画像解剖 徹頭徹尾
頭部画像解剖 徹頭徹尾
疾患を見極め的確に診断する
- サンプルページ
どなたでもご覧いただけます
定価 8,800円(税込) (本体8,000円+税)
- B5判 276ページ カラーイラスト50点,写真1,000点
- 2013年3月27日刊行
- ISBN978-4-7583-0890-8
序文
編者は放射線医学の道を歩み始めて今年で39年が経過した。私事であるが,この世界へ入った当初のことなどを短く振り返ってみたい。
現在とは違って,卒業後の研修方式はいわゆるストレート方式で,医局へ入った後,研修医として患者を受け持ちながら放射線医学の修練を積むこととなったが,放射線医学について本格的に勉強するようになったのは卒業後2〜3年を経過してからであった。似たような経験のある方が少なくないのではないかと思うが,後輩が徐々に増えてきて,きちんと放射線医学の勉強をしていないのが恥ずかしいと思うようになったというのが正直なところである。当時は優れた日本語のテキストはわずかであったため,主に米国のテキストを読むこととした。Paul and Juhl,Felson,Fraser,Taveras,Meyers,Reuter,Caffeyなどなど,当時基本的テキストとされていたものを片っ端から読み漁った。それで放射線診断学の全体像を大まかに掴んだような気になったものである。その後血管造影並びに神経放射線学を専門とするようになったが,まず勉強の必要性を感じたのは病理と解剖であった。病理はAFIPのテキストなどで勉強したが,放射線医学と関連付けたテキストはまだ存在しなかった。解剖に関しても放射線医学と関連付けたテキストはほとんどなかったため,学生時代から所持していた森解剖学を読むことから始めた。この本は解剖の基礎的な教科書であるが,基本を押さえるのに大変役立ったように思っている。またMeshanの解剖アトラスやNewton and Pottsの本なども診療を行う中で活用させてもらった。
少し長くなったが編者が言いたいのは,一人前の放射線科医になるには幅広い知識を身につけることが大切であり,主に形態学を扱う画像診断にあって最も基本的な知識である解剖はその中でも極めて重要な要素であるということである。近年の画像診断手法の進歩により,目の前のモニタ上には人体の鮮明な画像が展開するが,画像診断の専門家たる放射線科医はそこに見えているものすべてを理解した上で,診断を進めたいものである。
本書において,各著者には頭部画像解剖を分かりやすく解説していただいたが,正常解剖だけでなく,解剖の理解に役立つ病変のある画像も提示して解説を加えていただいた。これにより疾患と関連する形で解剖が理解されるよう工夫したつもりである。なお,疾患に関する解説が幾分多い領域もあるが,これはその領域に対する著者の思い入れの強さが反映されたものであり,編者による著者の選定が正しかった結果であると理解している。
本書が若手の勉強や診療の現場で活用されるとともに,先に挙げた歴史に残るようなテキストとまではいかなくても,時を経た後にあの本で勉強したのが為になったなあ,というように記憶される本であることを願いたい。
2013年2月
蓮尾金博
現在とは違って,卒業後の研修方式はいわゆるストレート方式で,医局へ入った後,研修医として患者を受け持ちながら放射線医学の修練を積むこととなったが,放射線医学について本格的に勉強するようになったのは卒業後2〜3年を経過してからであった。似たような経験のある方が少なくないのではないかと思うが,後輩が徐々に増えてきて,きちんと放射線医学の勉強をしていないのが恥ずかしいと思うようになったというのが正直なところである。当時は優れた日本語のテキストはわずかであったため,主に米国のテキストを読むこととした。Paul and Juhl,Felson,Fraser,Taveras,Meyers,Reuter,Caffeyなどなど,当時基本的テキストとされていたものを片っ端から読み漁った。それで放射線診断学の全体像を大まかに掴んだような気になったものである。その後血管造影並びに神経放射線学を専門とするようになったが,まず勉強の必要性を感じたのは病理と解剖であった。病理はAFIPのテキストなどで勉強したが,放射線医学と関連付けたテキストはまだ存在しなかった。解剖に関しても放射線医学と関連付けたテキストはほとんどなかったため,学生時代から所持していた森解剖学を読むことから始めた。この本は解剖の基礎的な教科書であるが,基本を押さえるのに大変役立ったように思っている。またMeshanの解剖アトラスやNewton and Pottsの本なども診療を行う中で活用させてもらった。
