山善康
  上腕二頭筋長頭腱断裂・上腕二頭筋腱遠位部皮下断裂/大胸筋腱遠位部皮下断裂
 上肢末梢神経損傷  岩堀裕介
  上肢末梢神経損傷
 腫瘍  弘實 透,中山ロバート
  軟部腫瘍/骨腫瘍
 その他(上肢に痛みを生じる鑑別疾患)  岡田貴充
 <上位神経由来:頚髄・神経根障害>
  頚椎症性神経根症/頚椎症性脊髄症/頚椎後縦靱帯骨化症/頚椎椎間板ヘルニア/脊椎腫瘍/脊髄腫瘍
 <上位神経由来:腕神経叢障害>
  胸郭出口症候群/Pancoast症候群(Pancoast 腫瘍)/関連痛
【肩関節】
 小児肩関節疾患(外傷を除く)  西須 孝
  小児化膿性肩関節炎/Sprengel変形
 肩関節周囲のスポーツ損傷  古屋貫治,西中直也
  肩関節脱臼/投球障害,オーバーヘッドスポーツ障害/胸郭出口症候群
 関節症・炎症性疾患  松村 昇
  変形性肩関節症/関節リウマチ/腱板断裂性関節症/感染性肩関節炎/Charcot 関節/血友病性関節症
 肩甲帯の外傷  仲川喜之
  鎖骨骨折/肩鎖関節脱臼/胸鎖関節脱臼/肩関節脱臼/上腕骨近位端骨折/肩甲骨骨折
 末梢神経損傷  岩堀裕介
  胸郭出口症候群/腋窩神経損傷/肩甲上神経損傷/副神経損傷/長胸神経損傷/橈骨神経損傷(三角形間隙症候群)
【肘関節】
 小児肘関節疾患  関 敦仁
  橈尺骨癒合症
 肘のスポーツ障害  船越忠直
  離断性骨軟骨炎/内側側副靱帯損傷/上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
 脱臼,骨折ほか(小児)  高木岳彦
  肘内障/上腕骨外側顆骨折/上腕骨顆上骨折
 Monteggia骨折
 脱臼,骨折ほか(成人)  坂井健介
  上腕骨遠位部骨折/上腕骨小頭・滑車骨折/橈骨頭単独骨折/肘関節脱臼・複合靱帯損傷
 関節症・炎症性疾患  伊藤 宣
  関節症・炎症性疾患
 末梢神経損傷  岡﨑真人
  肘部管症候群/前骨間神経麻痺/後骨間神経麻痺
【手関節・手】
 小児の手指障害(手の先天異常)  射場浩介
  母指多指症/合指症/横軸形成障害(合短指症)/橈側列形成障害/裂手症/屈指症/短指症/絞扼輪症候群/握り母指
 骨端症・骨壊死  鈴木 拓
  Preiser病/Kienböck病
 手関節・手のスポーツ障害  阿部耕治
  三角線維軟骨複合体損傷/槌指(腱性,骨性)
 手の変形  建部将広
  変形性関節症/Dupuytren拘縮
 橈骨遠位端骨折  森田晃造
  橈骨遠位端骨折
 手根骨の外傷  三浦俊樹
  舟状骨骨折/舟状月状骨解離/月状骨周囲脱臼/三角骨骨折/有鉤骨骨折/Bennett 骨折/三角線維軟骨複合体損傷
 手指の外傷  中山政憲
  手指部外創(切創・挫創)/屈筋腱・伸筋腱損傷/骨折・脱臼骨折(指節骨・中手骨骨折)
 末梢神経損傷  森澤 妥
  手根管症候群/Guyon管症候群
 
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