New Strategy! 超微形態生理学

ICU輸液がみえるグリコカリックス × アトラス

ICU輸液がみえるグリコカリックス × アトラス

■編集 岡田 英志
富田 弘之

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • B5変型判  268ページ  オールカラー,イラスト80点,写真210点
  • 2020年11月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-1781-8

改訂スターリングの法則に欠かせないグリコカリックスから考える輸液の根拠

百聞はグリコカリックスに如かず。改訂スターリングの法則の主役である血管内皮グリコカリックスに注目し,超微形態生理学という観点から急性期輸液の根拠をまるごと総ざらい。臓器別毛細血管ごとの違いをとらえ、DIC,ARDS,AKIといったICUにおけるコモンディジーズや病態別に詳解。グリコカリックスの回復や保護に関する視点を交えた最新の考え方と根拠を押さえる。レジデントから上級医まで必読の,輸液実践のためのnew strategy。輸液に役立つ急性期アトラスへご招待。


序文

推薦

圧倒的ビジュアルで一気に読ませる奇跡の1冊

チョービ?
 グリコカリックス,そういえば最近よく聞くようになったな,そんな発表も増えてきたな,と思いながら読みました。電子顕微鏡には透過型と走査型があって,“ めざしの黒焦げ” をみているようなもんだよ,と40 年前の学生時代に微生物の教授が言っていたことを思い出しながら。電子顕微鏡では細かい構造が解るけれど,黒焦げの標本では機能なんかは解らないよなと思っていた,そんな気持ちを軽くぶっ飛ばすこの一冊です。「超微」も私のword では「長尾」でしたが,まずそれを修正しました。

基礎と臨床をつなぐ
 救急集中治療では,多施設症例のレジストリで目をつけた因子と転帰の関連をみる内容の研究も多い。また,RCT を企画し多施設での研究を主催することは素晴らしいし研究者はチャレンジして欲しい。ただ,それだけでは関連は解っても因果関係や病態生理は解らないので寂しい。私の経験からは,やはり臨床に直結する基礎研究をしてほしい。前向きに動物実験を計画してほしい。その意味で,まさしく本書はトランスレーショナルリサーチの極意であり,基礎研究してみようとその気にさせる内容です。

手が込んでます
 可愛いオリジナルイラストと,合間にこれでもかと突然挿入される本当に綺麗な電顕写真との対比が心憎いまでも読者の理解を進めます。そして,「こんなことがまだ解らないんだ,研究テーマだらけなんだ,どうだい君も一緒に研究してみないか?」と悪魔の誘いが随所に散りばめられているところが憎い。全世界の同世代の研究者を相手に「これで世界にアピールするんだ,一緒にやろうよ」と投げかける逞しいスピリットを強く感じます。私も研究したくなりました。

これは売れますね
 手の混んだ多色刷りで綺麗な写真もいっぱいですが(超高価なハズ),おそらく印税なんかいらないから,できるだけ安価にして多く売れる,すなわち多くの若い人が触れてAll Japan で研究が進むようにして欲しい,という編者の祈りに満ちた気持ちと同時に,アカデミアに対する信念を感じます。できるだけ安価でお願いします。

香川大学医学部救急災害医学教授
第48 回日本集中治療医学会会長 黒田泰弘

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刊行に寄せて

 私の日常のポリシーとして,部下を人前では褒めずに陰で褒める,叱る時には明確に理由をつけて目の前で叱るということを実践しています。この本の推薦文を依頼されたときに,そのポリシーに抵触するのではないかと一瞬ためらいました。褒めるべき本になっていても部下を安易にほめてはいけないのではないかと躊躇したのです。

 しかし,それは杞憂でした。ゲラを見せてもらった瞬間に,これはいい,と感じたのです。この美しい図と写真が直感的に読者の皆さんの理解を助け,新しい興味を引き付けるであろうと。

