地域包括ケア時代の
脳卒中慢性期の
地域リハビリテーション
エビデンスを実践につなげる
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定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
- B5判 304ページ 2色,イラスト50点,写真50点
- 2016年7月4日刊行
- ISBN978-4-7583-1698-9
序文
監修の序
昨年2015年(平成27),わが国は団塊の世代が65 歳を超えるという未曾有の超高齢社会に突入した。これまでも世界一の高齢化に対応すべくさまざまな施策がなされ,努力がなされてきたが,筆者らの正直な感想を述べれば高齢化のスピードに社会(本書の立場で云えば医療や介護の現場)がついて行けていない。しかし,さらに恐ろしいのはこれから先の10年である。2025年(平成37)には団塊の世代が75歳を超える。有病率や要介護の認定率は75歳以上の後期高齢者で一段と高くなるからである。このような現状に対して国は地域包括ケアシステムを掲げ,その構築を推進している。地域包括ケアシステムについては,本書も含め多くの出版物が出ているし,マスコミでの報道も多い。誤解を恐れずに云えば,「地域包括ケアシステム」とは医療や介護のセーフティーネットを基盤に「高齢者が安心して生活できる街づくり」を各地域で創りましょうということになる。高齢化だけでなく少子化が進行,生産年齢の人口は減り,国際社会の不安定化でわが国の将来はきわめて厳しいと予想される。
リハビリテーションには以前から「地域リハビリテーション」という概念があり,地域包括ケアシステムが提唱され始め,どこがどう違うのかと戸惑う関係者も多い。しかし,両者はほとんど同じ理念に立ち,根ざす方向も同じである。地域包括ケアシステムの中で果たすべきリハビリテーションの役割こそ,地域リハビリテーションであると考えられる。リハビリテーションといっても扱う分野はたいへん広く,脳卒中から骨関節疾患,内部障害,サルコペニアやフレイルなど例を挙げればきりがなく,これらに対して,治療ばかりか,機能維持,再発予防などを担っている。リハビリテーションは障害を扱う医療であり,疾患と障害という複眼的な視点で対応や管理を考える必要がある。
さて,地域包括ケアを意識した地域リハビリテーションの書籍はこれまでなかったと思われる。本書は脳卒中慢性期というくくりの中で各著者がエビデンスを踏まえながら地域リハビリテーションの実践について解説している。項目も脳卒中慢性期で対応に困る病態に対して詳しく書かれている。執筆陣は静岡県西部に位置する聖隷クリストファー大学と聖隷病院グループが中心となっているが,医療・福祉・介護・教育という大きな複合体の中での経験が豊富に盛り込まれている。もちろんこれらには普遍的な価値があり,それぞれ力作で,通読してもよいし,それぞれを拾い読みしても大変勉強になる。
地域包括ケア元年とも云うべき年に本書が刊行された意義は大きい。これからの10年をどのように過ごすかで,わが国の将来は決まる。その中でリハビリテーションの果たす役割はとてつもなく大きく重要である。本書がその一助になれば幸いである。
2016年6月
浜松市リハビリテーション病院 藤島一郎
聖隷クリストファー大学 大城昌平
------------------------------
編集の序
「臨床に使える研究は少ない」。この言葉は,筆者が新人理学療法士のときに先輩方からよく聞かされた言葉ですが,皆様はどうお考えでしょうか。「うん,その通りだ」と考える方,あるいは「本当にそうなのだろうか」と考える方もいると思います。先輩には申し訳なく思いつつも,他人の意見を批判的にとらえやすい筆者の意見は後者でした。事実,脳卒中に限らず,リハビリテーション領域では研究方法の統制された質の高い研究が数多く報告されており,地域リハビリテーションの分野でも徐々にエビデンスが蓄積されつつあります。一方で,臨床で実践されているリハビリテーションは,以前と比較してあまり変化したような印象を受けておらず,エビデンスと実践の格差は徐々に乖離しているように感じています。
