ザ・ベーシックメソッド
心不全 非薬物治療
定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
- B5判 272ページ 2色(一部カラー),イラスト50点,写真300点
- 2022年10月1日刊行
- ISBN978-4-7583-1979-9
電子版
序文
序
心不全治療は,薬物治療と非薬物治療を組み合わせて行う。近年,新規の心不全治療薬が次々と登場し,その薬物治療の進歩は目覚ましい。心不全治療薬として長らく使われてきたACE阻害薬,ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬),β遮断薬,MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)に,新たにイバブラジン(Ifチャネル阻害薬,HCNチャネル遮断薬),サクビトリルバルサルタン(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬:ARNI),SGLT2阻害薬,ベルイシグアト(sGC刺激薬)が加わった。
心不全非薬物治療として,従来から用いられてきた植込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)も,その機能が進化し続けている。機械的補助循環(MCS)は,心不全急性期および重症例の治療に必須であるが,患者の病態に応じてIABP,ECMO,Impella®,補助人工心臓(VAD)を使い分ける必要がある。また,構造的心疾患(SHD)に対するインターベンション治療であるTAVIやMitraClip™の心不全治療としての有効性も証明された。
心不全に対する非薬物治療の適用にあたっては,エビデンスをふまえガイドラインに基づいて判断する必要がある。さらに,使用するデバイスの植込み手技や管理は難度の高いものが多く,幅広い知識が必要である。また,心不全患者を適切に管理していくには,循環器内科医や心臓血管外科医ばかりでなく医療専門職メディカルスタッフも含め,さまざまな非薬物治療の適応・使い分けや手技と管理を理解しておく必要がある。しかしながら,心不全に対する非薬物治療の基本と実践を包括的に学ぶことのできる書籍は,今まで存在しなかった。
本書は,2021年3月に刊行された『ザ・ベーシックメソッド 心不全 薬物治療』の続編として,心不全をこれから学び始める研修医,循環器内科医,心臓血管外科医,メディカルスタッフなどを主な対象に,心不全の急性期から慢性期における治療・管理に必要な非薬物治療の適応や手技・管理の基礎知識と実践を解説した実践書である。『心不全 薬物治療』のスタイルを踏襲して,簡潔明瞭かつ平易な文章ならびに豊富な図版・イラストにより理解しやすく,また基礎知識と実践をリンクさせることで有機的に学ぶことのできるよう工夫している。治療法ごとに〔基礎知識 Knowledge〕と〔実践 Practice〕パートに分けてLink機能を付け,知識を実臨床でどう使いこなせばよいか一目でわかる構成になっている。手技に必要な心臓の解剖図・シェーマ,手技の画像など,図版を多く用いており,ビジュアルで理解できる。
心不全に対する非薬物治療の「ザ・ベーシック・メソッド」として,診療の現場でお役立ていただける実践書であると確信している。
2022年8月
九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授
筒井裕之
心不全治療は,薬物治療と非薬物治療を組み合わせて行う。近年,新規の心不全治療薬が次々と登場し,その薬物治療の進歩は目覚ましい。心不全治療薬として長らく使われてきたACE阻害薬,ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬),β遮断薬,MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)に,新たにイバブラジン(Ifチャネル阻害薬,HCNチャネル遮断薬),サクビトリルバルサルタン(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬:ARNI),SGLT2阻害薬,ベルイシグアト(sGC刺激薬)が加わった。
心不全非薬物治療として,従来から用いられてきた植込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)も,その機能が進化し続けている。機械的補助循環(MCS)は,心不全急性期および重症例の治療に必須であるが,患者の病態に応じてIABP,ECMO,Impella®,補助人工心臓(VAD)を使い分ける必要がある。また,構造的心疾患(SHD)に対するインターベンション治療であるTAVIやMitraClip™の心不全治療としての有効性も証明された。
心不全に対する非薬物治療の適用にあたっては,エビデンスをふまえガイドラインに基づいて判断する必要がある。さらに,使用するデバイスの植込み手技や管理は難度の高いものが多く,幅広い知識が必要である。また,心不全患者を適切に管理していくには,循環器内科医や心臓血管外科医ばかりでなく医療専門職メディカルスタッフも含め,さまざまな非薬物治療の適応・使い分けや手技と管理を理解しておく必要がある。しかしながら,心不全に対する非薬物治療の基本と実践を包括的に学ぶことのできる書籍は,今まで存在しなかった。
