炎症性腸疾患の外科治療
定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- A4判 272ページ オールカラー,イラスト140点
- 2013年3月27日刊行
- ISBN978-4-7583-1505-0
序文
巻頭言
炎症性腸疾患は,潰瘍性大腸炎およびクローン病ともに嘗ては我が国では欧米に比べて稀な疾患であったが,最近では患者数が急増して,現在は15万人を超えるようになった。患者数の増加の原因は食生活の欧米化によると考えられ,今後も続くと推測されている。このような背景により我が国でも,これまでは限られた専門施設でしか経験することがなかった潰瘍性大腸炎やクローン病がしばしば一般病院の臨床医が日常診療の中で経験する時代を迎えている。
炎症性腸疾患は世界の研究者が病態解明に挑む中にあっても,いまだに原因不明で治療が困難な疾患群である。我が国では厚生労働省難病対策事業の 「難病指定」 を受け,難治性腸管障害調査研究班が約40年前より組織されて現在の渡辺班に至っている。今日では栄養療法や血球除去療法などが我が国独自の内科的治療法として普及し,また,新しい分子標的薬剤の国内導入により,従来に比べて高い効果が期待される内科治療が展開されている。
一方,外科治療においても,多くの施設で様々な手術症例を経験すると同時に,炎症性疾患に特有な多彩な病態の経験を重ねて日々新しい課題の発見や治療法の工夫,改善が進み,新たな展開を迎えている。
このような状況を鑑みて,現在の班会議の外科治療専門医の中で,いま行われている手術手技を中心に,関連する外科治療に必要な項目については要点をコンパクトに纏めた手術書の制作気運が高まった。そしてこの度,全国の有志が一丸となって執筆を担当し,我が国におけるIBD外科治療法書を出版することとなった。まさに現在の“IBD Surgeons Team in Japan”の成果ともいえよう。なお,外科医として必要な内科的内容については代表する内科専門医のご協力も頂いた。日頃の診療・研究で忙しい中,快く執筆を引き受けて頂いたことに心より感謝申し上げる。
今日このように我が国で最初のIBD手術書を出版することになったが,我々が此の場に居ることができるのは,長い困難な診療と研究の道のりを開拓されて来られた外科医の先達および苦難に耐え外科医を信頼して治療を受けられた患者さんのおかげであると確信する。外科治療は時代とともに更なる改良が進むと思われるが,その度ごとに内容も改訂されるべきであろう。そして,今後,我々も含めて後に続く人々が今より例え僅かでも治療を改善したいと創意と工夫を重ねることに本書が役立ててば…と,期待するものである。
最後に,本誌出版作業にご尽力頂いたメジカルビュー社編集部宮澤 進氏,石田奈緒美氏に深謝いたします。
2013年2月
佐々木 巌,杉田 昭,二見喜太郎
炎症性腸疾患は,潰瘍性大腸炎およびクローン病ともに嘗ては我が国では欧米に比べて稀な疾患であったが,最近では患者数が急増して,現在は15万人を超えるようになった。患者数の増加の原因は食生活の欧米化によると考えられ,今後も続くと推測されている。このような背景により我が国でも,これまでは限られた専門施設でしか経験することがなかった潰瘍性大腸炎やクローン病がしばしば一般病院の臨床医が日常診療の中で経験する時代を迎えている。
炎症性腸疾患は世界の研究者が病態解明に挑む中にあっても,いまだに原因不明で治療が困難な疾患群である。我が国では厚生労働省難病対策事業の 「難病指定」 を受け,難治性腸管障害調査研究班が約40年前より組織されて現在の渡辺班に至っている。今日では栄養療法や血球除去療法などが我が国独自の内科的治療法として普及し,また,新しい分子標的薬剤の国内導入により,従来に比べて高い効果が期待される内科治療が展開されている。
一方,外科治療においても,多くの施設で様々な手術症例を経験すると同時に,炎症性疾患に特有な多彩な病態の経験を重ねて日々新しい課題の発見や治療法の工夫,改善が進み,新たな展開を迎えている。
