シチュエーションで学ぶ

輸液レッスン

第3版

輸液レッスン

■著者 小松 康宏
西﨑 祐史
津川 友介

定価 3,740円(税込) (本体3,400円+税)
  • A5判  316ページ  2色
  • 2021年3月22日刊行
  • ISBN978-4-7583-1782-5

「読みやすさ」「理解しやすさ」にさらにこだわった充実の第3版!

「読みやすさ」「理解しやすさ」にさらにこだわった充実の第3版!
①研修医と指導医の会話からシチュエーションをイメージし,その後の解説でぐんと理解が深まるという構成はそのままに,つまづきやすいところはさらに噛み砕いて解説しました。
②「実際にはどう投与するの?」の声にもお応えし,症例とともに具体的な処方例を追加。
③最新の文献・知見に合わせて改訂し,「グリコカリックス」「SGLT2阻害薬」など輸液にまつわる話題も豊富に盛り込みました。
④「Advance」(専門医試験に対応)の項目を追加。基本からのステップアップもサポートします。
⑤津川先生の最新コラムも載っています。
「輸液は苦手」が「ひとりでできる・もっとできる」に変わる,実践的な一冊です!


序文

第3 版 はじめに

 「第3版 シチュエーションで学ぶ輸液レッスン」をお届けします。
 初版を発行してから10年経ちました。この間,学生から現場の先生方まで多くの読者の方々に支えられ,第3版をお届けすることができるようになりました。
 古井戸先生と佐藤さん,塩田くんの会話で各章の概要をまとめ,そのあとに解説を加えるというスタイルはそのままですが,読みやすさに工夫をこらしました。初版,改訂第2版では,ところどころに専門的な解説を加えていましたが,初心者にとって難しく感じるところがあったようです。
 初版のねらいは,輸液・電解質に苦手意識をもった若手に気楽に読んでもらい,輸液・電解質の基本的考え方を身に着けてもらうことでした。その後,研修医教育の参考に購入したという専門家の先生方からも多くのアドバイスをいただきました。私は,日本腎臓学会の「教育・専門医制度委員」を務めていますが,日本腎臓学会の「腎臓専門医受験のための教育セミナー」「臨床研修医のための教育セミナー」の講師経験を活かし,研修医にとっては通読しやすい本文を,専門医を目指す医師には「上級編(Advance)」のコラムでじっくり学べるようにしました。
 学生,研修医の方は,週末などを活用して会話と本文を一気に通読してください。全体像を把握したうえで,日々の診療の中で疑問点にあたったら,該当する項目を読みなおしてください。関連する上級編(Advance)に目をとおし,参考文献を読めば理解が深まるでしょう。
 初版の執筆当時には大学院生だった西﨑は順天堂大学の先任准教授として医学教育に力を入れています。また,NPO法人日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP: Japan Institute for Advancement of Medical Education Program)の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE: General Medicine In-Training Examination)プロジェクトマネージャーを務めており,研修医教育の標準化および質向上を目指しています。
 初版の執筆当時には後期研修医であった津川はその後渡米し,ハーバード大学で医療政策学のPhDを取得しました。現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の助教授として活躍しています。「AIと医療」「よい医師のタイプ」について解説した“Tsugawa’s Column”もお楽しみに。
 小松は群馬大学の医療の質・安全学講座の教授となり,輸液処方は医薬品関連安全の重要な課題であるとの認識をもっています。英国NICEガイドラインは不適切な輸液は医療安全上の問題であることを指摘し,近年は「輸液スチュワードシップ」という考えかたも提唱されています。院内の抗菌薬使用を管理する「抗菌薬スチュワードシップ」のように,いずれは院内の輸液・電解質関連の医療の質・安全を保証する体制が求められるでしょう。
 バージョンアップし読みやすさ,理解しやすさを追求した第3版を楽しみながら読んでいただければ幸いです。

2021年2月
筆者を代表して
小松康宏
全文表示する
閉じる

目次

プレテスト あなたの輸液の実力は?

