整形外科 日常診療のエッセンス
下肢
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5変型判 412ページ 2色(一部カラー),イラスト100点,写真200点
- 2018年11月3日刊行
- ISBN978-4-7583-1863-1
電子版
序文
超少子高齢社会を迎えたわが国において,人口構成の変化とともに疾患構成も大きく変化しています。整形外科領域においては,今も骨折・脱臼などの外傷治療が基本ではありますが,骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折や変形性関節症といった退行性疾患を扱う機会が増えています。
その一方,内反足のような小児疾患を一般診療で診る機会は減少しましたが,スポーツの低年齢化や高度化により,小児のスポーツ障害は増加しています。先天性疾患であれスポーツ障害であれ,小児疾患の初期治療の重要性は変わるものではありません。2016年から運動器検診が学校検診に取り入れられ,整形外科疾患も予防の時代に入ってきました。また,近年の競技スポーツから健康スポーツの興隆は,競技選手から中高齢者のスポーツ損傷(外傷と障害)も増加させています。その治療のゴールは単に疾患を治すだけではなく,競技復帰から再発予防までが求められております。
このように,社会の変化によって,整形外科疾患が増加するばかりではなく,求められる整形外科医の役割がますます多様化することになり,結果として,整形外科医に求められる技術は高度なものとなっていきます。日本の整形外科医は運動器の専門家として,初期診断,保存治療から手術治療,そして疾患の予防にまで広く携わっていかなければなりません。2018年度から日本専門医機構による専門医制度が開始されましたが,整形外科専門医を目指す専攻医,またわれわれ専門医も,学ばなければならない知識は膨大です。
本書は,運動器のなかでも下肢疾患を中心に日常診療のエッセンスをまとめました。単に疾患の診断と治療の解説にとどまらず,各分野の専門の先生方から診察の基本姿勢から診断,保存治療,そして手術治療に至る過程をわかりやすく解説していただきました。またⅠ章には,専門医にとって必要な運動器の解剖からバイオメカニクスのエッセンスもまとめてあります。主に整形外科専門医を目指す先生方を対象に企画された本書ではありますが,医学部学生や理学療法士,専門医の先生方にも本書をご活用いただければ幸いです。
最後になりましたが,本書発刊のためにご執筆にご協力いただいた先生方や矢部涼子様をはじめとしたメジカルビュー社の方々に深謝いたします。
2018年10月
弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座教授
石橋恭之
その一方,内反足のような小児疾患を一般診療で診る機会は減少しましたが,スポーツの低年齢化や高度化により,小児のスポーツ障害は増加しています。先天性疾患であれスポーツ障害であれ,小児疾患の初期治療の重要性は変わるものではありません。2016年から運動器検診が学校検診に取り入れられ,整形外科疾患も予防の時代に入ってきました。また,近年の競技スポーツから健康スポーツの興隆は,競技選手から中高齢者のスポーツ損傷(外傷と障害)も増加させています。その治療のゴールは単に疾患を治すだけではなく,競技復帰から再発予防までが求められております。
このように,社会の変化によって,整形外科疾患が増加するばかりではなく,求められる整形外科医の役割がますます多様化することになり,結果として,整形外科医に求められる技術は高度なものとなっていきます。日本の整形外科医は運動器の専門家として,初期診断,保存治療から手術治療,そして疾患の予防にまで広く携わっていかなければなりません。2018年度から日本専門医機構による専門医制度が開始されましたが,整形外科専門医を目指す専攻医,またわれわれ専門医も,学ばなければならない知識は膨大です。