それでは,なぜエビデンスを実践できていないのでしょうか。現状のリハビリテーションでも患者さんは満足していると感じているからでしょうか。医学や研究の知識に乏しく研究の内容や質の良し悪しを判断できないからでしょうか。従来の治療に固執するあまり新しい治療を受け入れることが難しいからでしょうか。エビデンスを実践できていない理由は人によってさまざまと思いますが,少なからず本書を手に取っていただいた読者の多くは,「もっと患者さんに満足していただけるリハビリテーションを提供したい」と考えながら試行錯誤されているかと思います。
筆者は,エビデンスと実践をつなぐ架け橋として「臨床推論」が重要であると考えています。雑誌や学会などで多くの評価・治療を学ぶことはできますが,新しく学んだ評価・治療はあくまで診療の選択肢の一つであり,すべての患者さんに「使える」わけではありません。患者さんに合った評価・治療を選択するためには,臨床推論を行うことが必要であり,評価・治療をやみくもに行っても効果は期待できません。特に,地域リハビリテーション現場の臨床推論は,患者さんの心身機能だけでなく,心理状態やリハビリテーションの嗜好,生活している住環境,患者さんを支える人々など多角的な視野で問題点をとらえ,アプローチを選択することが必要です。また,問題点を見つけた際には,最優先に改善すべき問題点なのか,従来の治療で改善可能か,自身で対応困難な場合に他の職種に相談すべきなのかなどを検討することで,さらなる改善の可能性が開けます。臨床推論を行わず,漫然と脳卒中の評価・治療を行っていても十分な治療効果が認められずに,結果として,患者さんから良い反応が認められなかった場合に,リハビリテーションスタッフは「臨床で使えない評価・治療」と誤った解釈をしてしまいます。
本書の目的は,脳卒中患者の評価・治療の選択肢を増やすことに加えて,新しく学んだ評価・治療を臨床に実践して良いかどうかを判断できるスキルを身に着けることです。第1章では,地域リハビリテーションの全体像を概観していただき,第2章で,慢性期脳卒中患者が経験しやすい障害について,現在までに明らかにされているリハビリテーションの最新のエビデンスを凝縮させ,評価・治療の実践方法を各論として紹介します。第3章では,臨床現場での治療実践はまだ不十分ながら,今後注目すべき脳卒中患者の問題点を紹介することで,各症候に対する観察眼を養い,他の専門職者への相談および多職種連携のきっかけをつくります。第4章では,皆様が日常の臨床で診療されている患者さんに,第2章で紹介した評価・治療を実践して良いかどうかを判断する思考過程を整理して紹介します。本書が,地域リハビリテーションの実践にあたって臨床思考過程の整理および臨床推論スキル向上の一助になれば幸いです。
最後に,本書の企画から制作においては,監修の藤島一郎先生,大城昌平先生,メジカルビュー社の野口真一氏をはじめ,多くの関係者の皆様に多大なご協力をいただきました。この場をお借りして深く御礼を申し上げます。
2016年6月
聖隷クリストファー大学 吉本好延