第1章 輸液の基本・輸液の実際
【輸液の基本】
 総体液量は体重の60% , 血液量は体重の約7.5%
 輸液の目的はNaと水の補充
 輸液製剤の代表選手は生理食塩液と自由水(5%ブドウ糖液)
 1Lの生理食塩液を投与すると250mLが血管内に残る。5%ブドウ糖液なら83mLしか血管内に残らない
 1Lの自由水を投与してもわずか83mLしか血管内に残らない!
 低張液(ソリタ®-T3)1L投与後の体内分布を考えよう
 1価のイオン1mmolは1mE(q メック),2価のイオン1mmol は2mEqになることを覚えておこう
【輸液の実際】
 高ナトリウム血症があれば脱水,なければ細胞外液量欠乏とよぶ
 「脱水」(細胞外液量欠乏)状態かをみたければ患者さんの脇,舌,爪など身体をくまなく診察する!
 輸液療法の基本は,初期アセスメントとモニタリング
 輸液の投与量と投与速度を決めるには?−1日当たりの投与量をイメージしよう
 Advance
 有効循環血液量減少,有効動脈血液容量,細胞外液量欠乏,脱水について
 生理食塩液の浸透圧は308でなく286mOsm/kg・H2Oなのはなぜ?

第2章 電解質,酸塩基平衡
【Na・水バランス】
 腎臓でのNaと水調節メカニズムを理解する
 浮腫の原因は,①静水圧上昇,②膠質浸透圧低下,③血管透過性亢進,④リンパ灌流不全
 全身性浮腫の治療では,まず食塩を制限する
 利尿薬は尿細管でのNa再吸収を阻害し,Naと水の排泄を促進する
 ループ利尿薬はヘンレループ太い上行脚で作用する最強の利尿薬
 サイアザイド系は遠位曲尿細管で作用するマイルドな降圧利尿薬
 鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(K保持性利尿薬)はループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬との併用で効果が増強する
 急性重症低ナトリウム血症は致死的な病態!慢性低ナトリウム血症はQOL低下を生じる!
 低ナトリウム血症をみたら,まずは本物か偽物かを見極める!
 低浸透圧性低ナトリウム血症であれば,まずは水中毒を除外!
 水中毒を除外したら,細胞外液量に注目する!
 術後患者にみられる低ナトリウム血症は医原性ともいえる −漫然と維持輸液を処方し続けてはならない
 下痢にみられる低ナトリウム血症 −原因はNa喪失といってよいのだろうか
 SIADHの診断をマスターしよう
 低ナトリウム血症の治療にあたっての考え方
 重篤な神経症状がある高度低ナトリウム血症に対する緊急補正
 症状が軽微な慢性低ナトリウム血症に対する治療の進め方 −細胞外液量欠乏を伴う低ナトリウム血症
 SIADHの低ナトリウム血症をどのように治療するか(正攻法)
 高ナトリウム血症の原因は口渇中枢の異常,尿濃縮力障害,水分摂取量低下である
 高ナトリウム血症の診断
 高ナトリウム血症の治療法をマスターしよう
 Advance
 トルバプタンは集合管に作用する「水利尿薬」
 SGLT2阻害薬は近位尿細管に作用し利尿作用を伴う新規経口血糖降下薬!
 グリコカリックスと改訂Starlingの法則
 脱塩現象(desalination)  生食を投与すればするほど低Na血症が進行する!?
【Kバランス】
 血漿K濃度は①食事や輸液からのK摂取(intake),②細胞内外のK移動,③腎臓からのK排泄(output)のバランスによって調整されている
 腎臓のK排泄量は,Naの摂取量に影響される
 利尿薬を服用中の患者さんでは低カリウム血症に注意
 低カリウム血症の鑑別診断の進め方
 K補充は経口投与が原則。点滴補充は適応を十分に検討すること
 高カリウム血症は,① K摂取過剰,② K排泄障害,③細胞外へのK移動のどれかで起こっている
 高カリウム血症をみたら,①K再検査,②心電図モニター,③治療の緊急性を判断
 高カリウム血症の治療法
 Advance
 腎臓のK調節機序
 RAA系阻害薬服用患者にみられる高カリウム血症の管理
【酸塩基平衡】
 酸塩基平衡を理解する
 Henderson-Hasselbalchの式を理解しよう
 動脈血ガスはステップワイズ法で読む! 練習あるのみ!
 動脈血ガスの代償性変化を予測する
 3つのSTEPで血液ガスを解釈する
 AGの増加は代謝性アシドーシスの存在を示している。高AGアシドーシスの鑑別はKUSSMAL-P
 補正HCO3 − を計算して隠れた代謝性アルカローシスをみつける
  (ステップワイズの3)
 代謝性アシドーシスの原因を理解しよう
 代謝性アシドーシスの治療法 −安易にメイロン®を使用してはいけない
 Advance
 酸塩基平衡異常の解釈法:Boston学派,Copenhagen学派,Stewart法
 静脈血液ガス,静脈血[HCO3−],総CO2含量
 尿アニオンギャップ
【そのほか(Ca,P,Mg)のバランス】
 Caは生体にかかすことのできない重要なミネラルである
 低リン血症は,心不全,呼吸不全の原因になる!
 意外に見落とすMg欠乏 −Mgはルーチンに測定するべき必須元素! 微量元素ではない!
 Case Review
 電解質異常の初期治療
  低ナトリウム血症/高ナトリウム血症/低カリウム血症/高カリウム血症/高カルシウム血症

