データから考える
不妊症・不育症治療
希望に応える専門外来の診療指針
改訂第2版
定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- B5判 520ページ オールカラー,イラスト100点,写真100点
- 2022年8月1日刊行
- ISBN978-4-7583-2142-6
電子版
序文
日本は1970年代に年間出生数200万人以上であったが,その後の出生数は低下の一途をたどり,2021年の出生数は過去最低の約81万人となった。その少子化の背景には女性の晩婚化・晩産化が関係している。この40年間で女性の結婚年齢は24歳から29歳まで上昇し,これに伴い第一子出生時の平均年齢も30歳を超えている。女性の高齢化により卵巣予備能が低下することはもちろんだが,子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患の発症リスクの増加などさまざまな要因が,女性の妊孕能へ影響している。一方で,男性不妊,特に性機能障害の割合が若年層で増加しており,社会的な問題となっている。さらに,日本の若年女性において,ストレスの増加や,スリム志向による低栄養ややせの割合の増加により,不妊症やその後の妊娠・出産における合併症,生まれてくる子どもの将来におけるさまざまな疾患の発症リスクが増加していることが問題となっている。
生殖医学は,体外受精における配偶子や受精卵などの細胞培養など,基礎研究と密接にかかわるため,細胞生物学や生殖工学などの発展に伴い,飛躍的に進歩してきた。また世界中でさまざまな臨床研究が行われ,多数の臨床データが存在する。これらを収集し,臨床現場において不妊症や不育症の患者ごとで,ベストな生殖医療を提示できるように,2017年に本書を発刊した。
その後5年が経過し,さまざまな新たなデータが報告され,かつ日本では着床前スクリーニングなどの革新的な医療技術も実際に行われるようになってきた。また,2020年から新型コロナウィルスが蔓延したことにより,さらなる少子化が進んだ。一方で,2022年4月に不妊治療の保険適用の大幅拡大が進んだことで,日本の生殖医療も新たな転換期を迎えている。この状況の中,生殖医療を行う医療従事者は,妊娠ができない,流産で悩む女性がひとりでも多く妊娠・出産の喜びをわかちあうことができるように,最善な診療を提示する義務がある。
本書は,この5年間の新たな医療技術を加え,新しい臨床データを追加し改定を行った。医師だけではなく生殖医療に関わる胚培養士,看護師などさまざまな医療従事者の方々の,臨床の一助になることを切に願っている。
2022年6月吉日
黒田 恵司
生殖医学は,体外受精における配偶子や受精卵などの細胞培養など,基礎研究と密接にかかわるため,細胞生物学や生殖工学などの発展に伴い,飛躍的に進歩してきた。また世界中でさまざまな臨床研究が行われ,多数の臨床データが存在する。これらを収集し,臨床現場において不妊症や不育症の患者ごとで,ベストな生殖医療を提示できるように,2017年に本書を発刊した。
その後5年が経過し,さまざまな新たなデータが報告され,かつ日本では着床前スクリーニングなどの革新的な医療技術も実際に行われるようになってきた。また,2020年から新型コロナウィルスが蔓延したことにより,さらなる少子化が進んだ。一方で,2022年4月に不妊治療の保険適用の大幅拡大が進んだことで,日本の生殖医療も新たな転換期を迎えている。この状況の中,生殖医療を行う医療従事者は,妊娠ができない,流産で悩む女性がひとりでも多く妊娠・出産の喜びをわかちあうことができるように,最善な診療を提示する義務がある。
本書は,この5年間の新たな医療技術を加え,新しい臨床データを追加し改定を行った。医師だけではなく生殖医療に関わる胚培養士,看護師などさまざまな医療従事者の方々の,臨床の一助になることを切に願っている。
2022年6月吉日
黒田 恵司
全文表示する
閉じる
目次
総論 なぜ不妊症・不育症になるのか?
生殖医療の背景
女性のライフスタイルの変化
プレコンセプションケア
女性妊孕能に及ぼすエイジングの影響
卵巣予備能に影響するリスク因子
不妊治療に必要な基礎知識
婦人科内分泌の基礎知識
月経周期
妊娠の成立
不妊症の原因
不妊治療の基本指針
男性生殖の基本
不育症・習慣流産の基礎知識
流産について
不育症のリスク因子
不育症治療の基本指針
総論 Q & A
妊娠前の準備
年齢ごとの妊娠率
年齢ごとの流産率,ダウン症候群発症率
その他,妊娠に伴う合併症の発症率
流産と染色体異常
各論1 不妊治療の実際—どのように妊娠に導くのか?
