IBD診療の極意
[Web動画付]

IBD診療の極意[Web動画付]

■編集 酒匂 美奈子
河口 貴昭

定価 9,020円(税込) (本体8,200円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  392ページ  オールカラー,イラスト75点,写真185点
  • 2025年11月8日刊行予定
  • ISBN978-4-7583-2391-8

近刊のため予約販売となります。


最適解への最短ルート! 豊富な症例で読み解くIBD診療の決定版誕生!

IBDは内科的治療の進歩が目覚ましく,治療薬の選択肢も拡がっているが,エビデンスの確⽴は途上段階にある。転院ケースを含め,⽇常診療で⾏き詰まる困難症例が少なくない。内科・外科の標準治療に加え,薬剤選択や栄養療法との効果的な組み合わせ,チームとして症状・病態を遷延化させないための介⼊のタイミングや重症化した際の対応など具体的な⽅策を紹介する。全国でも屈指のハイボリュームセンターとして知られる山手メディカルセンターならではの症例を基にIBDを体系的・網羅的に理解するための一書。


序文

推薦の序

 二十余年前,2002年に刊行された髙添正和先生監修の『炎症性腸疾患のすべて』は,わが国におけるIBD診療の指針として多くの医師に読み継がれてきました。臨床の現場で何度もページを開き,診断や治療方針を確認した経験をもつ読者も少なくないでしょう。あれから二十年を経て,分子生物学的知見,画像・内視鏡技術,そして治療薬の進歩は目覚ましく,IBD診療は新たな時代を迎えています。本書『IBD診療の極意』は,まさにその流れを受け継ぎ,次世代へとつなぐ1冊です。
 本書の特徴は,病態の基礎から最先端の治療戦略に至るまでを,最新の知見とともにわかりやすく体系化している点にあります。病理・免疫・遺伝といった根幹の理解を踏まえながら,分子標的薬やバイオマーカーを活用した診療の最前線までが丁寧に解説されています。難解になりがちな内容を,臨床家の目線で噛み砕き,実際の診療に直結する形でまとめ上げている点に,本書の真価があります。
 個人的には,私自身がこれまで取り組んできたMEFV遺伝子関連腸炎についても触れられていることに,深い感慨を覚えます。炎症性腸疾患の多様性や病態の層の深さを示す1例として,この分野の発展を改めて実感いたします。
 本書には,髙添門下として患者と真正面から向き合い,常に“患者目線”で診療を重ねてこられた多くの先生方の知識と経験が凝縮されています。単なる知識の集積ではなく,「患者の生活の質をいかに支えるか」「その人の人生にどう寄り添うか」という臨床の原点が随所に息づいています。
 IBD診療に携わるすべての医師・医療従事者にとって,本書は新しい時代の羅針盤となるでしょう。診断に迷ったとき,治療方針を考えるとき,あるいは患者と向き合う時間のなかで,ぜひこの書を手に取っていただきたいと思います。ここには,これまでの歩みと,これからのIBD診療の希望が確かに刻まれています。

