リハビリテーション運動生理学

リハビリテーション運動生理学

■監修 玉木 彰

■編集 解良 武士

定価 6,380円(税込) (本体5,800円+税)
  • B5判  416ページ  2色(一部カラー),イラスト370点
  • 2016年9月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-1719-1

リハビリテーションの臨床に役立つ,初めての運動生理学の書籍

運動療法は,運動をすることで生じる身体の生理的反応,すなわち運動による効果を利用して疾患・障害を治療・予防するものである。そのため,運動を行うと身体でどのような反応が起こるのかという運動生理学の知識は必須である。これまでの運動生理学の専門書は,健常者やスポーツ選手の運動生理について解説しており,リハビリテーション関連職種に必要な情報は少なかった。本書は,健常者だけではなく疾病・障害をもつ人の運動生理反応やトレーニング効果について,病態生理を踏まえて解説した書籍である。
基礎編のPartⅠで基本的な運動生理学の知識を解説し,臨床編のPart Ⅱで疾病と運動との関連,疾病を有する対象者の運動制限の原因・トレーニング効果について解説。理学療法士・作業療法士養成校の学生にも,また臨床勤務のセラピストにも活用いただける内容となっている。


序文

 静的状態の身体機能を扱う生理学に対して,運動生理学は主に運動に対する生理反応を理解する学問である。かつてスポーツ関係の書籍では,『オストランド運動生理学』などが運動に関する学問を志す初学者のバイブルとして愛読されてきた。リハビリテーションにおいて,運動に対する生理反応に関する理解は極めて重要である。さらに,運動器障害を有する高齢者,循環器,呼吸器をはじめとする内部障害などをもつ対象者における運動時の呼吸循環反応や運動の効果についての理解は,リハビリテーションを実践するセラピストにとって重要である。一方,リハビリテーション医療に特化した運動生理学の書籍はこれまでほとんどなかったので,臨床現場ではこのような視点で執筆された運動生理学の刊行が待たれていたのだと思う。それらを踏まえて本書を企画/編集した。
 本書の特徴としては,2部構成でまとめたことである。Part Iでは健常者の運動に対する生理反応を中心に,Part IIでは疾患別/障害別の病態生理,運動時の反応や運動の効果の2つに分けた。Part Iもこれまでの運動生理学の書籍から脱却し,基本的な内容からさらに踏み込み,Part IIの疾病の理解を助けるような内容を含むように心がけた。そのため本書は,リハビリテーション医療の現場に則した内容にまとまっていると思う。
 本書の企画は,本邦の呼吸リハビリテーションの第一人者である市立秋田総合病院の高橋仁美先生が,編者の解良武士をメジカルビュー社へ推薦してくださったことから始まった。編者は本書のようなリハビリテーション運動生理学をまとめ上げたいと日頃から考えていたが,これまで実現できなかった編者にとって絶好の機会であった。このような機会を与えていただいた高橋仁美先生やメジカルビュー社の阿部篤仁氏には御礼申し上げる。また,多忙な研究,教育,臨床活動のなか,労を執られた執筆者の皆様にも深謝申し上げる。本書がリハビリテーション医療にたずさわる専門家の臨床の一助になること,ひいては,よりよいリハビリテーション医療の発展に貢献することを望む。

2016年9月
玉木 彰,解良武士
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目次

PartⅠ 基礎編 運動生理学の基本的知識
 1 筋の運動生理学 宮本俊朗
  1.筋収縮とエネルギー供給
  2.筋線維の種類とその特徴
  3.筋収縮における神経の役割
  4.筋の収縮様式と筋力

 2 換気の運動生理学 解良武士
  1.呼吸器系の構造
  2.換気メカニクス
  3.呼吸筋疲労
  4.呼吸中枢と呼吸調節

 3 ガス交換の運動生理学 玉木 彰
  1.ガス交換
  2.呼吸代謝
  3.呼吸代謝の指標
  4.運動時の呼吸循環応答

 4 循環の運動生理学① 椿 淳裕
  1.循環系の構造
  2.心周期
  3.一回拍出量,心拍数,心拍出量
  4.心血管の機能的特性
  5.心血管の自律神経系の調節
  6.血圧

 5 循環の運動生理学② 椿 淳裕
  1.重力に対する循環反応
  2.運動による循環反応
  3.最大酸素摂取量を規定する因子

 6 関節の運動生理学 塚越 累
  1.関節の構造
  2.関節の運動学
  3.関節の生理学

 7 体温の運動生理学 大谷秀憲
  1.体温と体熱バランス
  2.体温調節
  3.体温調節と外部環境
  4.運動と体温調節

 8 栄養の運動生理学 武部久美子
  1.栄養とは
  2.栄養素とその働き
  3.食物の摂取と消化・吸収
  4.エネルギー代謝
  5.栄養とリハビリテーション

 9 内分泌の運動生理学 万行里佳
  1.ホルモン
  2.運動時のホルモン調節

 10 身体組成 解良武士
  1.身体組成モデル
  2.基本的な身体計測学的指標
  3.身体組成指標とその測定方法
  4.身体組成測定法で得られる各指標
  5.身体組成の異常

 11 トレーニングの効果 有薗信一,三川浩太郎
  1.体力の概念
  2.トレーニングの実際
  3.体力トレーニング

 12 運動負荷試験 有薗信一,三川浩太郎
  1.はじめに
  2.運動負荷試験の目的
  3.運動負荷試験の方法
  4.心肺運動負荷試験
  5.運動負荷試験の結果の読み方と解釈

 12 フィールドテスト 有薗信一,三川浩太郎
  1.フィールドテスト

 付録 運動に関する諸計算 解良武士
  1.物理的運動強度と生理的運動強度
  2.運動強度の表し方
  3.各種の身体活動におけるエネルギー必要量の計算法
  4.求められたVO2から消費カロリーを計算する方法

PartⅡ 臨床編疾病の病態と運動制限の原因,および運動が及ぼす影響
 1 筋機能・関節障害と運動 長谷川 聡
  1.神経系の機能低下
  2.筋の肥大と萎縮
  3.筋疲労の仕組み
  4.関節障害:原因と病態

 2 呼吸機能障害と運動 玉木 彰,解良武士
  1.呼吸不全
  2.呼吸不全と運動制限

 3 心機能障害と運動 木村雅彦
  1.心不全
  2.循環と不整脈
  3.心臓弁膜疾患

 4 末梢循環障害と運動 森沢知之,大浦啓輔
  1.末梢動脈疾患
  2.深部静脈血栓症
  3.血管調節障害

 5 代謝疾患と運動 万行里佳
  1.糖尿病
  2.脂質代謝異常
  3.肥満症・メタボリックシンドローム

 6 骨粗鬆症と運動 藤田博曉
  1.骨粗鬆症の背景
  2.骨粗鬆症の定義と疫学
  3.骨粗鬆症の危険因子
  4.骨代謝について
  5.骨粗鬆症の診断
  6.骨粗鬆症に対する薬物療法
  7.骨粗鬆症に対する栄養療法
  8.骨粗鬆症に対する運動の効果
  9.おわりに

 7 腎機能障害と運動 忽那俊樹
  1.腎機能
  2.腎不全
  3.運動と腎機能

 8 加齢と運動 河合 恒
  1.加齢と老年症候群
  2.加齢による組織/機能への影響
  3.サルコペニア,フレイル
  4.高齢者のトレーナビリティ
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