医学論文執筆のための
臨床研究と医療統計
まずはここからはじめよう!
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定価 3,520円(税込) (本体3,200円+税)
- B5判 232ページ 2色
- 2016年3月3日刊行
- ISBN978-4-7583-1774-0
電子版
序文
臨床研究の世界へようこそ!「臨床研究」という言葉を聞いて,皆さんはどのようなイメージをもつでしょうか? 実際に,臨床研究をされている先生もいれば,これからしてみようかなと思っている先生もいらっしゃるでしょう。医療者は日々治療する際に,程度の差はあれ,診断や治療にいろいろな疑問をもっていることが多いと思います。例えば,この治療法は役に立つのだろうかとか,この診断基準はどの程度正確なのだろうかといった,日頃抱いている疑問があったときどうしますか? 上司や先輩に聞いてもよいですし,論文を探してもよいでしょう。もし,上司がその答えをもっていなかったら,論文がなかったらどうしますか? 自分で調べてみるしかありません。臨床研究は,治験のような大きな研究も含みますが,身近な疑問を解決するためのツールでもあります。野球,サッカー,料理など,何事も基本的な最低限の知識とコツを知って,さらに体験してみるとはじめやすくなり,結果も出しやすくなることが多いと思います。この本は,臨床研究を始めるための足掛かりになるように企画されました。若い先生が日常の疑問点から臨床研究を始め,データを収集し,統計解析の結果をまとめるまでが,ストーリーとして準備されています。きっと,読者の皆さんは,登場人物たちと一緒に学んでいくうちに,臨床研究全体の流れを大局的にとらえることができるようになり,統計手法も身につくことでしょう。
この本には,簡単なクイズと大切な項目のチェックリストも準備されており,「自分で考える」過程によって,新しい知識が身につき,理解できていなかった部分を確認することができます。また,多くの方が気軽に統計を体験できるように,いくつかの統計ソフトを使用して解析を行いました。しかし,これらのソフトをお持ちでない読者の皆さんも十分に臨床研究について理解していただけるように工夫してあります。
なお,使用したデータは私が本書のために作成したものですので,学問的な意義はありません。また, 各統計ソフトはアップデートされている可能性がありますので, 随時ご確認いただき, 最新のものをご利用ください。
臨床研究は統計解析に重点が置かれがちになりますが,その解析も無計画なデータでは台無しになってしまいます。料理でもよい素材を集めて十分下ごしらえしたのちに調理することで,美味しくかつ美しいものとなります。臨床研究も十分計画を練って,必要十分なデータを集めることで,解析も速やかに行われますし,美しい結果を得られやすくなります。自分の大切なアイディアを簡潔にかつ解析しやすいようにまとめ,研究計画を十分に練ることが大切です。
それでは,登場人物になったつもりで,臨床研究を体験してください。さあ,楽しみましょう!
東京共済病院腎臓内科部長
東京医科歯科大学生命倫理研究センター
神田英一郎
この本には,簡単なクイズと大切な項目のチェックリストも準備されており,「自分で考える」過程によって,新しい知識が身につき,理解できていなかった部分を確認することができます。また,多くの方が気軽に統計を体験できるように,いくつかの統計ソフトを使用して解析を行いました。しかし,これらのソフトをお持ちでない読者の皆さんも十分に臨床研究について理解していただけるように工夫してあります。
なお,使用したデータは私が本書のために作成したものですので,学問的な意義はありません。また, 各統計ソフトはアップデートされている可能性がありますので, 随時ご確認いただき, 最新のものをご利用ください。
臨床研究は統計解析に重点が置かれがちになりますが,その解析も無計画なデータでは台無しになってしまいます。料理でもよい素材を集めて十分下ごしらえしたのちに調理することで,美味しくかつ美しいものとなります。臨床研究も十分計画を練って,必要十分なデータを集めることで,解析も速やかに行われますし,美しい結果を得られやすくなります。自分の大切なアイディアを簡潔にかつ解析しやすいようにまとめ,研究計画を十分に練ることが大切です。
それでは,登場人物になったつもりで,臨床研究を体験してください。さあ,楽しみましょう!
