医師・技師・看護師で臨む
ONE TEAM脳血管内治療
定価 3,960円(税込) (本体3,600円+税)
- B5変型判 164ページ オールカラー,イラスト40点,写真120点
- 2020年2月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1851-8
電子版
序文
脳血管内治療が急増しています。以前は開頭手術が脳血管障害の治療の主流でしたが,最近では血管内治療がそれに取って代わりつつあります。それはなぜなのでしょうか? 理由は主に2つあり,「低侵襲である」こと,そして「科学的に有効性が証明された」ことが挙げられます。
まず本治療は「低侵襲である」ことから,主に高齢者や合併症を有する患者などを含め,外科手術が困難な患者に対して行われはじめました。その後,機器や技術の改良によって徐々に適応や対象疾患が広がってきました。最近ではさまざまなメディアで取り上げられるようになり,患者の希望が増えていることもこの治療の増加に拍車をかけていると考えられます。
次に「科学的に有効性が証明された」ことは医療者がこの治療をより積極的に行う大きな契機となっています。例えば破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術は,ランダム化比較試験の結果,開頭手術よりも患者の転帰がよいことが示されました。しかも,その効果は治療後5年を経過しても続くことが示されています。一方,これまで外科手術がほとんど行われてこなかった急性期脳梗塞において,血栓回収療法の有効性が複数のランダム化比較試験で示され,日米のガイドラインで強く推奨されました。本治療によって短時間で良好な再開通が得られれば患者の麻痺などの症状が目の前で劇的に改善することもまれではありません。患者の命や人生を左右するこの治療は社会的にも大きな注目を集めています。
では院内で私たちはどう対応すればいいのでしょうか? 脳血管内治療はこれまでの脳神経外科における手術とはまったく違う治療であるため,周術期や術中の看護方法が異なります。また術中の撮影方法や機器のセッティングもほかの血管領域とは異なることが多く,放射線技師の対応は治療の成否にかかわります。
このような背景から本書は企画されました。医師が治療の流れと技師・看護師への要望を解説し,ベテラン技師と看護師が後輩に向けて,重要ポイントや注意点を解説する構成となっています。
本治療においては多くの薬剤や機器を用いるため,医師だけで治療を成功させることはできません。ぜひ本書を手に取っていただき,みなさんのチームが一丸となって日々の治療を成功に導かれることを願っています。
2019年12月
兵庫医科大学脳神経外科主任教授
吉村紳一
まず本治療は「低侵襲である」ことから,主に高齢者や合併症を有する患者などを含め,外科手術が困難な患者に対して行われはじめました。その後,機器や技術の改良によって徐々に適応や対象疾患が広がってきました。最近ではさまざまなメディアで取り上げられるようになり,患者の希望が増えていることもこの治療の増加に拍車をかけていると考えられます。
次に「科学的に有効性が証明された」ことは医療者がこの治療をより積極的に行う大きな契機となっています。例えば破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術は,ランダム化比較試験の結果,開頭手術よりも患者の転帰がよいことが示されました。しかも,その効果は治療後5年を経過しても続くことが示されています。一方,これまで外科手術がほとんど行われてこなかった急性期脳梗塞において,血栓回収療法の有効性が複数のランダム化比較試験で示され,日米のガイドラインで強く推奨されました。本治療によって短時間で良好な再開通が得られれば患者の麻痺などの症状が目の前で劇的に改善することもまれではありません。患者の命や人生を左右するこの治療は社会的にも大きな注目を集めています。
では院内で私たちはどう対応すればいいのでしょうか? 脳血管内治療はこれまでの脳神経外科における手術とはまったく違う治療であるため,周術期や術中の看護方法が異なります。また術中の撮影方法や機器のセッティングもほかの血管領域とは異なることが多く,放射線技師の対応は治療の成否にかかわります。
このような背景から本書は企画されました。医師が治療の流れと技師・看護師への要望を解説し,ベテラン技師と看護師が後輩に向けて,重要ポイントや注意点を解説する構成となっています。
本治療においては多くの薬剤や機器を用いるため,医師だけで治療を成功させることはできません。ぜひ本書を手に取っていただき,みなさんのチームが一丸となって日々の治療を成功に導かれることを願っています。
2019年12月
兵庫医科大学脳神経外科主任教授
