骨軟部の連想画像診断
画像に見えないものを診る
定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
- B5変型判 200ページ 2色,イラスト50点,写真200点
- 2016年3月30日刊行
- ISBN978-4-7583-1585-2
序文
はじめに
本書は,森 墾先生が書かれた 『脳・脊髄の連想画像診断』,および田中 宏先生による 『腹部の連想画像診断』 の姉妹編として執筆したものです。2013年の4月,第72回日本医学放射線学会の会場で森先生の書かれたものを目にして,“これは面白い。骨軟部でも同じような本があるといいなあ。それが出たらまとめて読むことにしよう……”と思っていました。
メジカルビュー社から連絡をいただいたのはその直後でした。“連想画像診断の骨軟部ヴァージョンを予定していて,ついては森先生のご推挙もあり,執筆をお願いしたい。”
“…ということは,つまり,自分自身で書かない限り,この本を読むことはできない…”私は腹を決めました。
私は在野の一放射線科医です。森先生のような哲学的示唆に富むコメントは書けませんし,田中先生のような独創的な視点も持ち合わせていません。そこで,自分自身がこれまでに経験した教育的・教訓的な症例を中心に,地道に解説をすることとしました。指導医と研修医の会話を通じてストーリーが展開していくという形式は踏襲し,その中に初学者がともすれば陥りがちなピットフォールや,推論のポイントなどを織り込んでいます。
大学受験のころ,誰しも数学を勉強したと思います。教科書とは別に,“教科書傍用の問題集”というのがあったのを思い出してください。“オリジナル”とか“スタンダード”等の名称で呼んでいたやつです。教科書は,基本的な定理や公式が順序よく書かれていて,段階を追って勉強が進んでいくように構成されています。教科書傍用の問題集は,それを補完する性格のもので,演習を通して理解を深めるのを目的としています。基本的な問題だけでなく,時には発展的な内容(例えば東大の入試問題とか)が含まれていたりします。車の両輪のようなものです。
本書は,まさにその問題集のように利用していただくことを想定しています。症例供覧と解説を通して,教科書での通り一遍の記載では理解しがたいこと,不足しがちなこと,時には画像診断には余分かもしれない雑学などに触れています。したがって,“難易度”も多彩で,きわめて基本的な症例があるかと思えば,かなり難解で“ヲタク度”の高い疾患が突然登場することもあります。ところどころで,参考となる教科書等を呈示しているので,可能なら,これらの文献をともに座右に置いて読み進めることをお勧めします。
全部で5章から構成されています。できれば,最初に第1章に目を通してください。よく遭遇する正常変異について解説を加えながら,骨軟部の画像診断に際しての基本的用語などを解説しているからです。あとの4つの章は順番にとらわれず,興味のあるところから適宜読んでいただいて結構です。
呈示する症例の中には,これまでに私が教育講演や学会のフィルムリーディングなどで供覧した症例や,『臨床画像』 などの雑誌やいくつかの単行本に既に掲載したものも含まれています。“ 何だ,またこの話かよ。”という感想を持たれる読者もいるかもしれません。しかし,重要な事項は繰り返し勉強していくことが肝要です。 “天才”と呼ばれる一握りの人達は別として,大概の凡人は一回の学習ですべてを覚えることは困難です。先ほど数学の問題集を引き合いに出しましたが,似たような問題,時には同じ問題を繰り返し演習することで実力がついていったのではないでしょうか。
本書の企画と出版に際して,終始粛々と編集作業をしていただいた伊藤 彩さんをはじめとする編集部のスタッフに,この場を借りて感謝の意を表します。また,日常の診療業務のなかで著者を支えてくれている沼津市立病院の仲間たち,それから,この領域の知識を共有するために定期的に開催しているTokyo Bone Club(通称:骨軟部おたくカンファレンス)のメンバーの方々にも,深く感謝の意を表します。本書が,骨軟部領域の画像診断を勉強するうえで“教科書傍用の問題集”として少しでも役に立てば,とても嬉しく思います。
2016年2月
藤本 肇
本書は,森 墾先生が書かれた 『脳・脊髄の連想画像診断』,および田中 宏先生による 『腹部の連想画像診断』 の姉妹編として執筆したものです。2013年の4月,第72回日本医学放射線学会の会場で森先生の書かれたものを目にして,“これは面白い。骨軟部でも同じような本があるといいなあ。それが出たらまとめて読むことにしよう……”と思っていました。
