基礎からわかる! 実践できる!
造影検査学
[Web動画付]
定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
- B5判 252ページ オールカラー,イラスト20点,写真1000点
- 2022年12月29日刊行
- ISBN978-4-7583-2074-0
電子版
序文
監修の序
放射線医学の歴史は,1895年,レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)のX線発見に端を発したことは言うまでもないが,血管や消化管をX線で描出する試みはX線発見直後から始まった※。そして現在に至るまで様々な造影検査の開発が絶え間なく続き,時の試練に耐えて生き残った検査が活用されていることは,先人の不断の努力によるものに他ならない。
一方で,対象となる臓器,使用する装置や造影剤が多彩であるため,造影検査の全体像につき理解することは専門分化の進んだ現在において,診療放射線技師のみならず,放射線診断専門医にとっても非常に困難である。一般に,個々の検査を安全かつ効果的に実践するためには一定の期間にわたる修練や臨床経験を要す。したがって,多忙な日常業務の中で,広範な領域に及ぶ経験の蓄積はおろか,知識のアップデートも容易ではない。
本書は,北海道大学大学院保健科学研究院の杉森博行先生が,長年にわたる,北海道大学病院での画像検査の実践で培った経験と知識に,最新の情報を盛り込んで作成した渾身の教科書である。診療放射線技師を志す学生の理解が進むように,装置や造影剤の解説はもとより,臓器の解剖や生理,疾患の概要,検査の目的,安全上の注意点,更には,検査のコツや画像所見の診かたに至るまで詳細に記載されている。とりわけ,本書の特徴は手製のカラーCGや高品質の医用画像を用いた懇切丁寧な解説にあるといえる。
さらに,本書では,2024年4月からの医師の時間外労働規制に伴う,関連業種への業務移行を踏まえ,どこまでが診療放射線技師の業務であるかについても言及がある。この教科書は診療放射線技師を目指す初学者のみならず,全ての放射線業務従事者にとって有用と考えられる。
本書が造影検査におけるスタンダードな実践の書として多くの方々に愛されることを衷心より祈念申し上げる。
2022年12月
北海道大学 大学院保健科学研究院 医用生体理工学分野
神島 保
※ 慶應義塾大学医学部放射線科学教室ホームページ:放射線医学の歴史 history of Radiology(http://www.radiology-history.online/index.html)2022年11月22日閲覧
-----------------------------
序
本書「基礎からわかる!実践できる!造影検査学」は,診療放射線技師が扱う造影剤を使用するすべてのモダリティの検査について,検査目的・検査概要・検査手順・撮影手順・臨床画像を解説した書籍である。診療放射線技師法等の一部改正・診療放射線技師法施行規則等の一部改正により診療放射線技師の業務範囲は近年拡大しており,造影剤を使用した検査のために,静脈路を確保する行為,造影剤注入装置への造影剤接続,抜針および止血を行う行為が,養成学校・大学では2022年度入学生から,それ以前の入学者や既に診療放射線技師免許を受けた者は,新たな業務範囲に追加された行為を行おうとするときは,あらかじめ厚生労働大臣が指定する研修(公益財団法人日本診療放射線技師会が実施する研修)を受けなければならないとされている。多くの造影検査において,診療放射線技師単独で業務を施行できるようになったものの,安全でより良い検査を施行する点で,それぞれの検査では依然,医師・看護師ならびに他の医療職種者との連携は必須である。
各モダリティで撮影技術は大きく異なるため,検査概要を知った上で検査方法や手順を把握し,そこから得られる臨床画像をあらかじめ確認することが重要である。また,造影剤についてもモダリティの造影原理における違い,製剤の用法用量や禁忌項目など撮影技術のみならず適切な使用方法と最適な投与条件や撮影条件など,造影検査は複雑な要素が合わさっており,撮影範囲や撮影プロトコルの選択以外にも考慮しなければならないことがたくさんある。本書は一連の検査実施に必要なポイントについてまとめ,診療放射線技師を目指す学生に対しては,臨床実習前に造影検査について概要が把握できるように工夫した。既に従事している診療放射線技師にとっても,部局内のローテーションなどで長く検査を離れた場合でも実際の流れを確認できる構成とした。
