Before-After動画から学ぶ

嚥下改善ポジショニング
[Web動画付]

嚥下改善ポジショニング[Web動画付]

■監修 戸原 玄

■編集 内田 学

定価 4,180円(税込) (本体3,800円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  148ページ  オールカラー,イラスト40点,写真280点
  • 2025年3月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-2280-5

「患者の姿勢のどの部分を見て,どう判断し,どう直したらよいのか」嚥下機能改善のための姿勢調整に役立つ実践本の誕生

嚥下機能改善のための姿勢調整にあたり,「患者の姿勢のどの部分を見て,どう判断し,どう直したらよいのか」を簡潔に示した書籍。
介入事例は脳卒中,運動器疾患,パーキンソン病,四肢麻痺をとりあげ,それぞれ「姿勢のくずれ方の軽症例〜重症例」に分けて解説。姿勢調整前後の患者の食事場面・姿勢調整中・姿勢調整前後の嚥下機能検査についての豊富な写真と動画を中心に,「食べるための姿勢調整」のコツを学べる。
嚥下機能障害のある患者にかかわる幅広い職種に役立つ1冊。


序文

監修の序

 摂食嚥下障害と診断されている方に限らず,食べることに問題を抱えた患者さんに対応する機会は多くあるはずである。しかし,過去に摂食嚥下障害,誤嚥性肺炎や低栄養などの情報があるか,もしくは患者さんから食べることが困難だという訴えがなければ,問題が顕在化しないこともあるだろう。
 自身は若いころに摂食嚥下リハビリテーションの勉強をし,特に訪問診療の場面に主軸を置いて活動してきた。1人で訪問診療を始めた当初,摂食嚥下機能のテストや検査方法を勉強して,その結果に応じた訓練を提供することで,ある程度の方には通用する,という感触はあった。しかしどうも自分の介入では改善できない症例があり,勉強をし直すうち,姿勢がとても重要であることに気づいた。いくら嚥下訓練を頑張っても,食事の姿勢が良くなければ上手に食べられない。これらは当たり前と思われるかもしれないが,気が付かなければ直すこと,直そうと思うことはない。
 それこそ編者の内田先生による姿勢調整についての講演を以前拝聴し,感じたことがある。星座版である。例えば,何も星座の知識がない人が山中できれいな夜空を見上げたときには,「きれいな夜空だ」と感じるだろうし,「都会とは違ってこんなに星があるんだ」ということも感じるであろう。しかし,星座のことをよく知っていたら,「ここには○○座が良く見えるな」というように,視覚としてとらえた情報に意味づけがなされる。それと同じような感覚があった。新しい知識を教えていただいただけことに加え,過去に自身で調べたことや,臨床場面での経験から得られた姿勢調整についての知識が一気につながり,何か1つの意味のある体系の一端が見えてくるようなイメージだろうか。
 摂食嚥下障害のある患者さんへのリハビリテーションにあたり,今まで嚥下訓練のみに目が向きがちだった先生方においても,見え方が変わることで,そこに姿勢調整を使った介入が可能となるはずである。また違った側面からいうと,特段食べることについての主訴がない患者さんでも,もしも姿勢が良くない場合には「食事がうまく食べられているだろうか」と気に掛けることにもつながるであろう。動画を見ることで先生ご自身も確認でき,患者さん本人やご家族と一緒に見てもらうことも有用なのではないだろうか。
 本書はリハビリテーション職にとってもちろん有用な書籍であり,食べることに問題を抱えた方にかかわるその他の職種にとっても重要な視点を授けてくれるだろう。「星」ではなく,「星座」をぜひとも見つけていただきたいと思う。

2025年2月
東京科学大学大学院医歯学総合研究科医歯学専攻老化制御学講座
摂食嚥下リハビリテーション学分野
教授 戸原 玄
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編集の序