本書は,運動器のなかでも下肢疾患を中心に日常診療のエッセンスをまとめました。単に疾患の診断と治療の解説にとどまらず,各分野の専門の先生方から診察の基本姿勢から診断,保存治療,そして手術治療に至る過程をわかりやすく解説していただきました。またⅠ章には,専門医にとって必要な運動器の解剖からバイオメカニクスのエッセンスもまとめてあります。主に整形外科専門医を目指す先生方を対象に企画された本書ではありますが,医学部学生や理学療法士,専門医の先生方にも本書をご活用いただければ幸いです。
最後になりましたが,本書発刊のためにご執筆にご協力いただいた先生方や矢部涼子様をはじめとしたメジカルビュー社の方々に深謝いたします。
2018年10月
弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座教授
石橋恭之
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目次
Ⅰ 診察の進め方
問診と診察 津田英一
主訴/年齢・性別/家族歴/既往歴/職業歴・スポーツ歴/現病歴/診療の手順
【股関節の診察】
股関節・大腿の解剖 池 裕之,稲葉 裕,齋藤知行
寛骨/大腿骨/血管/神経/筋肉/靱帯/単純X 線/CT/MRI
バイオメカニクス 池 裕之,稲葉 裕,齋藤知行
股関節の合力に関する動力学的検討/大腿骨近位部骨折
診察の実際 三谷 茂
視診/触診/理学所見
【膝関節の診察】
膝関節の解剖 石橋恭之
骨構造/半月板/靱帯/筋肉/神経/血管
バイオメカニクス 石橋恭之
解剖軸と機能軸/運動軸と運動/膝蓋骨/半月板
診察の実際 津田英一
問診/視診/触診/関節運動の診察/身体計測/筋力評価/膝蓋跳動/関節動揺性・安定性/疼痛誘発テスト/全身関節弛緩性/筋タイトネス
【足関節・足部の診察】
下腿,足関節・足部の解剖 黒川紘章,田中康仁
足関節(距腿関節)/足部
バイオメカニクス 黒川紘章,田中康仁
足部アーチ構造/足部の関節
診察の実際 仁木久照
診察の進め方/医療面接,問診/診察
検査 池内昌彦
画像検査/関節液検査/血液検査
再診時の注意点 池内昌彦
診断に関する注意点/経過観察時の注意点
患者への接し方 池内昌彦
患者の理解・納得を導くためのコツ/コミュニケーションエラーを防ぐためのコツ
Ⅱ 疾患別治療法
【下肢(全体)】
関節リウマチ 猪狩勝則
関節リウマチ
肉ばなれ,筋挫傷 武冨修治
肉ばなれ/筋挫傷
外側大腿皮神経障害,伏在神経障害 尾鷲和也
外側大腿皮神経障害/伏在神経障害
その他 和田簡一郎,石橋恭之
腰部脊柱管狭窄症/腰椎椎間板ヘルニア
【股関節】
乳児股関節疾患 三谷 茂
発育性股関節形成不全/化膿性股関節炎
小児股関節疾患 遠藤裕介
単純性股関節炎/Perthes 病/大腿骨頭すべり症
股関節周囲のスポーツ損傷 高平尚伸
大腿骨寛骨臼インピンジメント/関節唇損傷/弾発股/疲労骨折/鼡径部痛症候群
関節症・炎症性疾患 難波良文
関節リウマチ/変形性股関節症/大腿骨寛骨臼インピンジメント/臼蓋形成不全/大腿骨頭壊死症/急速破壊型股関節症
骨盤・股関節部の外傷 神田章男
寛骨臼骨折/骨盤輪骨折,脆弱性骨盤輪骨折/股関節脱臼・脱臼骨折/大腿骨近位部骨折/大腿骨インプラント周囲骨折
【膝関節】
小児膝関節疾患 中前敦雄,安達伸生
くる病/Blount病
発育期膝疾患,スポーツ障害 武冨修治
Osgood-Schlatter病/Sinding Larsen-Johansson病/有痛性分裂膝蓋骨/離断性骨軟骨炎/ジャンパー膝/腸脛靱帯炎/鵞足炎/滑膜ひだ障害
