脳性麻痺 運動器治療マニュアル

脳性麻痺 運動器治療マニュアル

■編集 粟國 敦男
金城 健

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • B5変型判  162ページ  2色(一部カラー),イラスト40点,写真60点
  • 2020年11月2日刊行
  • ISBN978-4-7583-1888-4

児の5年後,10年後を見据えた継続的かつ包括的な治療を行うために臨床で使える実践的な内容を厳選!

脳性麻痺による運動障害は,小児神経科・整形外科・脳神経外科・リハビリテーション科が治療に当たり,症状に合わせたオーダーメイド治療が求められる。そのために合同カンファレンスを毎月開催している沖縄県立南部医療センターのノウハウを一挙公開!
児の5年後,10年後を見据えた継続的かつ包括的な治療を行うために必要な脳性麻痺の基礎知識から内科治療・外科治療,リハビリテーション,装具治療まで,臨床で使える実践的な内容を厳選してタイプ別の治療の使い分けを具体的に記載,また原因不明骨折を予防するためのチーム活動についても紹介。
徒手検査の仕方や児の観察の仕方,術前・術後の比較などの動画も付いた充実の1冊!


序文

−子どもは待てない。
  今,この時にも子どもの骨格はかたちづくられ,
   その血肉はつくられ,
    その知能は発達している−

 チリの詩人,ガブリエラ・ミストラルがユニセフに贈呈した詩の一節です。
 脳性麻痺(CP)とは「生後4週以内に起こった脳の非進行性病変に基づくものである。症状は持続かつ変化し,満2歳までに発現する」と定義されています。病変は非進行性ですが日々成長する身体(脳脊髄,筋肉,骨,関節)に作用して障害の「ありよう」は日々刻々と変わり,徐々に不可逆的な変化を生じます。詩の一節が示すように,CP 児の治療は待てないのです。治らない障害であるだけに生涯にわたってケアを要します。患児の成長という時間軸のなかで数年後,十数年後を思い描いた長期的・包括的ケアが必要であり,治療介入のタイミングは重要です。多くの患児をケアしてきた多職種専門家の経験と知識を持ち寄り患児のケアに生かすことが大切です。
 本書の内容は,沖縄県内2つの療育医療センターと当科が合同で行っている多施設・多職種の合同カンファレンスで培われたものです。元県立那覇病院院長,長嶺㓛一先生が県立中部病院整形外科在職中の1985 年に,当時の沖縄小児発達センター園長,故・落合靖男先生と共に立ち上げたことに始まります。以来35 年間,このカンファレンスで子どもたちの手術適応を検討してきました。
 その歩みのなかで醸成されたCPケアの考え方,治療選択肢,適応などを後輩にわかりやすく伝え,継承するために今回,『脳性麻痺 運動器治療マニュアル』を著しました。
 特別にCP治療の第一線でご活躍中の県外の先生方にもご執筆をお願いしました。CP筋緊張に対する内服治療の実用的な知見を萩野谷和裕先生,当科未踏の課題である神経筋性側弯症ついてチャレンジングな治療の取り組みを中村直行先生,また障害児・者施設内で発生する骨折の予防について実践経験から青木清先生に寄稿して頂きました。卓越した3論文は我々の今後の活動に励みとなり,刺激剤になるものと思います。
 本書がCP児・者と共に歩むスタッフの皆様の一助となり,また1つでも多くの合同カンファレンスチームが新たに誕生するきっかけとなることを願います。本書がCP児とご家族の生活の質の向上に少しでも寄与できれば幸いです。多忙ななかご執筆頂いた先生方,メジカルビュー社編集部の矢部涼子様に心より感謝いたします。

2020年10月
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 整形外科部長
粟國敦男
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目次

Ⅰ 基礎知識
■脳性麻痺の基礎知識  當山 潤
 定義
 診断
 病的所見
  姿勢や反射の異常/筋緊張の異常 /不随意運動など
 疫学
 病型
  質的分類 /広がりの分類
 頭部MRI 検査
  PVL /基底核視床病変/分水嶺梗塞;傍矢状脳損傷(parasagittal injuries)ともよぶ/多嚢胞性脳軟化症
 粗大運動能力分類システム;拡張・改訂されたもの
  GMFCS-E&R
■脳性麻痺児の診察  粟國敦男
 診察の心得
 脳性麻痺児の診察
  姿勢と運動/関節可動域/ハムストリング緊張テスト/股関節外転/股関節内・外旋/Ely test/大腿直筋緊張試験:rectus tightness test/臨床的大腿骨前捻角の計測/下腿外・内捻の計測/神経学的検査/Modified Ashworth scale(MAS)/粗大運動能力尺度(GMFM)とアイテムマップ(Item Map)
■チームアプローチ  金城 健
 チームアプローチの必要性
  痙縮治療の必要性の評価/症例のゴールと治療目標の設定・共有/多職種・多施設合同カンファレンス/継続性と包括的治療/多職種・多施設合同カンファレンスの課題