昨年2015年(平成27),わが国は団塊の世代が65 歳を超えるという未曾有の超高齢社会に突入した。これまでも世界一の高齢化に対応すべくさまざまな施策がなされ,努力がなされてきたが,筆者らの正直な感想を述べれば高齢化のスピードに社会(本書の立場で云えば医療や介護の現場)がついて行けていない。しかし,さらに恐ろしいのはこれから先の10年である。2025年(平成37)には団塊の世代が75歳を超える。有病率や要介護の認定率は75歳以上の後期高齢者で一段と高くなるからである。このような現状に対して国は地域包括ケアシステムを掲げ,その構築を推進している。地域包括ケアシステムについては,本書も含め多くの出版物が出ているし,マスコミでの報道も多い。誤解を恐れずに云えば,「地域包括ケアシステム」とは医療や介護のセーフティーネットを基盤に「高齢者が安心して生活できる街づくり」を各地域で創りましょうということになる。高齢化だけでなく少子化が進行,生産年齢の人口は減り,国際社会の不安定化でわが国の将来はきわめて厳しいと予想される。
リハビリテーションには以前から「地域リハビリテーション」という概念があり,地域包括ケアシステムが提唱され始め,どこがどう違うのかと戸惑う関係者も多い。しかし,両者はほとんど同じ理念に立ち,根ざす方向も同じである。地域包括ケアシステムの中で果たすべきリハビリテーションの役割こそ,地域リハビリテーションであると考えられる。リハビリテーションといっても扱う分野はたいへん広く,脳卒中から骨関節疾患,内部障害,サルコペニアやフレイルなど例を挙げればきりがなく,これらに対して,治療ばかりか,機能維持,再発予防などを担っている。リハビリテーションは障害を扱う医療であり,疾患と障害という複眼的な視点で対応や管理を考える必要がある。
さて,地域包括ケアを意識した地域リハビリテーションの書籍はこれまでなかったと思われる。本書は脳卒中慢性期というくくりの中で各著者がエビデンスを踏まえながら地域リハビリテーションの実践について解説している。項目も脳卒中慢性期で対応に困る病態に対して詳しく書かれている。執筆陣は静岡県西部に位置する聖隷クリストファー大学と聖隷病院グループが中心となっているが,医療・福祉・介護・教育という大きな複合体の中での経験が豊富に盛り込まれている。もちろんこれらには普遍的な価値があり,それぞれ力作で,通読してもよいし,それぞれを拾い読みしても大変勉強になる。
地域包括ケア元年とも云うべき年に本書が刊行された意義は大きい。これからの10年をどのように過ごすかで,わが国の将来は決まる。その中でリハビリテーションの果たす役割はとてつもなく大きく重要である。本書がその一助になれば幸いである。
2016年6月
浜松市リハビリテーション病院 藤島一郎
聖隷クリストファー大学 大城昌平
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編集の序
「臨床に使える研究は少ない」。この言葉は,筆者が新人理学療法士のときに先輩方からよく聞かされた言葉ですが,皆様はどうお考えでしょうか。「うん,その通りだ」と考える方,あるいは「本当にそうなのだろうか」と考える方もいると思います。先輩には申し訳なく思いつつも,他人の意見を批判的にとらえやすい筆者の意見は後者でした。事実,脳卒中に限らず,リハビリテーション領域では研究方法の統制された質の高い研究が数多く報告されており,地域リハビリテーションの分野でも徐々にエビデンスが蓄積されつつあります。一方で,臨床で実践されているリハビリテーションは,以前と比較してあまり変化したような印象を受けておらず,エビデンスと実践の格差は徐々に乖離しているように感じています。
それでは,なぜエビデンスを実践できていないのでしょうか。現状のリハビリテーションでも患者さんは満足していると感じているからでしょうか。医学や研究の知識に乏しく研究の内容や質の良し悪しを判断できないからでしょうか。従来の治療に固執するあまり新しい治療を受け入れることが難しいからでしょうか。エビデンスを実践できていない理由は人によってさまざまと思いますが,少なからず本書を手に取っていただいた読者の多くは,「もっと患者さんに満足していただけるリハビリテーションを提供したい」と考えながら試行錯誤されているかと思います。
