ザ・マニュアル 心不全の心カテ
定価 4,180円(税込) (本体3,800円+税)
- B5判 156ページ 2色(一部カラー)
- 2018年3月29日刊行
- ISBN978-4-7583-1447-3
序文
はじめに
現在,心臓カテーテル検査(心カテ)を行う対象は,ほぼ冠動脈と不整脈で占有されています。一方で,循環器疾患入院の多くは,いまや心不全に置き換わっています。であるのになぜ,心不全がカテ室の隅に追いやられているのでしょうか。
心不全とは,何らかの原因に基づく血行動態の破綻です。心カテは,状態評価とともに原因検索をも検査標的にできる,つまり,「一粒で二度美味しい」診断ツールです。新規の心不全患者に出会った際に,現場は「心カテをするか。いつ,どうやって」との考えがよぎるものです。しかしながら,必要な心カテが心不全患者に施されていない状況がいま,広がりつつあります。確かに,侵襲的検査を回避する世の流れやガイドラインでの高くない推奨度などが,その背景としてあるでしょう。しかし,最も大きな理由は,心不全における心カテの「うま味」がわからず,心カテをしようにも統一したプロトコルがなく,さらには,結果を解釈できる医師が乏しくなりつつあるからかもしれません。中堅や若手の先生方を中心に,心不全の心カテを敬遠し,あるいは,自己流で首を傾げる現場が広がっているように思えてなりません。
本書は,心不全心カテに関する手技やプロトコル,基本解釈だけに焦点を絞った,わが国ではおそらく初めてのHow-to 本です。そのため,前線の先生方の視点を大切にすべく,あえて現場の代表たる第一線の執筆者を揃えました。そして,いつでもどこでも気軽に読め,カテ室に持ち運んでそのまま心不全カテができるような内容で構成しました。本書が,心不全心カテにおける共通言語を確立させる,新たな第一歩となることを願ってやみません。
2018年3月
編者を代表して
北里大学北里研究所病院循環器内科教授
猪又孝元
現在,心臓カテーテル検査(心カテ)を行う対象は,ほぼ冠動脈と不整脈で占有されています。一方で,循環器疾患入院の多くは,いまや心不全に置き換わっています。であるのになぜ,心不全がカテ室の隅に追いやられているのでしょうか。
心不全とは,何らかの原因に基づく血行動態の破綻です。心カテは,状態評価とともに原因検索をも検査標的にできる,つまり,「一粒で二度美味しい」診断ツールです。新規の心不全患者に出会った際に,現場は「心カテをするか。いつ,どうやって」との考えがよぎるものです。しかしながら,必要な心カテが心不全患者に施されていない状況がいま,広がりつつあります。確かに,侵襲的検査を回避する世の流れやガイドラインでの高くない推奨度などが,その背景としてあるでしょう。しかし,最も大きな理由は,心不全における心カテの「うま味」がわからず,心カテをしようにも統一したプロトコルがなく,さらには,結果を解釈できる医師が乏しくなりつつあるからかもしれません。中堅や若手の先生方を中心に,心不全の心カテを敬遠し,あるいは,自己流で首を傾げる現場が広がっているように思えてなりません。
本書は,心不全心カテに関する手技やプロトコル,基本解釈だけに焦点を絞った,わが国ではおそらく初めてのHow-to 本です。そのため,前線の先生方の視点を大切にすべく,あえて現場の代表たる第一線の執筆者を揃えました。そして,いつでもどこでも気軽に読め,カテ室に持ち運んでそのまま心不全カテができるような内容で構成しました。本書が,心不全心カテにおける共通言語を確立させる,新たな第一歩となることを願ってやみません。
2018年3月
編者を代表して
北里大学北里研究所病院循環器内科教授
猪又孝元
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目次
I 心不全心カテの適応
心不全心カテ いつ,何のために行うのか(猪又孝元)
ガイドラインにはどう書いてあるか
心カテを知ることは,心不全診療を知ること
「心不全の心カテ」をする前に
II 心カテ基本手技
前処置(谷口逹典)
心カテのポイント
心カテ前の確認事項
心カテの準備・前処置
心カテのTips/Pitfalls
Swan–Ganzカテーテル(石原嗣郎)
心カテのポイント
Swan-Ganzカテーテルの適応
Swan-Ganzカテーテルの構造
Swan-Ganzカテーテルの合併症
留置・管理する際のTips/Pitfalls
CHECK! Swan-Ganzカテーテル 心カテプロトコル
心室・血管造影(石原嗣郎)
心カテのポイント
左室造影の適応
心室・血管造影のTips/Pitfalls
CHECK! 心室・血管造影 心カテプロトコル
心室圧容積関係(坂本隆史)
圧容積関係のポイント
圧容積関係とは
心室圧容積関係評価の適応
心室圧容積関係の評価方法
心筋生検(石井俊輔)
心カテのポイント
心筋生検の適応
生検手技の実際
心カテのTips/Pitfalls
III 心カテデータ解釈
心血管内圧(谷口逹典)
心カテのポイント
圧測定原理
正しいゼロ点設定
波形の観察
波形の時相の確認
心内圧波形
心カテのTips/Pitfalls
心拍出量・血管抵抗・O2 step–up(坂本隆史)
心カテのポイント
心拍出量(正常値:心係数2.5〜4L/分/m2)
血管抵抗
O2 step-up
心カテのTips/Pitfalls
心機能(坂本隆史)
心カテのポイント
心ポンプ機能
収縮能
拡張能
心カテのTips/Pitfalls
心筋生検(尾上健児)
心カテのポイント
心カテデータの採取および検討
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 心筋生検 心カテプロトコル
IV 疾患病態別心カテプロトコル