吉村紳一
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書評
日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師認定機構 理事長
日本脳神経血管内治療学会 放射線防護委員会 委員
順天堂大学保健医療学部診療放射線学科
坂本 肇
本書は,患者に負担を掛けずに大きな治療効果が得られる脳血管内治療の領域において,治療現場のスタッフがチーム医療を実践し,さらなる治療効果を得るための有効な情報が示され,非常に興味深い内容である。また,本書の編集である兵庫医科大学病院脳神経外科の吉村紳一教授は日本における脳血管内治療でのトップランナーの術者であり,同病院に勤務する脳神経外科医師,診療放射線技師,看護師による経験豊富なスタッフが執筆した本書は臨床現場に即した参考となる内容である。
本書の前半部分では,「どうしたら“よい治療”ができる」のかについて,医師,診療放射線技師,看護師がそれぞれの立場から解説し,ONE TEAMとして安全・安心で高度な治療を目指すチームの方針が明確に示されている。
後半部分では,実際に病院で行われる脳血管内治療の代表的な症例が網羅され,手技の内容や病態はシェーマを活用しわかりやすく解説しているので,これから血管撮影室へ配属となる看護師にとっては,手術の目的や方法が明確となり,十分な予備知識を備えることができる。また,患者搬入前・搬入後での術前準備,使用薬剤の説明,手術の手順と使用デバイスの紹介,手術手技の特徴と注意点,術後の管理など,患者入室前から退出後までの一連の流れの中での重要ポイント,注意すべき事項が網羅され,看護師に有益な情報が満載である。
ONE TEAMで脳血管内治療に臨むためには,チーム医療を実践し,お互いに理解と尊重するリスペクトが必要である。本書の画期的な企画として,いろいろな場面において「医師が考えていること,ほかのスタッフに望むこと」に対して,「診療放射線技師ができること,行わなければならないこと」,「看護師が対応すること,行わなければならないこと」が職種ごとに示されている。この特徴を活用し,他職種の業務内容と考えを理解し,連携と補完による協働が促進されることを望む。
本書は,血管撮影室においてONE TEAMで脳血管内治療に臨むべく,看護業務での基礎から臨床応用までわかりやすく,また,実践的に解説されており,臨床現場での積極的な利用が期待される。
(OPE Nursing Vol.35, No.7, 2020.より引用)
日本脳神経血管内治療学会 放射線防護委員会 委員
順天堂大学保健医療学部診療放射線学科
坂本 肇
本書は,患者に負担を掛けずに大きな治療効果が得られる脳血管内治療の領域において,治療現場のスタッフがチーム医療を実践し,さらなる治療効果を得るための有効な情報が示され,非常に興味深い内容である。また,本書の編集である兵庫医科大学病院脳神経外科の吉村紳一教授は日本における脳血管内治療でのトップランナーの術者であり,同病院に勤務する脳神経外科医師,診療放射線技師,看護師による経験豊富なスタッフが執筆した本書は臨床現場に即した参考となる内容である。
本書の前半部分では,「どうしたら“よい治療”ができる」のかについて,医師,診療放射線技師,看護師がそれぞれの立場から解説し,ONE TEAMとして安全・安心で高度な治療を目指すチームの方針が明確に示されている。
後半部分では,実際に病院で行われる脳血管内治療の代表的な症例が網羅され,手技の内容や病態はシェーマを活用しわかりやすく解説しているので,これから血管撮影室へ配属となる看護師にとっては,手術の目的や方法が明確となり,十分な予備知識を備えることができる。また,患者搬入前・搬入後での術前準備,使用薬剤の説明,手術の手順と使用デバイスの紹介,手術手技の特徴と注意点,術後の管理など,患者入室前から退出後までの一連の流れの中での重要ポイント,注意すべき事項が網羅され,看護師に有益な情報が満載である。
ONE TEAMで脳血管内治療に臨むためには,チーム医療を実践し,お互いに理解と尊重するリスペクトが必要である。本書の画期的な企画として,いろいろな場面において「医師が考えていること,ほかのスタッフに望むこと」に対して,「診療放射線技師ができること,行わなければならないこと」,「看護師が対応すること,行わなければならないこと」が職種ごとに示されている。この特徴を活用し,他職種の業務内容と考えを理解し,連携と補完による協働が促進されることを望む。
本書は,血管撮影室においてONE TEAMで脳血管内治療に臨むべく,看護業務での基礎から臨床応用までわかりやすく,また,実践的に解説されており,臨床現場での積極的な利用が期待される。