2025年10月
仲瀬裕志

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刊行にあたって

 わが国における炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)患者数は年々増加し続けており,2023年時点で潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)患者は約30万人,クローン病(Crohn’s disease:CD)患者は約10万人と推定されています。筆者が勤務するJCHO東京山手メディカルセンターにも多くのIBD患者が通院しており,特定疾患医療受給者証所持者はUC:840名,CD:1931名(2024年度)にのぼります。
 当院の前身である社会保険中央総合病院(以下,社保中)に筆者が赴任した2004年当時,IBDに関する医学的知見や治療選択肢は今日と比べて限られており,重症例や複雑な症例への対応に悪戦苦闘する日々でした。そのときに頼りにしていたのが,2002年にメジカルビュー社から刊行された『炎症性腸疾患のすべて』でした。この本は当院炎症性腸疾患内科の開祖である髙添正和先生が編集を担われ,当時得られていた病態理解や臨床現場で直面する問題に対する実践的な答えが幅広く盛り込まれており,多くの臨床医にとって貴重な道標となっていました。Ⅶ章では「クローン病はそもそも難治性の疾患であり,ほとんど全例,治療にてこずる」と書かれており,まだまだ症例ごとに試行錯誤を重ねながら治療に臨んでいたことが多かったように思います。
 2005年からは,新たに着任した河口貴昭先生とともに,髙添正和先生,吉村直樹先生というIBD診療の第一人者のご指導の下,数多くの診療に携わってきました。当時は短腸症候群や癌の合併により,若いIBD患者を看取らなければならない場面も少なくありませんでした。その後,医療の進歩に伴い治療の主軸は外来へと移行しつつありますが,看護師,薬剤師,栄養士,診療放射線技師,ソーシャルワーカーをはじめ,各医療職の皆様は昔も今も変わらず患者に寄り添ってくださり,また院内各科の先生方が力になってくださることで今のIBD診療が成り立っています。
 社保中時代,そして2014年に東京山手メディカルセンターに改称されてからの10年余りの間,院内の仲間が増え,また全国から数多くの医師がIBDを学びに当院に来られ,多大なお力添えをいただいてまいりました。そこで今回,次世代のIBD診療を担う皆様に当院で培われてきた長年の経験と知識を還元するべく,IBDの臨床のコツや注意点などを伝える『令和版・炎症性腸疾患のすべて』をつくりたいと考えました。院内の現スタッフのみならず過去に勤務されていた方々にもお声がけしたところ,50名を超える方々より快諾をいただき,この『IBD診療の極意』が誕生することとなりました。
 本書では,疫学や病態の整理に始まり,実臨床で筆者らが大切と考えている比較的細かな事項に至るまで,最新のエビデンスを盛り込みつつ,当院ならではの経験知を豊富に含む内容になっています。本書が皆様にとって必要なときに必要な知識を提供する1冊となり,IBD診療に携わる仲間にとっての一助となりましたら幸いです。

2025年10月
編者を代表して 酒匂美奈子
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目次

第1章 疾患概念と基礎
1 IBD
 IBDの疾患概念(川島耕作)
 IBDの治療,T2T(川島耕作)
 特異的炎症性腸疾患と非特異的炎症性腸疾患 (菊池英純)
 IBDの疫学 (河口貴昭)
 腸内細菌叢や自律神経との関係(河口貴昭)
 