第3章 特殊な病態のマネジメント
【心不全の輸液】
 体液過剰のある心不全患者に輸液をしてもよいのでしょうか?
 左室駆出率が保たれている心不全(HFpEF)に気をつける
【腎不全の輸液】
 腎不全患者では尿量に応じて輸液処方を調整する
 腎不全患者では過剰投与にならないよう注意する
 Advance
 急性心不全の初期輸液 −病態評価を通じて治療(輸液)の方針を考えよう
 造影剤腎症予防
 終末期患者に対する輸液
 輸液スチュワードシップ:適正な輸液療法をめざす質改善活動
 医療の質と安全
 
Tsugawa's Column
 AIは医療の未来をどのように変えるのか?
 どのようなタイプの医師が「良い医師」なのか?
 
コラム
 体水分量は年齢,性別によっても異なります
 血漿の分布-動脈血はわずか600mL !
 体液恒常性(ホメオスタシス)とは?
 人が1日に必要とする最低Na量は600mg
 乳酸リンゲルと酢酸リンゲルの違い
 浸透圧と張度の違い,OsmolalityとOsmolarityの違いは?
 5%ブドウ糖液1L投与後の水移動を考える
 毛細血管充満時間(capillary refill time;CRT)とは?
 静水圧(せいすいあつ;hydrostatic pressure)
 スピロノラクトンの用量
 マラソンランナーの水中毒
 水中毒(water intoxication)の定義
 鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム(Na)血症(mineralocorticoid-responsive hyponatremia of the elderly;MRHE)とは?
 利尿薬(diuretics)と利水薬(aquaretic)
 SIADH患者の過剰水分量を求める式
 時間あたり0.33mEq/L(24 時間あたり8mEq/L)の速度で低ナトリウム血症を治療するには,時間あたり体重×1.5mL の自由水を排泄させればよい
 欧州腎臓学会・臨床内分泌学会の新たな低ナトリウム治療ガイドライン -低ナトリウム血症治療のパラダイムシフト
 低張性低ナトリウム血症の治療例(欧州ガイドラインに準ずる)
 グリセオール®で高ナトリウム血症になるのはNa負荷のせい?
 高ナトリウム血症にならない塩分の摂取許容量は?
 浸透圧利尿があるかどうかの基準が900mOsmなのはなぜでしょう?
 なぜ補正に5%ブドウ糖液を用いるのか?
 尿崩症などで引き続く大量の自由水喪失がある場合にどうするか -自由水クリアランスの計算方法
 K摂取と血圧の関係は?
 輸血と血漿K濃度の異常
 透析患者では腸管からのK排泄が増加する
 低アルブミン血症とアニオンギャップ
 メイロン®投与による血圧上昇は,Nの負荷の影響?
 ベースエクセス(base excess:BE)とは?
 輸液療法中は,週1回リン,マグネシウムを含めた電解質測定を行う
 救急外来で最も危険な処置(procedure)は?
 透析患者のTPN-Ca,P,Mg は微量元素ではなく必須元素
全文表示する
閉じる

関連する
オススメ書籍

会員登録されている方

メールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。

注)共有パソコンの方はチェックを外してください。

会員登録されていない方

会員登録されると次回からお客様情報をご入力いただく必要がありません。
また,購入履歴の確認ができる便利な機能がご利用いただけます。

個人情報の取り扱いについてはこちら