整形外科 感染対策エッセンシャルズ
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定価 5,500円(税込) (本体5,000円+税)
- B5判 400ページ 2色
- 2021年11月18日刊行
- ISBN978-4-7583-2150-1
電子版
序文
編集の序
手術を行う場合,周術期の感染は悩ましいものであります。特にインプラントを使う手術では,感染を起こしたときのショックは,患者はもちろんでありますが術者にとりましても非常に大きいものがあります。超高齢社会の到来により,糖尿病や透析などのリスクが高い例に対して手術を行うことが増えており,感染の危険性が常につきまとう状況になっております。適切な感染の予防,診断および治療を行うためには,現時点での世界標準を知ることは大変重要であります。
米国フィラデルフィアで2018年7月25~27日の3日間にわたり,筋骨格系の感染に対する第2回国際コンセンサス会議[e Second International Consensus Meeting(ICM)on Musculoskeletal Infection]がJavad Parvizi先生により企画されました(下図)。この会議には全世界から800人以上の専門家が集まり,筋骨格系の感染の予防,診断および治療についてのコンセンサスがまとめられました。第1回ICMでは人工関節周囲感染が中心でしたが,第2回はこれに加えて股関節・膝関節,足・足関節,腫瘍,小児整形,肩関節,肘関節,脊椎,スポーツ,外傷,バイオフィルムのそれぞれの分野で検討され,最終的に採用されたクリニカルクエスチョン(CQ)は652題におよび,整形外科領域のほぼ全領域を網羅した内容となりました。会議の結果は英語の書籍(『Proceedings of the Second International Consensus Meeting on Musculoskeletal Infection』,2018,Data Trace Publishing Company,International Consensus Group LLC)として出版され,世界各国で翻訳されることとなりました。日本語版としては第2回ICMに参加したメンバーが中心となり,2019年に『整形外科感染対策における国際コンセンサス人工関節周囲感染を含む筋骨格系感染全般』1)として刊行いたしました。ただ,原著は本文だけで982ページという膨大な分量であったことから,残念ながらそのすべてを翻訳することは断念し,CQとその「推奨」のみを掲載し,推奨に至った根拠を解説した「RATIONAL」の文章は割愛いたしました。しかし,「RATIONAL」には非常に重要な内容が含まれていることから,Parvizi先生にご相談したところ,日本での新たな書籍を刊行することにご快諾いただきました。日本を代表する筋骨格系感染症の専門家の先生方に,652題のCQのなかから特に重要な162題を厳選していただき,「RATIONAL」を翻訳・執筆していただきました。また,2018年以降の新たな知見についても追記していただいております。
本書に記載された内容は,現時点における世界の標準的な人工関節周囲感染を含む筋骨格系感染に対する予防,診断および治療におけるコンセンサスであります。転ばぬ先の杖とはいいますが,もし転んでしまったときの対処法に関してもご熟読いただき,本書が皆様のお役に立つことを祈念いたしております。
奈良県立医科大学整形外科学教室 田中康仁
市立東大阪医療センター整形外科 宗本 充
手術を行う場合,周術期の感染は悩ましいものであります。特にインプラントを使う手術では,感染を起こしたときのショックは,患者はもちろんでありますが術者にとりましても非常に大きいものがあります。超高齢社会の到来により,糖尿病や透析などのリスクが高い例に対して手術を行うことが増えており,感染の危険性が常につきまとう状況になっております。適切な感染の予防,診断および治療を行うためには,現時点での世界標準を知ることは大変重要であります。
米国フィラデルフィアで2018年7月25~27日の3日間にわたり,筋骨格系の感染に対する第2回国際コンセンサス会議[e Second International Consensus Meeting(ICM)on Musculoskeletal Infection]がJavad Parvizi先生により企画されました(下図)。この会議には全世界から800人以上の専門家が集まり,筋骨格系の感染の予防,診断および治療についてのコンセンサスがまとめられました。第1回ICMでは人工関節周囲感染が中心でしたが,第2回はこれに加えて股関節・膝関節,足・足関節,腫瘍,小児整形,肩関節,肘関節,脊椎,スポーツ,外傷,バイオフィルムのそれぞれの分野で検討され,最終的に採用されたクリニカルクエスチョン(CQ)は652題におよび,整形外科領域のほぼ全領域を網羅した内容となりました。会議の結果は英語の書籍(『Proceedings of the Second International Consensus Meeting on Musculoskeletal Infection』,2018,Data Trace Publishing Company,International Consensus Group LLC)として出版され,世界各国で翻訳されることとなりました。日本語版としては第2回ICMに参加したメンバーが中心となり,2019年に『整形外科感染対策における国際コンセンサス人工関節周囲感染を含む筋骨格系感染全般』1)として刊行いたしました。ただ,原著は本文だけで982ページという膨大な分量であったことから,残念ながらそのすべてを翻訳することは断念し,CQとその「推奨」のみを掲載し,推奨に至った根拠を解説した「RATIONAL」の文章は割愛いたしました。しかし,「RATIONAL」には非常に重要な内容が含まれていることから,Parvizi先生にご相談したところ,日本での新たな書籍を刊行することにご快諾いただきました。日本を代表する筋骨格系感染症の専門家の先生方に,652題のCQのなかから特に重要な162題を厳選していただき,「RATIONAL」を翻訳・執筆していただきました。また,2018年以降の新たな知見についても追記していただいております。
