急性期・回復期でおさえておきたい
脳卒中作業療法の心得
定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
- B5判 284ページ 2色,イラスト100点,写真150点
- 2023年10月1日刊行
- ISBN978-4-7583-2092-4
電子版
序文
編集の序
わが国で作業療法士が活躍する場は年々拡大している。主な活躍の場となるのは医療機関であり,そのなかでも脳卒中後のリハビリテーションにかかわる急性期病院および回復期リハビリテーション病棟を有する病院に勤める作業療法士は多い。これらの病院は,対象者が疾患を発症した後,その疾患と疾患に由来した障害により以前とは異なる身体で今後の新たな人生を生きていく際に,「扉」という位置付けになる。つまり,対象者の多様な人生,そしてそれらを実現していくための目標・ニーズに対し,作業療法士が適切かつ十分に対応することで,その「扉」を開く支援が求められる。
さて,回復期リハビリテーション病棟が立ち上げられてから20年以上の年月が経ち,作業療法士の取り組みが成熟してきたことで,立ち位置も大きく変化している。対象者の多様なニーズに対応すべく,多くの役割を担うことが作業療法士に求められている。例えば,入院中や入院後の対象者が安全に生活できるためのリスク管理・指導,チーム医療を進めるための管理・運営,上肢機能障害や日常生活活動障害への対応,病態を悪化させないためのポジショニング・シーティング,高次脳機能障害に対するかかわり,脳血管性認知症・脳卒中後うつへの対応,栄養支援,自動車運転支援,就労支援,退院後準備支援など,その専門性が発揮される場面は多岐にわたる。
一方,卒前教育などを鑑みると,指定規則などの教育フレームは徐々に修正されつつあるものの,社会から求められる作業療法士の役割を修得するための場は,作業療法士各自の自己研鑽や各職場の卒後研修に依存するところとなっている。このような背景のもと,急性期病院および回復期リハビリテーション病棟を有する病院に在籍する作業療法士や卒後在籍したいと考える作業療法士養成校の学生のために,今の時代に最低限必要な作業療法に関する知識や技術をまとめる必要性を感じた。
本書では,脳卒中罹患後の急性期および回復期において,作業療法士が携わる機会の多い14 テーマを取り上げた。各分野に精通し専門的に従事している作業療法士に執筆をお願いし,理論・知識・実際を集約した。本書が各分野への学びの「扉」となり,対象者中心の作業療法を展開するためのより深い学びにつながることを期待している。
2023年8月
竹林 崇
わが国で作業療法士が活躍する場は年々拡大している。主な活躍の場となるのは医療機関であり,そのなかでも脳卒中後のリハビリテーションにかかわる急性期病院および回復期リハビリテーション病棟を有する病院に勤める作業療法士は多い。これらの病院は,対象者が疾患を発症した後,その疾患と疾患に由来した障害により以前とは異なる身体で今後の新たな人生を生きていく際に,「扉」という位置付けになる。つまり,対象者の多様な人生,そしてそれらを実現していくための目標・ニーズに対し,作業療法士が適切かつ十分に対応することで,その「扉」を開く支援が求められる。
さて,回復期リハビリテーション病棟が立ち上げられてから20年以上の年月が経ち,作業療法士の取り組みが成熟してきたことで,立ち位置も大きく変化している。対象者の多様なニーズに対応すべく,多くの役割を担うことが作業療法士に求められている。例えば,入院中や入院後の対象者が安全に生活できるためのリスク管理・指導,チーム医療を進めるための管理・運営,上肢機能障害や日常生活活動障害への対応,病態を悪化させないためのポジショニング・シーティング,高次脳機能障害に対するかかわり,脳血管性認知症・脳卒中後うつへの対応,栄養支援,自動車運転支援,就労支援,退院後準備支援など,その専門性が発揮される場面は多岐にわたる。
一方,卒前教育などを鑑みると,指定規則などの教育フレームは徐々に修正されつつあるものの,社会から求められる作業療法士の役割を修得するための場は,作業療法士各自の自己研鑽や各職場の卒後研修に依存するところとなっている。このような背景のもと,急性期病院および回復期リハビリテーション病棟を有する病院に在籍する作業療法士や卒後在籍したいと考える作業療法士養成校の学生のために,今の時代に最低限必要な作業療法に関する知識や技術をまとめる必要性を感じた。
