脳神経外科 周術期管理のすべて
第5版
定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- A5判 896ページ 2色(一部カラー),イラスト127点,写真503点
- 2019年5月27日刊行
- ISBN978-4-7583-1849-5
電子版
序文
脳神経外科医が扱う疾患は多岐にわたります。手術療法が基本とはいえ,薬物療法(遺伝子治療も含)や種々の放射線治療が中心になるものも少なくありません。手術も開頭術が中心とはいえ,定位脳手術,神経内視鏡手術,血管内治療などの領域の最近の進歩も目を見張るものがあります。治療には,正確な診断とそれに基づく治療方法の選択,安全かつ効率的な治療を行うための準備,そして治療後の確実かつ迅速な回復を促す術後治療が必要です。我々は,治療を求めて入院された方々に適切な治療を施し,合併症なく予定された期間で退院していただくことで,治療医としてはじめて責任を果たせたといえます。しかし,現代の診断・治療の進歩の全てが含まれる膨大な周術期管理学を,個人の知識と経験で身につけるのは容易なことではありません。また,周術期管理には病院内管理のみならず社会医学の一部も含まれます。第4版では,当時の医療事情を反映して「医療安全管理」を一つの柱として編集いたしました。今回の改訂では,地震,水害などの大規模災害時の管理の項を設けております。
本書は,脳神経外科疾患の周術期管理方法をまとめたものとして,20世紀の最後の年(2000年)に初版を上梓しました。現在まで4回の改訂を行い,第5版は新しい年号「令和」が施行される月に皆様におとどけすることになりました。
医学は日進月歩とはいえ,第4版出版(2014年)後の脳神経外科領域の進歩は格別なものがあります。2015年には日本脳卒中学会により『脳卒中治療ガイドライン2005』が出版され,2017年にその中の25項目について追補記事が公表されました。2018年には『経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針 第3版』が刊行されています。脳腫瘍の分野では,gliomaや胎児性腫瘍などの最終病理診断には遺伝子異常所見が必要(WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System, Revised 4th Edition, 2016)となり,それを反映した治療指針も成人脳腫瘍と小児脳腫瘍の一部について日本脳腫瘍学会から公開されています(https://www.jsn-o.com/)。下垂体腺腫の診断も2017年に改訂されました(WHO classification of pituitary adenomas, 4 th edition)。頭部外傷の分野でも,JTCR(日本外傷診療研究機構)の主導による『外傷初期診療ガイドライン 改訂第5版』が2016年に刊行されています。
本書は,脳神経外科学が専門分化する時代において,治療対象疾患の周術期管理の基本を可能な限りエビデンスに基づいてまとめたものです。皆様のベッドサイド臨床において役立てていただければ幸いです。
令和元年5月
松谷雅生
田村 晃
藤巻高光
森田明夫
本書は,脳神経外科疾患の周術期管理方法をまとめたものとして,20世紀の最後の年(2000年)に初版を上梓しました。現在まで4回の改訂を行い,第5版は新しい年号「令和」が施行される月に皆様におとどけすることになりました。
