人工膝関節全置換術[TKA]のすべて
−より安全に・より確実に−
改訂第2版
定価 20,900円(税込) (本体19,000円+税)
- A4判 380ページ 上製,オールカラー,イラスト350点,写真250点
- 2017年3月2日刊行
- ISBN978-4-7583-1371-1
序文
膝関節機能再建の方法として,人工膝関節全置換術(TKA)は,我が国において重要な基本的 手術法として確立している。本邦においてTKAは年間約8万件が行われており,今後もさらに増加することが予想される。長期臨床成績の良好な報告もあるが,患者満足度に関しては,未だ 問題点が指摘され,THAより低いと言わざるをえないのが現状である。その満足度の低い主たる原因は,術後の違和感と関節可動域の不足などの問題である。特に膝関節は,荷重関節であり,日常生活において伸展・屈曲・回旋動作を強いられるため,常に複雑な機能が求められていることから,変形の矯正と支持性が獲得され,さらにスムーズな関節の動きが得られても,さらなる自然なスムーズな関節の動きを求めるのが,人の常である。
人工膝関節手術を行う医師は,常に高い理想の下に,健常人と同じ膝関節機能を求めて手術を行うものと考えている。適応となる膝関節の疾病状態は症例毎に異なることから,それぞれに至適な手術手技と工夫が求められている。
最も重要なことは,先達者たちの経験のうえに,さまざまな工夫がされてきた事実と改善の工夫を十分に理解,習熟した手術手技を各術者がもつことである。良好な臨床成績を得るためには,TKAの基本手技をマスターすることと,各自の工夫が必要と考えている。特別な手術手技は残念ながら存在しないが,一つ一つのステップを確実に行っていくことがすべてであり,それによって初めて良い結果が得られる。
手術手技の主なポイントには以下の3つがある。
①「正しい骨切り技術」:measured resection techniqueとmodified gap balancing techniqueの目的の違いを理解することが重要である。
②「インプラントの正確な設置」:使用するインプラントの機種(CR型,PS型,CS型)の特徴を理解したうえで,至適インプラントを選択することが大切である。
③「正常な膝アライメントの獲得」:適切な軟部組織バランスを調整することで得られるものであり,術中に深屈曲ができなければ,術後の深屈曲は不可能であることを肝に銘じ,最大限の工夫をする必要がある。
TKAでは,膝の変形のタイプによっても行われる手術手技は異なることから,それぞれの特徴を理解したうえで,患者の病態に則した手術が行われることが求められる。
そこで,本書『改訂第2版 人工膝関節全置換術[TKA]のすべて』では,より安全で,より確実な手技を解説することに重きを置き,豊富なイラストを駆使することで少しでも理解しやすくなるように構成した。TKAを執刀する整形外科医すべてに求められる知識と技術が解説されて いる本書が,患者一人一人の満足度を高める手術を行うための一助となれば幸いである。
2017年2月
勝呂 徹,田中 栄
人工膝関節手術を行う医師は,常に高い理想の下に,健常人と同じ膝関節機能を求めて手術を行うものと考えている。適応となる膝関節の疾病状態は症例毎に異なることから,それぞれに至適な手術手技と工夫が求められている。
最も重要なことは,先達者たちの経験のうえに,さまざまな工夫がされてきた事実と改善の工夫を十分に理解,習熟した手術手技を各術者がもつことである。良好な臨床成績を得るためには,TKAの基本手技をマスターすることと,各自の工夫が必要と考えている。特別な手術手技は残念ながら存在しないが,一つ一つのステップを確実に行っていくことがすべてであり,それによって初めて良い結果が得られる。
手術手技の主なポイントには以下の3つがある。
①「正しい骨切り技術」:measured resection techniqueとmodified gap balancing techniqueの目的の違いを理解することが重要である。
