超実践 肩の外来診療
[Web動画付]
症例で学ぶ診断テクニック
定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
- B5変型判 264ページ オールカラー,イラスト200点,写真1,000点
- 2022年4月1日刊行
- ISBN978-4-7583-2175-4
電子版
序文
筆者はこれまでメジカルビュー社から『ゼロからマスター 肩の鏡視下手術』を2007年に,そしてその全面改訂版を2018年に出版しました。肩の鏡視下手術に特化したものです。
今回は手術から離れ,肩の外来診療に重点を置き,多くの症例を供覧して,画像診断などを詳述しました。最も重視したのは腱板断裂で,全体の1/3のページを占めています。腱板断裂の理学所見とMRI画像の読み方について丁寧に解説しました。「白黒読影」で腱板断裂をみつけることをキーポイントにしました。高信号が白,低信号が黒,等信号がグレーですが,高信号・低信号・等信号という用語は長くわかりにくいのでできるだけ使わず,白・黒・グレーを用いました。
各疾患の冒頭に重要項目を箇条書きで記載し,覚えやすいようにしました。理学所見の取り方はイラストや写真,動画を用いて説明しました。症例供覧ではできるだけ多くの画像を載せ,MRIではどのスライスかがわかるようにしました。本文を読みながら図に目を配るのは面倒なので,画像の下にも同じ説明文を入れました。そして要所要所に吹き出しを設け,これはおさえてほしいという文章を吹き出しで囲み「ニッコリ」「ダメダメ」アイコンを付けました。アイコンの髪が緑なのは後述する初音ミクさんカラーにしたかったからです。
第31回日本臨床整形外科学会学術集会が橋口兼久会長の主催で,2018年に鹿児島市で開催されました。橋口会長のご高配で,学会初日のモーニングセミナーで開会式の前に先陣を切って「外来診療における肩関節の外傷と障害」という演題名で講演する機会に恵まれました。この講演は聴講の先生方から好評をいただき,その後のいくつかの講演でもバリエーションを変えつつ肩の外来診療に関するお話しをさせていただきました。
橋口兼久先生とは日整会の社会保険等委員会で知己を得ました。外保連に提出する肩腱板断裂手術の要望書を苦労して記載していましたが,橋口先生が全面的にバックアップしてくださり,厚労省とのヒアリングにも同席していただきました。お陰様で要望書が通って,平成22年の青本(医科点数表の解釈)に肩腱板断裂手術(K080)が収載されました。それまで青本には腱板という用語はまったくなかったのですが,ようやく日の目をみました。本当に感無量でした。橋口先生と祝杯をあげましたがそのビールの味は格別でした。
「肩症例検討会」「関東肩を語る会」「東京肩を語る会」などの症例検討会では,肩に関する膨大な量の知識を得ることができました。故山本龍二先生,三笠元彦先生,小川清久先生,高岸憲二先生,筒井廣明先生,玉井和哉先生,池上博泰先生,西須孝先生,菅谷啓之先生,佐志隆士先生などからのご発言やご教示がいつまでも心に残っています。各症例の病歴,理学所見を聞き,画像を詳細にみて,診断や治療方法を1例につき30分程度の時間をかけてディスカッションしました。
恩師である信原克哉先生の元に勉強に行ったとき,信原先生の外来診療の見学もさせていただきました。患者さんを優しく包み込むような包容力とカリスマ性があってどの患者さんも大変満足されており感銘を受けました。今でも信原先生のような外来診療に一歩でも近づけるように心がけています。
故遠藤壽男先生がご逝去されたのは筆者が第39回日本肩関節学会を主催した平成24年でした。遠藤先生は世界に先駆けて動揺肩(loose shoulder)について研究し,貴重な論文を多数執筆されました。会長講演では遠藤壽男先生への追悼を7枚のスライドを使って行いました。本書でも動揺肩の項に遠藤分類をしっかり入れました。