検査を施行するにあたっては各モダリティで多くのパラメータの調整が必要であり,それに基づく原理の理解など様々なことを考慮しながら検査を行わなければならない。本書においては造影検査の流れの中で必要な要点を記載しているため,詳細な原理等については成書をご参照いただきたい。また,造影検査は施設による取り決めや医師の意向等で様々な撮影方法やプロトコルが存在し,学会・研究会等でも特定病変を描出する方法が考案されているが,全ては基本的な検査手順から発展させたものであり,大切なのは目的とする解剖や病変がしっかり描出されているか,検査の再現性があるかである。本書の作成にあたり,監修者として全般にわたってご指導いただいた神島 保先生,臨床現場での撮像法の実際についてアドバイスをいただいた北海道大学病院 医療技術部 放射線部門のみなさま,静脈路確保・止血についてのアドバイスをいただいた北海道大学大学院保健科学研究院 基盤看護学分野佐藤三穂准教授・大橋和貴助教に心より感謝申し上げます。
最後に本書の刊行にあたり,「フルカラーCGで学ぶX線撮影のポジショニングとテクニック」企画時から適切なアドバイスをいただき,編集に当たりご尽力頂いたメジカルビュー社 伊藤 彩氏,原稿執筆後半に私の不甲斐ない進捗にもかかわらず温かくサポートいただいたメジカルビュー社 高岡隼人氏に心より感謝申し上げます。
2022年11月
北海道大学大学院保健科学研究院 医用生体理工学分野
杉森博行
放射線医学の歴史は,1895年,レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)のX線発見に端を発したことは言うまでもないが,血管や消化管をX線で描出する試みはX線発見直後から始まった※。そして現在に至るまで様々な造影検査の開発が絶え間なく続き,時の試練に耐えて生き残った検査が活用されていることは,先人の不断の努力によるものに他ならない。
一方で,対象となる臓器,使用する装置や造影剤が多彩であるため,造影検査の全体像につき理解することは専門分化の進んだ現在において,診療放射線技師のみならず,放射線診断専門医にとっても非常に困難である。一般に,個々の検査を安全かつ効果的に実践するためには一定の期間にわたる修練や臨床経験を要す。したがって,多忙な日常業務の中で,広範な領域に及ぶ経験の蓄積はおろか,知識のアップデートも容易ではない。
本書は,北海道大学大学院保健科学研究院の杉森博行先生が,長年にわたる,北海道大学病院での画像検査の実践で培った経験と知識に,最新の情報を盛り込んで作成した渾身の教科書である。診療放射線技師を志す学生の理解が進むように,装置や造影剤の解説はもとより,臓器の解剖や生理,疾患の概要,検査の目的,安全上の注意点,更には,検査のコツや画像所見の診かたに至るまで詳細に記載されている。とりわけ,本書の特徴は手製のカラーCGや高品質の医用画像を用いた懇切丁寧な解説にあるといえる。
さらに,本書では,2024年4月からの医師の時間外労働規制に伴う,関連業種への業務移行を踏まえ,どこまでが診療放射線技師の業務であるかについても言及がある。この教科書は診療放射線技師を目指す初学者のみならず,全ての放射線業務従事者にとって有用と考えられる。
本書が造影検査におけるスタンダードな実践の書として多くの方々に愛されることを衷心より祈念申し上げる。
2022年12月
北海道大学 大学院保健科学研究院 医用生体理工学分野
神島 保
※ 慶應義塾大学医学部放射線科学教室ホームページ:放射線医学の歴史 history of Radiology(http://www.radiology-history.online/index.html)2022年11月22日閲覧
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序
