適切な判断を導くための
整形外科徒手検査法
エビデンスに基づく評価精度と検査のポイント
定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
- B5判 312ページ 2色,イラスト140点,写真500点
- 2020年9月3日刊行
- ISBN978-4-7583-2030-6
電子版
序文
編集の序
この序文を執筆している2020年7月は,COVID-19のニュースで世の中は持ち切りである。一体,いつ収束するのか? そんな疑問を抱えながら,世界中の人が不安のなかで生活している。COVID-19の影響で急速にオンライン化が進み,自宅にいながらさまざまな講義を受けることが可能となった。私の所属する大学も例に漏れずオンライン化が導入され,ときにはパソコンの画面に独り言のように話しかけ,どこか寂しい気持ちに苛まれながら授業を実施している。
さて,そんなオンライン化の波で私自身も多数の講義を受けた。大変便利であり,講師の顔も見ながら聞けるため,理解もしやすい。しかし,やはりじっくりと学習するためには,本を読むことが1番であることにも気づかされた。自分のペースで繰り返し読めるメリットは非常に大きい。読者の方々にはぜひ,本書を用いてじっくりと学習していただきたい。
本書では,臨床場面で使用することが多い整形外科徒手検査法を取り上げた。わが国ですでに刊行されているこれらを取り上げた成書には,出版から年数の経っているものが多く,エビデンスまで含めて簡潔にまとまったものはないのが現状である。そこで本書は,各部位ごとに代表的な整形外科徒手検査を,現時点で知り得るエビデンスを整理して解説した。また,主訴からどの整形外科徒手検査を選択すればよいか,さらに各検査に関連した検査についても記載しているため,実際に検査を行う際の一助となると考える。各検査の最後には,各執筆者の経験も踏まえ,検査に関連して覚えておくべき知識なども記載されている。
整形外科徒手検査によって診断ができるのは医師のみである。その他の職種にとっては,あくまで患者の状態を把握するため,また症状の原因を推測するために利用される。原因を推測していくためには,検査を正しく実施できる必要がある。そのため本書には,各検査を実施するうえでのポイントやよくあるミスなども記載している。さらに図をできる限り多く用い,検査の開始肢位と終了肢位について,全体が写るものと,重要部分を拡大したものを掲載した。ここにも力の加え方や注意点などを記載しており,視覚的にわかりやすいよう配慮した。従って,本書をじっくりと読んでいただければ,検査を正しく,そして安全に実施できると考える。
最後に,本書には現時点で知り得るエビデンスを整理して掲載しているため,執筆には多大な労力を要していただいた。また,視覚的にイメージしやすい図を作成するために,写真撮影にも工夫が凝らされている。ご執筆いただいた先生方にはコンセプトをご理解いただき,快く引き受けていただいたことを感謝申し上げます。また,突然の発案に対応とサポートをいただいた髙橋祐太朗氏,小松朋寛氏に,この場を借りて厚く御礼申し上げます。
本書が,読者の方々の日々の臨床に役立ち,患者の笑顔につながることを心より願います。
2020年7月
松村将司,三木貴弘
この序文を執筆している2020年7月は,COVID-19のニュースで世の中は持ち切りである。一体,いつ収束するのか? そんな疑問を抱えながら,世界中の人が不安のなかで生活している。COVID-19の影響で急速にオンライン化が進み,自宅にいながらさまざまな講義を受けることが可能となった。私の所属する大学も例に漏れずオンライン化が導入され,ときにはパソコンの画面に独り言のように話しかけ,どこか寂しい気持ちに苛まれながら授業を実施している。
さて,そんなオンライン化の波で私自身も多数の講義を受けた。大変便利であり,講師の顔も見ながら聞けるため,理解もしやすい。しかし,やはりじっくりと学習するためには,本を読むことが1番であることにも気づかされた。自分のペースで繰り返し読めるメリットは非常に大きい。読者の方々にはぜひ,本書を用いてじっくりと学習していただきたい。
本書では,臨床場面で使用することが多い整形外科徒手検査法を取り上げた。わが国ですでに刊行されているこれらを取り上げた成書には,出版から年数の経っているものが多く,エビデンスまで含めて簡潔にまとまったものはないのが現状である。そこで本書は,各部位ごとに代表的な整形外科徒手検査を,現時点で知り得るエビデンスを整理して解説した。また,主訴からどの整形外科徒手検査を選択すればよいか,さらに各検査に関連した検査についても記載しているため,実際に検査を行う際の一助となると考える。各検査の最後には,各執筆者の経験も踏まえ,検査に関連して覚えておくべき知識なども記載されている。
整形外科徒手検査によって診断ができるのは医師のみである。その他の職種にとっては,あくまで患者の状態を把握するため,また症状の原因を推測するために利用される。原因を推測していくためには,検査を正しく実施できる必要がある。そのため本書には,各検査を実施するうえでのポイントやよくあるミスなども記載している。さらに図をできる限り多く用い,検査の開始肢位と終了肢位について,全体が写るものと,重要部分を拡大したものを掲載した。ここにも力の加え方や注意点などを記載しており,視覚的にわかりやすいよう配慮した。従って,本書をじっくりと読んでいただければ,検査を正しく,そして安全に実施できると考える。
最後に,本書には現時点で知り得るエビデンスを整理して掲載しているため,執筆には多大な労力を要していただいた。また,視覚的にイメージしやすい図を作成するために,写真撮影にも工夫が凝らされている。ご執筆いただいた先生方にはコンセプトをご理解いただき,快く引き受けていただいたことを感謝申し上げます。また,突然の発案に対応とサポートをいただいた髙橋祐太朗氏,小松朋寛氏に,この場を借りて厚く御礼申し上げます。
本書が,読者の方々の日々の臨床に役立ち,患者の笑顔につながることを心より願います。
2020年7月
松村将司,三木貴弘
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目次
1章 総論 松村将司
① 整形外科徒手検査の意義
② 感度,特異度,陽性・陰性的中率,検査前・検査後確率,尤度比とは
③ 整形外科徒手検査を行う際の注意事項
2章 足関節 越野裕太
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② anterior drawer test(足関節前方引き出しテスト)
③ inversion stress test(内がえしストレステスト)
④ squeeze test(スクイーズテスト)
⑤ Thompson test(トンプソンテスト)
⑥ windlass test(ウィンドラステスト)
3章 膝関節
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート 松村将司
