Crosslink 理学療法学テキスト
運動療法学
定価 5,720円(税込) (本体5,200円+税)
- B5判 516ページ オールカラー,イラスト250点,写真300点
- 2020年2月3日刊行
- ISBN978-4-7583-2005-4
電子版
序文
編集の序
運動療法とは運動を利用した治療の方法であり,理学療法のなかでも中心的位置を占める。その活用の場はあらゆる疾患・障害といった医療の分野に限らず健康増進・予防に関する分野まで幅広く拡がっている。
過去には整形外科疾患や中枢神経疾患の患者が主な理学療法の対象であったが,近年では医療情勢の変化から呼吸器疾患や循環器疾患,代謝性疾患,悪性腫瘍を患った対象者,さらには高齢者や複数の合併症を伴っている対象者など障害像も複雑化している。そうした状況にあって,どのように運動療法を展開していくかを明確化することは困難であるといわざるを得ない。
このように運動療法の対象範囲は拡がっているものの,それに対するエビデンスの不足も大きな問題であり,その蓄積を急ぐ必要がある。逆の極端な例を挙げれば,独自の経験則から考案した理論に基づく運動療法とよばれる方法を提唱したところで,根拠をもって否定されるには至らない現状ではないだろうか。
かたや対象者は個人の運動能力・技能,パーソナリティに至るまで千差万別である。同じ疾患,同じ障害を有していても運動療法のアプローチが異なる対象者が当然のように存在する事実は疑いようもない。こうしたところに,一般論としてのエビデンスと個別としての適用技術のノウハウが両輪となって生きてくる。疾患に基づく身体障害をとらえることは基本だが,個人をみつめた障害像として広くとらえるほうが適切である。
疾患別に構成すると,どうしても疾患に固執した障害のとらえ方に偏る傾向にある。そこで,本書では障害別に章立てし,基礎知識に基づく評価と方針立案までの客観的推論過程,そして理学療法,とりわけ運動療法へつなげるように構成した。ここから疾患,または個別の障害像へ発展させる基盤づくりとなることを意識した。それによってよりよい運動療法の実践と「運動療法学」の確立の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いである。
2019年12月
対馬栄輝
運動療法とは運動を利用した治療の方法であり,理学療法のなかでも中心的位置を占める。その活用の場はあらゆる疾患・障害といった医療の分野に限らず健康増進・予防に関する分野まで幅広く拡がっている。
過去には整形外科疾患や中枢神経疾患の患者が主な理学療法の対象であったが,近年では医療情勢の変化から呼吸器疾患や循環器疾患,代謝性疾患,悪性腫瘍を患った対象者,さらには高齢者や複数の合併症を伴っている対象者など障害像も複雑化している。そうした状況にあって,どのように運動療法を展開していくかを明確化することは困難であるといわざるを得ない。
このように運動療法の対象範囲は拡がっているものの,それに対するエビデンスの不足も大きな問題であり,その蓄積を急ぐ必要がある。逆の極端な例を挙げれば,独自の経験則から考案した理論に基づく運動療法とよばれる方法を提唱したところで,根拠をもって否定されるには至らない現状ではないだろうか。
かたや対象者は個人の運動能力・技能,パーソナリティに至るまで千差万別である。同じ疾患,同じ障害を有していても運動療法のアプローチが異なる対象者が当然のように存在する事実は疑いようもない。こうしたところに,一般論としてのエビデンスと個別としての適用技術のノウハウが両輪となって生きてくる。疾患に基づく身体障害をとらえることは基本だが,個人をみつめた障害像として広くとらえるほうが適切である。
疾患別に構成すると,どうしても疾患に固執した障害のとらえ方に偏る傾向にある。そこで,本書では障害別に章立てし,基礎知識に基づく評価と方針立案までの客観的推論過程,そして理学療法,とりわけ運動療法へつなげるように構成した。ここから疾患,または個別の障害像へ発展させる基盤づくりとなることを意識した。それによってよりよい運動療法の実践と「運動療法学」の確立の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いである。
2019年12月
対馬栄輝
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目次
第1章 総論
【1】 運動療法とは何か 対馬栄輝
1 運動・運動療法の定義と特徴