本書「基礎からわかる!実践できる!造影検査学」は,診療放射線技師が扱う造影剤を使用するすべてのモダリティの検査について,検査目的・検査概要・検査手順・撮影手順・臨床画像を解説した書籍である。診療放射線技師法等の一部改正・診療放射線技師法施行規則等の一部改正により診療放射線技師の業務範囲は近年拡大しており,造影剤を使用した検査のために,静脈路を確保する行為,造影剤注入装置への造影剤接続,抜針および止血を行う行為が,養成学校・大学では2022年度入学生から,それ以前の入学者や既に診療放射線技師免許を受けた者は,新たな業務範囲に追加された行為を行おうとするときは,あらかじめ厚生労働大臣が指定する研修(公益財団法人日本診療放射線技師会が実施する研修)を受けなければならないとされている。多くの造影検査において,診療放射線技師単独で業務を施行できるようになったものの,安全でより良い検査を施行する点で,それぞれの検査では依然,医師・看護師ならびに他の医療職種者との連携は必須である。
各モダリティで撮影技術は大きく異なるため,検査概要を知った上で検査方法や手順を把握し,そこから得られる臨床画像をあらかじめ確認することが重要である。また,造影剤についてもモダリティの造影原理における違い,製剤の用法用量や禁忌項目など撮影技術のみならず適切な使用方法と最適な投与条件や撮影条件など,造影検査は複雑な要素が合わさっており,撮影範囲や撮影プロトコルの選択以外にも考慮しなければならないことがたくさんある。本書は一連の検査実施に必要なポイントについてまとめ,診療放射線技師を目指す学生に対しては,臨床実習前に造影検査について概要が把握できるように工夫した。既に従事している診療放射線技師にとっても,部局内のローテーションなどで長く検査を離れた場合でも実際の流れを確認できる構成とした。
検査を施行するにあたっては各モダリティで多くのパラメータの調整が必要であり,それに基づく原理の理解など様々なことを考慮しながら検査を行わなければならない。本書においては造影検査の流れの中で必要な要点を記載しているため,詳細な原理等については成書をご参照いただきたい。また,造影検査は施設による取り決めや医師の意向等で様々な撮影方法やプロトコルが存在し,学会・研究会等でも特定病変を描出する方法が考案されているが,全ては基本的な検査手順から発展させたものであり,大切なのは目的とする解剖や病変がしっかり描出されているか,検査の再現性があるかである。本書の作成にあたり,監修者として全般にわたってご指導いただいた神島 保先生,臨床現場での撮像法の実際についてアドバイスをいただいた北海道大学病院 医療技術部 放射線部門のみなさま,静脈路確保・止血についてのアドバイスをいただいた北海道大学大学院保健科学研究院 基盤看護学分野佐藤三穂准教授・大橋和貴助教に心より感謝申し上げます。
最後に本書の刊行にあたり,「フルカラーCGで学ぶX線撮影のポジショニングとテクニック」企画時から適切なアドバイスをいただき,編集に当たりご尽力頂いたメジカルビュー社 伊藤 彩氏,原稿執筆後半に私の不甲斐ない進捗にもかかわらず温かくサポートいただいたメジカルビュー社 高岡隼人氏に心より感謝申し上げます。
2022年11月
北海道大学大学院保健科学研究院 医用生体理工学分野
杉森博行
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目次
第1章 造影検査概論
1 造影検査と造影剤
2 造影剤投与
3 造影検査の進行例
4 静脈路の確保と安全
5 造影剤の副作用と安全
第2章 X線造影検査
①検査の概要
1 造影剤の投与方法と検査機器
②消化管造影検査法
1 食道造影
2 胃造影
3 胆管膵管造影
1.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
2.経皮経肝胆道造影(PTC)
3.点滴静注胆嚢胆管造影(DIC)
4 小腸造影
5 大腸造影
③尿路造影法
1 尿路造影
1.排泄性尿路造影(IVP・DIP)
2.逆行性腎盂造影(RP)
3.経皮的順行性腎盂造影(PAP)
4.膀胱造影(CG)
5.排尿時膀胱造影(VCG・VCUG)
6.尿道造影(UG/UCG・RUG)
④その他の造影法
1 子宮卵管造影
2 ミエログラフィ
3 アルトログラフィ
4 唾液腺造影