 最初の1ページ目から,最後の1ページに至るまで,まさに,書名のごとくICU輸液がみえるものになっています。超微形態生理学という臨床家には聞きなれない言葉が,さもありなんという迫力で迫ってくるのです。企画から構成,実施のすべてにかかわった皆さんの努力が美しい一冊の本として結晶しています。

 この本は素晴らしいと手放しで褒めざるをえません。私のポリシーをたやすく打ち破った,編者,著者の皆様に幸あれと願います。

岐阜大学医学系研究科救急・災害医学分野教授
第48 回日本救急医学会会長 小倉真治

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形から機能を考える

 幼稚園の子供に「チーターってどんなの?」と聞かれて,上手に説明することができる人ってどのくらいいるのでしょうか? 私の場合は,「う~ん,黒い斑点があって……足が速くて……」と説明しようとはするもののうまくいかず,結局,一緒に図鑑を見たり,テレビを見たり,動物園に行ったりして「こんなの」と言って,納得してもらいました。「百聞は一見に如かず」ですね。見れば納得できます。似たような経験は皆さんおもちではないでしょうか?

 本書の特徴は血管を「見る」ということです。血管は酸素や栄養を身体の隅々まで送り届ける極めて重要な働きを担っている割には,脳や肺,心臓,肝臓,腎臓などの臓器に比べて,なんとなく脇役のような位置づけをされているような気がしています。しかし,今までなんとなく記載されてきた血管に注目して,その「形から機能を考える」といろんなものがみえてきます。

 私が血管内皮の観察を始めたのは,「血管内皮障害という言葉は聞くけれど,どんな風になっているんだろう? 見てみよう。」というきわめて単純な思い付きでした。そこから教科書に書かれている「血管透過性の亢進」とはどんな状態なのだろう? という疑問に行き当たり,血管内皮グリコカリックスというものに出会ったわけです。

 血管内皮グリコカリックスは輸液の概念を変えたといわれているように,多くのいわゆる純正のグリコカリックス研究者は「輸液」から入り「グリコカリックス」に至ることが多いようです。そういう方々に対して,私のグリコカリックスとの出会い方は珍しいのではないかなと思っています。
 ただ,私自身はグリコカリックスを学ぶ過程で「こんな形をしている」ということがわかったことで「形から機能を考える」ことができたため血管内皮グリコカリックスに関連したさまざまな病態について理解しやすかったのではないかとも思っています。本書を読んでいただいて,少しでもICU 輸液にお役立ていただければ幸甚です。

2020 年10 月
岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学分野准教授
岡田英志

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血管から視界が広がる

 ある番組を観ていて,「最近注目されている臓器連関って,臓器同士がメッセージ物質をどうやってやり取りしているのだろうか?」とふと思いました。「血管を介してだよな。」とすぐに思いつきましたが,それほど深く考えることなく,忘れてしまいました。

 しばらくして,岡田英志先生との出会いがあり,毛細血管の電子顕微鏡画像をみるようになりました。そうしたこともあって,病理医として病理組織を見るなかで,血管,特に各臓器の毛細血管を光学顕微鏡で注視して見るようになりました。そのとき,「臓器連関のほとんどは,この多数の毛細血管からの血流にのせられて,メッセージ物質が運ばれるんだな。血管を構成する血管内皮細胞が情報取得や傷害の最前線だな」と当たり前ながら再認識しました。例えば,肺が障害を受ければ,その情報は全身臓器に伝わるはずです。もちろん,受け手の臓器の反応はそれぞれ違うでしょう。受け手の血管が元気なら,その情報を遮断し,さらには,保護する役割を果たすのではと。

 これは1 つのエピソードに過ぎず,いろんな気づきがあったのですが,その延長に本書があると思っています。マクロにおいて全身循環(輸液)と,超微細な電子顕微鏡レベルまでの主要臓器の血管とをつなぐ,未だかつてない大変ユニークな本となりました。また,救急や麻酔科,病理学といった全身の臓器を診る医師が参画していることも特徴です。さらに,若手医師を中心に執筆してもらったことで,今後,このような視点を持った医師や医療関係者が増えることを期待しています。不十分な記載や重複もあるかと思いますが,よい本になったと思います。