本書は,2021年3月に刊行された『ザ・ベーシックメソッド 心不全 薬物治療』の続編として,心不全をこれから学び始める研修医,循環器内科医,心臓血管外科医,メディカルスタッフなどを主な対象に,心不全の急性期から慢性期における治療・管理に必要な非薬物治療の適応や手技・管理の基礎知識と実践を解説した実践書である。『心不全 薬物治療』のスタイルを踏襲して,簡潔明瞭かつ平易な文章ならびに豊富な図版・イラストにより理解しやすく,また基礎知識と実践をリンクさせることで有機的に学ぶことのできるよう工夫している。治療法ごとに〔基礎知識 Knowledge〕と〔実践 Practice〕パートに分けてLink機能を付け,知識を実臨床でどう使いこなせばよいか一目でわかる構成になっている。手技に必要な心臓の解剖図・シェーマ,手技の画像など,図版を多く用いており,ビジュアルで理解できる。
心不全に対する非薬物治療の「ザ・ベーシック・メソッド」として,診療の現場でお役立ていただける実践書であると確信している。
2022年8月
九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授
筒井裕之
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目次
Ⅰ章 心不全 非薬物治療のオキテーまずはこれだけ
1 急性期の非薬物治療 [佐藤直樹]
KEY POINT 急性期対応のフローチャート
急性期対応
非薬物治療の適応判断
肺水腫に伴う低酸素血症に対する非薬物治療
全身的な体液貯留に対する非薬物治療
低心拍出・低灌流に対する非薬物治療
チーム医療
2 慢性期の非薬物治療 [絹川真太郎]
KEY POINT 心不全治療アルゴリズム
疾病管理
運動療法
心臓再同期療法(CRT)
植込み型除細動器(ICD)
MitraClip™
左室補助人工心臓(LVAD)
心臓移植
Ⅱ章 急性期の非薬物治療
1 人工呼吸管理―NPPV,気管挿管による人工呼吸,VV-ECMO [石原嗣郎]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 人工呼吸管理の適応と方法
酸素療法の目的
酸素療法の適応
適応疾患
PEEPの効果とは
PSの効果とは
気管挿管
静脈脱血・静脈送血体外膜型人工肺(VV-ECMO)
CCUから一般病棟へ
【実践 Practice】
Case 1
2 血液浄化療法 [渡辺光洋,猪又孝元]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 血液浄化療法の種類
適応
手技の実際
離脱基準
【実践 Practice】
Case 1
3 IABP,PCPS/VA-ECMO [牛島智基,塩瀬 明]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①INTERMACS/J-MACS分類
KEY POINT ②経皮的機械的補助循環の特徴と血行動態への効果
KEY POINT ③経皮的機械的補助循環の補助効果
重症心不全における機械的循環補助
IABP
VA-ECMO
KEY POINT ④VA-ECMOにおけるmixing point
KEY POINT ⑤Mixing pointとdifferential hypoxia
【実践 Practice】
Case 1
Case 2
ECMO治療体制
4 Impella® [肥後太基]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ImpellaⓇポンプカテーテルと制御装置
ImpellaⓇの種類と効果
適応と禁忌,ほかの循環補助装置との使い分けや併用
挿入にあたっての注意点
管理中の合併症と注意点
ImpellaⓇの離脱
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2 /Case 3 / Case 4 / Case 5
5 体外設置型補助人工心臓(VAD) [波多野 将]
【基礎知識 Knowledge】
はじめに
KEY POINT 重症心不全における補助人工心臓(VAD)治療のアルゴリズム
各デバイスの使い分け
体外設置型VADの管理と成績
体外設置型VADの離脱基準
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2 / Case 3
Ⅲ章 慢性期の非薬物治療
1 植込み型除細動器(ICD,S-ICD) [金井美和,庄田守男]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①2次予防
適応
KEY POINT ②1次予防
手技の実際と合併症
ICD頻脈設定とフォローアップ
【実践 Practice】
Case 1 /Case 2 / Case 3
2 着用型自動除細動器(WCD) [上田暢彦,草野研吾]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①WCDの構成品
KEY POINT ②不整脈検出から治療までの流れ
WCDの適応と有効性
WCDの構造と使用方法