②「インプラントの正確な設置」:使用するインプラントの機種(CR型,PS型,CS型)の特徴を理解したうえで,至適インプラントを選択することが大切である。
③「正常な膝アライメントの獲得」:適切な軟部組織バランスを調整することで得られるものであり,術中に深屈曲ができなければ,術後の深屈曲は不可能であることを肝に銘じ,最大限の工夫をする必要がある。
TKAでは,膝の変形のタイプによっても行われる手術手技は異なることから,それぞれの特徴を理解したうえで,患者の病態に則した手術が行われることが求められる。
そこで,本書『改訂第2版 人工膝関節全置換術[TKA]のすべて』では,より安全で,より確実な手技を解説することに重きを置き,豊富なイラストを駆使することで少しでも理解しやすくなるように構成した。TKAを執刀する整形外科医すべてに求められる知識と技術が解説されて いる本書が,患者一人一人の満足度を高める手術を行うための一助となれば幸いである。
2017年2月
勝呂 徹,田中 栄
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目次
TKAに必要な基礎解剖
膝関節の構造 勝呂 徹
膝関節のアライメント —解剖学的アライメント 井口普敬
人工膝関節のキネマティクス 富田直秀
手術適応
手術適応 武冨修治,乾 洋,田中 栄
術前計画
術前計画に必要な画像診断 小林章郞
インプラントの動態特性(キネマティクスなど) 冨田哲也
インプラントの選択 −CR型かPS型(CS型)か 松田秀一
基本手術手技
膝アライメント獲得の考え方 津村 弘
皮切 中村卓司,宮崎芳安
膝関節の展開 中村卓司,宮崎芳安
膝関節内進入法 中村卓司,宮崎芳安
骨切り:大腿骨/脛骨/膝蓋骨
正常な膝アライメントの獲得 宍戸孝明,山本謙吾
Measured resection technique(independent,CR型) 勝呂 徹
Gap balancing technique(dependent,PS型)−骨切りのコンセプト 長嶺隆二
プレカット法 金山竜沢
インプラント設置位置の決定
大腿骨コンポーネントの回旋と設置 松田秀一
脛骨コンポーネントの回旋と設置 赤木將男
解剖学的バリエーションへの対応 長嶺隆二
軟部組織バランスの調整
CR(cruciate retaining)型 勝呂 徹
PS(posterior stabilized)型 眞島任史
膝蓋骨置換の手術手技と大腿膝蓋靱帯バランス 勝呂 徹
骨欠損への対処法 中村順一
人工膝関節の固定法 清水 耕
骨切りに有効な器具と取り扱い方(バランサーを含む) 中島 新
変形のタイプ別手術手技
内反膝 中島幹雄
外反膝 中村卓司
強直膝,伸展拘縮膝 鈴木昌彦
屈曲拘縮膝 長嶺隆二
不安定膝 長嶺隆二
外傷後・骨切り後 眞島任史
可動域の獲得
優れた可動域を獲得するための手技と工夫 勝呂 徹
周術期管理,リハビリテーション
出血対処法,止血法 小林章郞
術後疼痛管理 小林章郞
深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症対策 清水 耕
インプラント後の動作解析,術後評価(満足度など) 冨田哲也
TKA後のリハビリテーション 中島 新
合併症(トラブルシューティング)
創の合併症 門野夕峰
術後感染の診断と対策 田中 栄,西野仁樹
弛み 小俣康徳,田中 栄
ポリエチレン摩耗 伊沢直広
骨折 田中 栄,西野仁樹
人工関節と金属アレルギー 関東裕美
TKAのオプション
低侵襲への工夫(MIS-TKAなど) 飯澤典茂,高井信朗
ナビゲーション手術 小林章郞
再置換術(revision TKA) 西野仁樹
部分関節置換術 齋藤知行,熊谷 研
TKAを理解するための基礎知識
人工膝関節の歴史と変遷 西野仁樹
人工膝関節の素材:金属材料 山本慶太郎
人工膝関節の素材:ポリエチレン 山本慶太郎
人工膝関節−最新の動向 乾 洋
臨床評価−各種のスコアリング 中村卓司