② patella apprehension test(膝蓋骨アプリヘンションテスト) 栗原 靖
③ Lachman's test(ラックマンテスト) 松村将司・栗原 靖
④ posterior drawer test(後方引き出しテスト) 栗原 靖
⑤ valgus stress test(外反ストレステスト) 栗原 靖
⑥ varus stress test(内反ストレステスト) 栗原 靖
⑦ Apley compression test(アプレイコンプレッションテスト) 栗原 靖
⑧ wipe test(ワイプテスト) 栗原 靖
4章 股関節 青山倫久
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Thomas test(トーマステスト)
③ Ely test(エリーテスト)
④ Patrick test(パトリックテスト)
⑤ flexion adduction internal rotation test(FAIR テスト)
5章 骨盤 半田 瞳
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② distraction test(離開テスト)
③ posterior shear test(大腿スラストテスト)
④ compression test(圧迫テスト)
⑤ pelvictortion test/Gaenslen's test(骨盤捻転テスト)
⑥ sacral thrust test(仙骨スラストテスト)
⑦ active straight leg raising(ASLR) test(自動下肢伸展挙上テスト)
6章 肩関節 坂 雅之
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Speed’s test(スピードテスト)
③ Yergason’s test(ヤーガソンテスト)
④ drop arm test(ドロップアームテスト)
⑤ lift off test(リフトオフテスト)
⑥ empty can test/Jobe's test(エンプティカンテスト)
⑦ apprehension's test(前方不安定性テスト)
⑧ jerk test/Kim test(後方不安定性テスト)
⑨ Sulcus sign(サルカスサイン)
⑩ Hawkins test(ホーキンステスト)
⑪ Neer test(ニアーテスト)
⑫ Hornblower's sign(ホーンブローサイン)
7章 肘関節 坂 雅之
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② テニス肘テスト(抵抗下手関節背屈テスト/Cozen's test/Thomsen test)
③ ゴルフ肘テスト(抵抗下掌屈テスト/抵抗下回内テスト)
④ 尺骨神経に対するTinel's sign(ティネル徴候)
8章 前腕/手関節 諸澄孝宜
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Finkelstein test(フィンケルシュタインテスト)
③ grind test,axial compression-rotation test(グラインドテスト)
④ ulnocarpal stress test(尺骨頭ストレステスト)
⑤ carpal supination test(手根回外テスト)
⑥ Phalen test(ファレンテスト)
⑦ Froment's test(フローマンテスト)
9章 腰椎
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート 三木貴弘・渡邊勇太
② Kemp test(ケンプテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
③ spring test(スプリングテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
④ passive physiological intervertebral movement(PPIVM,腰椎他動運動テスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑤ prone lumber instability test(腰椎不安定テスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑥ motor control test(モーターコントロールテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑦ slump test(スランプテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑧ straight leg raising(SLR) test(他動下肢挙上テスト) 青山倫久・渡邊勇太・三木貴弘
10章 頸椎 松村将司
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Spurling's test(スパーリングテスト)
③ Wright test(ライトテスト)
④ Adson test(アドソンテスト)
⑤ Eden test(エデンテスト)/costclavicular test(コストクラビキュラテスト)
⑥ Roos test(ルーステスト)/elevates arm stress test(EAST)
⑦ upper limb neuro-dynamics test(ULNT,上肢ニューロダイナミックテスト)
⑧ sharp-purser test(シャープパーサーテスト)
⑨ cervical torsion test(サービカルトーションテスト)
11章 前庭 松村将司
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Dix-Hallpike test(ディックスホールパイクテスト)
③ supine head roll test/Pagnini-McClure roll maneuver(スーパインヘッドロールテスト)
① 整形外科徒手検査の意義
② 感度,特異度,陽性・陰性的中率,検査前・検査後確率,尤度比とは
③ 整形外科徒手検査を行う際の注意事項
2章 足関節 越野裕太
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② anterior drawer test(足関節前方引き出しテスト)
③ inversion stress test(内がえしストレステスト)
④ squeeze test(スクイーズテスト)
⑤ Thompson test(トンプソンテスト)