使用にあたっての合併症・注意点,今後の課題
【実践 Practice】
Case 1 /Case 2 / Case 3 / Case 4
3 心臓再同期療法(CRT,CRT-D) ―適応,手法や管理,合併症,遠隔モニタリング [西井伸洋,伊藤 浩]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 心臓再同期療法(CRT)による心筋酸素消費量の変化
心臓再同期療法(CRT)の原理
大規模研究の結果
CRT植込み手技
合併症
ノンレスポンダー(non-responder)
ノンレスポンダーを減らす新しい機能
【実践 Practice】
Case 1 スーパーレスポンダーの症例
Case 2 修正大血管転位に対するCRT症例
Case 3 心外膜リードが奏功した症例
4 心房細動カテーテルアブレーション [ 山本哲平,清水 渉]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 心房細動の病態生理(主たるもの)と心不全
適応
手技の実際
合併症
フォローアップ
【実践 Practice】
Case 1/ Case 2
5 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI) [中村大輔,坂田泰史]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①Edwards Sapien 3Ⓡ TF/TA/Tao system
経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)
KEY POINT ②CoreValve™ Evolut™ PRO+
大動脈弁狭窄症(AS)
TAVIの適応
注意点(合併症)
今後の展望
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2
6 MitraClip™ [中村研介,山本一博]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①MitraClip™のシステム
KEY POINT ②MitraClip™の仕組み
解剖がわかる
適応
手技の実際
フォローアップ
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2
7 植込型補助人工心臓(VAD) [ 中村牧子,絹川弘一郎]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①植込型補助人工心臓(HeartMateⅡ™)の概略
KEY POINT ②植込型補助人工心臓(HeartMate3™)
適応
合併症
管理の実際
フォローアップ
実践 Practice】
Case 1 / Case 2
8 心臓移植 [小野 稔]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 心臓移植後の累積生存率
心臓移植の適応と登録
心臓移植待機中の治療
心臓移植の適合と手術
移植後免疫抑制療法
☝ここが勘ドコロ 2
移植後慢性期合併症
心臓移植後の予後
【実践 Practice】
Case 1
心臓移植登録
植込型VAD装着から心臓移植後まで
Case 2
心臓移植登録
植込型VAD装着から心臓移植後まで
1 急性期の非薬物治療 [佐藤直樹]
KEY POINT 急性期対応のフローチャート
急性期対応
非薬物治療の適応判断
肺水腫に伴う低酸素血症に対する非薬物治療
全身的な体液貯留に対する非薬物治療
低心拍出・低灌流に対する非薬物治療
チーム医療
2 慢性期の非薬物治療 [絹川真太郎]
KEY POINT 心不全治療アルゴリズム
疾病管理
運動療法
心臓再同期療法(CRT)
植込み型除細動器(ICD)
MitraClip™
左室補助人工心臓(LVAD)
心臓移植
Ⅱ章 急性期の非薬物治療
1 人工呼吸管理―NPPV,気管挿管による人工呼吸,VV-ECMO [石原嗣郎]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 人工呼吸管理の適応と方法
酸素療法の目的
酸素療法の適応
適応疾患
PEEPの効果とは
PSの効果とは
気管挿管
静脈脱血・静脈送血体外膜型人工肺(VV-ECMO)
CCUから一般病棟へ
【実践 Practice】
Case 1
2 血液浄化療法 [渡辺光洋,猪又孝元]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 血液浄化療法の種類
適応
手技の実際
離脱基準
【実践 Practice】
Case 1
3 IABP,PCPS/VA-ECMO [牛島智基,塩瀬 明]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①INTERMACS/J-MACS分類
KEY POINT ②経皮的機械的補助循環の特徴と血行動態への効果
KEY POINT ③経皮的機械的補助循環の補助効果
重症心不全における機械的循環補助
IABP
VA-ECMO
KEY POINT ④VA-ECMOにおけるmixing point
KEY POINT ⑤Mixing pointとdifferential hypoxia