東京共済病院腎臓内科部長
東京医科歯科大学生命倫理研究センター
神田英一郎
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目次
はじめに
Ⅰ オッズ田先生の横断研究編
1研究を始めよう!
臨床研究をやるしかない〜オッズ田先生は学会発表デビューを目指す〜
リサーチクエスチョンとは?〜疑問を掘り下げることから臨床研究ははじまる〜
まとめよう!01
挑戦しよう!01
2デザインの種類
どうデザインするか!? すべてはそこから
観察研究の種類
コホート研究と症例対照研究
症例対照研究をもっとくわしく
どの臨床研究のデザインにするのか
まとめよう!02
挑戦しよう!02
3データを集めよう
データには集め方がある
まずはExcelに入力する前に
変数の種類
いよいよExcelへの入力
まとめよう!03
挑戦しよう!03
4基本統計量
解析の強い味方・統計ソフト〜いろいろあるけどどれを使う?〜
データの特徴をつかもう
基本統計量を求めよう
まとめよう!04
挑戦しよう!04
5仮説を立てる
じゃんけんの秘密を仮説であばく
まとめよう!05
挑戦しよう!05
6平均値を比較しよう
データの平均はどこにある?
まとめよう!06
挑戦しよう!06
7比を比較しよう
オッズ田先生は,2 群間比較に興味をもつ
まとめよう!07
挑戦しよう!07
8オッズを求めよう
「そうである確率」って何だろう?
まとめよう!08
挑戦しよう!08
9信頼区間を推定しよう
信頼できるのはどこからどこまで?
オッズ比の95%を求めよう
まとめよう!09
挑戦しよう!09
10関係性をみてみよう
相関関係を評価しよう
まとめよう!10
挑戦しよう!10
11関係を数式化しよう
データをもっと見える形にするには?
まとめよう!11
挑戦しよう!11
12単回帰分析とダミー変数
単回帰分析とt検定
まとめよう!12
挑戦しよう!12
13重回帰分析
重回帰分析をやってみよう
まとめよう!13
挑戦しよう!13
14結果のまとめ
オッズ田先生, 横断研究を極める
まとめよう!14
Ⅱ p値子先生のコホート研究編
1リサーチクエスチョンと研究デザインの選択
p値子先生の初挑戦〜臨床研究のもう1つの柱〜
あなたのリサーチクエスチョンは何?
研究デザインの選択
まとめよう!15
2エンドポイントと指標
指標はデータ解析の道しるべ
リスク(risk)と率(rate)
指標を比較しよう
まとめよう!16
挑戦しよう!14
3バイアスと調整
そのデータは信用できる?
因果関係(causal relationship)
妥当性(validity)と精度(precision)
バイアス(bias)
交絡(confounding)
バイアスと交絡への対応
まとめよう!17
挑戦しよう!15
4データと基本統計量
今度はデータがどこを向いているかを考える
基本統計量
一元配置分散分析(One-way analysis of variance, one-way ANOVA)
まとめよう!18
挑戦しよう!16
5ロジスティック回帰分析
統計どまんなか!〜でもこれまでのつみ重ねがあれば怖くない〜
調整したオッズ比を求めよう
傾向スコア(propensity score)
まとめよう!19
挑戦しよう!17
6生存時間解析
p値子先生, 論文でよくみるあの図が作れるようになる
カプラン・マイヤー法
ハザード比を求める
まとめよう!20
挑戦しよう!18
7カットオフポイントを知りたい
検査結果のさかい目をさがそう
まとめよう!21
挑戦しよう!19
8結果のまとめ
これでもう怖いものなし! p値子先生, コホート研究を極める
まとめよう!22
挑戦しよう!20
Ⅲ 箱ひげ先生による介入研究とシステマティックレビュー講座
1介入研究
箱ひげ先生の真骨頂〜ちょっと難しいけれど大切な研究〜
介入研究とはなんだろう?