筆者は,エビデンスと実践をつなぐ架け橋として「臨床推論」が重要であると考えています。雑誌や学会などで多くの評価・治療を学ぶことはできますが,新しく学んだ評価・治療はあくまで診療の選択肢の一つであり,すべての患者さんに「使える」わけではありません。患者さんに合った評価・治療を選択するためには,臨床推論を行うことが必要であり,評価・治療をやみくもに行っても効果は期待できません。特に,地域リハビリテーション現場の臨床推論は,患者さんの心身機能だけでなく,心理状態やリハビリテーションの嗜好,生活している住環境,患者さんを支える人々など多角的な視野で問題点をとらえ,アプローチを選択することが必要です。また,問題点を見つけた際には,最優先に改善すべき問題点なのか,従来の治療で改善可能か,自身で対応困難な場合に他の職種に相談すべきなのかなどを検討することで,さらなる改善の可能性が開けます。臨床推論を行わず,漫然と脳卒中の評価・治療を行っていても十分な治療効果が認められずに,結果として,患者さんから良い反応が認められなかった場合に,リハビリテーションスタッフは「臨床で使えない評価・治療」と誤った解釈をしてしまいます。
本書の目的は,脳卒中患者の評価・治療の選択肢を増やすことに加えて,新しく学んだ評価・治療を臨床に実践して良いかどうかを判断できるスキルを身に着けることです。第1章では,地域リハビリテーションの全体像を概観していただき,第2章で,慢性期脳卒中患者が経験しやすい障害について,現在までに明らかにされているリハビリテーションの最新のエビデンスを凝縮させ,評価・治療の実践方法を各論として紹介します。第3章では,臨床現場での治療実践はまだ不十分ながら,今後注目すべき脳卒中患者の問題点を紹介することで,各症候に対する観察眼を養い,他の専門職者への相談および多職種連携のきっかけをつくります。第4章では,皆様が日常の臨床で診療されている患者さんに,第2章で紹介した評価・治療を実践して良いかどうかを判断する思考過程を整理して紹介します。本書が,地域リハビリテーションの実践にあたって臨床思考過程の整理および臨床推論スキル向上の一助になれば幸いです。
最後に,本書の企画から制作においては,監修の藤島一郎先生,大城昌平先生,メジカルビュー社の野口真一氏をはじめ,多くの関係者の皆様に多大なご協力をいただきました。この場をお借りして深く御礼を申し上げます。
2016年6月
聖隷クリストファー大学 吉本好延
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目次
第1章 地域リハビリテーションを取り巻く社会的背景の変化
1 急速に進行する高齢化と高齢者の介護問題
1 高齢化の実態
2 これからのリハビリテーションに期待されるもの
3 まとめにかえて〜リハビリテーションと地域の力の増強
2 高齢者の地域リハビリテーション—訪問リハビリテーションの実態と課題—
1 はじめに
2 高齢者の地域リハビリテーションの現況
3 社会保障制度からみた生活期リハ・サービスの質の検証
4 地域における訪問リハビリテーションの課題
3 今後の地域リハビリテーションのあり方—QOLの向上に向けて—
1 地域リハビリテーションとは
2 予防活動
3 連携とチームアプローチ
4 超高齢社会の医療・介護サービスにおけるリハの位置づけ
5 リハビリテーションが担える役割
6 当院の取り組み
7 おわりに
第2章 脳卒中患者の問題点と地域リハビリテーションのエビデンスと実践
1 脳卒中患者の転倒・骨折
1 転倒・骨折の発生状況
2 転倒・骨折に関連する因子
3 転倒・骨折予防のリハビリテーション評価
4 転倒・骨折予防のアプローチ
2 身体活動量の低下
1 身体活動量と障害による影響
2 身体活動量低下の発生状況
3 身体活動量低下に関連する因子
4 身体活動量のリハビリテーション評価
