亀田式 回復期リハビリテーション

亀田式 回復期リハビリテーション

■編集 永田 智子
松田 徹

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • B5判  304ページ  2色(一部カラー),イラスト60点,写真95点
  • 2024年6月21日刊行
  • ISBN978-4-7583-2262-1

信頼と実績の亀田リハビリテーション病院に学ぶ,回復期リハビリテーションとチーム医療のコツ

病院機能評価の高い亀田リハビリテーション病院の診療プロセス,臨床現場の事例に基づき,回復期リハビリテーション病棟における理学療法士を中心とした業務手順,およびADL向上を意識した疾患別のポイントを解説。各項目ごとに全体像がわかるフローおよびチェックリストを示し,ケーススタディでは疾患別・重症度別に時間経過の全体像を示しながらリハビリテーションの進め方を解説する。
さらに【亀田式のポイント】【外部審査で求められる視点】【科学的根拠に基づく視点】等の囲み記事で, 臨床経験豊富なセラピストが有する質の高い,エビデンスに基づいたリハビリテーションを提供するためのポイントを示す。
世界標準のハイクオリティなチーム医療を展開する【亀田式】のポイントを一望でき,回復期リハビリテーションにかかわる若手スタッフに役立つ1冊!


序文

 医療の高度化が進むなか,疾患治療と同期して急性期から回復期,生活期までシームレスにつながるリハビリテーション医療の重要性が高まっています。わが国では2000年の介護保険制度開始と同時に回復期リハビリテーション病棟制度が始まりました。それから約四半世紀が経過し,高齢化の進行と高齢者世帯の増加・世帯構成の変化により,家庭介護力が十分でない世帯は多くなりました。患者様の希望に沿って,住み慣れた家庭への復帰を効率的・効果的に目指すためには質の高いチームワークが求められます。集中的なリハビリテーション医療を提供できる回復期リハビリテーション病棟は全国に普及し今なお新規開設もあり,質管理として業務手順整備や職員教育は課題となっています。回復期リハビリテーション病棟では安全で効果的な機能回復を達成するために,疾患管理,質の高い個別訓練と栄養管理,生活機能を高めるあたたかな看護とケア,これらすべてをととのえ,急性期医療・退院後の生活期リハビリテーション・地域医療,そして暮らしの場とつながりをもつことが大切です。
 医療法人鉄蕉会 亀田メディカルセンターは,2009年にわが国で初めて国際的な米国の医療機能評価機構であるJCI(Joint Commission International)の認証を受けました。亀田メディカルセンターは,高度急性期医療を担う亀田総合病院,外来機能をもつ亀田クリニック,回復期リハビリテーション機能をもつ亀田リハビリテーション病院の3施設からなります。亀田リハビリテーション病院は亀田総合病院から600mほどの距離に位置する56床の単科病院で,約90%が亀田総合病院からの転院症例です。私たちの強みは,法人グループとして急性期から回復期,生活期まで,すべての治療フェーズと連携して医療サービスを提供できることです。法人本部には品質管理部門があり,定期的な業務マニュアル,手順書の整備,職員教育はルーティンとなっています。とりわけリハビリテーション事業部の職員教育,管理システムは歴史があり,各事業所をまたがり体系化されています。
 亀田リハビリテーション病院は2004年6月に開院し,20周年を迎えました。これを節目に,私たちが実践する基本に忠実な回復期リハビリテーション医療を形にしたいという思いから本書籍企画・発刊に至りました。私たちの提供する医療は,この地のくらしを肌で感じ寄り添う,基本に忠実な営みの連続です。亀田メディカルセンターで学び巣立っていく職員は多く,担当者が変わっても提供される医療の品質は担保されています。本書がリハビリテーション専門職の傍らに置かれ,寄り添う医療の一助となれば幸いです。
 最後に本書の発刊にあたり,執筆協力いただいた亀田メディカルセンター・リハビリテーション事業部・リハビリテーション科,関係者の皆様,企画・編集を通し伴走頂きましたメジカルビュー社編集部 榊原優子様に心から感謝いたします。