本書では,脳卒中罹患後の急性期および回復期において,作業療法士が携わる機会の多い14 テーマを取り上げた。各分野に精通し専門的に従事している作業療法士に執筆をお願いし,理論・知識・実際を集約した。本書が各分野への学びの「扉」となり,対象者中心の作業療法を展開するためのより深い学びにつながることを期待している。
2023年8月
竹林 崇
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目次
第 I 章 急性期・回復期脳卒中患者に対する作業療法の歴史と役割
急性期と回復期における作業療法士の動向と役割 [竹林 崇]
急性期と回復期における作業療法士の役割とは
急性期病院における作業療法士の働き方と役割
回復期病棟における作業療法士の働き方と役割
第 II 章 脳卒中後の作業療法でおさえておきたい14テーマ
その1 急性期における作業療法 [髙橋佑弥]
急性期病院と作業療法
脳卒中急性期リハ
脳卒中急性期リハにおける目標設定とOTの役割
急性期における脳卒中後の転帰
事例
その2 回復期の作業療法を円滑に進めるための管理運営 [村山幸照・小林勇矢]
回復期で把握しておくべき関連法規
効果的介入を実現するための運用上の工夫
回復期における作業療法の役割
その3 回復期の作業療法における目標設定 [山口理恵]
目標設定の総論
目標設定のツールと評価指標
事例
その4 回復期におけるADL・IADL に対するアプローチ [平田篤志]
ADL・IADL 総論
ADL・IADL の評価
ADL 評価とアプローチの実際
IADL 評価とアプローチの実際
事例
その5 回復期における脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチ [竹林 崇・梶本千愛]
エビデンスと最新の研究動向
脳卒中後の上肢麻痺に対する評価指標
回復期に用いることが可能な上肢機能アプローチ
事例
その6 回復期における脳卒中患者に対する上肢装具およびポジショニング [庵本直矢]
上肢装具とスプリントの区分,使用目的
上肢装具とスプリント療法のエビデンス
ポジショニングの目的とOTの役割
事例
その7 回復期における脳卒中患者に対するシーティング [串田英之]
脳卒中患者が座れなくなる理由
脳卒中の運動麻痺の特徴と理解
個別機能訓練外の座位・臥位の姿勢管理
シーティングプロセス
事例
シーティング効果を測る方法
まとめ
その8 回復期における脳卒中後の高次脳機能障害に対するアプローチ [花田恵介]
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害の分類
高次脳機能障害に対するアプローチの実際
その9 回復期における血管性認知症およびその他の認知症に対するアプローチ [山口智晴]
認知症の定義ととらえ方,エビデンス
血管性認知症
認知症の評価
認知症へのアプローチ
その10 回復期における脳卒中後の抑うつ・アパシーに対するアプローチ [新宮尚人・杉山善彦]
エビデンスと最新の研究動向
脳卒中後の抑うつ・アパシーに対する代表的な評価指標
回復期に用いることが可能な脳卒中後の抑うつ・アパシーへのアプローチ
患者へのアプローチ
その11 回復期における脳卒中患者へのリハ栄養支援 [成田雄一]
栄養管理の現状
栄養評価
リハ栄養の定義とケアプロセス
事例
おわりに
その12 回復期における脳卒中患者に対する自動車運転支援 [加藤貴志・飯倉萌絵]
回復期における自動車運転支援の流れ
おさえておきたい道路交通法のポイント
自動車運転関連評価
検査による評価
DSによる評価
実車評価
安全性向上に向けた取り組み
事例
その13 回復期における脳卒中患者に対する就労支援 [野々垣睦美]
就労支援とは
就労支援の流れ
就労アセスメント
支援の方法
就労支援にかかわる制度・社会保障制度
事例
その14 回復期における脳卒中患者に対する退院準備支援 [生田純一]
回復期リハにおける退院準備支援