5 身体活動量の低下予防のためのアプローチ
6 おわりに
3 移動能力の低下
1 移動能力低下の発生因子
2 移動能力低下の関連因子
3 リハビリテーション評価(原因を明らかにするための評価方法)
4 移動能力低下に対するアプローチ
5 おわりに
4 慢性疼痛
1 脳卒中発症後の疼痛
2 慢性疼痛の発生状況
3 痛みの関連因子
4 慢性疼痛のリハビリテーション評価
5 慢性疼痛に対するアプローチ
6 おわりに
5. 高次脳機能障害
1 はじめに
2 高次脳機能障害について
3 発生状況:脳卒中慢性期の高次脳機能障害について
4 地域で生活する高次脳機能障害者の現状
5 リハビリテーションにおけるエビデンスとその課題
6 地域で実践可能な評価・アプローチ
7 限られた資源の活用
8 活動・参加に向けた年齢層別の支援
9 おわりに
6 うつ・アパシー
1 うつとアパシーの発生状況
2 脳卒中後うつ・アパシーの診断と特徴の違い
3 リハビリテーション評価
4 アプローチ
5 おわりに
7 脳卒中後の上肢運動障害
1 脳卒中後に生じる上肢運動障害の発生状況
2 脳卒中後における上肢運動障害の関連因子
3 脳卒中後の上肢運動障害に対するリハビリテーション評価
4 脳卒中後における上肢運動障害に対するアプローチ
5 おわりに
8 脳卒中患者の排泄障害
1 排泄ケアの考え方
2 排泄障害の要因と種類
3 在宅における排泄障害へのケアの現状と問題点
4 在宅における排泄障害へのケアのポイント
9 摂食嚥下障害
1 摂食嚥下障害の発生状況
2 関連因子
3 リハビリテーション評価
4 アプローチ
5 おわりに
10 コミュニケーション障害
1 コミュニケーション障害の発生状況
2 失語症に関連する因子
3 リハビリテーション評価と治療プラン
4 失語症のアプローチ
5 おわりに
11 介護者の介護負担感
1 発生状況
2 関連因子
3 リハビリテーション評価
4 介護負担感に対するアプローチ
5 おわりに
12 脳卒中患者の職業的・社会的役割の喪失
1 脳卒中患者の状況とライフスタイル
2 脳卒中患者の役割喪失に関する因子
3 脳卒中患者の職業復帰に関する因子
4 リハビリテーション評価
5 職業的・社会的役割の喪失に対するアプローチ
6 職業リハビリテーションの実践
7 おわりに
13 重症患者—人工呼吸管理における呼吸ケア—
1 人工呼吸管理を必要とする患者の発生状況
2 人工呼吸管理の関連因子
3 呼吸ケアと呼吸リハビリテーションの評価
4 人工呼吸管理に対するアプローチ
5 おわりに
14 脳卒中の再発
1 脳卒中患者の再発率
2 脳卒中の再発リスク因子
3 再発予防におけるリハビリテーション評価
4 再発予防に対するアプローチ
5 おわりに
第3章 今後着目すべき脳卒中患者の問題点
1 疲労感
1 現状
2 原因・関連因子
3 生活に与える影響
4 評価
5 治療
6 おわりに
2 脳卒中患者の低栄養
1 低栄養の現状
2 低栄養の原因
3 低栄養に関連する注意すべき問題
4 リハビリテーション栄養アプローチ
5 おわりに
3 睡眠障害
1 睡眠障害の現状
2 脳卒中の発症リスクとしての睡眠障害
3 脳卒中患者における睡眠障害
4 おわりに
4 終末期医療・ケアと看取り
1 はじめに
2 人間にとって「死」とは
3 日本の「治す医療」は世界のトップレベル
4 日本の「支える医療」の問題
5 看取りの場所
6 看取りに向けての説明
7 看取りの流れ
8 終末期のリハビリテーション
9 地域包括ケア
10 おわりに
第4章 まとめ
1 臨床推論—地域リハビリテーションにおける大切な考え方—
1 臨床推論とは
2 臨床推論のプロセス
3 臨床推論における分析方法
4 臨床推論における思考プロセス
5 臨床推論における仮説の立案
6 臨床推論における仮説の検証・修正と問題点の立案