【実践 Practice】
Case 1
Case 2
ECMO治療体制
4 Impella® [肥後太基]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ImpellaⓇポンプカテーテルと制御装置
ImpellaⓇの種類と効果
適応と禁忌,ほかの循環補助装置との使い分けや併用
挿入にあたっての注意点
管理中の合併症と注意点
ImpellaⓇの離脱
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2 /Case 3 / Case 4 / Case 5
5 体外設置型補助人工心臓(VAD) [波多野 将]
【基礎知識 Knowledge】
はじめに
KEY POINT 重症心不全における補助人工心臓(VAD)治療のアルゴリズム
各デバイスの使い分け
体外設置型VADの管理と成績
体外設置型VADの離脱基準
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2 / Case 3
Ⅲ章 慢性期の非薬物治療
1 植込み型除細動器(ICD,S-ICD) [金井美和,庄田守男]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①2次予防
適応
KEY POINT ②1次予防
手技の実際と合併症
ICD頻脈設定とフォローアップ
【実践 Practice】
Case 1 /Case 2 / Case 3
2 着用型自動除細動器(WCD) [上田暢彦,草野研吾]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①WCDの構成品
KEY POINT ②不整脈検出から治療までの流れ
WCDの適応と有効性
WCDの構造と使用方法
使用にあたっての合併症・注意点,今後の課題
【実践 Practice】
Case 1 /Case 2 / Case 3 / Case 4
3 心臓再同期療法(CRT,CRT-D) ―適応,手法や管理,合併症,遠隔モニタリング [西井伸洋,伊藤 浩]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 心臓再同期療法(CRT)による心筋酸素消費量の変化
心臓再同期療法(CRT)の原理
大規模研究の結果
CRT植込み手技
合併症
ノンレスポンダー(non-responder)
ノンレスポンダーを減らす新しい機能
【実践 Practice】
Case 1 スーパーレスポンダーの症例
Case 2 修正大血管転位に対するCRT症例
Case 3 心外膜リードが奏功した症例
4 心房細動カテーテルアブレーション [ 山本哲平,清水 渉]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 心房細動の病態生理(主たるもの)と心不全
適応
手技の実際
合併症
フォローアップ
【実践 Practice】
Case 1/ Case 2
5 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI) [中村大輔,坂田泰史]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①Edwards Sapien 3Ⓡ TF/TA/Tao system
経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)
KEY POINT ②CoreValve™ Evolut™ PRO+
大動脈弁狭窄症(AS)
TAVIの適応
注意点(合併症)
今後の展望
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2
6 MitraClip™ [中村研介,山本一博]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①MitraClip™のシステム
KEY POINT ②MitraClip™の仕組み
解剖がわかる
適応
手技の実際
フォローアップ
【実践 Practice】
Case 1 / Case 2
7 植込型補助人工心臓(VAD) [ 中村牧子,絹川弘一郎]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT ①植込型補助人工心臓(HeartMateⅡ™)の概略
KEY POINT ②植込型補助人工心臓(HeartMate3™)
適応
合併症
管理の実際
フォローアップ
実践 Practice】
Case 1 / Case 2
8 心臓移植 [小野 稔]
【基礎知識 Knowledge】
KEY POINT 心臓移植後の累積生存率
心臓移植の適応と登録
心臓移植待機中の治療
心臓移植の適合と手術
移植後免疫抑制療法
☝ここが勘ドコロ 2
移植後慢性期合併症
心臓移植後の予後
【実践 Practice】
Case 1
心臓移植登録
植込型VAD装着から心臓移植後まで
Case 2
心臓移植登録
植込型VAD装着から心臓移植後まで
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