肺癌薬物療法レジメン 
Expert’s Choice

肺癌薬物療法レジメン Expert’s Choice

■編集 倉田 宝保
吉岡 弘鎮

■薬剤監修 藤井 良平

定価 3,520円(税込) (本体3,200円+税)
  • B6変型判  184ページ  2色
  • 2022年3月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-1818-1

エキスパートはどのレジメンを選び,どう投与している? 根拠とともにズバリ答えます

「Expert’s Choice」編では,複数ある第一選択薬からどれを投与すべきか,エキスパートが選ぶレジメンをずばり挙げ,その理由もコンパクトに明記。「Expert’s Regimen」編では,関西医科大学で実際に投与している投与スケジュールを,支持療法薬も含めて詳細に解説。基礎疾患があるときの薬物療法の考え方もコンパクトにまとめ,さらに遺伝子診断やリキッドバイオプシーなど最近の話題も紹介。
もう迷わない! 肺癌薬物療法の強い味方が登場。


序文

 筆者が医師になった1990年代は、進行期の肺がんに対する化学療法の効果は小細胞がんを除き懐疑的なものであり、そもそも化学療法を行うかどうかが論点であった。化学療法を行うとしてもシスプラチンを含む併用療法しか選択の余地がなく、多くの医師は治療選択に悩むことはなかった。
 2022年になる今年まで30年間、肺がんに対する化学療法は読者の皆様もご存知のように劇的な進化を遂げた。効果の高い抗がん剤の開発、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の台頭で5年生存率数十パーセントにまで治療成績が改善し、多くの患者が恩恵を得ることが可能になった。また、これらの治療はprecision medicineを可能にし、ドライバー遺伝子変異の有無、PD-L1の発現状況で治療選択が変わり、個別化医療の実践にもつながった。多くの製薬企業が競争的に優れた薬剤を開発し、結果として複数の薬剤が使用可能となり治療選択も増えた。
 以前を知る筆者にとっては、治療選択が多くあることは非常に嬉しい悩みではある。一方では、実際の臨床の場では多くの医師はどの薬剤を優先的に使用すべきか悩むケースが多いことが容易に想像できる。学会が作成する「肺癌診療ガイドライン」においても同じカテゴリーの患者に対し、複数の治療レジメンが推奨あるいは提案されている。
 そこで本書は「肺癌診療ガイドライン」とは異なる視線で、肺がん化学療法のエキスパートにお願いし、複数ある治療選択肢のなかからどの治療法、レジメンを選択するのか、その理由は何かを簡潔に執筆いただいた。多くの進行期肺がん患者を治癒もしくは長期生存させるための最善の策をこの書で学び、活用いただけば幸いです。

2022年2月
関西医科大学附属病院呼吸器腫瘍内科教授
倉田宝保
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目次

第1章 Expert’s Choice
Chapter 1 小細胞肺癌
  限局型・PS良好  [植松慎矢]
  限局型・PS不良  [横山俊秀]
  限局型・高齢者  [本田 健,関 順彦]
  進展型・PS良好  [東 公一]
  進展型・PS不良  [柴 綾,濵川侑介,下川恒生]
  進展型・高齢者(71歳以上)  [加藤有加]
Chapter 2   非小細胞肺癌 根治化学放射線療法(局所進行期,Ⅲ期)
  PS良好  [岡久将暢,善家義貴]
  PS不良  [岡久将暢,善家義貴]
  CRT適応症例でドライバー変異陽性例  [赤松弘朗]
Chapter 3 非小細胞肺癌 非扁平上皮癌(Ⅳ期)
 ドライバー遺伝子変異あり
  EGFR変異(PS良好・不良)  [田宮朗裕]
  ALK変異(PS良好・不良)  [小澤雄一]
  ROS1変異(PS良好・不良)  [葉 清隆]
  BRAF変異(PS良好・不良)  [後藤 悌]
  MET変異(PS良好・不良)  [竹安優貴]
 ドライバー遺伝子変異なし
  PD-L1≧50%(PS良好)  [松浦宏昌,市原英基]
  PD-L1≧50%(PS不良)  [市原英基]
  PD-L1  1~49%(PS良好)  [中原善朗]
  PD-L1  1~49%(PS不良)  [中原善朗]
  PD-L1<1%(PS良好)  [林 杏奈,中道真仁]
  PD-L1<1%(PS不良)  [林 杏奈,中道真仁]
 ドライバー遺伝子変異なし・高齢者・PS良好
  PD-L1≧50%  [宮内栄作]
  PD-L1  1~49%  [上月稔幸]
  PD-L1<1%  [白石祥理]
 ドライバー遺伝子変異なし・間質性肺炎あり・PS良好
  PD-L1≧50%  [池田 慧]
  PD-L1  1~49%  [藤本大智]
  PD-L1<1%  [荻野広和,軒原 浩]
Chapter 4 基礎疾患をどう考慮するか
  慢性閉塞性肺疾患(COPD)  [内海 裕,前門戸 任]
  呼吸器感染症  [津端由佳里]
  肝機能障害  [杉本英司,野上尚之]
  腎機能障害(CKD,透析)  [高橋幸治,大野 泉,滝口裕一]
  心機能障害  [國政 啓]
  慢性疾患(糖尿病,高血圧)  [大森翔太]
  血液疾患  [齋藤 合,鈴木拓児]
  気道狭窄  [毛利篤人]
  胸水,心嚢水  [田宮基裕]