本書に記載された内容は,現時点における世界の標準的な人工関節周囲感染を含む筋骨格系感染に対する予防,診断および治療におけるコンセンサスであります。転ばぬ先の杖とはいいますが,もし転んでしまったときの対処法に関してもご熟読いただき,本書が皆様のお役に立つことを祈念いたしております。
奈良県立医科大学整形外科学教室 田中康仁
市立東大阪医療センター整形外科 宗本 充
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目次
PartⅠ 総論
Section 1:予防
宿主関連,局所因子/宿主関連,一般的因子/宿主リスクの軽減,局所因子/
宿主リスクの軽減,全身因子/リスクの軽減,局所因子/リスクの軽減,全身因子/
予防:抗菌薬(全身投与)/予防:抗菌薬(局所投与)/術野/手術室,麻酔/
手術室,スタッフ/手術室,環境/手術室,外科手術/洗浄液
手術室,外科手技/輸血医療/創管理
Section 2:診断
臨床検査/菌種同定,培養/画像診断
Section 3:治療
抗菌薬
PartⅡ 股関節・膝関節
Section 1:予防
リスクの軽減/抗菌薬(全身投与)/抗菌薬(局所投与)/
手術室環境/人工関節関連因子
Section 2:診断
定義/アルゴリズム/臨床検査/細菌の分離と培養/インプラント再置換術
Section 3:治療
アルゴリズム/デブリドマンとインプラント温存/一期的再置換術/
二期的再置換術,スペーサー関連/二期的再置換術/手術手技/
人工物の要素/抗菌薬/抗菌薬(二期的)/抗菌抑制
PartⅢ 肩関節
Section 1:予防
抗菌薬/術中/患者背景/皮膚処置
Section 2:診断
培養方法/炎症マーカー/サンプリング
Section 3:治療
PJI に対する抗菌薬/コンポーネント温存/再手術
Part Ⅳ 脊椎
Section 1:予防
抗菌薬/危険因子/創傷処置
Section 2:診断
基本原則/バイオマーカー/画像
Section 3:治療
一般原則/抗菌薬/インプラント/創傷処置
PartⅤ 外傷
Section 1:予防
患者因子/リスクの軽減
Section 2:診断
Section 3:治療
抗菌薬と保存加療/リスク因子/術式関連/創被覆
PartⅥ 足部・足関節
Section 1:診断
人工足関節全置換術/非人工足関節全置換術
Section 2:治療
人工足関節全置換術/非人工足関節全置換術
PartⅦ 腫瘍
Section 1:予防
化学療法/研究関連事項
Section 2:治療
洗浄・デブリドマン/一期的再置換術/研究関連事項/二期的再置換術
PartⅧ スポーツ
Section 1:予防
Section 2:診断
Section 3:治療
PartⅨ 肘関節
Section 1:予防
Section 2:診断
Section 3:治療
PartⅩ 小児
Section 1:診断
Section 2:治療
PartⅪ バイオフィルム
Section 1:形成
Section 1:予防
宿主関連,局所因子/宿主関連,一般的因子/宿主リスクの軽減,局所因子/
宿主リスクの軽減,全身因子/リスクの軽減,局所因子/リスクの軽減,全身因子/
予防:抗菌薬(全身投与)/予防:抗菌薬(局所投与)/術野/手術室,麻酔/
手術室,スタッフ/手術室,環境/手術室,外科手術/洗浄液
手術室,外科手技/輸血医療/創管理
Section 2:診断
臨床検査/菌種同定,培養/画像診断
Section 3:治療
抗菌薬
PartⅡ 股関節・膝関節
Section 1:予防
リスクの軽減/抗菌薬(全身投与)/抗菌薬(局所投与)/
手術室環境/人工関節関連因子
Section 2:診断
定義/アルゴリズム/臨床検査/細菌の分離と培養/インプラント再置換術
Section 3:治療
アルゴリズム/デブリドマンとインプラント温存/一期的再置換術/
二期的再置換術,スペーサー関連/二期的再置換術/手術手技/
人工物の要素/抗菌薬/抗菌薬(二期的)/抗菌抑制
PartⅢ 肩関節
Section 1:予防
抗菌薬/術中/患者背景/皮膚処置
Section 2:診断
培養方法/炎症マーカー/サンプリング
Section 3:治療
PJI に対する抗菌薬/コンポーネント温存/再手術
Part Ⅳ 脊椎
Section 1:予防
抗菌薬/危険因子/創傷処置
Section 2:診断
基本原則/バイオマーカー/画像
Section 3:治療
一般原則/抗菌薬/インプラント/創傷処置
PartⅤ 外傷
Section 1:予防
患者因子/リスクの軽減
Section 2:診断
Section 3:治療
抗菌薬と保存加療/リスク因子/術式関連/創被覆
PartⅥ 足部・足関節
Section 1:診断
人工足関節全置換術/非人工足関節全置換術
Section 2:治療
人工足関節全置換術/非人工足関節全置換術
PartⅦ 腫瘍
Section 1:予防
化学療法/研究関連事項
Section 2:治療
洗浄・デブリドマン/一期的再置換術/研究関連事項/二期的再置換術
PartⅧ スポーツ
Section 1:予防
Section 2:診断
Section 3:治療
PartⅨ 肘関節
Section 1:予防
Section 2:診断
Section 3:治療
PartⅩ 小児
Section 1:診断
Section 2:治療
PartⅪ バイオフィルム
Section 1:形成
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国際コンセンサスに基づく推奨を厳選し,解説付きで掲載!
2018年7月に開催された第2回国際コンセンサス会議で採択された,整形外科に関連する感染症対策についての合意事項から特に重要な推奨項目を厳選。整形外科のほぼ全領域を網羅する約160の「クリニカルクエスチョン」を掲載し,それぞれに推奨とエビデンスレベルを示した上で,その根拠を解説。
手術を行う施設には必携の一冊!