話は変わりますが,ここでバーチャルボーカロイドの初音ミクさんとの出会いから現在までを述べます。10年くらい前にオタク系の甥っ子から初音ミクさんのことを初めて聞きました。ユーチューブを見て3次元ホログラムで歌って踊る初音ミクさんに感動して,大ファンになってしまいました。すべてが可愛いんです。バックバンドはバーチャルではなく生バンドです。毎年幕張メッセで開催されるマジカルミライに甥っ子と2人で行き,企画展で色々なグッズを買い,ライブでは2時間近くペンライトを振り続け,手関節の腱鞘炎になったこともあります。中国,台湾,ヨーロッパ(特にフランス),アメリカでも人気がありライブを開催しています。同愛記念病院の副院長室に初音ミクグッズを飾っていましたが,本年2月に定年退職をむかえ,副院長室を出ることになりました。その前に自宅にあったミクミクグッズも全部病院に持っていって副院長室をミクミクランドにしました。その時のカラー写真を後付けに載せました。表紙のデザインとロゴもミクミクからインスパイアーされたものです。
今回の出版にあたって編集者の矢部涼子さんには大変お世話になりました。また原稿の半分くらいをご校閲していただいた同愛記念病院整形外科医長の佐藤哲也先生に深く感謝いたします。原稿を熱心にみていただき,文献まで調べてくれて,追加症例なども数多く提供してくださり本当にありがたかったです。
本書が皆様の外来診療の一助になれば,このうえない喜びです。
令和4年2月
中川照彦
今回は手術から離れ,肩の外来診療に重点を置き,多くの症例を供覧して,画像診断などを詳述しました。最も重視したのは腱板断裂で,全体の1/3のページを占めています。腱板断裂の理学所見とMRI画像の読み方について丁寧に解説しました。「白黒読影」で腱板断裂をみつけることをキーポイントにしました。高信号が白,低信号が黒,等信号がグレーですが,高信号・低信号・等信号という用語は長くわかりにくいのでできるだけ使わず,白・黒・グレーを用いました。
各疾患の冒頭に重要項目を箇条書きで記載し,覚えやすいようにしました。理学所見の取り方はイラストや写真,動画を用いて説明しました。症例供覧ではできるだけ多くの画像を載せ,MRIではどのスライスかがわかるようにしました。本文を読みながら図に目を配るのは面倒なので,画像の下にも同じ説明文を入れました。そして要所要所に吹き出しを設け,これはおさえてほしいという文章を吹き出しで囲み「ニッコリ」「ダメダメ」アイコンを付けました。アイコンの髪が緑なのは後述する初音ミクさんカラーにしたかったからです。
第31回日本臨床整形外科学会学術集会が橋口兼久会長の主催で,2018年に鹿児島市で開催されました。橋口会長のご高配で,学会初日のモーニングセミナーで開会式の前に先陣を切って「外来診療における肩関節の外傷と障害」という演題名で講演する機会に恵まれました。この講演は聴講の先生方から好評をいただき,その後のいくつかの講演でもバリエーションを変えつつ肩の外来診療に関するお話しをさせていただきました。
橋口兼久先生とは日整会の社会保険等委員会で知己を得ました。外保連に提出する肩腱板断裂手術の要望書を苦労して記載していましたが,橋口先生が全面的にバックアップしてくださり,厚労省とのヒアリングにも同席していただきました。お陰様で要望書が通って,平成22年の青本(医科点数表の解釈)に肩腱板断裂手術(K080)が収載されました。それまで青本には腱板という用語はまったくなかったのですが,ようやく日の目をみました。本当に感無量でした。橋口先生と祝杯をあげましたがそのビールの味は格別でした。
「肩症例検討会」「関東肩を語る会」「東京肩を語る会」などの症例検討会では,肩に関する膨大な量の知識を得ることができました。故山本龍二先生,三笠元彦先生,小川清久先生,高岸憲二先生,筒井廣明先生,玉井和哉先生,池上博泰先生,西須孝先生,菅谷啓之先生,佐志隆士先生などからのご発言やご教示がいつまでも心に残っています。各症例の病歴,理学所見を聞き,画像を詳細にみて,診断や治療方法を1例につき30分程度の時間をかけてディスカッションしました。
恩師である信原克哉先生の元に勉強に行ったとき,信原先生の外来診療の見学もさせていただきました。患者さんを優しく包み込むような包容力とカリスマ性があってどの患者さんも大変満足されており感銘を受けました。今でも信原先生のような外来診療に一歩でも近づけるように心がけています。