拡張型心筋症(中村憲史)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈,治療選択の判断基準
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 拡張型心筋症 心カテプロトコル
肥大型心筋症(久保 亨,北岡裕章)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 肥大型心筋症 心カテプロトコル
収縮性心膜炎(猪又孝元)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
心カテによる拘束型心筋症との鑑別
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 収縮性心膜炎 心カテプロトコル
僧帽弁狭窄症(佐藤如雄,出雲昌樹)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 僧帽弁狭窄症 心カテプロトコル
僧帽弁閉鎖不全症(佐藤如雄,出雲昌樹)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 僧帽弁閉鎖不全症 心カテプロトコル
大動脈弁狭窄症(奥村貴裕)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 大動脈弁狭窄症 心カテプロトコル
大動脈弁閉鎖不全症(奥村貴裕)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 大動脈弁閉鎖不全症 心カテプロトコル
肺動脈性肺高血圧症(中摩健二)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 肺動脈性肺高血圧症 心カテプロトコル
先天性心疾患(福田旭伸,丹羽公一郎)
心カテのポイント
成人先天性心疾患の基本病態
短絡疾患における短絡量と肺血管抵抗の測定
心カテ前に把握しておくべき情報
短絡疾患における短絡量の評価と治療選択の判断
修復術後の複雑ACHDのカテ結果の評価と治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 先天性心疾患 心カテプロトコル
両心室ペーシング急性効果(小鹿野道雄)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
手法
心カテデータの解釈
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 両心室ペーシング急性効果心カテプロトコル
植込み型VADの調整(藤野剛雄)
心カテのポイント
植込み型VADについて
心カテの適応
心カテ検査の実際
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 植込み型VAD 心カテプロトコル
VADオフテスト(中本 敬)
心カテのポイント
心カテの対象と目的
LVADオフテストでの個別対応や工夫点
心カテデータの解釈と治療方針の決定
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! LVADオフテスト 心カテプロトコル
V 留置カテの運用
適応と運用(高木宏治)
心カテのポイント
Swan-Ganzカテーテルの適応
Swan-Ganzカテーテルの慎重使用
Swan-Ganzカテーテルの測定項目
正常値
動脈ライン留置の適応と運用
中心静脈オキシメトリーカテーテルの運用
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! Swan-Ganzカテーテルを用いたカテ検査 心カテプロトコル
ルート管理と機器活用(高木宏治)
心カテのポイント
ルート管理
機器活用
心カテのTips/Pitfalls
非侵襲的検査との互換(心エコー)(瀬尾由広)
心エコーのポイント
心カテのTips/Pitfalls
心不全心カテ いつ,何のために行うのか(猪又孝元)
ガイドラインにはどう書いてあるか
心カテを知ることは,心不全診療を知ること
「心不全の心カテ」をする前に
II 心カテ基本手技
前処置(谷口逹典)
心カテのポイント
心カテ前の確認事項
心カテの準備・前処置
心カテのTips/Pitfalls
Swan–Ganzカテーテル(石原嗣郎)
心カテのポイント
Swan-Ganzカテーテルの適応
Swan-Ganzカテーテルの構造
Swan-Ganzカテーテルの合併症
留置・管理する際のTips/Pitfalls
CHECK! Swan-Ganzカテーテル 心カテプロトコル
心室・血管造影(石原嗣郎)
心カテのポイント
左室造影の適応
心室・血管造影のTips/Pitfalls
CHECK! 心室・血管造影 心カテプロトコル
心室圧容積関係(坂本隆史)
圧容積関係のポイント
圧容積関係とは
心室圧容積関係評価の適応
心室圧容積関係の評価方法
心筋生検(石井俊輔)
心カテのポイント
心筋生検の適応
生検手技の実際
心カテのTips/Pitfalls
III 心カテデータ解釈
心血管内圧(谷口逹典)
心カテのポイント
圧測定原理
正しいゼロ点設定
波形の観察
波形の時相の確認
心内圧波形
心カテのTips/Pitfalls
心拍出量・血管抵抗・O2 step–up(坂本隆史)
心カテのポイント
心拍出量(正常値:心係数2.5〜4L/分/m2)
血管抵抗
O2 step-up
心カテのTips/Pitfalls
心機能(坂本隆史)
心カテのポイント
心ポンプ機能
収縮能
拡張能
心カテのTips/Pitfalls
心筋生検(尾上健児)
心カテのポイント
