PCIのための虚血評価

FFRスタンダードマニュアル

(2015年刊『FFRのすべて』を改題し改訂)

FFRスタンダードマニュアル

■編集 田中 信大

定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
  • B5判  272ページ  オールカラー,写真200点
  • 2019年3月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1954-6

いまPCIを行う際に必要とされる虚血評価。その代表的なモダリティであるFFR(冠血流予備量比)を理解し,使いこなすためのPCI術者必携の一冊

2018年春の保険改定により,安定冠動脈疾患に対するPCI治療時に虚血評価を行うことが義務付けられた。今後,FFR(冠血流予備量比)をはじめとする虚血評価を行ったうえで,PCIを施行するか否か,薬物治療を施行するか等の治療戦略を決定することとなり,今まさに多くの循環器内科医は虚血評価を学び,その技法を身につける必要に迫られている。
『FFRのすべて』が2015年3月に刊行されて以降さまざまなFFRの新しいエビデンスが発表され,FFRによる虚血評価を基とした適切な治療法選択の重要性が明らかにされてきている。このたび,『FFRのすべて』に続きFFRについて一冊ですべて理解できる書籍として構成するとともに,最新のエビデンス・症例の収載,注目されつつある他のモダリティまで解説し,より治療に結びつけた実践的な内容として虚血評価と冠動脈疾患の治療につき解説する。


序文

FFR:For the Patient.

 本テキストの前身,初版ともいうべき『FFRプラクティカルガイド』(2007 年,中山書店)は当時,FFR計測のためのpressure wireの日本での販売数が最も落ち込み,そのまま消えゆくような勢いのなか,この FFR の有用性を広く知ってもらうべく発刊した。同じ年, 新たな光明を模索しオランダのNico Pijls教授のもとへ学びに行ったが,欧州ではFFRの 使用は確実に拡大してきており,臨床に根付いた力強さを感じた。まさに FAME 試験の登録が終盤にかかり,その良好な結果が期待されていた時期である。
 2008 年 FAME 試験が発表されたことにより,その後は日本でもFFR使用が確実に増加 の一途をたどった。しかし使用施設・医師が増えるにつれ,FFRに対する理解度は大きな 格差を生じることになり,カテ室スタッフの困惑の声も聞こえるようになった。そこでFFRにかかわるすべての医療従事者の理解を深めるため,第 2 版ともいうべき『FFRのすべて』(メジカルビュー社)を2015 年に発刊するに至った。FFRの広がりはカテ室にとどまらず,冠動脈CTを用いたFFR-CTや,新しい概念として提案されたiFRが出現してきた時期である。
 その後FFRに関連するエビデンスが数多く発表され,既に欧米のガイドラインではFFRの使用が推奨されていたが,日本のガイドラインも今春2019年版でFFRの推奨を掲載す る予定である。このタイミングで第3版といえる『FFRスタンダードマニュアル』を発刊 できることとなったのは,この上もない喜びである。
 私の最初の恩師は,“論文を一流誌に載せてもいずれ忘れられる,残り続ける教科書となるような仕事をしなさい,教科書を書きなさい” と,研修医の私に冠循環の基礎に関する英文の教科書を3冊ほどくださった(今も未読のまま,それでも本棚の中段に並べている)。 その後も師に恵まれ,研究の厳しさ,臨床の大切さ,臨床に残るための研究を学び,それぞれの領域の “ 教科書 ” の一部を執筆する経験もさせていただいた。本テキスト作成にあたり,その影響は多大であり,感謝の念に堪えない。恩師の書かれた教科書に比べると,私の書いてきた書はあまりに未熟で,数年での改訂を要するものであり,恥ずかしい限りである。しかし,この領域の最近の進歩は著しく,新たな内容を含み再度書き直すことの意義を強く感じ,2019年 “スタンダードマニュアル” として発刊する運びとなった。FFRを通じて国内外に多くの仲間ができた。特に,FRIENDS Liveでのつながりは,同じ志をもった友であり,本テキスト作成にも多大なるご協力をいただけたことに深く感謝している。
 全ては患者のために。
 “For the patient. Not only for the present patients, but also for the future patients.”
 より多くの患者に良好な予後が届けられることを望む。