7 臨床推論における問題点へのアプローチ
8 臨床推論の教育方法
9 おわりに
2 多職種連携と地域連携の必要性
1 地域包括ケアシステム
2 「リハビリテーション」と「ケア」
3 多職種連携の必要性
4 多職種連携の具体策
5 訪問・通所でのリハビリテーションの連携
3 総括
1 地域リハビリテーションの「常識」を問い直す
2 エビデンスと実践を結ぶ架け橋は何か
3 リハビリテーションで改善可能なアウトカムを見つけ出す
4 最後に
1 急速に進行する高齢化と高齢者の介護問題
1 高齢化の実態
2 これからのリハビリテーションに期待されるもの
3 まとめにかえて〜リハビリテーションと地域の力の増強
2 高齢者の地域リハビリテーション—訪問リハビリテーションの実態と課題—
1 はじめに
2 高齢者の地域リハビリテーションの現況
3 社会保障制度からみた生活期リハ・サービスの質の検証
4 地域における訪問リハビリテーションの課題
3 今後の地域リハビリテーションのあり方—QOLの向上に向けて—
1 地域リハビリテーションとは
2 予防活動
3 連携とチームアプローチ
4 超高齢社会の医療・介護サービスにおけるリハの位置づけ
5 リハビリテーションが担える役割
6 当院の取り組み
7 おわりに
第2章 脳卒中患者の問題点と地域リハビリテーションのエビデンスと実践
1 脳卒中患者の転倒・骨折
1 転倒・骨折の発生状況
2 転倒・骨折に関連する因子
3 転倒・骨折予防のリハビリテーション評価
4 転倒・骨折予防のアプローチ
2 身体活動量の低下
1 身体活動量と障害による影響
2 身体活動量低下の発生状況
3 身体活動量低下に関連する因子
4 身体活動量のリハビリテーション評価
5 身体活動量の低下予防のためのアプローチ
6 おわりに
3 移動能力の低下
1 移動能力低下の発生因子
2 移動能力低下の関連因子
3 リハビリテーション評価(原因を明らかにするための評価方法)
4 移動能力低下に対するアプローチ
5 おわりに
4 慢性疼痛
1 脳卒中発症後の疼痛
2 慢性疼痛の発生状況
3 痛みの関連因子
4 慢性疼痛のリハビリテーション評価
5 慢性疼痛に対するアプローチ
6 おわりに
5. 高次脳機能障害
1 はじめに
2 高次脳機能障害について
3 発生状況:脳卒中慢性期の高次脳機能障害について
4 地域で生活する高次脳機能障害者の現状
5 リハビリテーションにおけるエビデンスとその課題
6 地域で実践可能な評価・アプローチ
7 限られた資源の活用
8 活動・参加に向けた年齢層別の支援
9 おわりに
6 うつ・アパシー
1 うつとアパシーの発生状況
2 脳卒中後うつ・アパシーの診断と特徴の違い
3 リハビリテーション評価
4 アプローチ
5 おわりに
7 脳卒中後の上肢運動障害
1 脳卒中後に生じる上肢運動障害の発生状況
2 脳卒中後における上肢運動障害の関連因子
3 脳卒中後の上肢運動障害に対するリハビリテーション評価
4 脳卒中後における上肢運動障害に対するアプローチ
5 おわりに
8 脳卒中患者の排泄障害
1 排泄ケアの考え方
2 排泄障害の要因と種類
3 在宅における排泄障害へのケアの現状と問題点
4 在宅における排泄障害へのケアのポイント
9 摂食嚥下障害
1 摂食嚥下障害の発生状況
2 関連因子
3 リハビリテーション評価
4 アプローチ
5 おわりに
10 コミュニケーション障害
1 コミュニケーション障害の発生状況
2 失語症に関連する因子
3 リハビリテーション評価と治療プラン
4 失語症のアプローチ
5 おわりに
11 介護者の介護負担感
1 発生状況
2 関連因子
3 リハビリテーション評価
4 介護負担感に対するアプローチ
5 おわりに
12 脳卒中患者の職業的・社会的役割の喪失
1 脳卒中患者の状況とライフスタイル