 「食べる」行為に対して不安を抱えている患者さんは多く存在する。ほとんどの患者さんは,最後まで美味しい食事を今まで通りに味わいたいと思っているし,家族や友人とともに文化的な営みのなかで食事の時間を満喫したいと感じているに違いない。一方で,「食べる」行為に対する問題は多種多様の課題があるにもかかわらず,多くは加齢の影響,疾患特性などで片付けられており,専門的な評価や介入を行うことなく食事形態を調整するように強要されている患者さんも多く目にしてきた。私自身,摂食嚥下リハビリテーションに対する知識が希薄であった20年ほど前,ある介護保健機関で奇妙な光景を目にした経験がある。重症の片麻痺患者さんであったが,車椅子での座位姿勢を保持することも難しく,今にも車椅子から滑り落ちそうな姿で食席に移送されていた。食事の際にはひどいむせが生じていたことから,私自身も誤嚥や窒息の危険性が高いことを施設には伝えていた。翌週,この患者さんがむせることなく全量摂取されていることをうかがい,大変驚いた記憶がある。担当の介護職員に食事介助のコツをうかがった際に,「車椅子に移乗した後も座りやすい状態でいられるように座り直してもらうようにしている」というまったく想像していなかった回答が返ってきて混乱したことを覚えている。しばらくこの担当職員の仕事に同行し,介助技術を観察させていただいたが,すべての利用者さんに対して,座り直しや姿勢が崩れている方に対するポジショニングを実践していた。「自分たちが食べている姿に近い状態にすることを意識している」とのことで,確かに,この担当職員の勤務日は摂取率が高く,休みの日には「むせが出現したために中止」,「流涎が多く出現していたため提供を中止」などの記録が目立っており,介助者により能力が変容する様を目の当たりにした。
 姿勢と摂食嚥下機能は,決して交わることのない異なる機能のように感じている専門職も少なくない。しかしながら,私自身の経験からも言えるように,適切な食事姿勢を確保するだけでも今よりは安全に食べられる可能性が高くなるものである。姿勢と摂食嚥下の関係性を深く追求することで,交わることがないと感じている「姿勢」と「摂食嚥下機能」が直線的に繋がることが理解できる。
 過去に,メジカルビュー社より『姿勢を意識した 神経疾患患者の食べられるポジショニング』という書籍を出版しているが,細かなノウハウなどが理解しにくい印象があった。本書では,実際の症例に沿った異常姿勢と嚥下障害の捉え方,具体的なポジショニングの方法,注意点,嚥下造影検査や嚥下内視鏡の結果などをBefore-Afterの動画でまとめ,より理解度が高まるような1冊に仕上げた。
 座り方,座らせ方を意識すると「食べる」能力が今よりは改善する,という私自身が過去に感じた驚きを読者の皆様にお伝えできるものであって欲しいと願っている。

2025年2月
大阪医療大学(仮称)医療看護学部理学療法学科設置準備室
内田 学
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目次

Ⅰ 総論
正常嚥下のしくみ  大久保正彦,小谷朋子
代償的嚥下法  大久保正彦,小谷朋子
流涎・嗄声から考えられる嚥下障害  南都智紀
姿勢は嚥下にどう影響する?  内田 学
 頚部の問題で生じる嚥下障害  南都智紀
 体幹の問題で生じる嚥下障害  大河内莉花
 バランス障害で生じる嚥下障害  真鍋祐汰
姿勢が崩れるメカニズム  森 憲一

Ⅱ 実際の介入症例
脳卒中片麻痺
 脳卒中片麻痺(軽症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
 脳卒中片麻痺(中等症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
 脳卒中片麻痺(重症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
 脳卒中片麻痺(ベッドサイド,中等症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  藤本 潤
運動器疾患
 両変形性股関節症(軽症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
 右大腿骨骨幹部骨折(中等症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
 脊椎圧迫骨折(重症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
パーキンソン病
 パーキンソン病(軽症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  最上谷拓磨
 パーキンソン病(中等症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  渡邊拓磨
 パーキンソン病(重症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  内田 学
四肢麻痺
 四肢麻痺(軽症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  小林謙介
 四肢麻痺(中等症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  藤本 潤
 四肢麻痺(重症例) 姿勢崩れレベル★★★★★  髙瀨嗣久
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