このような状況を鑑みて,現在の班会議の外科治療専門医の中で,いま行われている手術手技を中心に,関連する外科治療に必要な項目については要点をコンパクトに纏めた手術書の制作気運が高まった。そしてこの度,全国の有志が一丸となって執筆を担当し,我が国におけるIBD外科治療法書を出版することとなった。まさに現在の“IBD Surgeons Team in Japan”の成果ともいえよう。なお,外科医として必要な内科的内容については代表する内科専門医のご協力も頂いた。日頃の診療・研究で忙しい中,快く執筆を引き受けて頂いたことに心より感謝申し上げる。
今日このように我が国で最初のIBD手術書を出版することになったが,我々が此の場に居ることができるのは,長い困難な診療と研究の道のりを開拓されて来られた外科医の先達および苦難に耐え外科医を信頼して治療を受けられた患者さんのおかげであると確信する。外科治療は時代とともに更なる改良が進むと思われるが,その度ごとに内容も改訂されるべきであろう。そして,今後,我々も含めて後に続く人々が今より例え僅かでも治療を改善したいと創意と工夫を重ねることに本書が役立ててば…と,期待するものである。
最後に,本誌出版作業にご尽力頂いたメジカルビュー社編集部宮澤 進氏,石田奈緒美氏に深謝いたします。
2013年2月
佐々木 巌,杉田 昭,二見喜太郎
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目次
Ⅰ わが国と世界のIBD疫学の概要 桑原絵里加,朝倉敬子,武林 亨
Ⅱ IBDの病因・病態 金井隆典
Ⅲ 保存的治療:寛解導入療法,寛解維持療法
潰瘍性大腸炎(UC) 河野友彰,松本譽之
クローン病(CD) 志賀永嗣,木内喜孝,高橋成一
Ⅳ 潰瘍性大腸炎
手術適応 飯合恒夫,畠山勝義
手術手技の実際
Overview:潰瘍性大腸炎に対する手術法(歴史と回腸人工肛門,その他の人工肛門造設術)
楠 正人,内田恵一,荒木俊光
回腸嚢肛門吻合術(IAA) 池内浩基,内野 基,松岡宏樹,坂東俊宏,竹末芳生,冨田尚裕
W型回腸嚢 飯合恒夫,畠山勝義
回腸嚢肛門管吻合術 杉田 昭,小金井一隆,辰巳健志
回腸ストーマ(ileostomy) 舟山裕士,高橋賢一,生澤史江
Turnbull手術 吉岡和彦,中根恭司,權 雅憲
腹腔鏡補助下手術/小開腹手術
①腹腔鏡下手術操作手順 板橋道朗,亀岡信悟
②hand assistの手術操作の詳細とコツ 中島清一
③小開腹手術操作とコツ 小金井一隆,辰巳健志,杉田 昭
合併症と周術期管理,患者ケア
周術期管理 舟山裕士,高橋賢一,生澤史江
術後合併症への対策 大毛宏喜,末田泰二郎
回腸嚢炎(pouchitis) 福島浩平,渡辺和宏,佐々木 巌
潰瘍性大腸炎術後の長期合併症への対策—salvage手術 根津理一郎
人工肛門関連合併症(stoma related complication) 小山文一,藤井久男,中島祥介
長期管理 板橋道朗,亀岡信悟
大腸全摘術後残存小腸の適応化現象について 福島浩平,羽根田 祥,佐々木 巌
Ⅴ クローン病
手術適応と術式の選択 佐々木 巌
手術手技の実際
クローン病に対する手術法の歴史 二見喜太郎
腸管切除と腸管吻合 山本隆行
新しい腸管吻合法:Kono-S吻合法 河野 透,前田耕太郎,坂井義治,大毛宏喜,Alessandro Fichera
新しい腸管吻合法:anti-mesenteric cutback end-to-end anastomosis(東北大法)
渡辺和宏,佐々木 巌,海野倫明
狭窄形成術 羽根田 祥,柴田 近,海野倫明
上部病変の手術 高橋賢一,舟山裕士,生澤史江
腹腔鏡補助下手術:適応と手技 廣田昌紀
肛門病変 二見喜太郎,東 大二郎,永川祐二,石橋由紀子
人工肛門造設・直腸切断術の適応と手技 佐原力三郎
合併症と周術期管理,患者ケア
周術期管理 東 大二郎,二見喜太郎,永川祐二,石橋由紀子
周術期管理の諸問題:周術期管理方法に関する多施設アンケート結果報告 Part Ⅰ
大北喜基,荒木俊光,楠 正人
周術期管理の諸問題:周術期管理方法に関する多施設アンケート結果報告 Part Ⅱ 倉地清隆
術後合併症への対策:術後腸管麻痺,感染症,その他 荒木俊光,内田恵一,楠 正人
人工肛門関連合併症(stoma related complication) 小金井一隆,辰巳健志,杉田 昭
腸管不全症例への対応 渡辺和宏,佐々木 巌,海野倫明
退院後の術後管理 橋本拓造,板橋道朗,亀岡信悟
Ⅵ IBDに合併する癌の治療
潰瘍性大腸炎合併大腸癌 横山雄一郎,須並英二,渡邉聡明
