臨床での測定精度を高める!
ROM測定法
代償運動のとらえ方と制動法の理解と実践
定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
- B5判 272ページ オールカラー,イラスト160点,写真870点
- 2016年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1694-1
電子版
序文
関節可動域(ROM)測定は,ヒトの身体運動を明確にとらえるために実施する評価の中で最も基本的かつ重要な項目といえる。特に運動器の問題点を明確にしていくためには不可欠である。より整合性の高い治療・援助計画の立案のためには,正確な測定結果を導き出すことが重要であるが,学生や経験の浅いセラピストにとって難しい技術である。特に測定時に出現する代償運動を観察の中から的確にとらえ,確実に制動できるようになるにはかなりの習熟を要する。
本書は学生や初学者でも十分に理解してもらえるように,測定時の代償運動を可視化し,正確な測定法を身に付けることができる内容構成とした。学習者が演習を通じて基本的な測定法を修得するとともに,代償運動の出現を明確にとらえ,例示した内容を参考に学習者自身が代償運動の制動法について考察できるようになれば,より臨床的・実践的な方法を自ら設定することが可能になると考える。
また,治療者が実施する評価において,測定結果から治療対象者の機能障害に起因する組織変化を正確に判断することも重要である。しかし,関節運動制限とその原因である変化を呈した皮下組織の照合は,解剖学を十分に学んだ者であっても難しい。運動器疾患のみならず,中枢神経疾患においても不可避的に生じる関節拘縮の原因,つまり当該関節運動を制限している因子を決定付けられず,ターゲットを絞った治療を実施できていない治療者も少なくはない。より的確な評価結果の統合と解釈および治療計画立案のために,本書では制限因子を一目で照合できるようにした。
限られた指導(授業・演習)時間の中で十分な教示が難しい代償運動については,写真で明示し,指導時間外でも学生が容易に自己学習できるように配慮した。また,測定法を「基礎演習」→「応用演習」→「臨床応用演習」と段階付けて解説していることも本書の特徴で,徐々に理解を深めながら評価技術を高めていくことを狙いとしている。図説に従った学習を通じて,「代償運動の出現」と「制動の必要性」について適切に考え,より整合性の高い評価結果を得ることにつなげていただきたいと考えている。
本書はできる限り合理的で有効な学習のために写真を豊富に掲載した。学生のみならず,これから関節可動域測定における習熟度の向上を目標としている臨床でご活躍の皆さまにも活用していただけることを願っている。
2016年2月
文京学院大学 保健医療科学研究科・保健医療技術学部
齋藤慶一郎
本書は学生や初学者でも十分に理解してもらえるように,測定時の代償運動を可視化し,正確な測定法を身に付けることができる内容構成とした。学習者が演習を通じて基本的な測定法を修得するとともに,代償運動の出現を明確にとらえ,例示した内容を参考に学習者自身が代償運動の制動法について考察できるようになれば,より臨床的・実践的な方法を自ら設定することが可能になると考える。
また,治療者が実施する評価において,測定結果から治療対象者の機能障害に起因する組織変化を正確に判断することも重要である。しかし,関節運動制限とその原因である変化を呈した皮下組織の照合は,解剖学を十分に学んだ者であっても難しい。運動器疾患のみならず,中枢神経疾患においても不可避的に生じる関節拘縮の原因,つまり当該関節運動を制限している因子を決定付けられず,ターゲットを絞った治療を実施できていない治療者も少なくはない。より的確な評価結果の統合と解釈および治療計画立案のために,本書では制限因子を一目で照合できるようにした。
限られた指導(授業・演習)時間の中で十分な教示が難しい代償運動については,写真で明示し,指導時間外でも学生が容易に自己学習できるように配慮した。また,測定法を「基礎演習」→「応用演習」→「臨床応用演習」と段階付けて解説していることも本書の特徴で,徐々に理解を深めながら評価技術を高めていくことを狙いとしている。図説に従った学習を通じて,「代償運動の出現」と「制動の必要性」について適切に考え,より整合性の高い評価結果を得ることにつなげていただきたいと考えている。
本書はできる限り合理的で有効な学習のために写真を豊富に掲載した。学生のみならず,これから関節可動域測定における習熟度の向上を目標としている臨床でご活躍の皆さまにも活用していただけることを願っている。
2016年2月
文京学院大学 保健医療科学研究科・保健医療技術学部
齋藤慶一郎
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目次
1章 総論
1 ROM 測定の基礎
2章 上肢関節に対するROM測定法