医学は日進月歩とはいえ,第4版出版(2014年)後の脳神経外科領域の進歩は格別なものがあります。2015年には日本脳卒中学会により『脳卒中治療ガイドライン2005』が出版され,2017年にその中の25項目について追補記事が公表されました。2018年には『経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針 第3版』が刊行されています。脳腫瘍の分野では,gliomaや胎児性腫瘍などの最終病理診断には遺伝子異常所見が必要(WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System, Revised 4th Edition, 2016)となり,それを反映した治療指針も成人脳腫瘍と小児脳腫瘍の一部について日本脳腫瘍学会から公開されています(https://www.jsn-o.com/)。下垂体腺腫の診断も2017年に改訂されました(WHO classification of pituitary adenomas, 4 th edition)。頭部外傷の分野でも,JTCR(日本外傷診療研究機構)の主導による『外傷初期診療ガイドライン 改訂第5版』が2016年に刊行されています。
本書は,脳神経外科学が専門分化する時代において,治療対象疾患の周術期管理の基本を可能な限りエビデンスに基づいてまとめたものです。皆様のベッドサイド臨床において役立てていただければ幸いです。
令和元年5月
松谷雅生
田村 晃
藤巻高光
森田明夫
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目次
Ⅰ 周術期における医療安全
医療安全管理とインフォームド・コンセント 小林浩之,寳金清博
器機の洗浄・滅菌 太組一朗,斉藤延人,山田正仁,中村好一,森田明夫
災害時の対策 亀山元信,増子大紀
Ⅱ 脳血管障害
脳動脈瘤:くも膜下出血 堀内哲吉
脳動脈瘤:未破裂 森田明夫,鈴木雅規,井手口 稔
脳内出血(高血圧性,特発性) 平井 聡,宇野昌明
脳動静脈奇形,硬膜動静脈瘻 辻 篤司,野崎和彦
もやもや病 舟木健史,髙橋 淳,宮本 享
脳梗塞:内科的治療 矢坂正弘
脳梗塞:外科的治療 井上智弘
頚動脈病変 小笠原邦昭
脳血管内治療 辻本真範,吉村紳一
遺伝子異常の検索の意義 青木友浩
Ⅲ 脳腫瘍
脳実質性悪性腫瘍:成人 成田善孝
脳実質性悪性腫瘍:小児 荻原英樹
間脳下垂体腫瘍 西岡 宏
聴神経腫瘍 中冨浩文
頭蓋底腫瘍 渡邉 督,齋藤 清
転移性脳腫瘍 成田善孝
放射線治療,化学療法:成人 小林啓一,永根基雄
放射線治療,化学療法:小児 柳澤隆昭
覚醒下手術 隈部俊宏
遺伝子異常の検索の意義 大谷亮平,植木敬介
Ⅳ 頭部外傷
総論 横田裕行
急性頭蓋内損傷 横堀將司,横田裕行
慢性硬膜下血腫(成人型) 小林正人
広範性(びまん性)脳損傷 横堀將司,横田裕行
骨折,髄液漏,顔面損傷 横堀將司,横田裕行
小児の頭部外傷・虐待 荒木 尚,横田裕行,森田明夫
スポーツ頭部外傷 溝渕佳史,髙木康志,永廣信治
Ⅴ 脊髄・脊椎疾患
脊髄・脊椎疾患 金 彪,黒川 龍,糸岐一茂,川本俊樹
Ⅵ 小児(新生児,乳児)
総論 下地一彰,新井 一,坂本博昭,國廣誉世
水頭症 下地一彰,新井 一,西本 博
先天性疾患 下地一彰,新井 一,西本 博
血管疾患 下地一彰,新井 一
脊髄・脊椎疾患 下地一彰,新井 一,坂本博昭,國廣誉世
小児頭蓋内感染症 下地一彰,新井 一,西本 博
先天性奇形の遺伝子検索の意義 金村米博
Ⅶ 感染症
術後呼吸管理 尾﨑孝平,浅羽穣二
中枢神経系の炎症性疾患 野﨑博之
Ⅷ 機能的脳神経外科
てんかんの外科 川合謙介
三叉神経痛,顔面痙攣 藤巻高光
ニューロモデュレーション:DBS とSCS を中心に 深谷 親
Ⅸ 救急疾患
救急処置 中田一之,堤 晴彦
人工呼吸管理 安心院康彦,三宅康史,坂本哲也
Ⅹ 症候
痙攣,急性症候性発作,てんかん,外傷性てんかん 川合謙介
頭痛 荒木信夫
意識障害,脳ヘルニア,脳死 吉富宗健,森岡基浩
術中動脈損傷 村井保夫,水成隆之,森田明夫
術中静脈損傷 森田明夫
電解質異常 藤尾信吾,有村 洋,吉本幸司
DIC,悪性高熱,悪性症候群,輸血後合併症 安心院康彦,三宅康史,坂本哲也
術後肺血栓塞栓症 安藤太三
低髄液圧症(脳脊髄液減少症,脳脊髄液漏出症) 守山英二,石川慎一
特発性正常圧水頭症 石川正恒
Ⅺ 検査・治療
脳血管撮影 村井 智,杉生憲志