2019年2月
東京医科大学八王子医療センター循環器内科教授
田中信大
全文表示する
閉じる

目次

Ⅰ 基礎編 FFRを知る,わかる
 冠循環の基礎  田中信大
  冠循環の特徴
  冠血管抵抗
  自己調節能auto-regulation
  冠動脈狭窄前後の圧較差と冠血流の関係
  反応性充血と冠血流予備能(CFR)
  冠血流速波形パターン
 [コラム]反応性充血現象(reactive hyperemia)  川瀬世史明
  Reactive hypermiaの臨床応用の試み
  Reactive hypermiaの臨床応用
  Reactive hypermiaの問題点
 FFRの理論  田中信大
  圧較差と冠血流予備量比(FFR)
   FFR の論理的根拠
  冠血流-冠内圧関係曲線
 iFRの理論  松尾仁司
  瞬時冠内圧比(iFR)の概念と意義
  iFRとFFR,CFRとの一致率
  iFR計測のtips and tricks
 FFR-CTの理論  大竹寛雅
  FFR-CTの基本概念
  cCTAデータを基にした患者固有の解剖学モデルの作成
  FFR-CTの基礎となる生理学的原理
  FFR-CTに対するモデルの不確実性の影響の評価
 FFR/iFR測定の基本手技  田中信大
  機器(インターフェース)の設置,初期設定
  セットアップ
  Equalization/Normalization
  冠動脈内へのワイヤー挿入
  最大充血状態の惹起
  PCI中のモニタリング
  圧引き抜き曲線の記録
  PCI手技終了時点の評価
  圧ドリフトの確認
 FFR/iFR測定の際のピットフォール  田中信大
  不正確な計測値となりうる原因
  最大充血を惹起する薬剤に関する注意点
  ガイディングカテーテルの影響
  血圧変動の影響
  末梢病変の影響
  アコーディオン現象
  Reverse mismatch
 核医学検査との関係  肥田 敏,田中宏和
  負荷心筋血流SPECT
  心筋虚血の検出の診断精度
  SPECT像の診断法
  負荷心筋SPECT検査と予後との関連
  心筋血流異常範囲と治療法の選択
  心電図同期心筋SPECT:QGS
  心臓核医学検査とFFR
  冠動脈多枝病変例における虚血診断
 IVUS・OCTとの関係  園田信成
  IVUS・OCTの役割
  FFRとIVUS・OCTとの関係
  新たな代替指標の試み
  冠動脈プラークとFFRとの関係
  IVUSガイドPCI vs FFRガイドPCI
 FFRのエビデンス  田中信大
  虚血閾値をあらわすFFR 値
   DEFER study:PCI 適応決定におけるFFR
  FAME study:多枝疾患患者のPCI 適応決定におけるFFR
   Functional SYNTAXスコア
  FAMEⅡ study:FFRガイドPCI vs OMT(至適薬物療法)
  CVIT-DEFERレジストリー:日本人におけるFFRガイドPCI
  FFRの閾値:0.75 or 0.80,それとも0.64?
 iFRのエビデンス  塩野泰紹,赤阪隆史
  iFR の診断性能に関するエビデンス
  iFRガイドの冠血行再建に関するエビデンス
  ガイドラインなどでの iFR の扱いについて