心カテデータの採取および検討
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 心筋生検 心カテプロトコル
IV 疾患病態別心カテプロトコル
拡張型心筋症(中村憲史)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈,治療選択の判断基準
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 拡張型心筋症 心カテプロトコル
肥大型心筋症(久保 亨,北岡裕章)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 肥大型心筋症 心カテプロトコル
収縮性心膜炎(猪又孝元)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
心カテによる拘束型心筋症との鑑別
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 収縮性心膜炎 心カテプロトコル
僧帽弁狭窄症(佐藤如雄,出雲昌樹)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 僧帽弁狭窄症 心カテプロトコル
僧帽弁閉鎖不全症(佐藤如雄,出雲昌樹)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 僧帽弁閉鎖不全症 心カテプロトコル
大動脈弁狭窄症(奥村貴裕)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 大動脈弁狭窄症 心カテプロトコル
大動脈弁閉鎖不全症(奥村貴裕)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 大動脈弁閉鎖不全症 心カテプロトコル
肺動脈性肺高血圧症(中摩健二)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
心カテデータの解釈
治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 肺動脈性肺高血圧症 心カテプロトコル
先天性心疾患(福田旭伸,丹羽公一郎)
心カテのポイント
成人先天性心疾患の基本病態
短絡疾患における短絡量と肺血管抵抗の測定
心カテ前に把握しておくべき情報
短絡疾患における短絡量の評価と治療選択の判断
修復術後の複雑ACHDのカテ結果の評価と治療選択の判断
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 先天性心疾患 心カテプロトコル
両心室ペーシング急性効果(小鹿野道雄)
心カテのポイント
基本病態
心カテの適応
手法
心カテデータの解釈
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 両心室ペーシング急性効果心カテプロトコル
植込み型VADの調整(藤野剛雄)
心カテのポイント
植込み型VADについて
心カテの適応
心カテ検査の実際
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! 植込み型VAD 心カテプロトコル
VADオフテスト(中本 敬)
心カテのポイント
心カテの対象と目的
LVADオフテストでの個別対応や工夫点
心カテデータの解釈と治療方針の決定
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! LVADオフテスト 心カテプロトコル
V 留置カテの運用
適応と運用(高木宏治)
心カテのポイント
Swan-Ganzカテーテルの適応
Swan-Ganzカテーテルの慎重使用
Swan-Ganzカテーテルの測定項目
正常値
動脈ライン留置の適応と運用
中心静脈オキシメトリーカテーテルの運用
心カテのTips/Pitfalls
CHECK! Swan-Ganzカテーテルを用いたカテ検査 心カテプロトコル
ルート管理と機器活用(高木宏治)
心カテのポイント
ルート管理
機器活用
心カテのTips/Pitfalls
非侵襲的検査との互換(心エコー)(瀬尾由広)
心エコーのポイント
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今知りたい心不全の心カテプロトコルを初公開。心不全患者を救う心カテ活用法を教えます!
心不全は循環器疾患の中で最大の難関であり,数多くの課題をはらみ,また患者数は高齢化社会に伴い増加の一途を辿っている。さらに予後不良な患者が多く,心不全増悪による入院の既往がある症例では,死亡率は年率約5〜10%,入院後1年以内の再入院率はおおよそ30%と,他の循環器疾患に比べると格段に高い。治療を困難にさせている原因が病態の複雑さである。心臓は,その折々の様々な負荷に対して適応と破綻を繰り返して今の状態に至っている。それを紐解くには病歴や様々な診断ツールから得られた情報から解読する必要がある。
この心不全に心臓カテーテル検査をどのように活用していけばいいのかが,本書籍の根幹をなしている。現在,冠動脈疾患と不整脈を中心に活用されている心臓カテーテル検査を,患者数が激増している心不全に対しても同様に活用するべきであるが,統一したプロトコルがなく,結果を解釈できる医師が少ないことから心不全患者の心臓カテーテル検査は敬遠される傾向にある。
本書は,心不全関連の心臓カテーテルの手技・プロトコル・基本解釈といったhow-toの内容を盛り込み,読者が実践できる具体的な心臓カテーテル活用方法を解説。心不全心カテのバイブルとしてご活用いただける一冊である。