ガンマナイフ治療,サイバーナイフ治療 小林正人
神経内視鏡治療(水頭症,脳室内腫瘍) 辛 正廣
CT・MRIガイド下手術,術中マッピング 石橋秀昭,鎌田恭輔
術中モニタリング(MEP,VEP) 佐々木達也,林 俊哲
PET,SPECT,NIRS 黒田 敏
MRI 國松 聡,青木茂樹
医療安全管理とインフォームド・コンセント 小林浩之,寳金清博
器機の洗浄・滅菌 太組一朗,斉藤延人,山田正仁,中村好一,森田明夫
災害時の対策 亀山元信,増子大紀
Ⅱ 脳血管障害
脳動脈瘤:くも膜下出血 堀内哲吉
脳動脈瘤:未破裂 森田明夫,鈴木雅規,井手口 稔
脳内出血(高血圧性,特発性) 平井 聡,宇野昌明
脳動静脈奇形,硬膜動静脈瘻 辻 篤司,野崎和彦
もやもや病 舟木健史,髙橋 淳,宮本 享
脳梗塞:内科的治療 矢坂正弘
脳梗塞:外科的治療 井上智弘
頚動脈病変 小笠原邦昭
脳血管内治療 辻本真範,吉村紳一
遺伝子異常の検索の意義 青木友浩
Ⅲ 脳腫瘍
脳実質性悪性腫瘍:成人 成田善孝
脳実質性悪性腫瘍:小児 荻原英樹
間脳下垂体腫瘍 西岡 宏
聴神経腫瘍 中冨浩文
頭蓋底腫瘍 渡邉 督,齋藤 清
転移性脳腫瘍 成田善孝
放射線治療,化学療法:成人 小林啓一,永根基雄
放射線治療,化学療法:小児 柳澤隆昭
覚醒下手術 隈部俊宏
遺伝子異常の検索の意義 大谷亮平,植木敬介
Ⅳ 頭部外傷
総論 横田裕行
急性頭蓋内損傷 横堀將司,横田裕行
慢性硬膜下血腫(成人型) 小林正人
広範性(びまん性)脳損傷 横堀將司,横田裕行
骨折,髄液漏,顔面損傷 横堀將司,横田裕行
小児の頭部外傷・虐待 荒木 尚,横田裕行,森田明夫
スポーツ頭部外傷 溝渕佳史,髙木康志,永廣信治
Ⅴ 脊髄・脊椎疾患
脊髄・脊椎疾患 金 彪,黒川 龍,糸岐一茂,川本俊樹
Ⅵ 小児(新生児,乳児)
総論 下地一彰,新井 一,坂本博昭,國廣誉世
水頭症 下地一彰,新井 一,西本 博
先天性疾患 下地一彰,新井 一,西本 博
血管疾患 下地一彰,新井 一
脊髄・脊椎疾患 下地一彰,新井 一,坂本博昭,國廣誉世
小児頭蓋内感染症 下地一彰,新井 一,西本 博
先天性奇形の遺伝子検索の意義 金村米博
Ⅶ 感染症
術後呼吸管理 尾﨑孝平,浅羽穣二
中枢神経系の炎症性疾患 野﨑博之
Ⅷ 機能的脳神経外科
てんかんの外科 川合謙介
三叉神経痛,顔面痙攣 藤巻高光
ニューロモデュレーション:DBS とSCS を中心に 深谷 親
Ⅸ 救急疾患
救急処置 中田一之,堤 晴彦
人工呼吸管理 安心院康彦,三宅康史,坂本哲也
Ⅹ 症候
痙攣,急性症候性発作,てんかん,外傷性てんかん 川合謙介
頭痛 荒木信夫
意識障害,脳ヘルニア,脳死 吉富宗健,森岡基浩
術中動脈損傷 村井保夫,水成隆之,森田明夫
術中静脈損傷 森田明夫
電解質異常 藤尾信吾,有村 洋,吉本幸司
DIC,悪性高熱,悪性症候群,輸血後合併症 安心院康彦,三宅康史,坂本哲也
術後肺血栓塞栓症 安藤太三
低髄液圧症(脳脊髄液減少症,脳脊髄液漏出症) 守山英二,石川慎一
特発性正常圧水頭症 石川正恒
Ⅺ 検査・治療
脳血管撮影 村井 智,杉生憲志
ガンマナイフ治療,サイバーナイフ治療 小林正人
神経内視鏡治療(水頭症,脳室内腫瘍) 辛 正廣
CT・MRIガイド下手術,術中マッピング 石橋秀昭,鎌田恭輔
術中モニタリング(MEP,VEP) 佐々木達也,林 俊哲
PET,SPECT,NIRS 黒田 敏
MRI 國松 聡,青木茂樹
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脳神経外科手術の進歩と周術期の管理の変化を踏まえ,待望の改訂
第4版が2014年に刊行されてから5年が経とうとしている。その間の脳神経外科の進歩,ガイドラインの改訂,また脳神経外科を取り巻く環境の変化を踏まえて本書を改訂。また,「第I章 周術期における医療安全」では,「災害時の対策」の項を追加して,昨今頻発する災害に対して何をすべきかについて解説。
脳神経外科医をはじめ,周術期管理に携わるスタッフ必携の書籍である。