- 新刊
- 画像医学・放射線医学
エビデンスに基づく
CT用造影剤の投与と安全対策
定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
- B5判 300ページ 2色(一部カラー),イラスト20点,写真50点
- 2024年9月2日刊行
- ISBN978-4-7583-2120-4
電子版
序文
現代医療において,CTは診療において欠くことのできない診断モダリティとなっている。現在,日本では年間3,160万件のCT検査が実施されており,造影CTの検査数は全検査の1/4以上の年間800万件程度と推定されている。
1990年代までは,造影CT検査においては画一的なプロトコールで造影剤が投与されることが多かったが,最近では,検査の目的,患者の体格や心機能,使用するCT装置のスペックに合わせて造影プロトコールをカスタマイズすることが一般的になっている。このため,放射線診断医や診療放射線技師には造影剤の体内での薬物動態やCT装置の特性などの深い理解が求められるようになった。一方で,CTに使用される非イオン性ヨード造影剤では,アレルギー様反応,急性腎障害などの副作用を生じる可能性があり,CT検査に従事するすべての医療スタッフは,副作用およびその対策について熟知することが求められている。
近年のCTの技術的発展に伴い,CT用の非イオン性ヨード造影剤の体内での薬物動態,投与法,副作用およびその対策などについて膨大な数の論文が出版されている。本書では,特に1990年代後半から現在までの約30年にわたり蓄積されたこれらの知見について整理し,基本的事項から最新の知見までを,CT検査に従事する医療スタッフにわかりやすく提供することを目的とした。
本書の主な読者としては,放射線診断医,一般の医師,診療放射線技師,CT検査に携わる看護師等を想定している。看護師の方には,まずはⅠ章の「造影剤投与の目的」およびⅦ章の「CTにおける造影剤投与の実際」を読んでいただき,必要に応じて他の章もお読みいただければと思う。本書の臨床編Ⅳ「疾患・病態別の標準造影プロトコール」では,従来のsingle-energy CTのプロトコールを主に記載し,必要に応じて低電圧撮像やdual-energy CTにおいての留意点を追加して記載した。造影プロトコールについては,本書を参考にして各施設でご検討いただけたら幸いである。
本書の各原稿の執筆は,それぞれの領域において経験が深いエキスパートの方々にお願いした。執筆期間が短かったにもかかわらず力のこもった原稿をご提供いただいた執筆者各位に厚く御礼を申し上げる。また,本書の企画にあたり,詳細な助言をいただいた私の研究室の中村優子准教授に深謝する。
本書で学んだ方々が,日常診療において安全で診断能の高い造影CT検査を実施できることを祈念している。
2024年7月
粟井和夫
1990年代までは,造影CT検査においては画一的なプロトコールで造影剤が投与されることが多かったが,最近では,検査の目的,患者の体格や心機能,使用するCT装置のスペックに合わせて造影プロトコールをカスタマイズすることが一般的になっている。このため,放射線診断医や診療放射線技師には造影剤の体内での薬物動態やCT装置の特性などの深い理解が求められるようになった。一方で,CTに使用される非イオン性ヨード造影剤では,アレルギー様反応,急性腎障害などの副作用を生じる可能性があり,CT検査に従事するすべての医療スタッフは,副作用およびその対策について熟知することが求められている。
近年のCTの技術的発展に伴い,CT用の非イオン性ヨード造影剤の体内での薬物動態,投与法,副作用およびその対策などについて膨大な数の論文が出版されている。本書では,特に1990年代後半から現在までの約30年にわたり蓄積されたこれらの知見について整理し,基本的事項から最新の知見までを,CT検査に従事する医療スタッフにわかりやすく提供することを目的とした。