不妊治療のスケジュール
排卵予測
不妊治療に用いられる薬剤
排卵誘発剤 クエン酸クロミフェン,アロマターゼ阻害薬,hMG/FSH 製剤,GnRH アゴニスト製剤,GnRH アンタゴニスト製剤,hCG 製剤
その他 ドーパミン作動薬,エストロゲン製剤,プロゲスチン製剤
妊娠方法
タイミング法・配偶者間人工授精(AIH)・生殖補助医療(ART)
妊娠方法別の妊娠率
生殖補助医療
卵巣刺激法
採卵
体外受精
顕微受精(ICSI)
ピエゾICSI
黄体補充
胚移植
胚・配偶子・卵巣組織凍結保存
着床前診断(PGT-A,PGT-SR)
単一遺伝子疾患の着床前診断(PGT-M)
不妊治療における保険診療および先進医療制度
各論2 疾患別の治療
不妊症
子宮内膜症
子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮腔内病変
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症もしくは不全症
早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency;POI)
原因不明不妊症
column:反復着床不全に対するOPTIMUM strategy
男性不妊症
卵管機能障害
慢性子宮内膜炎
不育症
子宮形態異常
甲状腺機能異常
血栓性疾患
染色体異常
原因不明不育症
各論 Q & A
タイミング法・配偶者間人工受精による一般不妊治療
子宮筋腫や子宮内膜症に対する手術とその後の妊娠率
子宮筋腫・子宮腺筋症合併女性の妊娠後合併症
子宮内膜症合併妊娠女性の妊娠後合併症
子宮筋腫核出術後の患者の妊娠後合併症と発生率
手術を要する子宮筋腫をもつ高齢女性
卵巣子宮内膜症性嚢胞・子宮腺筋症をもつ不妊症に対する不妊治療
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
早発卵巣不全(primary ovarian insufficiency;POI)を含む卵巣機能低下症例
卵管機能障害
原因不明不妊症
反復着床不全症例
男性不妊症
無精子症症例
潜在性甲状腺機能低下症
血栓性疾患由来の不育症
原因不明不育症
胚(受精卵)・卵子・精子・卵巣組織凍結保存
着床前診断と出生前診断
第三者配偶子を用いた生殖医療
生殖医療の背景
女性のライフスタイルの変化
プレコンセプションケア
女性妊孕能に及ぼすエイジングの影響
卵巣予備能に影響するリスク因子
不妊治療に必要な基礎知識
婦人科内分泌の基礎知識
月経周期
妊娠の成立
不妊症の原因
不妊治療の基本指針
男性生殖の基本
不育症・習慣流産の基礎知識
流産について
不育症のリスク因子
不育症治療の基本指針
総論 Q & A
妊娠前の準備
年齢ごとの妊娠率
年齢ごとの流産率,ダウン症候群発症率
その他,妊娠に伴う合併症の発症率
流産と染色体異常
各論1 不妊治療の実際—どのように妊娠に導くのか?
不妊治療のスケジュール
排卵予測
不妊治療に用いられる薬剤
排卵誘発剤 クエン酸クロミフェン,アロマターゼ阻害薬,hMG/FSH 製剤,GnRH アゴニスト製剤,GnRH アンタゴニスト製剤,hCG 製剤
その他 ドーパミン作動薬,エストロゲン製剤,プロゲスチン製剤
妊娠方法
タイミング法・配偶者間人工授精(AIH)・生殖補助医療(ART)
妊娠方法別の妊娠率
生殖補助医療
卵巣刺激法
採卵
体外受精
顕微受精(ICSI)
ピエゾICSI
黄体補充
胚移植
胚・配偶子・卵巣組織凍結保存
着床前診断(PGT-A,PGT-SR)
単一遺伝子疾患の着床前診断(PGT-M)
不妊治療における保険診療および先進医療制度
各論2 疾患別の治療
不妊症
子宮内膜症
子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮腔内病変
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症もしくは不全症
早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency;POI)
原因不明不妊症
column:反復着床不全に対するOPTIMUM strategy
男性不妊症
卵管機能障害
慢性子宮内膜炎
不育症
子宮形態異常
甲状腺機能異常
血栓性疾患
染色体異常
原因不明不育症
各論 Q & A
タイミング法・配偶者間人工受精による一般不妊治療
子宮筋腫や子宮内膜症に対する手術とその後の妊娠率
子宮筋腫・子宮腺筋症合併女性の妊娠後合併症
子宮内膜症合併妊娠女性の妊娠後合併症
子宮筋腫核出術後の患者の妊娠後合併症と発生率
手術を要する子宮筋腫をもつ高齢女性
卵巣子宮内膜症性嚢胞・子宮腺筋症をもつ不妊症に対する不妊治療
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
早発卵巣不全(primary ovarian insufficiency;POI)を含む卵巣機能低下症例
卵管機能障害
原因不明不妊症
反復着床不全症例
男性不妊症
無精子症症例
潜在性甲状腺機能低下症
血栓性疾患由来の不育症
原因不明不育症
胚(受精卵)・卵子・精子・卵巣組織凍結保存
着床前診断と出生前診断
第三者配偶子を用いた生殖医療
全文表示する
閉じる
不妊症・不育症の外来に必要な知識をまとめた定番書籍が最新データに基づいてアップデート!
不妊症・不育症について,産婦人科医として知っておかなければいけない知識や患者への説明を行ううえで参考となるデータをもとに解説。各論部分では,順天堂大学および関連施設で実際に行われている基本方針に則った系統的な治療について詳細に解説し,かつ患者によく理解できる説明用のグラフ・イラスト・画像を豊富に用い,またQ&A部分はそのまま患者にみせることができるように,平易な記載部分と,同じ問いに対する詳細な医療者向けの解説を掲載している。
改訂にあたっては最新データに基づいてアップデートした上で,卵巣機能障害,慢性子宮内膜炎,黄体補充療法,不妊治療における保険・自費診療および助成制度,プレコンセプションケア等を追加,また着床前スクリーニングも新たな概念で全面刷新された。
患者に見せやすく医療者にも使いやすい,外来でそのまま使える書籍。