Ⅱ 実践編 FFRを使いこなす
 安定冠動脈疾患におけるFFR  田中信大
  SCADとIHD
  SCADの診断アルゴリズム:FFRをいつ行うのか?
  SCADに対する米国版AUC
 左主幹部病変の評価  進藤直久
  CAGで十分か?
  血管内超音波(IVUS)とFFRの関係
  LMT病変をFFRで評価した場合の予後
  LMT病変におけるFFR計測の注意点
  末梢病変が混在する場合のLMT病変の評価
  新しい安静時指標によるLMT病変の評価
 重複病変(tandem lesion)・びまん性病変(diffuse lesion)の評価:FFR  田中信大
  重複病変の評価・治療
  びまん性病変に対するPCI後の評価
 重複病変(tandem lesion)の評価: iFR  川瀬世史明
  iFRのFFRに対する冠拡張剤不使用以外のメリット
  iFRを使用した治療後の結果予測
  iFRとFFR の治療結果予測の比較
  iFRによる治療結果予測の問題点
 分岐部病変の評価  田中信大
  側枝の治療適応とFFR
  Provisional stentingにおけるFFR
 多枝病変におけるFFR  田中信大
  多枝病変症例における虚血評価:FFR ガイドCABG
  機能的病変枝数
  Functional SYNTAXスコア
  SYNTAXⅡ study
 陳旧性心筋梗塞におけるFFR  肥田 敏
  心筋梗塞領域のFFR測定
  陳旧性心筋梗塞症例におけるFFR
  症例提示
  亜急性心筋梗塞におけるFFR
  急性心筋梗塞におけるFFR
 急性冠症候群におけるFFR  田中信大
  虚血の強さとFFR
  不安定狭心症におけるFFR
  急性心筋梗塞における他枝残存病変の評価
  急性冠症候群におけるFFR/iFRガイドのdefer strategy
 ステントレスPCI手技の際のFFR  田中信大
  POBA後の解離とFFR
  POBA後リコイルの評価
  FFRガイドのDCB
 ステント拡張評価におけるFFR  田中信大
  FFRガイドステント留置
  ステント拡張状態(圧着,不十分拡張)の評価
  ステント端の解離の評価
  IVUS/FFRガイドステント留置においてもFFR改善不良が残存する症例
 Post stent FFRの考え方  山下 淳
  Post stent FFRで何がわかるか?
  BMS時代の研究からわかること
  DES時代のpost stent FFR
  DESでのpost stent FFR のカットオフ値
  Post stent FFRを実臨床に活かすために
 [コラム]末梢血管EVTにおける血管内圧測定  村田直隆
  従来の手法と問題点
  腎動脈狭窄に対する血管内圧測定とEVT
  下肢動脈狭窄に対する血管内圧測定とEVT
  症例
 冠微小循環障害と冠内圧  田中信大
  冠微小血管抵抗指標:h-MRv,HMR
  冠微小血管抵抗指標:IMR
   FFR/CFR比
  症例
  冠血流速-冠内圧関係曲線
 [コラム]冠微小循環の評価としてのIMRのエビデンス  村井典史
  IMRの背景とその特性
  ST上昇型急性心筋梗塞における冠微小循環障害の評価
  STEMI以外の虚血性心疾患におけるIMR
  移植心における微小循環障害の評価におけるIMR
 [コラム]FFR-CTによる診断戦略の変化  大竹寛雅
  FFR-CTの診断性能に関する臨床試験
  診断および治療方針,費用,ならびにQOLに対するFFR-CTの影響
  CAGおよび血行再建術に対する信頼性の高いゲートキーパーとしてのFFR-CT
  侵襲的FFRを省いたPCIに関する適切な意思決定
  びまん性狭窄に対するFFR-CTの有用性
 [コラム]FFRデバイスの使い分け  岩淵成志
  Abbott社
  Philips社
  ゼオンメディカル社
  Boston Scientific社
  ACIST社
 [コラム]DEFER病変は安全か そのエビデンスと経過観察のタイミング  蔵満昭一
  DEFERの意義
  FFRによるDEFERのエビデンス
  ACS残枝のFFRには注意が必要?!
  Gray-zoneのDEFERは安全か?
  DEFER病変をどう管理するか?
 [コラム]DEFER病変のOMT  横井宏佳
  DEFER病変とは
  OMTとは何か

Ⅲ 症例解説
 1 灌流領域の広さは,FFRの重要な規定因子の一つである  田中信大
 2 FFRはさまざまな病態における冠循環評価が可能である  田中信大
 3 Functional SYNTAX scoreを臨床例に活かす  川瀬世史明
 4 重複病変におけるiFR:ステント留置プランニング  塩野泰紹,赤阪隆史
 5 FFR-CTは石灰化病変にも有効  川瀬世史明
 6 特殊な病態ではFFR・iFRの解釈に注意が必要  松尾仁司
 7 Deferした病変(特に不安定粥腫)には強力な内科治療が必須  清水昭良,園田信成
 8 4Fr診断カテーテル使用時には圧波形に要注意  寺井英伸
全文表示する
閉じる

関連する
オススメ書籍

最近チェック
した書籍・雑誌

会員登録されている方

メールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。

注)共有パソコンの方はチェックを外してください。

会員登録されていない方

会員登録されると次回からお客様情報をご入力いただく必要がありません。
また,購入履歴の確認ができる便利な機能がご利用いただけます。

個人情報の取り扱いについてはこちら