1 肩甲帯屈曲
2 肩甲帯伸展
3 肩甲帯挙上
4 肩甲帯引き下げ(下制)
5 肩関節屈曲(前方挙上)
6 肩関節伸展(後方挙上)
7 肩関節外転(側方挙上)
8 肩関節内転
9 肩関節内旋
10 肩関節外旋
11 肩関節水平屈曲
12 肩関節水平伸展
13 肘関節屈曲
14 肘関節伸展
15 前腕回内
16 前腕回外
17 手関節・母指・手指 総論
18 手関節屈曲(掌屈)
19 手関節伸展(背屈)
20 手関節橈屈
21 手関節尺屈
22 母指関節橈側外転
23 母指関節尺側内転
24 母指関節尺側内転(別法)
25 母指関節掌側外転
26 母指関節掌側内転
27 母指 MCP関節屈曲
28 母指 MCP関節伸展
29 母指 IP関節屈曲
30 母指 IP関節伸展
31 手指 MCP関節屈曲
32 手指 MCP関節伸展
33 手指 PIP関節屈曲
34 手指 PIP関節伸展
35 手指 DIP関節屈曲
36 手指 DIP関節伸展
37 手指関節外転
38 手指関節内転
39 手指の測定 別法:距離測定による機能評価法
40 関節可動域および手指腱機能評価(TAM)
3章 下肢関節に対するROM測定法
1 股関節屈曲
2 股関節伸展
3 股関節外転
4 股関節内転
5 股関節外旋
6 股関節内旋
7 膝関節屈曲
8 膝関節伸展
9 足関節屈曲(底屈)
10 足関節伸展(背屈)
11 足部外がえし
12 足部内がえし
13 足部外転
14 足部内転
15 母趾・足趾 総論
16 母趾 MTP関節屈曲
17 母趾 MTP関節伸展
18 母趾 IP関節屈曲
19 母趾 IP関節伸展
20 足趾 MTP関節屈曲
21 足趾 MTP関節伸展
22 足趾 PIP関節屈曲
23 足趾 PIP関節伸展
24 足趾 DIP関節屈曲
25 足趾 DIP関節伸展
26 臨床応用:足趾関節外転と内転
4章 頸部・体幹に対するROM測定法
1 頸部屈曲(前屈)
2 頸部伸展(後屈)
3 頸部回旋
4 頸部側屈
5 胸腰部屈曲(前屈)
6 胸腰部伸展(後屈)
7 胸腰部回旋
8 胸腰部側屈
付録
1 ROM 測定の基礎
2章 上肢関節に対するROM測定法
1 肩甲帯屈曲
2 肩甲帯伸展
3 肩甲帯挙上
4 肩甲帯引き下げ(下制)
5 肩関節屈曲(前方挙上)
6 肩関節伸展(後方挙上)
7 肩関節外転(側方挙上)
8 肩関節内転
9 肩関節内旋
10 肩関節外旋
11 肩関節水平屈曲
12 肩関節水平伸展
13 肘関節屈曲
14 肘関節伸展
15 前腕回内
16 前腕回外
17 手関節・母指・手指 総論
18 手関節屈曲(掌屈)
19 手関節伸展(背屈)
20 手関節橈屈
21 手関節尺屈
22 母指関節橈側外転
23 母指関節尺側内転
24 母指関節尺側内転(別法)
25 母指関節掌側外転
26 母指関節掌側内転
27 母指 MCP関節屈曲
28 母指 MCP関節伸展
29 母指 IP関節屈曲
30 母指 IP関節伸展
31 手指 MCP関節屈曲
32 手指 MCP関節伸展
33 手指 PIP関節屈曲
34 手指 PIP関節伸展
35 手指 DIP関節屈曲
36 手指 DIP関節伸展
37 手指関節外転
38 手指関節内転
39 手指の測定 別法:距離測定による機能評価法
40 関節可動域および手指腱機能評価(TAM)
3章 下肢関節に対するROM測定法
1 股関節屈曲
2 股関節伸展
3 股関節外転
4 股関節内転
5 股関節外旋
6 股関節内旋
7 膝関節屈曲
8 膝関節伸展
9 足関節屈曲(底屈)
10 足関節伸展(背屈)
11 足部外がえし
12 足部内がえし
13 足部外転
14 足部内転
15 母趾・足趾 総論
16 母趾 MTP関節屈曲
17 母趾 MTP関節伸展
18 母趾 IP関節屈曲
19 母趾 IP関節伸展
20 足趾 MTP関節屈曲
21 足趾 MTP関節伸展
22 足趾 PIP関節屈曲
23 足趾 PIP関節伸展
24 足趾 DIP関節屈曲
25 足趾 DIP関節伸展
26 臨床応用:足趾関節外転と内転
4章 頸部・体幹に対するROM測定法
1 頸部屈曲(前屈)
2 頸部伸展(後屈)
3 頸部回旋
4 頸部側屈
5 胸腰部屈曲(前屈)
6 胸腰部伸展(後屈)
7 胸腰部回旋
8 胸腰部側屈
付録
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正確にROMを測定する技術をマスターしよう!
関節可動域(range of motion:ROM)測定は患者の運動機能を把握する測定法であり,理学療法士や作業療法士にとって欠かせない臨床スキルである。本書はそのROM測定について,豊富に写真を用いながら測定の手順や注意すべき点についてわかりやすく解説している。
特に,運動する関節や方向に応じて生じる多様な「代償動作」をあげるとともに,その「制動法」について詳細に解説。本書を読み進めながら練習を重ねることで,正確な測定手技が身に付く1冊である。