⑥ windlass test(ウィンドラステスト)
3章 膝関節
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート 松村将司
② patella apprehension test(膝蓋骨アプリヘンションテスト) 栗原 靖
③ Lachman's test(ラックマンテスト) 松村将司・栗原 靖
④ posterior drawer test(後方引き出しテスト) 栗原 靖
⑤ valgus stress test(外反ストレステスト) 栗原 靖
⑥ varus stress test(内反ストレステスト) 栗原 靖
⑦ Apley compression test(アプレイコンプレッションテスト) 栗原 靖
⑧ wipe test(ワイプテスト) 栗原 靖
4章 股関節 青山倫久
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Thomas test(トーマステスト)
③ Ely test(エリーテスト)
④ Patrick test(パトリックテスト)
⑤ flexion adduction internal rotation test(FAIR テスト)
5章 骨盤 半田 瞳
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② distraction test(離開テスト)
③ posterior shear test(大腿スラストテスト)
④ compression test(圧迫テスト)
⑤ pelvictortion test/Gaenslen's test(骨盤捻転テスト)
⑥ sacral thrust test(仙骨スラストテスト)
⑦ active straight leg raising(ASLR) test(自動下肢伸展挙上テスト)
6章 肩関節 坂 雅之
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Speed’s test(スピードテスト)
③ Yergason’s test(ヤーガソンテスト)
④ drop arm test(ドロップアームテスト)
⑤ lift off test(リフトオフテスト)
⑥ empty can test/Jobe's test(エンプティカンテスト)
⑦ apprehension's test(前方不安定性テスト)
⑧ jerk test/Kim test(後方不安定性テスト)
⑨ Sulcus sign(サルカスサイン)
⑩ Hawkins test(ホーキンステスト)
⑪ Neer test(ニアーテスト)
⑫ Hornblower's sign(ホーンブローサイン)
7章 肘関節 坂 雅之
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② テニス肘テスト(抵抗下手関節背屈テスト/Cozen's test/Thomsen test)
③ ゴルフ肘テスト(抵抗下掌屈テスト/抵抗下回内テスト)
④ 尺骨神経に対するTinel's sign(ティネル徴候)
8章 前腕/手関節 諸澄孝宜
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Finkelstein test(フィンケルシュタインテスト)
③ grind test,axial compression-rotation test(グラインドテスト)
④ ulnocarpal stress test(尺骨頭ストレステスト)
⑤ carpal supination test(手根回外テスト)
⑥ Phalen test(ファレンテスト)
⑦ Froment's test(フローマンテスト)
9章 腰椎
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート 三木貴弘・渡邊勇太
② Kemp test(ケンプテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
③ spring test(スプリングテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
④ passive physiological intervertebral movement(PPIVM,腰椎他動運動テスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑤ prone lumber instability test(腰椎不安定テスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑥ motor control test(モーターコントロールテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑦ slump test(スランプテスト) 三木貴弘・渡邊勇太
⑧ straight leg raising(SLR) test(他動下肢挙上テスト) 青山倫久・渡邊勇太・三木貴弘
10章 頸椎 松村将司
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Spurling's test(スパーリングテスト)
③ Wright test(ライトテスト)
④ Adson test(アドソンテスト)
⑤ Eden test(エデンテスト)/costclavicular test(コストクラビキュラテスト)
⑥ Roos test(ルーステスト)/elevates arm stress test(EAST)
⑦ upper limb neuro-dynamics test(ULNT,上肢ニューロダイナミックテスト)
⑧ sharp-purser test(シャープパーサーテスト)
⑨ cervical torsion test(サービカルトーションテスト)
11章 前庭 松村将司
① 適切な検査法を導き出すためのフローチャート
② Dix-Hallpike test(ディックスホールパイクテスト)
③ supine head roll test/Pagnini-McClure roll maneuver(スーパインヘッドロールテスト)
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臨床現場や国家試験で頻出する整形外科徒手検査法を精選し,エビデンスや解剖学,運動学等の周辺知識とともに解説
リハビリテーション現場や国家試験で頻出する整形外科徒手検査法を精選し,エビデンスや解剖学,運動学等の周辺知識とともに解説。また整形外科徒手検査は,複数の検査を組み合わせて疾患の鑑別を行うためそれぞれに関連する他の検査法も示し,さらに主訴からどの検査をどの順番で選択していくかを示すフローチャートを掲載して臨床家の思考をたどる一助としている。