Ⅱ 薬物療法・手術療法
■痙縮治療:総論  金城 健
  ボツリヌス(BoNT)療法
  選択的後根切断術(SDR)
  SDRのよい適応/SDR成績不良要因/SDRの利点と問題点
  バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法
  ITB療法の利点と問題点
  併用療法の必要性
  まとめ
■痙縮治療:各論① 内服薬 萩野谷和裕
 内服薬による治療
  ジアゼパム/ダントリウム/バクロフェン/チザニジン/トリヘキシフェニジル/ガバペンチン/フェノバルビタール/リスペリドン/レボドパ・カルビドパ/トリクロホスナトリウム
 CP 児の疼痛,突発性交感神経過緊張(PSH),ジストニア重積
■痙縮治療:各論② ボツリヌス(BoNT)療法  安里 隆
 BoNT 療法の適応と禁忌,およびその効果は?-『脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2 版』より
  目的/適応/効果の限界
 施注の実際
  麻酔/投与量・濃度/施注筋の同定
 有害事象
  筋力低下/頚部への施注/発熱/筋萎縮
 後療法・リハビリテーション
  拮抗筋の促通/家族による施注筋のストレッチ/施注後ギプス矯正(シリアルキャスト)療法/装具療法
 反復投与に関して
 症例提示
  症例1/症例2
■痙縮治療:各論③ バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法  金城 健
 治療概要
 バクロフェンの作用機序
 ITB 療法の適応
 スクリーニング
  トライアル困難症例/当院のスクリーニングの検討
 手術の実際
  術前準備:体位と透視の配置/穿刺・カテーテル設置・筋膜への固定/ポンプ設置のための腹部筋膜下ポケット作製/皮下トンネル形成とカテーテル接続/ポンプ準備とポンプ設置
 筋膜下設置の必要性
 当院の小児ITB 療法の概要
 ITB 療法の利点と問題点
  ITB療法の利点/ITB療法の問題点
 小児ITB 療法の問題点・論点
  ポンプ設置可能な年齢・体格/カテーテル先留置の高位レベル/併用療法の必要性
 症例提示
  症例1/症例2
■痙縮治療:各論④ 選択的後根切断術(SDR)  粟國敦男
 手術適応
 手術の実際
  術前準備/体位・麻酔/皮切~馬尾の展開/後根の同定~根細糸切断/硬膜縫合~椎弓縫合/棘突起軟骨,棘上靱帯縫合~閉創
 後療法
 SDR の治療成績
  評価/結果/患者満足度
 症例提示
  症例1/症例2/症例3
 考察
  SDRの術前痙縮評価/SDRの効果
■頻度の高い筋解離術,骨切り術  粟國敦男
 手術適応
 手術の流れ
 手術の対象
  GMFCSレベルⅠ, Ⅱの独歩可能児/GMFCSレベルⅢの歩行可能児/GMFCSレベルⅣ, Ⅴの歩行不能児
 手術の実際
  尖足に対する手術/膝屈曲拘縮に対する治療/股関節屈曲拘縮に対する治療/股関節内転拘縮に対する治療/内旋歩行に対する治療/股関節亜脱臼・脱臼に対する治療
 後療法
 症例提示
  症例1/症例2/症例3
■麻痺性側弯症に対する手術  中村直行
 NMS 手術について
  NMSに対する脊椎固定術/わが国での手術に対する考えかた/手術のタイミング/著者らの手術に対する考えかた
 手術の流れ
  手術の説明/手術までの確認事項
 手術の実際
  術前準備/皮切~展開/インプラントによる固定/術中の注意点
 後療法
 症例提示
  症例1/症例2/症例3

Ⅲ その他の治療
■リハビリテーション  安里 隆
 CP におけるリハビリテーション(リハビリ)総論
 超早期療育
  カンガルーケアー/NICUにおけるポジショニング
 早期療育
 運動障害へのリハビリ
  選択的後根切断術(SDR)後のリハビリ/バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法後のリハビリ/神経発達的アプローチ(NDA)/上肢機能へのリハビリ/集中的理学療法の効果/動物介在療法の効果/免荷あるいは部分免荷式トレッドミル歩行トレーニングの効果/機能的電気刺激(FES)/筋力トレーニングの効果/有酸素トレーニングの効果/ロボティックス/感覚統合療法の効果/繰り返し練習の効果
 CP の社会参加
■装具療法 安里 隆
 下肢装具の効果
  短下肢装具(AFO)/長下肢装具(KAFO)/足底装具/股関節外転保持装具/歩行補助具(杖,歩行器)/座位保持装置/起立保持具,起立台
 体幹装具(側弯矯正装具)
 頚椎装具
 上肢装具
 車椅子,電動車椅子
 補装具の支給体系について
■脳性麻痺骨折予防チーム(KYT)活動   青木 清,美濃邦夫,山口佳代
 はじめに
  当院での原因不明骨折/当院でのKYT活動
 KYT 活動(骨折予防研修)の内容
  横向き(以下,側臥位)への姿勢変換/原則について/入浴編/リフトの使用/更衣動作
 最後に
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