(OPE Nursing Vol.35, No.7, 2020.より引用)
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目次
I どうしたら「よい治療」ができるか
医師の立場から 内田和孝
チームの育成
勉強会
安全管理(薬剤管理)
方針転換
診療放射線技師の立場から 松本一真
概要
血管撮影装置の管理と操作方法
脳血管内治療に最適な画像の提供
脳血管内治療における患者と従事者の被ばく
まとめ
看護師の立場から 藤原恵美子
IVR看護の概要
術前準備
術中看護師の役割と看護のポイント
II ONE TEAMで臨む
急性期脳梗塞 血栓回収療法 長尾洋一郎,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
頚動脈ステント留置術 山田清文,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
術後管理
今後の展望と課題
頭蓋内動脈狭窄症 金城典人,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
脳動脈瘤 コイル塞栓術 藏本要二,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
脳動脈瘤 Flow diverter 白川 学,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
脳動静脈奇形 Onyx™などによる塞栓術 別府幹也,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
硬膜動静脈瘻 立林洸太朗,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順(TAEとTVE)
Onyx™注入
合併症とその対策
腫瘍栄養血管塞栓術 阪本大輔,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
腫瘍栄養血管塞栓術における合併症
医師の立場から 内田和孝
チームの育成
勉強会
安全管理(薬剤管理)
方針転換
診療放射線技師の立場から 松本一真
概要
血管撮影装置の管理と操作方法
脳血管内治療に最適な画像の提供
脳血管内治療における患者と従事者の被ばく
まとめ
看護師の立場から 藤原恵美子
IVR看護の概要
術前準備
術中看護師の役割と看護のポイント
II ONE TEAMで臨む
急性期脳梗塞 血栓回収療法 長尾洋一郎,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
頚動脈ステント留置術 山田清文,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
術後管理
今後の展望と課題
頭蓋内動脈狭窄症 金城典人,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
脳動脈瘤 コイル塞栓術 藏本要二,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
脳動脈瘤 Flow diverter 白川 学,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
脳動静脈奇形 Onyx™などによる塞栓術 別府幹也,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
硬膜動静脈瘻 立林洸太朗,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順(TAEとTVE)
Onyx™注入
合併症とその対策
腫瘍栄養血管塞栓術 阪本大輔,ほか
手術の概要
術前準備
手術の手順
腫瘍栄養血管塞栓術における合併症
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医師,看護師,診療放射線技師,それぞれの視点で手術への取り組み方を解説。One Teamで手術を成功に導こう!
脳血管内治療の実際を,医師・診療放射線技師・看護師のそれぞれの視点から解説。医師からは看護師・技師への要望を,看護師・技師からはベテランの立場から後輩に向けてのポイント解説とアドバイスを記載。
総論では医師・看護師・技師のそれぞれの手術への取組と準備を解説。各論は疾患(手術)ごとに項目を設け,治療の流れを示しながら「このとき医師はこう考えている」「次にこうした治療手技があるので技師・看護師はどのような注意が必要か」と,手術の進行に合わせてなにを考え,なにをするべきかがわかる構成となっている。