半月板損傷 武冨修治
外傷性半月板損傷/円板状半月板損傷/変性半月板損傷
膝靱帯損傷 石橋恭之
前十字靱帯損傷,脛骨顆間隆起骨折/内側側副靱帯損傷/後十字靱帯損傷/外側側副靱帯損傷,後外側複合体損傷
骨折,脱臼ほか 土田芳彦
大腿骨遠位部骨折/脛骨プラトー骨折/膝蓋骨骨折/膝関節脱臼と血管損傷,複合靱帯損傷
関節症・炎症性疾患 新井祐志,井上裕章
変形性膝関節症/特発性骨壊死/ステロイド性関節症/Charcot 関節/血友病性関節症/関節リウマチ/痛風・偽痛風/化膿性膝関節炎
膝関節周囲の腫瘍および腫瘍類似疾患 古田太輔
骨・軟部腫瘍,腫瘍類似疾患
【足関節・足部】
小児足部障害 生駒和也
先天性内反足/先天性内転足/先天性垂直距骨/多趾症,合趾症,多合趾症/足根骨癒合症/先天性下腿偽関節症
骨端症・副骨・種子骨障害 森田成紀,田中康仁
Freiberg 病/Sever病/第1 Köhler病/三角骨障害/外脛骨障害/母趾種子骨障害/os subfibulare障害/os subtibiale障害/os peroneum障害
足関節・足部のスポーツ障害 小久保哲郎,須田康文
疲労骨折/足関節インピンジメント症候群/アキレス腱炎・周囲炎/腓骨筋腱脱臼/足底腱膜炎
後天性変形 仁木久照
変形性足関節症/扁平足(後脛骨筋腱機能不全)/外反母趾/リウマチ性足関節・足部障害
外傷① 野坂光司
下腿骨幹部骨折/脛骨天蓋骨折(Pilon 骨折)/果部骨折/距骨骨折/距骨骨軟骨損傷/踵骨骨折
外傷② 森本将太,高尾昌人
アキレス腱断裂/足関節捻挫・靱帯損傷/Lisfranc関節脱臼骨折/中足骨骨折/趾骨の骨折・脱臼
末梢神経障害 東山一郎,熊井 司
足根管症候群/前足根管症候群/Morton病/腓骨神経・腓腹神経障害
問診と診察 津田英一
主訴/年齢・性別/家族歴/既往歴/職業歴・スポーツ歴/現病歴/診療の手順
【股関節の診察】
股関節・大腿の解剖 池 裕之,稲葉 裕,齋藤知行
寛骨/大腿骨/血管/神経/筋肉/靱帯/単純X 線/CT/MRI
バイオメカニクス 池 裕之,稲葉 裕,齋藤知行
股関節の合力に関する動力学的検討/大腿骨近位部骨折
診察の実際 三谷 茂
視診/触診/理学所見
【膝関節の診察】
膝関節の解剖 石橋恭之
骨構造/半月板/靱帯/筋肉/神経/血管
バイオメカニクス 石橋恭之
解剖軸と機能軸/運動軸と運動/膝蓋骨/半月板
診察の実際 津田英一
問診/視診/触診/関節運動の診察/身体計測/筋力評価/膝蓋跳動/関節動揺性・安定性/疼痛誘発テスト/全身関節弛緩性/筋タイトネス
【足関節・足部の診察】
下腿,足関節・足部の解剖 黒川紘章,田中康仁
足関節(距腿関節)/足部
バイオメカニクス 黒川紘章,田中康仁
足部アーチ構造/足部の関節
診察の実際 仁木久照
診察の進め方/医療面接,問診/診察
検査 池内昌彦
画像検査/関節液検査/血液検査
再診時の注意点 池内昌彦
診断に関する注意点/経過観察時の注意点
患者への接し方 池内昌彦
患者の理解・納得を導くためのコツ/コミュニケーションエラーを防ぐためのコツ
Ⅱ 疾患別治療法
【下肢(全体)】
関節リウマチ 猪狩勝則
関節リウマチ
肉ばなれ,筋挫傷 武冨修治
肉ばなれ/筋挫傷
外側大腿皮神経障害,伏在神経障害 尾鷲和也
外側大腿皮神経障害/伏在神経障害
その他 和田簡一郎,石橋恭之
腰部脊柱管狭窄症/腰椎椎間板ヘルニア
【股関節】
乳児股関節疾患 三谷 茂
発育性股関節形成不全/化膿性股関節炎
小児股関節疾患 遠藤裕介
単純性股関節炎/Perthes 病/大腿骨頭すべり症
股関節周囲のスポーツ損傷 高平尚伸
大腿骨寛骨臼インピンジメント/関節唇損傷/弾発股/疲労骨折/鼡径部痛症候群
関節症・炎症性疾患 難波良文