少し長くなったが編者が言いたいのは,一人前の放射線科医になるには幅広い知識を身につけることが大切であり,主に形態学を扱う画像診断にあって最も基本的な知識である解剖はその中でも極めて重要な要素であるということである。近年の画像診断手法の進歩により,目の前のモニタ上には人体の鮮明な画像が展開するが,画像診断の専門家たる放射線科医はそこに見えているものすべてを理解した上で,診断を進めたいものである。
本書において,各著者には頭部画像解剖を分かりやすく解説していただいたが,正常解剖だけでなく,解剖の理解に役立つ病変のある画像も提示して解説を加えていただいた。これにより疾患と関連する形で解剖が理解されるよう工夫したつもりである。なお,疾患に関する解説が幾分多い領域もあるが,これはその領域に対する著者の思い入れの強さが反映されたものであり,編者による著者の選定が正しかった結果であると理解している。
本書が若手の勉強や診療の現場で活用されるとともに,先に挙げた歴史に残るようなテキストとまではいかなくても,時を経た後にあの本で勉強したのが為になったなあ,というように記憶される本であることを願いたい。
2013年2月
蓮尾金博
全文表示する
閉じる
目次
■Ⅰ.脳実質の構造
1.皮質;脳回・脳溝 〈森 墾〉
2.特殊な脳回 〈山下孝二,吉浦 敬〉
①中心前回
②島回
③横側頭回
④直回
3.白質 〈田岡俊昭〉
①大脳白質の構造
②半卵円中心
③脳梁
④前交連
⑤内包,外包,最外包
4.深部灰白質 〈高杉麻利恵,小川敏英〉
①基底核
②視床
③基底核・視床の動脈支配
5.特殊な構造 〈重本蓉子,佐藤典子〉
①松果体
②弁蓋部
③辺縁系(海馬,脳弓,乳頭体)
6.血管周囲腔 〈重本蓉子,佐藤典子〉
7.脳幹,小脳 〈岡本浩一郎〉
①中脳
②橋
③延髄
④小脳
8.神経路 〈吉田茉莉子,青木茂樹〉
①錐体路
②放線冠
③視放線
■Ⅱ.脳室系
1.側脳室,室間孔(モンロー孔),第三脳室,中脳水道,第四脳室 〈柳町徳春〉
2.脈絡叢 〈高木 亮〉
■Ⅲ.脳溝:主なもの 石藏礼一,安藤久美子
1.中心溝,中心前溝,中心後溝,上前頭溝
2.帯状溝
3.頭頂後頭溝,鳥距溝
■Ⅳ.脳槽,脳裂
1.大脳縦裂・脳梁周囲槽 〈蓮尾金博〉
2.シルビウス裂(外側溝) 〈蓮尾金博〉
3.鞍上槽 〈野口智幸〉
4.脚間槽 〈野口智幸〉
5.迂回槽,四丘体槽 〈野口智幸〉
6.橋前槽 〈野口智幸〉
7.小脳橋角槽 〈野口智幸〉
8.延髄前槽・延髄周囲槽・小脳延髄槽 〈野口智幸〉
■Ⅴ.脳葉の境界 植田文明
1.前頭葉-頭頂葉
2.前頭葉-側頭葉
3.頭頂葉-後頭葉
4.側頭葉-後頭葉
5.側頭葉-頭頂葉
6.脳幹の境界
■Ⅵ.髄膜構造 渡邊嘉之
1.硬膜・クモ膜・軟膜
■Ⅶ.脳神経 鹿戸将史
1.嗅神経
2.視神経
3.動眼神経
4.滑車神経
5.三叉神経
6.外転神経
7.顔面神経
8.聴神経
9.舌咽神経,迷走神経,副神経
10.舌下神経
■Ⅷ.頭蓋底部 小玉隆男
1.嗅窩、鶏冠
2.鞍上部
3.トルコ鞍
4.視神経管
5.上眼窩裂
6.メッケル腔
7.棘孔
8.斜台
9.小脳橋角部
■Ⅸ.動脈 内野 晃
1.動脈の正常正面像と側面像(交叉法による立体視)
2.総頸動脈〜内頸動脈
3.前大脳動脈
4.中大脳動脈
5.後大脳動脈
6.椎骨動脈と後下小脳動脈
7.脳底動脈と前下小脳動脈および上小脳動脈
■Ⅹ.静脈,静脈洞
1.主要な静脈洞 〈與儀 彰〉
2.上矢状洞 〈與儀 彰〉