本書の主な読者としては,放射線診断医,一般の医師,診療放射線技師,CT検査に携わる看護師等を想定している。看護師の方には,まずはⅠ章の「造影剤投与の目的」およびⅦ章の「CTにおける造影剤投与の実際」を読んでいただき,必要に応じて他の章もお読みいただければと思う。本書の臨床編Ⅳ「疾患・病態別の標準造影プロトコール」では,従来のsingle-energy CTのプロトコールを主に記載し,必要に応じて低電圧撮像やdual-energy CTにおいての留意点を追加して記載した。造影プロトコールについては,本書を参考にして各施設でご検討いただけたら幸いである。
本書の各原稿の執筆は,それぞれの領域において経験が深いエキスパートの方々にお願いした。執筆期間が短かったにもかかわらず力のこもった原稿をご提供いただいた執筆者各位に厚く御礼を申し上げる。また,本書の企画にあたり,詳細な助言をいただいた私の研究室の中村優子准教授に深謝する。
本書で学んだ方々が,日常診療において安全で診断能の高い造影CT検査を実施できることを祈念している。
2024年7月
粟井和夫
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目次
基礎編
Ⅰ CTにおける造影
CTにおける造影剤投与の目的 粟井和夫
造影剤開発の歴史 百島祐貴
日本で使用されているCT用造影剤 松村 学,ほか
ジェネリック造影剤 粟井和夫
Ⅱ CT用造影剤の基礎
水溶性ヨード造影剤の物理化学的性質 松村 学,ほか
水溶性ヨード造影剤の生態組織への影響 松村 学,ほか
造影剤のDNAに対する影響 福本 航
物理からみたヨード造影剤の造影効果 船間芳憲
臨床編
Ⅲ CT用造影剤の体内動態
臓器レベルおよび細胞レベルの造影剤の分布と排泄 粟井和夫,ほか
造影効果に対する造影プロトコール,患者特性,撮像プロトコールの影響 檜垣 徹,ほか
少量の造影剤を短時間で注入する際の造影剤の体内動態 中浦 猛
造影剤の体内動態のシミュレーション 粟井和夫,ほか
Ⅳ 疾患・病態別の標準造影プロトコール
頭部CT angiographyにおける標準造影プロトコール 茅野伸吾,ほか
頭部CT灌流画像(CT perfusion imaging:CTP)における標準造影プロトコール 篠原祐樹
転移性脳腫瘍の検索における標準造影プロトコール 粟井和夫
心臓CTにおける標準造影プロトコール 吉田和樹,ほか
心大動脈(心臓以外)における標準造影プロトコール 折居 誠,ほか
肺動脈造影CTにおける標準造影プロトコール 立神史稔
胸部(心臓・大血管以外)における標準造影プロトコール 梁川雅弘
肝造影CTにおける標準造影プロトコール 中村優子
膵・胆道の造影CTにおける標準造影プロトコール 福倉良彦
消化管造影CTにおける標準造影プロトコール 林 奈留美,ほか
泌尿器領域の造影CTにおける標準造影プロトコール 中本 篤
小児の造影CTにおける標準造影プロトコール 谷 千尋
Ⅴ CT用造影剤の副作用とその対策
急性副作用 対馬義人
遅発性副作用 児島克英,ほか
造影剤関連急性腎障害 尾田済太郎
造影剤脳症 粟井和夫
造影剤の血管外漏出 大田英揮,ほか
Ⅵ CT用造影剤を投与時に注意が必要な病態
糖尿病(メトホルミン服用者) 仲座方辰,ほか
気管支喘息 尾田済太郎
急性膵炎 尾田済太郎
小児 野澤久美子
授乳婦 野澤久美子
妊娠あるいは妊娠の可能性がある女性 野澤久美子
βブロッカー服用患者 齊藤英正,ほか
重症甲状腺機能亢進 白井清香,ほか
重症筋無力症 藤綱隆太朗,ほか
多発性骨髄腫 松本大河,ほか
カテコラミン産生腫瘍(褐色細胞腫,傍神経節腫) 林 暢彦,ほか
Ⅶ CTにおける造影剤投与の実際
CTにおける造影剤投与の実際 尾田済太郎
Ⅷ CT用造影剤の今後
photon counting detector CTにおける造影剤投与と新たな造影剤開発の可能性 粟井和夫,ほか
造影剤投与における人工知能の応用 中浦 猛
造影剤の安全管理システム(CEエビデンスシステム) 西丸英治