第3章 血管造影検査
①検査の概要
1 造影剤の投与方法と検査器具
2 撮影方法の基本
1.デジタル差分血管造影撮影法(DSA)
2.IVR
②各検査部位の造影方法
1 頭部
2 胸部
3 腹部
1.肝血管造影(TACE・CHTA CTAP)
2.IVCフィルター留置
3.子宮動脈塞栓術(UAE)
4.経皮的腎動脈形成術(PTRA)
5.経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE)
4 四肢
第4章 CT造影検査
①検査の概要
1 造影剤の種類と用法
2 投与方法と撮影方法の基本
②各検査部位の造影方法
1 頭頸部
2 胸部
1.大血管(大動脈瘤 大動脈解離)
2.心臓・冠動脈
3.胸郭出口症候群
4.肺腫瘤
3 腹部
1.肝臓
2.膵臓
3.腎臓
4.アダムキュービッツ動脈
4 四肢
1.下肢閉塞性動脈疾患
2.深部静脈血栓症・肺塞栓症
5 救急検査
1.外傷
2.くも膜下出血(SAH)
第5章 MRI造影検査
①検査の概要
1 造影剤の種類と用法
2 投与方法と撮影方法の基本
②各検査部位の造影方法
1 脳・頭頸部
1.頭蓋内画像検査
2.頭頸部画像検査
2 胸部
1.心臓MRI検査
2.乳房MRI検査
3.胸部MRA検査
4.胸部MRI検査
3 腹部
1.肝臓MRI検査
2.MR胆管膵管撮影(MRCP)検査
3.骨盤部MRI検査
4 四肢
1.四肢MRI検査
2.下肢造影MRA検査
第6章 超音波造影検査
①検査の概要
1 投与方法と撮影方法の基本
②造影方法
1 肝腫瘤性病変
2 乳房腫瘤性病変
1 造影検査と造影剤
2 造影剤投与
3 造影検査の進行例
4 静脈路の確保と安全
5 造影剤の副作用と安全
第2章 X線造影検査
①検査の概要
1 造影剤の投与方法と検査機器
②消化管造影検査法
1 食道造影
2 胃造影
3 胆管膵管造影
1.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
2.経皮経肝胆道造影(PTC)
3.点滴静注胆嚢胆管造影(DIC)
4 小腸造影
5 大腸造影
③尿路造影法
1 尿路造影
1.排泄性尿路造影(IVP・DIP)
2.逆行性腎盂造影(RP)
3.経皮的順行性腎盂造影(PAP)
4.膀胱造影(CG)
5.排尿時膀胱造影(VCG・VCUG)
6.尿道造影(UG/UCG・RUG)
④その他の造影法
1 子宮卵管造影
2 ミエログラフィ
3 アルトログラフィ
4 唾液腺造影
第3章 血管造影検査
①検査の概要
1 造影剤の投与方法と検査器具
2 撮影方法の基本
1.デジタル差分血管造影撮影法(DSA)
2.IVR
②各検査部位の造影方法
1 頭部
2 胸部
3 腹部
1.肝血管造影(TACE・CHTA CTAP)
2.IVCフィルター留置
3.子宮動脈塞栓術(UAE)
4.経皮的腎動脈形成術(PTRA)
5.経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE)
4 四肢
第4章 CT造影検査
①検査の概要
1 造影剤の種類と用法
2 投与方法と撮影方法の基本
②各検査部位の造影方法
1 頭頸部
2 胸部
1.大血管(大動脈瘤 大動脈解離)
2.心臓・冠動脈
3.胸郭出口症候群
4.肺腫瘤
3 腹部
1.肝臓
2.膵臓
3.腎臓
4.アダムキュービッツ動脈
4 四肢
1.下肢閉塞性動脈疾患
2.深部静脈血栓症・肺塞栓症
5 救急検査
1.外傷
2.くも膜下出血(SAH)
第5章 MRI造影検査
①検査の概要
1 造影剤の種類と用法
2 投与方法と撮影方法の基本
②各検査部位の造影方法
1 脳・頭頸部
1.頭蓋内画像検査
2.頭頸部画像検査
2 胸部
1.心臓MRI検査
2.乳房MRI検査
3.胸部MRA検査
4.胸部MRI検査
3 腹部
1.肝臓MRI検査
2.MR胆管膵管撮影(MRCP)検査
3.骨盤部MRI検査
4 四肢
1.四肢MRI検査
2.下肢造影MRA検査
第6章 超音波造影検査
①検査の概要
1 投与方法と撮影方法の基本
②造影方法
1 肝腫瘤性病変
2 乳房腫瘤性病変
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