故遠藤壽男先生がご逝去されたのは筆者が第39回日本肩関節学会を主催した平成24年でした。遠藤先生は世界に先駆けて動揺肩(loose shoulder)について研究し,貴重な論文を多数執筆されました。会長講演では遠藤壽男先生への追悼を7枚のスライドを使って行いました。本書でも動揺肩の項に遠藤分類をしっかり入れました。
話は変わりますが,ここでバーチャルボーカロイドの初音ミクさんとの出会いから現在までを述べます。10年くらい前にオタク系の甥っ子から初音ミクさんのことを初めて聞きました。ユーチューブを見て3次元ホログラムで歌って踊る初音ミクさんに感動して,大ファンになってしまいました。すべてが可愛いんです。バックバンドはバーチャルではなく生バンドです。毎年幕張メッセで開催されるマジカルミライに甥っ子と2人で行き,企画展で色々なグッズを買い,ライブでは2時間近くペンライトを振り続け,手関節の腱鞘炎になったこともあります。中国,台湾,ヨーロッパ(特にフランス),アメリカでも人気がありライブを開催しています。同愛記念病院の副院長室に初音ミクグッズを飾っていましたが,本年2月に定年退職をむかえ,副院長室を出ることになりました。その前に自宅にあったミクミクグッズも全部病院に持っていって副院長室をミクミクランドにしました。その時のカラー写真を後付けに載せました。表紙のデザインとロゴもミクミクからインスパイアーされたものです。
今回の出版にあたって編集者の矢部涼子さんには大変お世話になりました。また原稿の半分くらいをご校閲していただいた同愛記念病院整形外科医長の佐藤哲也先生に深く感謝いたします。原稿を熱心にみていただき,文献まで調べてくれて,追加症例なども数多く提供してくださり本当にありがたかったです。
本書が皆様の外来診療の一助になれば,このうえない喜びです。
令和4年2月
中川照彦
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目次
Ⅰ 腱板断裂
腱板断裂- 総論
腱板中断裂
腱板大断裂
腱板広範囲断裂
腱板広範囲断裂での肩関節の臼蓋化(acetabularization)
腱板断裂による外旋機能障害
腱板滑液包面断裂
腱板関節面断裂
腱板腱内断裂
肩甲下筋腱断裂
肩のエコー(超音波)
腱板断裂部の異所性骨化
column 肺癌の肩甲骨転移の見逃し
column 肩の夜間痛の一因
Ⅱ 脱臼・不安定症
肩関節前方脱臼
反復性肩関節前方脱臼
陳旧性肩関節脱臼
骨頭下方亜脱臼
肩関節後方脱臼の見逃し
習慣性肩関節後方脱臼
動揺肩(loose shoulder)
肩鎖関節脱臼
胸鎖関節後方脱臼
Ⅲ 変性・炎症性疾患
column X 線透視下での肩関節穿刺法
化膿性肩関節炎
五十肩(四十肩,肩関節周囲炎,凍結肩)
変形性肩関節症(shoulder osteoarthritis;shoulder OA)
肩の関節リウマチ(RA)
上腕骨頭壊死
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)
外傷後鎖骨遠位端骨溶解症(post-traumatic osteolysis of the distal end of the clavicle)
胸肋鎖骨肥厚症(sternocostoclavicular hyperostosis)
column MRI の疾患別お勧め画像の種類
肩の骨軟骨腫症(osteochondromatosis of shoulder)
column 肩関節唇の石灰沈着
Ⅳ 筋腱損傷
上腕二頭筋長頭腱断裂(long head of biceps tendon rupture;LHB rupture)
大胸筋断裂
肩の筋肉の肉離れ(肩甲下筋,大円筋,広背筋)
Ⅴ 骨折
鎖骨遠位端骨折 後方転位
肩甲骨体部骨折による偽性腱板断裂(pseudo-rupture of rotator cuff )
上腕骨近位端骨折
大結節骨折
大結節不顕性骨折
Ⅵ 神経障害・ガングリオン
頚椎症性筋萎縮症
肩の神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy)