2 運動療法の分類
3 運動療法の適応と禁忌
4 一般的な運動療法の手順
まとめ
第2章 筋機能と運動療法
【1】 運動における筋の機能 対馬栄輝
1 筋の機能について
2 関節運動と関連させた筋収縮様式の分類
3 姿勢・動作における筋の役割
4 筋力増強の理論
5 筋力・筋持久力低下は改善できるか
まとめ
【2】 筋力・筋持久力低下に対する運動療法 相澤純也
1 筋力・筋持久力評価の基本
2 筋力・筋持久力低下における臨床推論・問題点の整理
3 筋力・筋持久力低下に対する運動療法の実際
まとめ
第3章 関節可動性と運動療法
【1】 運動における関節可動性 隈元庸夫
1 関節の可動性
2 関節包内運動(副運動)
3 ストレッチング
4 拘縮のメカニズム
5 拘縮は改善できるのか
まとめ
【2】 関節可動性障害に対する運動療法 添田健仁
1 評価の基本と臨床推論:何をどうとらえるべきか
2 関節可動性障害に対する運動療法
3 実際のROM運動
まとめ
第4章 バランス機能と運動療法
【1】 姿勢・動作におけるバランス機能 望月 久
1 姿勢とバランス
2 姿勢・動作におけるバランスの意義
3 バランス機能の低下
4 バランス機能は改善できるか
まとめ
【2】 バランス機能障害に対する運動療法 石田水里
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第5章 呼吸機能と運動療法
【1】 運動における呼吸機能 田中貴子,神津 玲
1 呼吸機能の基本
2 運動時の呼吸機能の役割
3 呼吸機能の低下とは
4 呼吸機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 呼吸障害に対する運動療法 木村雅彦
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論
3 運動療法の実際
まとめ
第6章 循環機能と運動療法
【1】 運動における循環機能 田畑 稔
1 循環機能の基本
2 運動における循環機能の役割
3 循環機能の低下とは
4 循環機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 循環障害に対する運動療法 森沢知之
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第7章 代謝機能と運動療法
【1】 運動における代謝機能 木村 朗
1 代謝障害を考えるための基本的知識
2 運動・身体機能における代謝機能の役割
3 代謝機能の低下とは
4 代謝機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 代謝機能障害に対する運動療法 二宮秀樹
1 糖尿病の病態
2 症候・障害
3 治療
4 理学療法評価
5 理学療法
まとめ
第8章 協調性機能と運動療法
【1】 運動における協調性機能 阿南雅也
1 協調性機能の基本
2 運動における協調性機能の役割
3 協調性機能の低下とは
4 協調性機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 協調性障害に対する運動療法 諸橋 勇
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第9章 中枢神経機能と運動療法
【1】 運動における中枢神経機能 松田雅弘
1 中枢神経機能の基本
2 運動における中枢神経機能の役割
3 高次脳機能障害
4 中枢神経機能の低下とは
5 中枢神経機能障害は改善できるのか
まとめ
【2】 中枢神経障害に対する運動療法 金子純一朗
1 評価の基本
2 臨床推論
3 運動療法の実際
まとめ
第10章 末梢神経機能と運動療法
【1】 運動における末梢神経機能 下井俊典
1 末梢神経の基本
2 運動における末梢神経の役割
3 末梢神経機能の低下とは
4 末梢神経障害
まとめ
【2】 末梢神経障害に対する運動療法 山本 悟
1 評価の基本
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第11章 前庭機能と運動療法
【1】 運動における前庭機能 浅井友詞
1 前庭障害の基本
2 運動における前庭機能の役割
3 前庭機能の低下とは
4 前庭機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 前庭機能障害に対する運動療法 森本浩之