患者間と患者内の比較
ランダム割り付け
マスク化(masking)
ランダム化比較試験の実施
CONSORT声明
解析方法の特徴
ランダム化比較試験の変法
まとめ
まとめよう!23
挑戦しよう!21
2システマティックレビューとガイドライン
話の規模が大きい!? いいえ, これまでの勉強と地続きの話
レビュー(review)とシステマティックレビュー(systematic review)
システマティックレビューの流れ
メタアナリシス
ガイドラインへエビデンスをどう生かすか
まとめよう!24
挑戦しよう!22
参考資料① 臨床研究の流れ
参考資料② 本書で出てきた統計方法の分類
臨床研究 成功のヒケツ
Ⅰ章
01 臨床研究を始めるに当たって
02 研究計画書と倫理審査
03 エンドポイント
04 EZR のインストール
05 過誤
06 母集団
07 自由度
08 両側検定(two-tailed test)
09 2群の差の検定
10 検定統計量・カイ二乗
11 偏回帰係数(partial regression coefficient)
12 多重共線性
13 抄録
Ⅱ章
14 臨床研究を始めるには
15 交互作用(interaction)
16 競合リスク(competing risk)
17 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定
18 多重比較検定(multiple comparison test)
19 いろいろなモデルの分類
20 生存関数(survival function)
21 Cox 比例ハザードモデルの応用
22 Bayes(ベイズ)統計(Bayesian statistics)
23 観察的疫学研究報告の質改善のための声明
(Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology[STROBE])
Ⅲ章
24 動的割り付け法
25 サンプルサイズの決定
26 文献の検索システム
Ⅰ オッズ田先生の横断研究編
1研究を始めよう!
臨床研究をやるしかない〜オッズ田先生は学会発表デビューを目指す〜
リサーチクエスチョンとは?〜疑問を掘り下げることから臨床研究ははじまる〜
まとめよう!01
挑戦しよう!01
2デザインの種類
どうデザインするか!? すべてはそこから
観察研究の種類
コホート研究と症例対照研究
症例対照研究をもっとくわしく
どの臨床研究のデザインにするのか
まとめよう!02
挑戦しよう!02
3データを集めよう
データには集め方がある
まずはExcelに入力する前に
変数の種類
いよいよExcelへの入力
まとめよう!03
挑戦しよう!03
4基本統計量
解析の強い味方・統計ソフト〜いろいろあるけどどれを使う?〜
データの特徴をつかもう
基本統計量を求めよう
まとめよう!04
挑戦しよう!04
5仮説を立てる
じゃんけんの秘密を仮説であばく
まとめよう!05
挑戦しよう!05
6平均値を比較しよう
データの平均はどこにある?
まとめよう!06
挑戦しよう!06
7比を比較しよう
オッズ田先生は,2 群間比較に興味をもつ
まとめよう!07
挑戦しよう!07
8オッズを求めよう
「そうである確率」って何だろう?
まとめよう!08
挑戦しよう!08
9信頼区間を推定しよう
信頼できるのはどこからどこまで?
オッズ比の95%を求めよう
まとめよう!09
挑戦しよう!09
10関係性をみてみよう
相関関係を評価しよう
まとめよう!10
挑戦しよう!10
11関係を数式化しよう
データをもっと見える形にするには?
まとめよう!11
挑戦しよう!11
12単回帰分析とダミー変数
単回帰分析とt検定
まとめよう!12
挑戦しよう!12
13重回帰分析
重回帰分析をやってみよう
まとめよう!13
挑戦しよう!13
14結果のまとめ
オッズ田先生, 横断研究を極める
まとめよう!14
Ⅱ p値子先生のコホート研究編
1リサーチクエスチョンと研究デザインの選択
p値子先生の初挑戦〜臨床研究のもう1つの柱〜
あなたのリサーチクエスチョンは何?
研究デザインの選択
まとめよう!15
2エンドポイントと指標
指標はデータ解析の道しるべ
リスク(risk)と率(rate)
指標を比較しよう
まとめよう!16
挑戦しよう!14
3バイアスと調整
そのデータは信用できる?