前鋸筋麻痺(長胸神経麻痺)
肩の傍関節唇ガングリオン(paralabral ganglion cyst of the shoulder)-肩甲上神経麻痺-
肩鎖関節ガングリオン
Ⅶ 投球障害肩
リトルリーグ肩(little league shoulder)
SLAP 病変(superior labrum from anterior to posterior lesion) 上方関節唇損傷
ベネット病変(Bennett lesion)
肩のインピンジメント症候群
腱板断裂- 総論
腱板中断裂
腱板大断裂
腱板広範囲断裂
腱板広範囲断裂での肩関節の臼蓋化(acetabularization)
腱板断裂による外旋機能障害
腱板滑液包面断裂
腱板関節面断裂
腱板腱内断裂
肩甲下筋腱断裂
肩のエコー(超音波)
腱板断裂部の異所性骨化
column 肺癌の肩甲骨転移の見逃し
column 肩の夜間痛の一因
Ⅱ 脱臼・不安定症
肩関節前方脱臼
反復性肩関節前方脱臼
陳旧性肩関節脱臼
骨頭下方亜脱臼
肩関節後方脱臼の見逃し
習慣性肩関節後方脱臼
動揺肩(loose shoulder)
肩鎖関節脱臼
胸鎖関節後方脱臼
Ⅲ 変性・炎症性疾患
column X 線透視下での肩関節穿刺法
化膿性肩関節炎
五十肩(四十肩,肩関節周囲炎,凍結肩)
変形性肩関節症(shoulder osteoarthritis;shoulder OA)
肩の関節リウマチ(RA)
上腕骨頭壊死
石灰沈着性腱板炎(肩石灰性腱炎)
外傷後鎖骨遠位端骨溶解症(post-traumatic osteolysis of the distal end of the clavicle)
胸肋鎖骨肥厚症(sternocostoclavicular hyperostosis)
column MRI の疾患別お勧め画像の種類
肩の骨軟骨腫症(osteochondromatosis of shoulder)
column 肩関節唇の石灰沈着
Ⅳ 筋腱損傷
上腕二頭筋長頭腱断裂(long head of biceps tendon rupture;LHB rupture)
大胸筋断裂
肩の筋肉の肉離れ(肩甲下筋,大円筋,広背筋)
Ⅴ 骨折
鎖骨遠位端骨折 後方転位
肩甲骨体部骨折による偽性腱板断裂(pseudo-rupture of rotator cuff )
上腕骨近位端骨折
大結節骨折
大結節不顕性骨折
Ⅵ 神経障害・ガングリオン
頚椎症性筋萎縮症
肩の神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy)
前鋸筋麻痺(長胸神経麻痺)
肩の傍関節唇ガングリオン(paralabral ganglion cyst of the shoulder)-肩甲上神経麻痺-
肩鎖関節ガングリオン
Ⅶ 投球障害肩
リトルリーグ肩(little league shoulder)
SLAP 病変(superior labrum from anterior to posterior lesion) 上方関節唇損傷
ベネット病変(Bennett lesion)
肩のインピンジメント症候群
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具体的な症例を追いながら, 豊富な画像と解説で, 肩関節疾患を正しく診断・治療するスキルが身に付く! “画像本”としての役割も担える, 唯一無二の肩の実践書!
肩関節の診療に特化し,症例ベースに診断から治療までを解説。初診時から術前後まで,疾患の特徴的な画像(単純X線,MRI,CT)を豊富に盛り込み,撮るべき画像,見るべきところがよくわかる。また画像には必ずキャプションが入るので,画像だけを追って読むこともできる。
著者独特の懇切丁寧な解説と多くの写真・イラストで肩を専門としていない整形外科医にもわかりやすく,また良好な経過を辿らなかった症例も隠すことなく掲載しているので,読者の反面教師にもなる。
①腱板断裂,②脱臼・不安定症,③変性・炎症性疾患,④筋腱損傷,⑤骨折,⑥神経障害・ガングリオン,⑦投球障害肩の7章立てで,肩関節疾患を正しく診断・治療するスキルが身に付く!