外来で行う 子宮頸がん・体がん診断

早期発見のポイント

外来で行う 子宮頸がん・体がん診断

■著者 宇津木 久仁子
杉山 裕子

定価 6,380円(税込) (本体5,800円+税)
  • B5判  176ページ  オールカラー,イラスト30点,写真120点
  • 2020年10月2日刊行
  • ISBN978-4-7583-1993-5

産婦人科医のための子宮頸がん/子宮体がん検診の実践的解説書

がん検診で行われる「子宮頸がん」「子宮体がん」を対象に,婦人科における実施方法を解説。また子宮頸がん検診は産科専門施設でも行う例があり,産科医向けに婦人科がん検診のポイントを示した。
コルポ診をカルテにどのように記載するか,また細胞採取はどのような器具を用いてどのように行うと確実か,などの実用的なところに焦点を絞っており,日本においてはますます増加が予想される子宮頸がん,子宮体がんの検診に有用な書籍。


序文

 子宮頸がんは女性で5番目に多いがん(2017年)であり,検診によって罹患率が減少することが明らかです。まだ若い人たちが多く罹患しますので,単なる生命を脅かす疾患というのみでなく,今後の妊孕性にもかかわります。
 ほとんどの子宮頸がんはHPVを原因として,異形成という途中経過をたどりますので,早期に発見することに大きな意義があります。HPVワクチンの接種や,がん検診を受けることで,がんを避けることができます。そのためには産婦人科医が,がんのみつけ方について詳しく知っている必要があります。
 産婦人科の研修は多岐にわたるため,専門性の異なる施設では,必ずしもがん診断について詳細を習得していない医師もいるでしょう。またコルポスコピーについては,直接指導を受けていないという医師もいると思います。
 子宮体がんも細胞診という手段を使って直接細胞を採取できる疾患です。経腟超音波の所見を鑑みながら細胞診を施行することで,良性の腫瘍や前癌病変,悪性腫瘍を早期にみつけることが可能です。
 がんの診断は最終的に組織診,がんの局所的な広がりはMRIで判断しますが,組織診やMRIを行うまでの過程として,今述べたように子宮頸部では細胞診,コルポ診,子宮体部では経腟超音波,細胞診が,がんをみつける最初の一歩となります。この本では,外来で産婦人科医自身が行うがん診断のための最初の一歩について述べたいと思います。がん研有明病院に25年勤務し,実臨床で学んだ経験を反映できれば幸いです。
 本書の刊行に関しては,メジカルビュー社の浅見直博さん,工藤亮子さん,大久保彩音さんの多大なる御協力に感謝します。また病理診断の御指導をいただいたがん研有明病院前病理部部長の高澤 豊先生,昭和大学豊洲病院臨床病理診断科教授九嶋巳樹先生,公益財団法人がん研有明病院および総合母子保健センター愛育病院の関係者の皆様に深謝いたします。

2020年9月
がん研有明病院健診センター検診部部長
宇津木久仁子
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目次

Part Ⅰ がん検診
 Chapter 1  がん検診とは
  がん検診
  がん検診の種類
  [Column]  「健診」と「検診」の違い
 Chapter 2  婦人科がん検診とは
  [Column]  「子宮がん検診異常なし」の功罪
  [Column]  細胞診専門医とは
 Chapter 3  子宮頸がん検診(対策型)とは
  [Column]   最新の「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン(2019年)」で新たに記載された内容
 Chapter 4  子宮頸がん検診(対策型)のワークフロー
  問診
  視診 
  子宮頸部の細胞採取
  内診
  精密検査
  [Column]  痛くない子宮頸がん検診を心がける
 Chapter 5  子宮体がん検診(対策型)とワークフロー
  子宮体がん検診(対策型)
  [Column]  リンチ症候群(Lynch症候群)とは
  問診時の注意点
  内診時の注意点
  子宮内膜細胞採取法
  精密検査
  [Column]  子宮内膜細胞診の検出感度に関して