関節リウマチ/変形性股関節症/大腿骨寛骨臼インピンジメント/臼蓋形成不全/大腿骨頭壊死症/急速破壊型股関節症
骨盤・股関節部の外傷 神田章男
寛骨臼骨折/骨盤輪骨折,脆弱性骨盤輪骨折/股関節脱臼・脱臼骨折/大腿骨近位部骨折/大腿骨インプラント周囲骨折
【膝関節】
小児膝関節疾患 中前敦雄,安達伸生
くる病/Blount病
発育期膝疾患,スポーツ障害 武冨修治
Osgood-Schlatter病/Sinding Larsen-Johansson病/有痛性分裂膝蓋骨/離断性骨軟骨炎/ジャンパー膝/腸脛靱帯炎/鵞足炎/滑膜ひだ障害
半月板損傷 武冨修治
外傷性半月板損傷/円板状半月板損傷/変性半月板損傷
膝靱帯損傷 石橋恭之
前十字靱帯損傷,脛骨顆間隆起骨折/内側側副靱帯損傷/後十字靱帯損傷/外側側副靱帯損傷,後外側複合体損傷
骨折,脱臼ほか 土田芳彦
大腿骨遠位部骨折/脛骨プラトー骨折/膝蓋骨骨折/膝関節脱臼と血管損傷,複合靱帯損傷
関節症・炎症性疾患 新井祐志,井上裕章
変形性膝関節症/特発性骨壊死/ステロイド性関節症/Charcot 関節/血友病性関節症/関節リウマチ/痛風・偽痛風/化膿性膝関節炎
膝関節周囲の腫瘍および腫瘍類似疾患 古田太輔
骨・軟部腫瘍,腫瘍類似疾患
【足関節・足部】
小児足部障害 生駒和也
先天性内反足/先天性内転足/先天性垂直距骨/多趾症,合趾症,多合趾症/足根骨癒合症/先天性下腿偽関節症
骨端症・副骨・種子骨障害 森田成紀,田中康仁
Freiberg 病/Sever病/第1 Köhler病/三角骨障害/外脛骨障害/母趾種子骨障害/os subfibulare障害/os subtibiale障害/os peroneum障害
足関節・足部のスポーツ障害 小久保哲郎,須田康文
疲労骨折/足関節インピンジメント症候群/アキレス腱炎・周囲炎/腓骨筋腱脱臼/足底腱膜炎
後天性変形 仁木久照
変形性足関節症/扁平足(後脛骨筋腱機能不全)/外反母趾/リウマチ性足関節・足部障害
外傷① 野坂光司
下腿骨幹部骨折/脛骨天蓋骨折(Pilon 骨折)/果部骨折/距骨骨折/距骨骨軟骨損傷/踵骨骨折
外傷② 森本将太,高尾昌人
アキレス腱断裂/足関節捻挫・靱帯損傷/Lisfranc関節脱臼骨折/中足骨骨折/趾骨の骨折・脱臼
末梢神経障害 東山一郎,熊井 司
足根管症候群/前足根管症候群/Morton病/腓骨神経・腓腹神経障害
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下肢を1つのユニットとして診る力も身に付く,日常診療のエッセンスが詰まった1冊!
限られた外来時間。この時間を有効に使い,診療を行いたいものである。明らかな外傷がない場合,問診や臨床所見などから診察を進めるが,主症状を訴える場所と原因疾患が一致しないこともあり,注意が必要である。
本書は,まずⅠ章の「診察の進め方」で,股・膝・足それぞれの診察法だけでなく,下肢全体としての診かたも解説している。また,再診時の注意点や患者への接し方のコツなども紹介している。
Ⅱ章は「疾患別治療法」とし,各部位ごとに診断と治療に分けて解説している。診断では,「これで確定診断」「見逃し注意」など,注意すべき点がよくわかるようになっている。治療は,3つのStepで構成され,Step 1「治療戦略」は,フローチャートを使いビジュアルに治療の流れが確認でき,Step 2「保存療法」とStep 3「手術療法」でそれぞれの治療法を解説している。特にStep 2とStep 3の間には「保存療法→手術療法のターニングポイント」を配し,どのタイミングで保存療法から手術療法に切り替えるのかを明確に示している。
明日からの日常診療がより正確に,より効率的なものに必ずなる,整形外科必携の1冊である。