みえる!わかる!女性内分泌
定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
- B5判 260ページ 2色,イラスト120点
- 2022年12月3日刊行
- ISBN978-4-7583-2127-3
電子版
序文
諸説あるものの,旧約聖書の『創世記』によると,人類史で最初の女性は“アダムとイブ”のイブとされ,彼女は禁断の果物を食べた後に神から妊娠と出産の苦しみを与えられたという。つまり,女性は発生学的に生殖能力を獲得したのではなく,人類史に登場した時から「ホルモン」により制御されていたこととなる。「ホルモン」は一般に生物の発生・成長・ホメオスタシスの維持などの生理活性物質を一括で呼称したものであり,とりわけホルモンにより調節される生殖現象を研究する学問が生殖内分泌学である。さらに,生殖内分泌学は性差により分別されるが,生体の恒常性を保つための内分泌器官での内分泌現象とともに,卵巣の中の卵子から始まる生殖現象を広く研究するのが女性内分泌学であり,女性内分泌に関連する臨床診療の対象は広範囲で複雑である。一方で、1923年にAllenとDolsyらがエストロゲンを発見した時を女性内分泌の始まりと考えると,女性内分泌学の歴史はたかだか100年であり,“アダムとイブ”の人類史を考慮するとまだまだ未開の領域であると言える。そのため,女性内分泌学に魅了された研究者たちは多く,女性内分泌学の歴史を築き上げた日本人の巨匠たちも数多くいるのが,この分野の特徴である。
しかし,外科系診療科としてくくられる産婦人科では分娩や手術手技の習得が優先され,腫瘍・周産期・生殖・女性医学とすべての領域において必要とされる女性内分泌にも関わらず内科的な側面を持つ女性内分泌は苦手意識を持たれることが多く,多忙の臨床の中で学ぶ機会がないまま年次を経過することがあり,気が付いた時には苦手分野として植え付けられてしまうことが多い。その状況を鑑み,世界的にも伝統のある日本の女性内分泌学の将来に対する危機を脱すべく本書が企画された。
本書は,“女性内分泌学が得意な先生は何が違うのか?”を検証し、苦手な人やこれから学ぶ人が「何がわからないのか?」,「なぜ、不得意なのか?」に応えるように系統的な構成とした。まずは女性内分泌学を知るうえで必要な内分泌学の基盤を本書の冒頭で固め,その基盤に積み上げるように女性内分泌の基礎を学べるような構成としている。その後,女性内分泌学の基盤が固まったところで臨床的な症候編を学び,女性ホルモンを使いこなすという意味で投薬療法編へと進んでいただければ,臨床で出くわす全てのトラブルシューティングには対応できるような臨床力を得ることできるようになるだろう。最終的には,読者の多くが本書を理解することで,“女性内分泌学が得意な先生は何が違うのか?”の答えがおのずと出てくるはずであると確信している。また,本書は各分野のエキスパートを執筆陣にお招きし,おのおのがパワーポイントでプレゼンするつもりで執筆していただいているため,各エキスパートの講義を聴講するように読んでいただき,これまで避けてきた女性内分泌が「みえる」「わかる」ような内容となった書籍となっている。本書により,多くの若き産婦人科医あるいは他診療科の医師,医療従事者,研究者などが女性内分泌学を理解し,新たに日本から発信するような女性内分泌学の礎となれば望外の喜びである。
末筆になるが,ご多忙な中ご執筆いただいた豪華執筆陣と,終始サポートしていただいたメジカルビュー社の浅見直博様に心より感謝申し上げたい。
令和4 年11 月
岩瀬 明
平池 修
太田邦明
しかし,外科系診療科としてくくられる産婦人科では分娩や手術手技の習得が優先され,腫瘍・周産期・生殖・女性医学とすべての領域において必要とされる女性内分泌にも関わらず内科的な側面を持つ女性内分泌は苦手意識を持たれることが多く,多忙の臨床の中で学ぶ機会がないまま年次を経過することがあり,気が付いた時には苦手分野として植え付けられてしまうことが多い。その状況を鑑み,世界的にも伝統のある日本の女性内分泌学の将来に対する危機を脱すべく本書が企画された。
本書は,“女性内分泌学が得意な先生は何が違うのか?”を検証し、苦手な人やこれから学ぶ人が「何がわからないのか?」,「なぜ、不得意なのか?」に応えるように系統的な構成とした。まずは女性内分泌学を知るうえで必要な内分泌学の基盤を本書の冒頭で固め,その基盤に積み上げるように女性内分泌の基礎を学べるような構成としている。その後,女性内分泌学の基盤が固まったところで臨床的な症候編を学び,女性ホルモンを使いこなすという意味で投薬療法編へと進んでいただければ,臨床で出くわす全てのトラブルシューティングには対応できるような臨床力を得ることできるようになるだろう。最終的には,読者の多くが本書を理解することで,“女性内分泌学が得意な先生は何が違うのか?”の答えがおのずと出てくるはずであると確信している。また,本書は各分野のエキスパートを執筆陣にお招きし,おのおのがパワーポイントでプレゼンするつもりで執筆していただいているため,各エキスパートの講義を聴講するように読んでいただき,これまで避けてきた女性内分泌が「みえる」「わかる」ような内容となった書籍となっている。本書により,多くの若き産婦人科医あるいは他診療科の医師,医療従事者,研究者などが女性内分泌学を理解し,新たに日本から発信するような女性内分泌学の礎となれば望外の喜びである。
末筆になるが,ご多忙な中ご執筆いただいた豪華執筆陣と,終始サポートしていただいたメジカルビュー社の浅見直博様に心より感謝申し上げたい。
令和4 年11 月
岩瀬 明
平池 修
太田邦明
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目次
第 Ⅰ 章 女性内分泌の基礎知識
① ホルモンを学ぶうえでどうしても知っておきたいこと
② 視床下部– 下垂体– 卵巣軸
③ 視床下部– 下垂体– 副腎皮質軸
④ 子宮
第 Ⅱ 章 いろいろなホルモンについて知る
① ホルモンにはどんな種類がある?