1 疾患の病態
2 症候・障害
3 理学療法評価
4 理学療法
まとめ
第12章 加齢による運動機能変化と運動療法
【1】 加齢に伴う運動機能変化 藤田博曉
1 加齢による身体機能の変化について
2 運動機能に対する加齢の影響
3 加齢による運動機能の変化
4 加齢による運動機能の低下は改善できるか
まとめ
【2】 加齢による運動機能障害に対する運動療法 山田 実
1 評価の基本
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第13章 基本動作と運動療法
【1】 背臥位・寝返り・起き上がり動作障害に対する運動療法 山﨑裕司
1 評価の基本
2 臨床推論
3 運動療法の実際
まとめ
【2】 座位・立ち上がり動作障害に対する運動療法 櫻井好美
1 評価の基本
2 運動療法の実際
まとめ
【3】 立位・歩行障害に対する運動療法 対馬栄輝
1 立位評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 歩行評価の基本:何をどうとらえるべきか
3 臨床推論・問題点の整理
4 運動療法の実際
まとめ
第14章 運動学習と運動療法
【1】 運動療法における運動学習 大橋ゆかり
1 運動学習の基本
2 運動療法における運動学習の位置付け
3 運動療法における運動学習の活用方法
まとめ
症例集
筋力・筋持久力低下に対する運動療法 相澤純也
関節可動性障害に対する運動療法 添田健仁
バランス機能障害に対する運動療法 石田水里
呼吸障害に対する運動療法 木村雅彦
循環障害に対する運動療法 大塚翔太
代謝機能障害に対する運動療法 二宮秀樹
協調性障害に対する運動療法 諸橋 勇
中枢神経障害に対する運動療法:脳卒中回復期(被殻出血の場合) 金子純一朗
末梢神経障害に対する運動療法 山本 悟
前庭機能障害に対する運動療法① 森本浩之
前庭機能障害に対する運動療法② 森本浩之
加齢による運動機能障害に対する運動療法 山田 実
寝返り動作障害に対する運動療法 山﨑裕司
起き上がり動作障害に対する運動療法 山﨑裕司
立ち上がり動作障害に対する運動療法 櫻井好美
立位・歩行障害に対する運動療法 対馬栄輝
【1】 運動療法とは何か 対馬栄輝
1 運動・運動療法の定義と特徴
2 運動療法の分類
3 運動療法の適応と禁忌
4 一般的な運動療法の手順
まとめ
第2章 筋機能と運動療法
【1】 運動における筋の機能 対馬栄輝
1 筋の機能について
2 関節運動と関連させた筋収縮様式の分類
3 姿勢・動作における筋の役割
4 筋力増強の理論
5 筋力・筋持久力低下は改善できるか
まとめ
【2】 筋力・筋持久力低下に対する運動療法 相澤純也
1 筋力・筋持久力評価の基本
2 筋力・筋持久力低下における臨床推論・問題点の整理
3 筋力・筋持久力低下に対する運動療法の実際
まとめ
第3章 関節可動性と運動療法
【1】 運動における関節可動性 隈元庸夫
1 関節の可動性
2 関節包内運動(副運動)
3 ストレッチング
4 拘縮のメカニズム
5 拘縮は改善できるのか
まとめ
【2】 関節可動性障害に対する運動療法 添田健仁
1 評価の基本と臨床推論:何をどうとらえるべきか
2 関節可動性障害に対する運動療法
3 実際のROM運動
まとめ
第4章 バランス機能と運動療法
【1】 姿勢・動作におけるバランス機能 望月 久
1 姿勢とバランス
2 姿勢・動作におけるバランスの意義
3 バランス機能の低下
4 バランス機能は改善できるか
まとめ
【2】 バランス機能障害に対する運動療法 石田水里
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第5章 呼吸機能と運動療法
【1】 運動における呼吸機能 田中貴子,神津 玲
1 呼吸機能の基本
2 運動時の呼吸機能の役割
3 呼吸機能の低下とは
4 呼吸機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 呼吸障害に対する運動療法 木村雅彦
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論
3 運動療法の実際
まとめ
第6章 循環機能と運動療法
【1】 運動における循環機能 田畑 稔
1 循環機能の基本
2 運動における循環機能の役割
3 循環機能の低下とは