第2章 Expert’s Regimen 関西医科大学レジメン
Chapter 1 小細胞肺癌
  ① CDDP+VP-16
  ② CBDCA+VP-16
  ③ AMR
  ④ NGT
  ⑤ CBDCA+VP-16+アテゾリズマブ
  ⑥ CDDP+VP-16+デュルバルマブ
  ⑦ CBDCA+VP-16+デュルバルマブ
  ⑧ CDDP+CPT-11
  ⑨ PEI
  10 CPT-11
Chapter 2 非小細胞肺癌(局所進行期,Ⅲ期)
  ① Weekly CBDCA+weekly PTX+同時胸部放射線
  ② CDDP+DTX+同時胸部放射線(OLCSG0007試験)
  ③ CDDP+S-1+同時胸部放射線(WJOG5008L試験)
  ④ CDDP+VNR+同時胸部放射線
  ⑤ 根治的化学放射線療法後のデュルバルマブ維持療法
Chapter 3 非小細胞肺癌(Ⅳ期)
 プラチナを含む2剤併用療法(ベバシズマブレジメンを含む)
  ① CDDP+VNR
  ② CBDCA+PTX±ベバシズマブ
  ③ CDDP+DTX
  ④ CDDP+GEM
  ⑤ CBDCA+GEM
  ⑥ CDDP+S-1(CATS試験)
  ⑦ CBDCA+S-1(LETS試験)
  ⑧ CDDP+PEM±ベバシズマブ
  ⑨ CBDCA+PEM±ベバシズマブ
  ⑩ CBDCA+nab-PTX
 化学療法単剤
  ① DTX+ラムシルマブ
  ② DTX
  ③ PEM
  ④ S-1(EAST-LC試験)
  ⑤ nab-PTX
  ⑥ GEM
  ⑦ VNR
  ⑧ CPT-11
  ⑨ AMR
 ICI単剤(IO+IOを含む)
  ① ニボルマブ
  ② ペムブロリズマブ
  ③ アテゾリズマブ
  ④ ニボルマブ(2週)+イピリムマブ
  ⑤ ニボルマブ(3週)+イピリムマブ
 Chemo+IO(複合免疫療法)
  ① CDDP+PEM+ペムブロリズマブ
  ② CBDCA+PEM+ペムブロリズマブ
  ③ CBDCA+nab-PTX+ペムブロリズマブ
  ④ CBDCA+nab-PTX+アテゾリズマブ
  ⑤ CBDCA+PEM+アテゾリズマブ(IMpower132試験)
  ⑥ CBDCA+PTX+ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate9LA試験)
  ⑦ CDDP+PEM+ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate9LA試験)
  ⑧ CBDCA+PEM+ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate9LA試験)
  ⑨ CBDCA+PTX+アテゾリズマブ+ベバシズマブ(IMpower150試験)

コラム
  リキッドバイオプシーでどう変わる?  [髙濱隆幸]]
  免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使いどころ  [大矢由子]
  積極的抗癌薬治療のやめどきはどこか?  [三浦 理]
  抗癌薬治療の適応をよく検討する必要がある患者像  [山口 央]
  遺伝子診断のコツ  [服部剛弘,里内美弥子]
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