ヨード造影剤を取り巻く課題─産業におけるヨードの不足問題・造影剤の薬価・大容量ボトル造影剤(+multidose injector)の開発 杉原 博,ほか
Ⅰ CTにおける造影
CTにおける造影剤投与の目的 粟井和夫
造影剤開発の歴史 百島祐貴
日本で使用されているCT用造影剤 松村 学,ほか
ジェネリック造影剤 粟井和夫
Ⅱ CT用造影剤の基礎
水溶性ヨード造影剤の物理化学的性質 松村 学,ほか
水溶性ヨード造影剤の生態組織への影響 松村 学,ほか
造影剤のDNAに対する影響 福本 航
物理からみたヨード造影剤の造影効果 船間芳憲
臨床編
Ⅲ CT用造影剤の体内動態
臓器レベルおよび細胞レベルの造影剤の分布と排泄 粟井和夫,ほか
造影効果に対する造影プロトコール,患者特性,撮像プロトコールの影響 檜垣 徹,ほか
少量の造影剤を短時間で注入する際の造影剤の体内動態 中浦 猛
造影剤の体内動態のシミュレーション 粟井和夫,ほか
Ⅳ 疾患・病態別の標準造影プロトコール
頭部CT angiographyにおける標準造影プロトコール 茅野伸吾,ほか
頭部CT灌流画像(CT perfusion imaging:CTP)における標準造影プロトコール 篠原祐樹
転移性脳腫瘍の検索における標準造影プロトコール 粟井和夫
心臓CTにおける標準造影プロトコール 吉田和樹,ほか
心大動脈(心臓以外)における標準造影プロトコール 折居 誠,ほか
肺動脈造影CTにおける標準造影プロトコール 立神史稔
胸部(心臓・大血管以外)における標準造影プロトコール 梁川雅弘
肝造影CTにおける標準造影プロトコール 中村優子
膵・胆道の造影CTにおける標準造影プロトコール 福倉良彦
消化管造影CTにおける標準造影プロトコール 林 奈留美,ほか
泌尿器領域の造影CTにおける標準造影プロトコール 中本 篤
小児の造影CTにおける標準造影プロトコール 谷 千尋
Ⅴ CT用造影剤の副作用とその対策
急性副作用 対馬義人
遅発性副作用 児島克英,ほか
造影剤関連急性腎障害 尾田済太郎
造影剤脳症 粟井和夫
造影剤の血管外漏出 大田英揮,ほか
Ⅵ CT用造影剤を投与時に注意が必要な病態
糖尿病(メトホルミン服用者) 仲座方辰,ほか
気管支喘息 尾田済太郎
急性膵炎 尾田済太郎
小児 野澤久美子
授乳婦 野澤久美子
妊娠あるいは妊娠の可能性がある女性 野澤久美子
βブロッカー服用患者 齊藤英正,ほか
重症甲状腺機能亢進 白井清香,ほか
重症筋無力症 藤綱隆太朗,ほか
多発性骨髄腫 松本大河,ほか
カテコラミン産生腫瘍(褐色細胞腫,傍神経節腫) 林 暢彦,ほか
Ⅶ CTにおける造影剤投与の実際
CTにおける造影剤投与の実際 尾田済太郎
Ⅷ CT用造影剤の今後
photon counting detector CTにおける造影剤投与と新たな造影剤開発の可能性 粟井和夫,ほか
造影剤投与における人工知能の応用 中浦 猛
造影剤の安全管理システム(CEエビデンスシステム) 西丸英治
ヨード造影剤を取り巻く課題─産業におけるヨードの不足問題・造影剤の薬価・大容量ボトル造影剤(+multidose injector)の開発 杉原 博,ほか
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今からここがCT造影の標準点
新しい撮像機器や薬剤の登場で複雑化が進む造影検査を標準化し,最新のエビデンスに則ったプロトコールとともに標準的な造影剤の手技・副作用を解説する教科書が登場!
造影剤の目的や歴史,物理科学的な特性,ジェネリック造影剤,今後の発展など基礎から徹底的に解説。臨床編では体内動態に始まり,造影CTを行う者が認識を共有しておくべきプロトコールについて疾患・病態別に解説。さらにCT用造影剤の最も大きな懸念点である副作用についても詳述し,ショック時の対策にも触れる。
造影剤投与時に注意が必要な病態も紹介しており,安全・安心のうえで現在最も標準的な造影剤の取り扱いを学ぶことができる,造影検査の標準化・適正化を担う一冊。