因果関係(causal relationship)
妥当性(validity)と精度(precision)
バイアス(bias)
交絡(confounding)
バイアスと交絡への対応
まとめよう!17
挑戦しよう!15
4データと基本統計量
今度はデータがどこを向いているかを考える
基本統計量
一元配置分散分析(One-way analysis of variance, one-way ANOVA)
まとめよう!18
挑戦しよう!16
5ロジスティック回帰分析
統計どまんなか!〜でもこれまでのつみ重ねがあれば怖くない〜
調整したオッズ比を求めよう
傾向スコア(propensity score)
まとめよう!19
挑戦しよう!17
6生存時間解析
p値子先生, 論文でよくみるあの図が作れるようになる
カプラン・マイヤー法
ハザード比を求める
まとめよう!20
挑戦しよう!18
7カットオフポイントを知りたい
検査結果のさかい目をさがそう
まとめよう!21
挑戦しよう!19
8結果のまとめ
これでもう怖いものなし! p値子先生, コホート研究を極める
まとめよう!22
挑戦しよう!20
Ⅲ 箱ひげ先生による介入研究とシステマティックレビュー講座
1介入研究
箱ひげ先生の真骨頂〜ちょっと難しいけれど大切な研究〜
介入研究とはなんだろう?
患者間と患者内の比較
ランダム割り付け
マスク化(masking)
ランダム化比較試験の実施
CONSORT声明
解析方法の特徴
ランダム化比較試験の変法
まとめ
まとめよう!23
挑戦しよう!21
2システマティックレビューとガイドライン
話の規模が大きい!? いいえ, これまでの勉強と地続きの話
レビュー(review)とシステマティックレビュー(systematic review)
システマティックレビューの流れ
メタアナリシス
ガイドラインへエビデンスをどう生かすか
まとめよう!24
挑戦しよう!22
参考資料① 臨床研究の流れ
参考資料② 本書で出てきた統計方法の分類
臨床研究 成功のヒケツ
Ⅰ章
01 臨床研究を始めるに当たって
02 研究計画書と倫理審査
03 エンドポイント
04 EZR のインストール
05 過誤
06 母集団
07 自由度
08 両側検定(two-tailed test)
09 2群の差の検定
10 検定統計量・カイ二乗
11 偏回帰係数(partial regression coefficient)
12 多重共線性
13 抄録
Ⅱ章
14 臨床研究を始めるには
15 交互作用(interaction)
16 競合リスク(competing risk)
17 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定
18 多重比較検定(multiple comparison test)
19 いろいろなモデルの分類
20 生存関数(survival function)
21 Cox 比例ハザードモデルの応用
22 Bayes(ベイズ)統計(Bayesian statistics)
23 観察的疫学研究報告の質改善のための声明
(Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology[STROBE])
Ⅲ章
24 動的割り付け法
25 サンプルサイズの決定
26 文献の検索システム
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臨床研究成功のためのすべてがここに! リサーチクエスチョン,デザイン,統計・・・もう怖くない!
臨床研究を行うためには,大切な要素がいくつもある。自分がどんなことに疑問をもっていてどんな研究がしたいのか,正しくデザインできなければ,そもそも研究をスタートすることができない。研究をスタートさせても無計画にデータを集めていては,求めるゴールに辿り着くことは難しい。たくさんの解析ソフトと解説書があっても,やはり統計解析は難しい。
本書は,臨床研究を始めるための足掛かりになるように構成されている。若い先生が日常の疑問点から臨床研究を始め,データを収集し,統計解析の結果をまとめるまでが,ストーリーとして準備されている。また,随所に練習問題と大切な項目のチェックリストも準備されており,「自分で考える」過程によって,新しい知識が身につき,理解できていなかった部分を確認することができる。また気軽に統計を体験できるように,いくつかの統計ソフトを使用して解析を行っている。
はじめて臨床研究を行う読者にとって,道しるべとなる1冊である。