膝関節の構造 勝呂 徹
膝関節のアライメント —解剖学的アライメント 井口普敬
人工膝関節のキネマティクス 富田直秀
手術適応
手術適応 武冨修治,乾 洋,田中 栄
術前計画
術前計画に必要な画像診断 小林章郞
インプラントの動態特性(キネマティクスなど) 冨田哲也
インプラントの選択 −CR型かPS型(CS型)か 松田秀一
基本手術手技
膝アライメント獲得の考え方 津村 弘
皮切 中村卓司,宮崎芳安
膝関節の展開 中村卓司,宮崎芳安
膝関節内進入法 中村卓司,宮崎芳安
骨切り:大腿骨/脛骨/膝蓋骨
正常な膝アライメントの獲得 宍戸孝明,山本謙吾
Measured resection technique(independent,CR型) 勝呂 徹
Gap balancing technique(dependent,PS型)−骨切りのコンセプト 長嶺隆二
プレカット法 金山竜沢
インプラント設置位置の決定
大腿骨コンポーネントの回旋と設置 松田秀一
脛骨コンポーネントの回旋と設置 赤木將男
解剖学的バリエーションへの対応 長嶺隆二
軟部組織バランスの調整
CR(cruciate retaining)型 勝呂 徹
PS(posterior stabilized)型 眞島任史
膝蓋骨置換の手術手技と大腿膝蓋靱帯バランス 勝呂 徹
骨欠損への対処法 中村順一
人工膝関節の固定法 清水 耕
骨切りに有効な器具と取り扱い方(バランサーを含む) 中島 新
変形のタイプ別手術手技
内反膝 中島幹雄
外反膝 中村卓司
強直膝,伸展拘縮膝 鈴木昌彦
屈曲拘縮膝 長嶺隆二
不安定膝 長嶺隆二
外傷後・骨切り後 眞島任史
可動域の獲得
優れた可動域を獲得するための手技と工夫 勝呂 徹
周術期管理,リハビリテーション
出血対処法,止血法 小林章郞
術後疼痛管理 小林章郞
深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症対策 清水 耕
インプラント後の動作解析,術後評価(満足度など) 冨田哲也
TKA後のリハビリテーション 中島 新
合併症(トラブルシューティング)
創の合併症 門野夕峰
術後感染の診断と対策 田中 栄,西野仁樹
弛み 小俣康徳,田中 栄
ポリエチレン摩耗 伊沢直広
骨折 田中 栄,西野仁樹
人工関節と金属アレルギー 関東裕美
TKAのオプション
低侵襲への工夫(MIS-TKAなど) 飯澤典茂,高井信朗
ナビゲーション手術 小林章郞
再置換術(revision TKA) 西野仁樹
部分関節置換術 齋藤知行,熊谷 研
TKAを理解するための基礎知識
人工膝関節の歴史と変遷 西野仁樹
人工膝関節の素材:金属材料 山本慶太郎
人工膝関節の素材:ポリエチレン 山本慶太郎
人工膝関節−最新の動向 乾 洋
臨床評価−各種のスコアリング 中村卓司
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人工膝関節全置換術[TKA]に関わるドクター必読書
TKA(人工膝関節全置換術)が年間7〜8万件行われているという時代である。だからこそ正しい手術適応,手術計画,基本手技の重要性は増している。その点を押さえてこそ,予後良好な手術を行うことができる。初版『人工膝関節置換術[TKA]のすべて』の刊行から9年を経て,本書は,基本手技に重きを置きつつ,新しい手技についても解説した内容・構成で改訂されている。
TKA成功の鍵を握る〈膝のアライメントの獲得〉〈軟部組織バランスの獲得〉。そのために行われる骨切り(大腿骨,脛骨)で最も重要な伸展・屈曲ギャップテクニックについては,従来のオリジナル法から新たな方法(プレカット法)まで詳述されている。
インプラントの正確な設置法についても,大腿骨・脛骨それぞれについて解説されており,使用するインプラントがPS型かCR型かによる手技の違いについても明記されている。「優れた可動域獲得のための手技」については,TKAの第一人者である編者自らが解説しており,TKAの情報が網羅されている万全の書籍である。