メジカルビュー社から連絡をいただいたのはその直後でした。“連想画像診断の骨軟部ヴァージョンを予定していて,ついては森先生のご推挙もあり,執筆をお願いしたい。”
“…ということは,つまり,自分自身で書かない限り,この本を読むことはできない…”私は腹を決めました。
私は在野の一放射線科医です。森先生のような哲学的示唆に富むコメントは書けませんし,田中先生のような独創的な視点も持ち合わせていません。そこで,自分自身がこれまでに経験した教育的・教訓的な症例を中心に,地道に解説をすることとしました。指導医と研修医の会話を通じてストーリーが展開していくという形式は踏襲し,その中に初学者がともすれば陥りがちなピットフォールや,推論のポイントなどを織り込んでいます。
大学受験のころ,誰しも数学を勉強したと思います。教科書とは別に,“教科書傍用の問題集”というのがあったのを思い出してください。“オリジナル”とか“スタンダード”等の名称で呼んでいたやつです。教科書は,基本的な定理や公式が順序よく書かれていて,段階を追って勉強が進んでいくように構成されています。教科書傍用の問題集は,それを補完する性格のもので,演習を通して理解を深めるのを目的としています。基本的な問題だけでなく,時には発展的な内容(例えば東大の入試問題とか)が含まれていたりします。車の両輪のようなものです。
本書は,まさにその問題集のように利用していただくことを想定しています。症例供覧と解説を通して,教科書での通り一遍の記載では理解しがたいこと,不足しがちなこと,時には画像診断には余分かもしれない雑学などに触れています。したがって,“難易度”も多彩で,きわめて基本的な症例があるかと思えば,かなり難解で“ヲタク度”の高い疾患が突然登場することもあります。ところどころで,参考となる教科書等を呈示しているので,可能なら,これらの文献をともに座右に置いて読み進めることをお勧めします。
全部で5章から構成されています。できれば,最初に第1章に目を通してください。よく遭遇する正常変異について解説を加えながら,骨軟部の画像診断に際しての基本的用語などを解説しているからです。あとの4つの章は順番にとらわれず,興味のあるところから適宜読んでいただいて結構です。
呈示する症例の中には,これまでに私が教育講演や学会のフィルムリーディングなどで供覧した症例や,『臨床画像』 などの雑誌やいくつかの単行本に既に掲載したものも含まれています。“ 何だ,またこの話かよ。”という感想を持たれる読者もいるかもしれません。しかし,重要な事項は繰り返し勉強していくことが肝要です。 “天才”と呼ばれる一握りの人達は別として,大概の凡人は一回の学習ですべてを覚えることは困難です。先ほど数学の問題集を引き合いに出しましたが,似たような問題,時には同じ問題を繰り返し演習することで実力がついていったのではないでしょうか。
本書の企画と出版に際して,終始粛々と編集作業をしていただいた伊藤 彩さんをはじめとする編集部のスタッフに,この場を借りて感謝の意を表します。また,日常の診療業務のなかで著者を支えてくれている沼津市立病院の仲間たち,それから,この領域の知識を共有するために定期的に開催しているTokyo Bone Club(通称:骨軟部おたくカンファレンス)のメンバーの方々にも,深く感謝の意を表します。本書が,骨軟部領域の画像診断を勉強するうえで“教科書傍用の問題集”として少しでも役に立てば,とても嬉しく思います。
2016年2月
藤本 肇
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目次
1章 正常変異を知る〜その所見は本当に異常か?〜
ホントに骨腫瘍?
ホントに骨膜反応?
胸部異常陰影?
これまた胸部異常陰影?
またまた胸部異常陰影?
しつこく胸部異常陰影?
骨盤の腫瘍?
骨折?
種子骨? 骨折?
またしても骨折?
滑膜の折れ返り?
骨挫傷? 骨髄炎? それとも腫瘍?
2章 画像に現れた病理像を推定する〜かたちとMRIの信号から解きほぐす〜
骨の塊
粉砕された骨の成分?
指の骨の病的骨折
骨幹端から連続した骨の出っ張り
液面形成を伴う有痛性の病変
内軟骨腫みたいに見える大腿骨腫瘍
皮下脂肪と同じモノ
皮下脂肪とチョット違うモノ
筋肉内結石?