2024年5月
医療法人鉄蕉会 亀田リハビリテーション病院
院長 永田智子

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 令和4年度の診療報酬改定により,回復期リハビリテーション病棟では第三者によるプロセス評価を受けることが推奨されました。当院は2004年に開設され,翌2005年にISO9001(以下,ISO)の認証を取得,2018年には回復期リハビリテーション病院として日本初のJCI認証を受けるなど,品質改善に取り組んできました。
 本書は,当院がこれまで世界標準の業務品質管理の下に行ってきたチーム医療の経験から,多職種で活用可能な回復期リハビリテーション病棟の実践を解説する,若手セラピストに役立つ書籍を目指して発刊したものです。第2章,第3章は当院リハビリテーション室の診療管理マニュアルに基づく構成としました。当院の診療管理マニュアルはISO,JCI審査での要求事項への対応指針を包含した内容であり,職員教育に使用しています。当グループでは若手スタッフのローテーションを人材育成の柱としており,入職2年目以内のスタッフは,半年ごとの異動により,多様な病期・疾患の臨床経験を積むことができます。一方,この教育体制は当院配属セラピストの3割が半年ごとに入れ替わることを意味します。当院がローテーション教育を行いながら,診療アウトカムを維持できているのは,診療管理マニュアルによる診療プロセスの標準化によるといっても過言ではありません。
 本書では診療プロセスをフローチャートで提示し,各プロセスにおけるポイントや注意事項をチェックリストで示す形式を採用しました。この形式は,臨床経験が豊富なセラピストが有する高い質につながる視点や,判断基準などの「暗黙知」を「形式知」として見える化したものです。若手セラピストが診療プロセスをどのように進めればよいか迷い,行き詰まった際には,ぜひとも本書を開いてみてください。
 さらに本書は「外部審査で求められる視点」と「科学的根拠に基づく視点」について取り上げ,第4章のケーススタディでは,回復期リハビリテーション病棟で担当する頻度の高い疾患を対象に,典型的な経過を示す症例や難渋症例を通じて,質の高いリハビリテーションの実践例を示しました。本書を若手のセラピストだけでなく,新人指導や学生教育を担う中堅のセラピスト,今後第三者評価の受審を目指すベテラン管理者の皆様にも広くご活用いただきながら,ご批評いただけましたら幸いです。
 最後に本書の発刊にあたり,最後まで粘り強くご支援いただいたメジカルビュー社の皆様に心から感謝いたしま
す。
2024年5月
医療法人鉄蕉会 亀田リハビリテーション病院
リハビリテーション室 室長 松田 徹
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目次

第1章 回復期リハビリテーション総論
回復期リハビリテーション病棟の概要
 1 回復期リハビリテーションに求められる役割  永田智子
 2 回復期病棟の適応疾患と診療報酬(入院料)  松田 徹
 3 回復期リハビリテーションに求められる医療の質  村永信吾
 4 第三者評価  加藤俊明
 5 チーム医療におけるBalanced Scorecard(BSC)の活用  彦田 直
地域の医療機関等との連携とリハビリテーションの継続
 1 急性期病院との連携  白石哲也
 2 入院判定会議  松田 徹
 3 回復期リハビリテーションと生活期との連携  佐伯考一

第2章 回復期リハビリテーション病棟における診療の流れと関連業務
リハビリテーション診療プロセス
 1 リハビリテーション基本診療フロー  松田 徹
 2 予後予測①脳卒中  小澤里恵
 3 予後予測②脊椎・脊髄疾患  宮越浩一
 4 予後予測③運動器疾患  伊勢真人
 5 病棟ADL練習①食事  滝口智子
 6 病棟ADL練習②更衣  小林由佳
 7 病棟ADL練習③整容  小林由佳
 8 病棟ADL練習④トイレ  小林由佳
 9 病棟ADL練習⑤入浴  上村尚美
 10 病棟ADL練習⑥移動  上村尚美
 11 退院・転院援助①退院前訪問指導  松田 徹
 12 退院・転院援助②退院時指導  松田 徹
 13 退院・転院援助③社会資源の紹介  速水真紀江
 14 退院・転院援助④介護指導  滝口智子
 15 退院・転院援助⑤福祉機器紹介  髙橋友親
 16 退院・転院援助⑥社会制度  速水真紀江
 17 退院・転院援助⑦診療情報提供書の作成  松田 徹
 18 退院・転院援助⑧退院後のリハビリテーション継続  松田 徹
 19 運転再開  永田智子
 20 復職・復学支援  永田智子
 21 医療安全,患者参加の医療,人生会議  永田智子
 22 栄養管理  小堀咲枝里
 23 薬剤管理  阿部誠也
診療録および各種報告書の作成・管理
 24 診療録および各種報告書の作成・管理  松田 徹
診療関連業務
 25 義肢装具作製  永田智子
 26 書類・計測  永田智子
 27 診療記録チェック  加藤俊明
リハビリテーション治療の効果判定とリスクの予防・対応
 28 リハビリテーション治療の効果判定  松田 徹
 29 緊急時の対応①苦情・クレームへの対応  松田 徹
 30 緊急時の対応②インシデントへの対応  清水まみ
 31 緊急時の対応③体調不良時の対応  須貝尚樹
 32 リハビリテーションにおけるリスクと予防①運動負荷を伴う訓練を実施するための基準  須貝尚樹
 33 リハビリテーションにおけるリスクと予防②リハビリテーション中のリスク管理  須貝尚樹
 34 リハビリテーションにおけるリスクと予防③転倒・転落スクリーニング評価  清水まみ
 35 リハビリテーションにおけるリスクと予防④疼痛管理  髙橋友親