クローン病に合併した小腸・大腸癌の診断と治療 杉田 昭,小金井一隆,辰巳健志
Ⅶ 外科治療を受ける患者へのメンタルサポートの要点と実際 藤井久男
Ⅷ 外科治療のコスト 佛坂正幸
Ⅸ 難病対策事業としての認定制度,患者会,その他 福島恒男
Ⅱ IBDの病因・病態 金井隆典
Ⅲ 保存的治療:寛解導入療法,寛解維持療法
潰瘍性大腸炎(UC) 河野友彰,松本譽之
クローン病(CD) 志賀永嗣,木内喜孝,高橋成一
Ⅳ 潰瘍性大腸炎
手術適応 飯合恒夫,畠山勝義
手術手技の実際
Overview:潰瘍性大腸炎に対する手術法(歴史と回腸人工肛門,その他の人工肛門造設術)
楠 正人,内田恵一,荒木俊光
回腸嚢肛門吻合術(IAA) 池内浩基,内野 基,松岡宏樹,坂東俊宏,竹末芳生,冨田尚裕
W型回腸嚢 飯合恒夫,畠山勝義
回腸嚢肛門管吻合術 杉田 昭,小金井一隆,辰巳健志
回腸ストーマ(ileostomy) 舟山裕士,高橋賢一,生澤史江
Turnbull手術 吉岡和彦,中根恭司,權 雅憲
腹腔鏡補助下手術/小開腹手術
①腹腔鏡下手術操作手順 板橋道朗,亀岡信悟
②hand assistの手術操作の詳細とコツ 中島清一
③小開腹手術操作とコツ 小金井一隆,辰巳健志,杉田 昭
合併症と周術期管理,患者ケア
周術期管理 舟山裕士,高橋賢一,生澤史江
術後合併症への対策 大毛宏喜,末田泰二郎
回腸嚢炎(pouchitis) 福島浩平,渡辺和宏,佐々木 巌
潰瘍性大腸炎術後の長期合併症への対策—salvage手術 根津理一郎
人工肛門関連合併症(stoma related complication) 小山文一,藤井久男,中島祥介
長期管理 板橋道朗,亀岡信悟
大腸全摘術後残存小腸の適応化現象について 福島浩平,羽根田 祥,佐々木 巌
Ⅴ クローン病
手術適応と術式の選択 佐々木 巌
手術手技の実際
クローン病に対する手術法の歴史 二見喜太郎
腸管切除と腸管吻合 山本隆行
新しい腸管吻合法:Kono-S吻合法 河野 透,前田耕太郎,坂井義治,大毛宏喜,Alessandro Fichera
新しい腸管吻合法:anti-mesenteric cutback end-to-end anastomosis(東北大法)
渡辺和宏,佐々木 巌,海野倫明
狭窄形成術 羽根田 祥,柴田 近,海野倫明
上部病変の手術 高橋賢一,舟山裕士,生澤史江
腹腔鏡補助下手術:適応と手技 廣田昌紀
肛門病変 二見喜太郎,東 大二郎,永川祐二,石橋由紀子
人工肛門造設・直腸切断術の適応と手技 佐原力三郎
合併症と周術期管理,患者ケア
周術期管理 東 大二郎,二見喜太郎,永川祐二,石橋由紀子
周術期管理の諸問題:周術期管理方法に関する多施設アンケート結果報告 Part Ⅰ
大北喜基,荒木俊光,楠 正人
周術期管理の諸問題:周術期管理方法に関する多施設アンケート結果報告 Part Ⅱ 倉地清隆
術後合併症への対策:術後腸管麻痺,感染症,その他 荒木俊光,内田恵一,楠 正人
人工肛門関連合併症(stoma related complication) 小金井一隆,辰巳健志,杉田 昭
腸管不全症例への対応 渡辺和宏,佐々木 巌,海野倫明
退院後の術後管理 橋本拓造,板橋道朗,亀岡信悟
Ⅵ IBDに合併する癌の治療
潰瘍性大腸炎合併大腸癌 横山雄一郎,須並英二,渡邉聡明
クローン病に合併した小腸・大腸癌の診断と治療 杉田 昭,小金井一隆,辰巳健志
Ⅶ 外科治療を受ける患者へのメンタルサポートの要点と実際 藤井久男
Ⅷ 外科治療のコスト 佛坂正幸
Ⅸ 難病対策事業としての認定制度,患者会,その他 福島恒男
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IBD手術のすべてがわかる! 外科治療書の決定版!
IBD(炎症性腸疾患)の症例は激増しており,約15万人もの患者がいる。当然のごとく,手術例が増加している。しかしながら,IBDの外科治療に関するテキスト・手術書はわが国にはなく,手術を学ぶための資料に乏しい現状にある。
本書は「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班」外科部会を中心とするメンバーによるIBDの外科治療書の決定版である。手術の流れ,山場がひと目でわかるようダイナミックにレイアウトされており,術式が理解しやすくなっている。