4 循環機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 循環障害に対する運動療法 森沢知之
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第7章 代謝機能と運動療法
【1】 運動における代謝機能 木村 朗
1 代謝障害を考えるための基本的知識
2 運動・身体機能における代謝機能の役割
3 代謝機能の低下とは
4 代謝機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 代謝機能障害に対する運動療法 二宮秀樹
1 糖尿病の病態
2 症候・障害
3 治療
4 理学療法評価
5 理学療法
まとめ
第8章 協調性機能と運動療法
【1】 運動における協調性機能 阿南雅也
1 協調性機能の基本
2 運動における協調性機能の役割
3 協調性機能の低下とは
4 協調性機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 協調性障害に対する運動療法 諸橋 勇
1 評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第9章 中枢神経機能と運動療法
【1】 運動における中枢神経機能 松田雅弘
1 中枢神経機能の基本
2 運動における中枢神経機能の役割
3 高次脳機能障害
4 中枢神経機能の低下とは
5 中枢神経機能障害は改善できるのか
まとめ
【2】 中枢神経障害に対する運動療法 金子純一朗
1 評価の基本
2 臨床推論
3 運動療法の実際
まとめ
第10章 末梢神経機能と運動療法
【1】 運動における末梢神経機能 下井俊典
1 末梢神経の基本
2 運動における末梢神経の役割
3 末梢神経機能の低下とは
4 末梢神経障害
まとめ
【2】 末梢神経障害に対する運動療法 山本 悟
1 評価の基本
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第11章 前庭機能と運動療法
【1】 運動における前庭機能 浅井友詞
1 前庭障害の基本
2 運動における前庭機能の役割
3 前庭機能の低下とは
4 前庭機能障害は改善できるか
まとめ
【2】 前庭機能障害に対する運動療法 森本浩之
1 疾患の病態
2 症候・障害
3 理学療法評価
4 理学療法
まとめ
第12章 加齢による運動機能変化と運動療法
【1】 加齢に伴う運動機能変化 藤田博曉
1 加齢による身体機能の変化について
2 運動機能に対する加齢の影響
3 加齢による運動機能の変化
4 加齢による運動機能の低下は改善できるか
まとめ
【2】 加齢による運動機能障害に対する運動療法 山田 実
1 評価の基本
2 臨床推論・問題点の整理
3 運動療法の実際
まとめ
第13章 基本動作と運動療法
【1】 背臥位・寝返り・起き上がり動作障害に対する運動療法 山﨑裕司
1 評価の基本
2 臨床推論
3 運動療法の実際
まとめ
【2】 座位・立ち上がり動作障害に対する運動療法 櫻井好美
1 評価の基本
2 運動療法の実際
まとめ
【3】 立位・歩行障害に対する運動療法 対馬栄輝
1 立位評価の基本:何をどうとらえるべきか
2 歩行評価の基本:何をどうとらえるべきか
3 臨床推論・問題点の整理
4 運動療法の実際
まとめ
第14章 運動学習と運動療法
【1】 運動療法における運動学習 大橋ゆかり
1 運動学習の基本
2 運動療法における運動学習の位置付け
3 運動療法における運動学習の活用方法
まとめ
症例集
筋力・筋持久力低下に対する運動療法 相澤純也
関節可動性障害に対する運動療法 添田健仁
バランス機能障害に対する運動療法 石田水里
呼吸障害に対する運動療法 木村雅彦
循環障害に対する運動療法 大塚翔太
代謝機能障害に対する運動療法 二宮秀樹
協調性障害に対する運動療法 諸橋 勇
中枢神経障害に対する運動療法:脳卒中回復期(被殻出血の場合) 金子純一朗
末梢神経障害に対する運動療法 山本 悟
前庭機能障害に対する運動療法① 森本浩之
前庭機能障害に対する運動療法② 森本浩之
加齢による運動機能障害に対する運動療法 山田 実
寝返り動作障害に対する運動療法 山﨑裕司
起き上がり動作障害に対する運動療法 山﨑裕司
立ち上がり動作障害に対する運動療法 櫻井好美
立位・歩行障害に対する運動療法 対馬栄輝
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