第3章 チーム医療による回復期リハビリテーションの実践
入院時の多職種による評価
 1 入院時の多職種による評価  加藤俊明
総合実施計画書の作成と患者・家族への説明
 2 総合実施計画書の作成と患者・家族への説明  永田智子
カンファレンス・各種回診によるコミュニケーション
 3 リハビリテーションチームカンファレンス  苗井祐士
 4 栄養サポートチーム(NST)カンファレンス・回診  小宅綾希
 5 ADLカンファレンス・回診  上村尚美
 6 装具カンファレンス・回診  清水まみ
 7 リハビリテーション病棟回診  加藤俊明
医療の質・安全管理委員会,チームの活動
 8 転倒・転落防止対策チーム  清水まみ
 9 骨粗鬆症リエゾンチーム  清水まみ
 10 急変時対応チーム  山本昌範
 11 感染対策チーム(ICT)  髙橋友親
 12 防災対策チーム  苗井祐士
院内感染対策・COVID-19への対応
 13 院内感染対策・COVID-19への対応  永田智子
院内での情報共有ツールの活用など
 14 院内での情報共有ツールの活用など  永田智子

第4章 ケーススタディ
疾患別・重症度別のリハビリテーションの進め方
 1 脳卒中①短下肢装具を作製し家屋環境評価後に
訪問リハビリテーションへ継続した症例  加藤俊明,永田智子
 2 脳卒中②長下肢装具療法で介助量軽減し気切孔閉鎖後
経口摂取可能となった症例  須貝尚樹,伊勢真人
 3 脳卒中③片麻痺・高次脳機能障害がある転倒反復症例―チームアプローチの実際―  湯澤優美,伊勢真人
 4 脳卒中④入院中から院外諸機関と連携し運転再開・復職した症例  永田智子
 5 大腿骨近位部骨折①二次性骨折予防の実際と計画的な家屋環境調整を行い在宅復帰した症例  小宅綾希,永田智子
 6 大腿骨近位部骨折②下肢腫脹から深部静脈血栓症診断につなげた症例-リスク評価と2チャレンジルール-  須貝尚樹,永田智子
 7 大腿骨近位部骨折③COVID-19院内対応下でリハビリテーションを実施した症例  苗井祐士,永田智子
 8 脊椎圧迫骨折①保存的治療:コルセット作製,装着指導した症例  苗井祐士,小山照幸
 9 脊椎圧迫骨折②再骨折例の疼痛観察とリスク管理,指導を行った症例  田中幸輝,小山照幸
 10 脊髄損傷①家事動作練習を強化した不全四肢麻痺症例―訪問・外来リハビリテーションとの連携―  小宅綾希,永田智子
 11 脊髄損傷②摂食動作を獲得した四肢麻痺症例-食器・食具の工夫とポータブルスプリングバランサーの活用-  小林由佳,永田智子
 12 下肢切断:糖尿病性足壊疽による切断症例―下腿義足作製と復職支援―  清水まみ,永田智子
 13 廃用症候群①肺炎後に心不全を合併した症例―リスク管理・観察のポイント―  小山照幸
 14 廃用症候群②脳梗塞後の急性膵炎,サルコペニア症例―栄養管理と運動負荷調整―  小宅綾希,小山照幸
社会的因子に即した退院支援の進め方
 15 経済的困窮者への支援事例:生活保護受給者に対する行政との連携  上村尚美
 16 家庭介護力不足症例への退院支援―在宅支援者との協業・包括的アプローチ―  湯澤優美
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