Part Ⅱ 子宮頸がんの診断
 Chapter 1  子宮頸がんの診断とは
  子宮頸がんとは
  子宮頸がんの診断
 Chapter 2  子宮頸部細胞診とは
  細胞診
  子宮頸部細胞診
  [Column]  子宮頸部前癌病変の分類について
 Chapter 3  適切な子宮頸部細胞の採取部位とは
  閉経前
  閉経後
 Chapter 4  適切な子宮頸部細胞採取器具と手技とは
  子宮頸部細胞採取器具
  採取器具別子宮頸部細胞採取法(手技)
  [Column]  Jフィットブラシとサーベックスブラシの違い
 Chapter 5  適切な子宮頸部細胞の検体処理法とは
  細胞塗抹と固定法
  [Column]  検体処理法
 Chapter 6  ベセスダシステム(子宮頸部擦過細胞診報告様式)とは
  ベセスダシステムと日母クラス分類の違い
 Chapter 7  不適正検体とは(器具・年齢による細胞採取量の違い)
  不適正検体
  年齢・採取器具による細胞採取量の違い
 Chapter 8  ASCとは
  意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)とは
  高度扁平上皮内病変を除外できない異型扁平上皮細胞(ASC-H)とは
  [Column]  エストリール腟錠の効果
 Chapter 9  AGCとは
  特定不能な異型腺細胞(AGC-NOS)とは
  腫瘍性を示唆する異型腺細胞(AGC-FN)とは
 Chapter 10 子宮頸管内病変の注意点
  子宮頸管内病変の症例
 Chapter 11 HPV検査とは
  HPVについて
  HPV検査とは
  [Column]   なぜHPVワクチン受診勧奨が進まないのか~産婦人科の立場から~
 Chapter 12 HPV検査の実施法
  HPV検査の実施法
  HPV検査の手技
  [Column]  たかが内診,されど内診
  診察の順序
 Chapter 13 コルポスコピー
  ねらい組織診
  [Column]  コルポスコピーのヒント
  コルポスコピーはどういうときに使うのか
 Chapter 14 コルポスコピーの方法
  SCJと移行帯の位置
  コルポスコピーの実際
 Chapter 15 所見の書き方,記録の残し方
  総合評価
  正常所見(酢酸加工,グリーンフィルターも含め)
  異常所見
  浸潤癌所見(IC)
  非特異的所見
  その他の非癌所見
 Chapter 16 組織採取の器具(生検鉗子の選び方)
  平坦な部位での採取のポイント
 Chapter 17 コルポスコピー下での最適な生検箇所
  組織診後の諸注意
 Chapter 18 結果の判定とその後の方針
  [Column]  妊娠中のコルポスコピーや組織診の取り扱い

Part Ⅲ 子宮体がんの診断
 Chapter 1  子宮体がんの診断とは
  子宮体がんとは
  子宮体がんの診断法
  [Column]  妊孕性温存療法とは
 Chapter 2  子宮内膜細胞診とは
  子宮内膜細胞診とは
  子宮内膜細胞診と組織診の採取器具
  子宮内膜細胞診と組織診の違い
 Chapter 3  適切な子宮内膜細胞の採取法とは(採取法,手技)
  吸引法
  擦過法
 Chapter 4  子宮内膜細胞採取器具の種類と特徴
  子宮内膜細胞採取器具の種類
  子宮内膜細胞採取器具(擦過法)の特徴
 Chapter 5  適切な子宮内膜細胞の塗抹と固定法とは
  適切な子宮内膜細胞の塗抹と固定法とは
  器具・年齢による取れ方の違い
  検体処理法による細胞像の違い
 Chapter 6  子宮内膜細胞診報告様式に関して
  子宮内膜細胞診報告様式に関して
  異型内膜細胞(ATEC)とは
 Chapter 7  子宮体がん早期発見のコツとは
  早期子宮体がんの臨床病理学的特徴
 Chapter 8  子宮体がん発生に関する新しい知見
  2種類の子宮体がん
  2種類の類内膜癌
 Chapter 9  超音波による補助
  典型的な超音波像
 Chapter 10 子宮内膜細胞診で異常がある場合の検査
  組織診が必要となる場合
 Chapter 11 組織採取の器具と特徴
  組織が採取されない場合
  細胞診や組織診で子宮穿孔した場合
 Chapter 12 組織診の結果の判定とその後の方針
 Chapter 13 組織診施行後の留意事項
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