二重マルのカタチ
腹黒いやつ
まったく別のところにできる同じもの
黒い数珠(?)のある腫瘍
ヌチナガーグーフ
3章 時間軸を意識して読影する〜病変の時間的経過を想像する〜
右足が痛い男性
胸椎の骨折2例
農作業小屋で転落した高齢者
外傷の“記憶” その①
外傷の“記憶” その②
骨盤骨折後の液体貯留
単純X線写真に写った“死の前兆”
4章 非典型例の典型像を知る〜ありふれた疾患のちょっとヘンな姿〜
look-like anything lesion その①
look-like anything lesion その②
炎症? それとも……
ホントに骨転移? その照射,ちょっと待った!
咽後膿瘍で緊急切開排膿か?
あら、こんなとこにも○○が……
悪性軟部腫瘍?
異様なアーチファクトを伴う軟部腫瘤を見たら……
5章 局所所見から全身性疾患を診断する〜木を見て森を思い浮かべる〜
神出鬼没の病変 その①
神出鬼没の病変 その②
溶骨性骨病変+間質性肺病変=?
肺(?)の結節+肋骨の変形=?
多発肺転移+多発骨転移(?)
今度こそ多発骨転移(?)
脊椎炎? それとも骨転移?
ただの圧迫骨折じゃないの?
リンパ節腫大で精査したら,骨に異常が!?
階段から落ちてから足の痛みが続いている若い女性
最近,落ち着きがなくなったという若い女性
母趾が腫れている高齢男性
20歳台だけど進行した変形性関節症?
全身が痛い下田市在住の男性
呼吸窮迫の新生児
ホントに骨腫瘍?
ホントに骨膜反応?
胸部異常陰影?
これまた胸部異常陰影?
またまた胸部異常陰影?
しつこく胸部異常陰影?
骨盤の腫瘍?
骨折?
種子骨? 骨折?
またしても骨折?
滑膜の折れ返り?
骨挫傷? 骨髄炎? それとも腫瘍?
2章 画像に現れた病理像を推定する〜かたちとMRIの信号から解きほぐす〜
骨の塊
粉砕された骨の成分?
指の骨の病的骨折
骨幹端から連続した骨の出っ張り
液面形成を伴う有痛性の病変
内軟骨腫みたいに見える大腿骨腫瘍
皮下脂肪と同じモノ
皮下脂肪とチョット違うモノ
筋肉内結石?
二重マルのカタチ
腹黒いやつ
まったく別のところにできる同じもの
黒い数珠(?)のある腫瘍
ヌチナガーグーフ
3章 時間軸を意識して読影する〜病変の時間的経過を想像する〜
右足が痛い男性
胸椎の骨折2例
農作業小屋で転落した高齢者
外傷の“記憶” その①
外傷の“記憶” その②
骨盤骨折後の液体貯留
単純X線写真に写った“死の前兆”
4章 非典型例の典型像を知る〜ありふれた疾患のちょっとヘンな姿〜
look-like anything lesion その①
look-like anything lesion その②
炎症? それとも……
ホントに骨転移? その照射,ちょっと待った!
咽後膿瘍で緊急切開排膿か?
あら、こんなとこにも○○が……
悪性軟部腫瘍?
異様なアーチファクトを伴う軟部腫瘤を見たら……
5章 局所所見から全身性疾患を診断する〜木を見て森を思い浮かべる〜
神出鬼没の病変 その①
神出鬼没の病変 その②
溶骨性骨病変+間質性肺病変=?
肺(?)の結節+肋骨の変形=?
多発肺転移+多発骨転移(?)
今度こそ多発骨転移(?)
脊椎炎? それとも骨転移?
ただの圧迫骨折じゃないの?
リンパ節腫大で精査したら,骨に異常が!?
階段から落ちてから足の痛みが続いている若い女性
最近,落ち着きがなくなったという若い女性
母趾が腫れている高齢男性
20歳台だけど進行した変形性関節症?
全身が痛い下田市在住の男性
呼吸窮迫の新生児
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骨軟部領域の画像診断における,推論と鑑別のコツを伝授!
読影に臨む2人の研修医と指導医の軽妙でユーモアあふれる問答により,骨軟部領域の画像診断についてわかりやすく解説。時に救急救命医や開業医の先生なども登場し,他科との情報交換も想定しながら読み進めることができる。
絵合わせだけでなく,診断に至る論理を病態生理を基に解明していく。画像に見える所見から,正常変異か異常かを見極め,画像の向こう側の病態や病理像,患者さんの症状まで思いを馳せる,そんな放射線科医の診断の醍醐味を軽快にそして奥深く追求した書籍。