退院支援に際して必要な評価
回復期リハで行う退院準備支援
使用できる関連制度
事例
急性期と回復期における作業療法士の動向と役割 [竹林 崇]
急性期と回復期における作業療法士の役割とは
急性期病院における作業療法士の働き方と役割
回復期病棟における作業療法士の働き方と役割
第 II 章 脳卒中後の作業療法でおさえておきたい14テーマ
その1 急性期における作業療法 [髙橋佑弥]
急性期病院と作業療法
脳卒中急性期リハ
脳卒中急性期リハにおける目標設定とOTの役割
急性期における脳卒中後の転帰
事例
その2 回復期の作業療法を円滑に進めるための管理運営 [村山幸照・小林勇矢]
回復期で把握しておくべき関連法規
効果的介入を実現するための運用上の工夫
回復期における作業療法の役割
その3 回復期の作業療法における目標設定 [山口理恵]
目標設定の総論
目標設定のツールと評価指標
事例
その4 回復期におけるADL・IADL に対するアプローチ [平田篤志]
ADL・IADL 総論
ADL・IADL の評価
ADL 評価とアプローチの実際
IADL 評価とアプローチの実際
事例
その5 回復期における脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチ [竹林 崇・梶本千愛]
エビデンスと最新の研究動向
脳卒中後の上肢麻痺に対する評価指標
回復期に用いることが可能な上肢機能アプローチ
事例
その6 回復期における脳卒中患者に対する上肢装具およびポジショニング [庵本直矢]
上肢装具とスプリントの区分,使用目的
上肢装具とスプリント療法のエビデンス
ポジショニングの目的とOTの役割
事例
その7 回復期における脳卒中患者に対するシーティング [串田英之]
脳卒中患者が座れなくなる理由
脳卒中の運動麻痺の特徴と理解
個別機能訓練外の座位・臥位の姿勢管理
シーティングプロセス
事例
シーティング効果を測る方法
まとめ
その8 回復期における脳卒中後の高次脳機能障害に対するアプローチ [花田恵介]
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害の分類
高次脳機能障害に対するアプローチの実際
その9 回復期における血管性認知症およびその他の認知症に対するアプローチ [山口智晴]
認知症の定義ととらえ方,エビデンス
血管性認知症
認知症の評価
認知症へのアプローチ
その10 回復期における脳卒中後の抑うつ・アパシーに対するアプローチ [新宮尚人・杉山善彦]
エビデンスと最新の研究動向
脳卒中後の抑うつ・アパシーに対する代表的な評価指標
回復期に用いることが可能な脳卒中後の抑うつ・アパシーへのアプローチ
患者へのアプローチ
その11 回復期における脳卒中患者へのリハ栄養支援 [成田雄一]
栄養管理の現状
栄養評価
リハ栄養の定義とケアプロセス
事例
おわりに
その12 回復期における脳卒中患者に対する自動車運転支援 [加藤貴志・飯倉萌絵]
回復期における自動車運転支援の流れ
おさえておきたい道路交通法のポイント
自動車運転関連評価
検査による評価
DSによる評価
実車評価
安全性向上に向けた取り組み
事例
その13 回復期における脳卒中患者に対する就労支援 [野々垣睦美]
就労支援とは
就労支援の流れ
就労アセスメント
支援の方法
就労支援にかかわる制度・社会保障制度
事例
その14 回復期における脳卒中患者に対する退院準備支援 [生田純一]
回復期リハにおける退院準備支援
退院支援に際して必要な評価
回復期リハで行う退院準備支援
使用できる関連制度
事例
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新人作業療法士および養成校の学生向けに,脳卒中作業療法の実践に重要な14テーマを取り上げ,エビデンスに基づいて体系的に解説。近年拡大している作業療法士に求められるスキルに対応して,急性期でのアプローチから回復期における上肢機能やADL・IADLなどへのアプローチ,自動車運転・就労・退院支援までを幅広く盛り込み,最前線の理論・知識と具体的な臨床への活かし方を解説する。脳卒中作業療法のスタンダードを示し,臨床力の基盤を築く一助となる1冊。