第2章 実践治療と患者管理
1 UCの診断と管理
 UCの臨床所見と症状(廣瀬雄紀)
 UCの確定診断までの流れ(白井真如紀,吉田篤史)
2 UCの重症度と臨床的意義
 UCの重症度判定基準(愛澤正人,鈴木康平,冨樫一智)
 UCのモニタリングと管理(平山敦大)
 UC重症化予防の方策(愛澤正人)
3 UCの治療〜軽症から重症まで
 UCの内科的治療(加賀谷尚史)
 UCの外科的治療と術後合併症(井上英美)
4 CDの診断と管理
 CDの臨床所見と症状 (篠原裕和,福澤誠克)
 CDの確定診断までの流れ(堀江義政)
5 CDの重症度と臨床的意義
 CDの重症度判定基準 (田中 龍)
 CDのモニタリングと管理 (一森俊樹)
 CD重症化予防の方策(藤原利成)
6 CDの治療〜軽症から重症まで
 CDの内科的治療 (北村和哉)
 CDの外科的治療と術後合併症(西尾梨沙)
7 IBD腸管病変の評価において重要な検査
 画像検査の使い分け (廣瀬雄紀)
 小腸X線二重造影とその他消化管X線造影検査 (奥田圭二,田中 靖,鵜沼清仁,吉田武史)
 上部消化管内視鏡検査 (齋藤 聡)
 下部消化管内視鏡検査 (廣瀬雄紀)
 バルーン式小腸内視鏡,小腸カプセル内視鏡検査 (園田 光)
 超音波検査 (岡野 荘)
 単純X線,CT検査 (桐生 茂)
 MRE検査(桐生 茂)
 臨床検体検査(血液・便・尿)(河口貴昭)
 病理組織学的評価(児玉 真,阿部佳子)
8 IBDにおける内視鏡治療
 UC関連腫瘍に対する内視鏡的治療 (岡本陽祐)
 CD狭窄病変に対する内視鏡的治療(園田 光)
9 肛門病変関連
 肛門病変の基本的な考え方と外科治療 (岡本欣也)
 肛門病変の内科治療(酒匂美奈子)
10 腸管外合併症
 合併しやすい皮膚疾患 (鳥居秀嗣)
 関節炎 (金子駿太)
 骨粗鬆症 (侭田敏且)
 免疫抑制下で留意すべき感染症と予防接種 (河口貴昭)
 IBDにおける腎機能障害 (鈴木淳司)
 IgA腎症 (若井幸子)
 合併しやすい泌尿器疾患 (加藤司顯)
 注意すべき肝胆道系合併症 (三浦英明)
 合併しやすい呼吸器疾患 (大河内康実)
 注意すべき耳鼻咽喉科疾患 (宮野一樹)
 眼病変,眼合併症 (地場達也)
 IBD患者の歯科合併症(中野雅昭)
11 癌化
 UCの癌化,CDの癌化(古川聡美)
12 高齢者IBD
 高齢IBD患者の注意点(北村和哉)
13 産婦人科関連
 IBDと婦人科疾患 (手塚真紀,小林浩一)
 周産期管理(酒匂美奈子,手塚真紀)
14 IBDの看護
 入院患者のケア (新井真理子,佐々木裕子)
 ストーマの管理(積 美保子)
15 栄養指導
 IBDの栄養管理の考え方と指導方法 (斎藤恵子)
 IBD食の調理方法の工夫(遠藤さゆり,森 未佳子)
 
第3章 困ったシチュエーション別症例
1 ステロイド治療遷延関連
 延びに延びてしまったステロイド治療,どうする? (岡野 荘)
 ステロイド離脱症候群への対応とステロイドカバー(山下滋雄)
2 重症・劇症・腸管合併症例
 IBDが救急搬送されてきた!救急外来での初期対応は? (大久保 亮,岡野 荘)
 重症・劇症UCの内科治療と外科連携 (平山敦大)
 UC術後の上部消化管病変 (園田 光)
 CDの狭窄,どうする? (岩本志穗)
 CDの大量出血,どうする? (岡野 荘)
 CDの瘻孔や膿瘍,どうする? (園田 光)
 入院IBDの栄養管理は末梢?TPN?経口?(愛澤正人)
3 高齢者のIBD症例
 高齢IBDが重症化,どうする?(西口貴則,園田 光)
4 短腸症候群関連症例
 短腸症候群に対する栄養管理と薬物治療 (西口貴則,酒匂美奈子)
 中心静脈カテーテル関連血流感染症(立石 翔,岡野 荘)
 その他の合併症(松田耕一郎)
5 癌化関連症例
 小腸癌(齊藤悠一,岩本志穗)
 痔瘻癌(大城泰平)
6 妊娠関連症例
 IBD合併妊娠で難渋したケース(手塚真紀,小林浩一,酒匂美奈子)
 
第4章 IBD患者の入退院支援と環境サポート
1 社会・包括的支援
 求められているサポートとシステム (柳田千尋)
 精神的支援(平井元子)
2 女性の支援
 妊娠期の支援指導(大久保 亮,酒匂美奈子)
3 小児の支援
 移行期医療と支援(酒匂美奈子)
4 AYA世代の支援
 就労支援(清水未来子)
5 高齢者の支援
 治療継続のための支援(山﨑 大,園田 光)

付録
 IBD関連薬剤一覧
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