 本書をざっと一通り読んで(見て)いただくと,全身循環から各臓器,そして末梢毛細血管の構造と働きを俯瞰して見れるようになると思います。手に取っていただく皆さんの新たな視界が広がる,そんな“ 出発点の本” となることを願っております。

 最後に,編集代表の岡田英志先生,メジカルビュー社編集部の井上紘一郎様,岐阜大学医学部腫瘍病理学教室教授の原 明先生をはじめとした先生方,高橋京子様,須賀紋子様,北角礼子様,清水雅良様に改めて感謝申し上げます。

2020 年10 月
岐阜大学大学院医学系研究科腫瘍病理学講座准教授
富田弘之
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目次

Ⅰ章 グリコカリックスでとらえる血管内皮と障害のしくみ
 微小循環と血管内皮構造
  1. 微小循環と毛細血管  (小川史洋)
  2. 血管内皮細胞の機能  (鈴木昭夫)
  3. グリコカリックスのあゆみ/機能と役割  (金山知弘,富田弘之)
  4. グリコカリックスの脱落と再生  (丹羽亜弓,富田弘之)
  5. グリコカリックスで何が変わったのか  (小林賢輔,御室総一郎,中島芳樹)
  6. グリコカリックスとバイオマーカー  (数馬 聡)
 血管内皮障害の病態
  1. 血管内皮障害と薬物動態  (鈴木景子)
  2. 血管内皮障害による臓器障害のメカニズム  (福田哲也,岡田英志)
  3. 血管内皮障害の凝固・線溶系への影響  (伊藤隆史)

Ⅱ章 臓器別毛細血管内皮と障害
 超微形態学と電子顕微鏡の基礎
  1. 超微形態学とは/なぜ電子顕微鏡なのか  (宮﨑 渚,岡田英志,竹村元三)
  2. 電子顕微鏡の種類と特徴  (川崎雄輝)
  3. 血管内皮観察のための電子顕微鏡サンプル作製法  (高田ちひろ)
 超微形態学でわかるしくみと障害機序
  1. 3 種類で語れない毛細血管  (福田洋丞)
  2. 心臓  (渡邉崇量,富田弘之,岡田英志)
  3. 肺  (鈴木浩大,富田弘之,岡田英志)
  4. 肝臓  (岡田英志,富田弘之)
  5. 腎臓  (宮﨑 渚,富田弘之,岡田英志)
  6. 消化管  (富田弘之,岡田英志)
  7. 頭部  (木下喬公,富田弘之)
 グリコカリックスのイメージング
  1. 生体におけるグリコカリックスの描出  (牛山 明)

Ⅲ章 超微形態生理学に基づく輸液療法と実際
 グリコカリックスの保護・修復戦略
  1. 輸液の基礎理論  (桂川孝行,御室総一郎,中島芳樹)
  2. 輸液製剤と輸液管理の基礎  (桂川孝行,御室総一郎,中島芳樹)
  3. 急性期に有用なグリコカリックスモデル  (小林 充,御室総一郎,中島芳樹)
  4. 輸液とグリコカリックス  (佐藤恒久,御室総一郎,中島芳樹)
  5. 薬剤とグリコカリックス  (岡田英志)
 疾患・病態と輸液療法 
  1. DIC と輸液  (安田 立,吉田省造)
  2. 心不全と輸液  (牛越博昭)
  3. ARDS と輸液  (三宅喬人,吉田省造)
  4. AKI と輸液  (土井智章)
  5. 熱傷(蘇生)と輸液  (大須賀章倫)
  6. 周術期と輸液  (北川雄一郎,吉田省造)
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