3.下矢状洞,直静脈洞 〈與儀 彰〉
4.静脈洞交会,横静脈洞,後頭静脈洞 〈與儀 彰〉
5.S状静脈洞,内頸静脈(頸静脈孔,頸静脈球) 〈與儀 彰〉
6.クモ膜顆粒 〈與儀 彰〉
7.トロラール静脈 〈高橋 聡〉
8.浅シルビウス裂静脈 〈高橋 聡〉
9.ラベー静脈 〈高橋 聡〉
10.海綿静脈洞 〈高橋 聡〉
11.上錐体静脈洞 〈高橋 聡〉
12.下錐体静脈洞 〈高橋 聡〉
13.内大脳静脈 〈大谷隆浩〉
14.基底静脈 〈大谷隆浩〉
15.ガレン大静脈 〈大谷隆浩〉
16.錐体静脈 〈高橋 聡〉
17.前橋中脳静脈 〈高橋 聡〉
■Ⅺ.小児 岡部哲彦,相田典子
1.髄鞘化
1.皮質;脳回・脳溝 〈森 墾〉
2.特殊な脳回 〈山下孝二,吉浦 敬〉
①中心前回
②島回
③横側頭回
④直回
3.白質 〈田岡俊昭〉
①大脳白質の構造
②半卵円中心
③脳梁
④前交連
⑤内包,外包,最外包
4.深部灰白質 〈高杉麻利恵,小川敏英〉
①基底核
②視床
③基底核・視床の動脈支配
5.特殊な構造 〈重本蓉子,佐藤典子〉
①松果体
②弁蓋部
③辺縁系(海馬,脳弓,乳頭体)
6.血管周囲腔 〈重本蓉子,佐藤典子〉
7.脳幹,小脳 〈岡本浩一郎〉
①中脳
②橋
③延髄
④小脳
8.神経路 〈吉田茉莉子,青木茂樹〉
①錐体路
②放線冠
③視放線
■Ⅱ.脳室系
1.側脳室,室間孔(モンロー孔),第三脳室,中脳水道,第四脳室 〈柳町徳春〉
2.脈絡叢 〈高木 亮〉
■Ⅲ.脳溝:主なもの 石藏礼一,安藤久美子
1.中心溝,中心前溝,中心後溝,上前頭溝
2.帯状溝
3.頭頂後頭溝,鳥距溝
■Ⅳ.脳槽,脳裂
1.大脳縦裂・脳梁周囲槽 〈蓮尾金博〉
2.シルビウス裂(外側溝) 〈蓮尾金博〉
3.鞍上槽 〈野口智幸〉
4.脚間槽 〈野口智幸〉
5.迂回槽,四丘体槽 〈野口智幸〉
6.橋前槽 〈野口智幸〉
7.小脳橋角槽 〈野口智幸〉
8.延髄前槽・延髄周囲槽・小脳延髄槽 〈野口智幸〉
■Ⅴ.脳葉の境界 植田文明
1.前頭葉-頭頂葉
2.前頭葉-側頭葉
3.頭頂葉-後頭葉
4.側頭葉-後頭葉
5.側頭葉-頭頂葉
6.脳幹の境界
■Ⅵ.髄膜構造 渡邊嘉之
1.硬膜・クモ膜・軟膜
■Ⅶ.脳神経 鹿戸将史
1.嗅神経
2.視神経
3.動眼神経
4.滑車神経
5.三叉神経
6.外転神経
7.顔面神経
8.聴神経
9.舌咽神経,迷走神経,副神経
10.舌下神経
■Ⅷ.頭蓋底部 小玉隆男
1.嗅窩、鶏冠
2.鞍上部
3.トルコ鞍
4.視神経管
5.上眼窩裂
6.メッケル腔
7.棘孔
8.斜台
9.小脳橋角部
■Ⅸ.動脈 内野 晃
1.動脈の正常正面像と側面像(交叉法による立体視)
2.総頸動脈〜内頸動脈
3.前大脳動脈
4.中大脳動脈
5.後大脳動脈
6.椎骨動脈と後下小脳動脈
7.脳底動脈と前下小脳動脈および上小脳動脈
■Ⅹ.静脈,静脈洞
1.主要な静脈洞 〈與儀 彰〉
2.上矢状洞 〈與儀 彰〉
3.下矢状洞,直静脈洞 〈與儀 彰〉
4.静脈洞交会,横静脈洞,後頭静脈洞 〈與儀 彰〉
5.S状静脈洞,内頸静脈(頸静脈孔,頸静脈球) 〈與儀 彰〉
6.クモ膜顆粒 〈與儀 彰〉
7.トロラール静脈 〈高橋 聡〉
8.浅シルビウス裂静脈 〈高橋 聡〉
9.ラベー静脈 〈高橋 聡〉
10.海綿静脈洞 〈高橋 聡〉
11.上錐体静脈洞 〈高橋 聡〉
12.下錐体静脈洞 〈高橋 聡〉
13.内大脳静脈 〈大谷隆浩〉
14.基底静脈 〈大谷隆浩〉
15.ガレン大静脈 〈大谷隆浩〉
16.錐体静脈 〈高橋 聡〉
17.前橋中脳静脈 〈高橋 聡〉
■Ⅺ.小児 岡部哲彦,相田典子
1.髄鞘化
全文表示する
閉じる
「画像解剖を臨床解剖に直結」「正常変異や構造の複雑な局所解剖」を意識した新しい画像解剖書
「画像解剖を臨床解剖に直結」「正常変異や構造の複雑な局所解剖」「わかりやすい・見やすい・調べやすい」の3点を編集のポイントとして,臨床解剖のイラストを多く盛り込み,発生学的観点からもその異常が原因となる疾患,バリエーションなどを取り上げ,画像診断に必要な解剖学的知識をふまえた,読影の際に有用な画像解剖の実用書。