2 脳卒中患者の役割喪失に関する因子
3 脳卒中患者の職業復帰に関する因子
4 リハビリテーション評価
5 職業的・社会的役割の喪失に対するアプローチ
6 職業リハビリテーションの実践
7 おわりに
13 重症患者—人工呼吸管理における呼吸ケア—
1 人工呼吸管理を必要とする患者の発生状況
2 人工呼吸管理の関連因子
3 呼吸ケアと呼吸リハビリテーションの評価
4 人工呼吸管理に対するアプローチ
5 おわりに
14 脳卒中の再発
1 脳卒中患者の再発率
2 脳卒中の再発リスク因子
3 再発予防におけるリハビリテーション評価
4 再発予防に対するアプローチ
5 おわりに
第3章 今後着目すべき脳卒中患者の問題点
1 疲労感
1 現状
2 原因・関連因子
3 生活に与える影響
4 評価
5 治療
6 おわりに
2 脳卒中患者の低栄養
1 低栄養の現状
2 低栄養の原因
3 低栄養に関連する注意すべき問題
4 リハビリテーション栄養アプローチ
5 おわりに
3 睡眠障害
1 睡眠障害の現状
2 脳卒中の発症リスクとしての睡眠障害
3 脳卒中患者における睡眠障害
4 おわりに
4 終末期医療・ケアと看取り
1 はじめに
2 人間にとって「死」とは
3 日本の「治す医療」は世界のトップレベル
4 日本の「支える医療」の問題
5 看取りの場所
6 看取りに向けての説明
7 看取りの流れ
8 終末期のリハビリテーション
9 地域包括ケア
10 おわりに
第4章 まとめ
1 臨床推論—地域リハビリテーションにおける大切な考え方—
1 臨床推論とは
2 臨床推論のプロセス
3 臨床推論における分析方法
4 臨床推論における思考プロセス
5 臨床推論における仮説の立案
6 臨床推論における仮説の検証・修正と問題点の立案
7 臨床推論における問題点へのアプローチ
8 臨床推論の教育方法
9 おわりに
2 多職種連携と地域連携の必要性
1 地域包括ケアシステム
2 「リハビリテーション」と「ケア」
3 多職種連携の必要性
4 多職種連携の具体策
5 訪問・通所でのリハビリテーションの連携
3 総括
1 地域リハビリテーションの「常識」を問い直す
2 エビデンスと実践を結ぶ架け橋は何か
3 リハビリテーションで改善可能なアウトカムを見つけ出す
4 最後に
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脳卒中の地域リハビリテーションについてエビデンスを基に解説。漫然とした訓練から次のステップへ!
脳卒中の慢性期には回復期とは異なる問題点が多々ある。病院内はバリアフリーで整備が行き届いているが,自宅や院外ではそうはいかず,転倒しやすくなる。介護者側の負担感は大きな社会問題にもなり,介護側の人にも医療的な視点で観察・対応する必要が生まれる。また患者さんの身体活動量が低下したり,脳卒中後の疼痛のために動きが制限され自宅に引きこもり,うつとなる状況も見過ごせない。就労の問題,再発予防の課題なども重要である。地域リハビリテーションの現場は,院内の状況とは視点を変えて対応することが欠かせない。本書では脳卒中慢性期特有の問題を項目に分け体系的に解説している。
一方,地域リハビリテーションの重要性はエビデンスの蓄積などにより格段に高まっている。本書では国内外のエビデンスを示し,それらをどのように活かすか,研究を研究のままで終わらせないように,実践の方法にも言及している。さらに,エビデンスを実践に応用するために,臨床推論の方法を解説。問題点を見出だすことができれば,それに対応できる専門職者に相談・依頼し,多職種連携により治療の幅を広げられる。
本書は,医療者が地域包括ケア時代に地域という広大な現場で広い視野をもてるように配慮しながら,個々の症状や医療的課題に対応できるように,それぞれを詳細に解説した脳卒中地域リハビリテーションの実践書である。