② ホルモンと受容体
③ GnRH - GnIH・ゴナドトロピン
④ プロラクチン・オキシトシン
⑤ TRH・TSH・甲状腺ホルモン
⑥ CRH・ACTH・副腎
⑦ インシュリン・グルカゴン
⑧ エストロゲン・プロゲステロン・テストステロン
⑨ その他
第 Ⅲ 章 女性内分泌疾患にかかわる症候
1 エストロゲン・プロゲステロンによる子宮内膜脱落膜化と月経
2 消退出血と破綻出血
3 OC/LEP内服時の消退出血
4 卵胞期のIMB
5 黄体期のIMB
6 プロゲスチン使用時のIMB
7 過多月経のメカニズム
8 過少月経のメカニズム
9 無月経(希発月経)および無排卵周期における中枢性ホルモン状態
10 機能性月経困難症
第 Ⅳ 章 投薬療法
1 エストロゲン製剤
2 黄体ホルモン製剤
3 ゴナドトロピン製剤
4 GnRHアゴニスト
5 GnRHアンタゴニスト(注射)
6 GnRHアンタゴニスト(経口)
7 SERM
8 SPRM
9 ドーパミンアゴニスト
10 アロマターゼ阻害薬
11 活性型ビタミンD製剤
12 レボサイロキシン
13 カウフマン療法
14 ホルムストローム療法
15 ピンカス療法
16 ホルモン療法(HT)
17 OC/LEP
18 避妊方法概説
19 排卵誘発(非体外受精)
20 排卵誘発(体外受精):controlled ovarian stimulation
① ホルモンを学ぶうえでどうしても知っておきたいこと
② 視床下部– 下垂体– 卵巣軸
③ 視床下部– 下垂体– 副腎皮質軸
④ 子宮
第 Ⅱ 章 いろいろなホルモンについて知る
① ホルモンにはどんな種類がある?
② ホルモンと受容体
③ GnRH - GnIH・ゴナドトロピン
④ プロラクチン・オキシトシン
⑤ TRH・TSH・甲状腺ホルモン
⑥ CRH・ACTH・副腎
⑦ インシュリン・グルカゴン
⑧ エストロゲン・プロゲステロン・テストステロン
⑨ その他
第 Ⅲ 章 女性内分泌疾患にかかわる症候
1 エストロゲン・プロゲステロンによる子宮内膜脱落膜化と月経
2 消退出血と破綻出血
3 OC/LEP内服時の消退出血
4 卵胞期のIMB
5 黄体期のIMB
6 プロゲスチン使用時のIMB
7 過多月経のメカニズム
8 過少月経のメカニズム
9 無月経(希発月経)および無排卵周期における中枢性ホルモン状態
10 機能性月経困難症
第 Ⅳ 章 投薬療法
1 エストロゲン製剤
2 黄体ホルモン製剤
3 ゴナドトロピン製剤
4 GnRHアゴニスト
5 GnRHアンタゴニスト(注射)
6 GnRHアンタゴニスト(経口)
7 SERM
8 SPRM
9 ドーパミンアゴニスト
10 アロマターゼ阻害薬
11 活性型ビタミンD製剤
12 レボサイロキシン
13 カウフマン療法
14 ホルムストローム療法
15 ピンカス療法
16 ホルモン療法(HT)
17 OC/LEP
18 避妊方法概説
19 排卵誘発(非体外受精)
20 排卵誘発(体外受精):controlled ovarian stimulation
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これでわかる! 女性内分泌をメカニズムの基礎から臨床での考え方まで丁寧にビジュアル解説
“大事だけど難しい” そんな女性内分泌のメカニズムを基礎から丁寧にビジュアル解説。さらに,「ホルモンの理解と臨床がどう直結するのか」という視点から,各種検査の意義や補充療法の狙いなど,実臨床で有用な考え方やその根拠となる知識もしっかり解説。